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入店5回目 7 ~泣きそうです・・・~
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純さんはいつも「お店を盛り上げるために」という言い方もなさいますが、それが私にはピンと来なかったのも確かです。
だって、私はお店のためではなく純さんのためにお店に通っているのですから。
ホストさんからすれば「俺のため=お店のためでしょ? 俺が好きなら、俺を応援してくれるならお店を盛り上げたいっていう俺のお願いも聞いてくれるよね?」とおっしゃるかもしれませんが、私としては「お店を盛り上げるために○○して」と言われるより、「俺を応援してるなら、俺のために○○して。それがお店のためにもなるから」と言われた方が協力しやすいのも事実です。
好きな人のために何かしてあげたいと思わない女性はいないですから。
お客が要望に応えてくれない場合、ホストさんたちは「俺の情熱が伝わらなかったんだ」という言い方をされますが、お店に行って何かを要望された時、その場で即それに応えられるのは余程お金に余裕のある方か見栄っ張りかノリのいい方(要するに陽キャ?)だけではないでしょうか。
いくら応えて差し上げたいと思っても、やはりお客側にもキャパシティというものがあります。
もし「金がないなら借金してこい、体売ってでも金作ってこい」とおっしゃるホストさんがいらっしゃるとしたら、その方は応援するに値しません。
「それにしても、そのホストもさぁ、せめて愛香に会いたいから店に来てほしいとか、もうちょっと誘いようがあったんじゃないの?」
「純さんはそういうところ不器用ですから・・・」
わりとストレートに思ったことを口にしてしまうところもあるんですよね。
「だけどさ、あんたももう少し自己主張した方がいいんじゃない?」
「自己主張ですか?」
「こうしてほしいとか、ああしてほしいとか。言いたいことがあるのに飲み込んでばかりじゃ、伝わるものも伝わらないじゃん」
「でも・・・私は純さんに全然貢献できてないのに、わがままを言うわけには・・・」
「その辺のとこは私は分からないけどさ。言うだけ言ってみるのはいいんじゃない? ダメ元でさ。相手にそれだけの度量や人としての心があれば受け入れてくれるだろうし」
「言いたいこと・・・」
って、改めて聞かれるとなんでしょう?
私、純さんにしてほしいこととかってあったのでしょうか。
幸子さんとお話して、気持ちが落ち着いてきて冷静になって考えてみると、今日こんなにも悲しかったのは、自分が「純さんの指名本数を稼ぐだけのただの駒」のように扱われたと感じてしまったからな気がします。
「そう・・・ですね。とにかく純さんに思ったことを伝えてみます」
そもそもコミュ障の私は自己主張をするということが苦手なのです。
でもここは、純さんだったら受け入れてくださると信じて、自分の気持ちをちょっと整理してみなければ。
「愛香さぁ・・・」
私が決意を新たにしていると、幸子さんがなんだか言いにくそうに呼び掛けてこられました。
「はい?」
「・・・あんた、そのホストのことどう思ってんの?」
「どう、とは?」
「要するに、男として好きかってこと」
いきなりストレートに尋ねられて私の心臓が跳ね上がりました。
それは・・・とても難しい質問です。
「分から・・・ない、です」
そうお答えするのが精一杯でした。
いまだ自分に自信がないせいもありますが・・・私なんかが純さんを好きになるのはおこがましいと思ってしまいます。
確かに、純さんにお会いしてから毎日のように純さんのことばかり考えてしまってます。
純さんの一挙手一投足に気持ちが揺さぶられているもの事実かもしれません。
ただ、私の中でそういう気持ちはまだ未分化で・・・どちらかと言えば憧れや敬慕に近いものかとも思えます。
「そっか」
私の曖昧な答えに、幸子さんは全てを察してくださったようです。
「まぁ、とにかく、私は愛香が嫌な思いしなければそれでいいから」
「ありがとうございます」
「またなんかあったら遠慮なく相談して。もうホストクラブに行くなとは言わないから(笑)」
「はい。分かりました」
「じゃ、おやすみ。ゆっくり寝るのよ」
「幸子さんもゆっくりおやすみくださいね」
幸子さんとの通話はそこで終わりました。
大泣きしたことと幸子さんに全部聞いていただけたことで、頭も心も大分すっきりした気がします。
ただ、安心したせいか途端に眠気が襲ってきて、急いでシャワーだけ浴びたあと私はすぐにベッドに潜り込みました。
待ち構えていたような睡魔に身を任せると、翌朝まで夢も見ずにぐっすり眠ることができたのです。
だって、私はお店のためではなく純さんのためにお店に通っているのですから。
ホストさんからすれば「俺のため=お店のためでしょ? 俺が好きなら、俺を応援してくれるならお店を盛り上げたいっていう俺のお願いも聞いてくれるよね?」とおっしゃるかもしれませんが、私としては「お店を盛り上げるために○○して」と言われるより、「俺を応援してるなら、俺のために○○して。それがお店のためにもなるから」と言われた方が協力しやすいのも事実です。
好きな人のために何かしてあげたいと思わない女性はいないですから。
お客が要望に応えてくれない場合、ホストさんたちは「俺の情熱が伝わらなかったんだ」という言い方をされますが、お店に行って何かを要望された時、その場で即それに応えられるのは余程お金に余裕のある方か見栄っ張りかノリのいい方(要するに陽キャ?)だけではないでしょうか。
いくら応えて差し上げたいと思っても、やはりお客側にもキャパシティというものがあります。
もし「金がないなら借金してこい、体売ってでも金作ってこい」とおっしゃるホストさんがいらっしゃるとしたら、その方は応援するに値しません。
「それにしても、そのホストもさぁ、せめて愛香に会いたいから店に来てほしいとか、もうちょっと誘いようがあったんじゃないの?」
「純さんはそういうところ不器用ですから・・・」
わりとストレートに思ったことを口にしてしまうところもあるんですよね。
「だけどさ、あんたももう少し自己主張した方がいいんじゃない?」
「自己主張ですか?」
「こうしてほしいとか、ああしてほしいとか。言いたいことがあるのに飲み込んでばかりじゃ、伝わるものも伝わらないじゃん」
「でも・・・私は純さんに全然貢献できてないのに、わがままを言うわけには・・・」
「その辺のとこは私は分からないけどさ。言うだけ言ってみるのはいいんじゃない? ダメ元でさ。相手にそれだけの度量や人としての心があれば受け入れてくれるだろうし」
「言いたいこと・・・」
って、改めて聞かれるとなんでしょう?
私、純さんにしてほしいこととかってあったのでしょうか。
幸子さんとお話して、気持ちが落ち着いてきて冷静になって考えてみると、今日こんなにも悲しかったのは、自分が「純さんの指名本数を稼ぐだけのただの駒」のように扱われたと感じてしまったからな気がします。
「そう・・・ですね。とにかく純さんに思ったことを伝えてみます」
そもそもコミュ障の私は自己主張をするということが苦手なのです。
でもここは、純さんだったら受け入れてくださると信じて、自分の気持ちをちょっと整理してみなければ。
「愛香さぁ・・・」
私が決意を新たにしていると、幸子さんがなんだか言いにくそうに呼び掛けてこられました。
「はい?」
「・・・あんた、そのホストのことどう思ってんの?」
「どう、とは?」
「要するに、男として好きかってこと」
いきなりストレートに尋ねられて私の心臓が跳ね上がりました。
それは・・・とても難しい質問です。
「分から・・・ない、です」
そうお答えするのが精一杯でした。
いまだ自分に自信がないせいもありますが・・・私なんかが純さんを好きになるのはおこがましいと思ってしまいます。
確かに、純さんにお会いしてから毎日のように純さんのことばかり考えてしまってます。
純さんの一挙手一投足に気持ちが揺さぶられているもの事実かもしれません。
ただ、私の中でそういう気持ちはまだ未分化で・・・どちらかと言えば憧れや敬慕に近いものかとも思えます。
「そっか」
私の曖昧な答えに、幸子さんは全てを察してくださったようです。
「まぁ、とにかく、私は愛香が嫌な思いしなければそれでいいから」
「ありがとうございます」
「またなんかあったら遠慮なく相談して。もうホストクラブに行くなとは言わないから(笑)」
「はい。分かりました」
「じゃ、おやすみ。ゆっくり寝るのよ」
「幸子さんもゆっくりおやすみくださいね」
幸子さんとの通話はそこで終わりました。
大泣きしたことと幸子さんに全部聞いていただけたことで、頭も心も大分すっきりした気がします。
ただ、安心したせいか途端に眠気が襲ってきて、急いでシャワーだけ浴びたあと私はすぐにベッドに潜り込みました。
待ち構えていたような睡魔に身を任せると、翌朝まで夢も見ずにぐっすり眠ることができたのです。
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