上 下
12 / 57

ドキドキの初対面(はつたいめん) 3

しおりを挟む
「愛香ちゃん、やっぱり可愛いね」

 そんな風に少々不躾に純さんを眺めていると、そんな声が聞こえてきて我に返りました。

聞き間違い・・・?

「かっ、可愛いとかないですっ」

「そうかなぁ。想像通りだったよ」

「可愛いとか、今までに一度も言われたことないので・・・」

「えー、そうなんだ。意外」

「私こんな感じですし・・・それに純さんはホストさんだから・・・」

「あー、誰にでも言ってるって思われてる?」

 純さんが苦笑いをなさったので、私はそれ以上何も言えなくなってうつむいてしまいました。

「んー、なんていうかな、ホストもさ、本当に思ってもないことは言えないよ」

「そうなんですか?」

「やっぱさぁ、世間的には結構偏見持たれてるよね」

「そう・・・かもしれないです・・・」

「俺たちの店はさ、“ホスドル”って形で売り出してるんだ」

「ホスドル?」

「ホスト+アイドル。要するに歌って踊れるホスト的な?」

「普通のホストさんとは違うってことですか?」

「同じ部分もあるけど、俺は自分達のことエンターテイナーだと思ってる。お店に来てくれた人をどれだけ楽しませられるかが重要っていうか」

 純さん曰く、今はホストという業態も昔に比べると様変わりしているようです。

以前はホストといえば開襟シャツにスーツ、アクセサリージャラジャラという服装が代表的なイメージでしたが、最近ではカジュアル化が進んでいるのだとか。

それに伴ってチャラいとかダークなイメージも薄れてきて、例えばモデルをされたりタレントになられたりするホストさんもいらっしゃるとのこと。

客層も、かつては会社経営者や重役の妻といった裕福な女性が多い印象でしたが、今ではなんと大学生もいらっしゃるそうです。

「でも、世間のほとんどの方は、ホストやホストクラブといえば昔のままのイメージを持ってますよね」

「そうなんだよね。だから、店にさえ来てもらえれば、絶対楽しんでもらえる自信はあるんだけど」

 一般の方に向けた敷居を低くするためにも、ホストクラブには「初回料金」というものが設定されているらしいです。

どこも2000円~3000円で、90分ほどホストクラブをお試し利用できるようになっているのだとか。

確かに3000円くらいなら、月収20万に満たない私でも余裕で払える額です。

それから、純さんはご自分が地方から歌舞伎町に来てもう五年以上になることも話してくださいました。

「だからさ、なんとかここで頑張って売れて有名になりたいと思ってる」

「なれるといいですね」

「今はまだお茶挽いてる時の方が多いけどね」

「お茶?」

「その日の指名がないことを、業界用語で“お茶を挽く”っていうんだよ」

 耳慣れない言葉ですが、元々は吉原の遊女に由来するそうです。

お客さんがつかない遊女を遊ばせておくのはもったいないので、お茶を挽かせていたのが語源だとか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。

天織 みお
恋愛
「おめでとうございます。奥様はご懐妊されています」 目が覚めたらいきなり知らない老人に言われた私。どうやら私、妊娠していたらしい。 「だが!彼女と子供が出来るような心当たりは一度しかないんだぞ!!」 そして、子供を作ったイケメン王太子様との仲はあまり良くないようで――? そこに私の元婚約者らしい隣国の王太子様とそのお妃様まで新婚旅行でやって来た! っていうか、私ただの女子高生なんですけど、いつの間に結婚していたの?!ファーストキスすらまだなんだけど!! っていうか、ここどこ?! ※完結まで毎日2話更新予定でしたが、3話に変更しました ※他サイトにも掲載中

【完結】一夜の関係を結んだ相手の正体はスパダリヤクザでした~甘い執着で離してくれません!~

中山紡希
恋愛
ある出来事をキッカケに出会った容姿端麗な男の魅力に抗えず、一夜の関係を結んだ萌音。 翌朝目を覚ますと「俺の嫁になれ」と言い寄られる。 けれど、その上半身には昨晩は気付かなかった刺青が彫られていて……。 「久我組の若頭だ」 一夜の関係を結んだ相手は……ヤクザでした。 ※R18 ※性的描写ありますのでご注意ください

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

処理中です...