【本編完結】瓦解

星の書庫

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そして物語は、崩れていく

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 この二年で環境が目まぐるしく変わったせいで、高校の同級生と連絡を取ることはなくなった。
親友のはずだった輝樹とも、今では全く話していない。原因はやはり浮気騒動だろう。あの時、玲のクラスだけで拡散されていた写真を輝樹が持っていたことが、犯人だと裏付ける証拠になった。あそこまで陰湿なやり方は輝樹らしくなかったが、何か彼をそうさせる理由があったのだろう。
電車で一人黄昏ていると、一人の男が俺の顔を覗き込んできた。
「お前……純か?」
聞き覚えのある声。金髪で髪型も高校時代とは違っていたので、最初は誰かわからなかったが、目の前の男は間違いなく輝樹だった。
「……輝樹?」
「そう!俺の事、覚えてるか?」
輝樹は満面の笑みで俺の手を取る。久しぶりに会えて嬉しそうだが、彼は自分のしたことをどう思っているのだろう。
「覚えてる……けど」
「急に連絡取れなくなったから、ずっと心配してたんだよ。こんなところで会えるとは思ってなかったから、嬉しいな」
「そ、そう……」
輝樹はなおもグイグイと距離を詰めてきた。正直に言って、あまり彼とは話したくない。
「そうだ、今帰りか?」
「そう、だけど……」
良いことを思いついたと言って、輝樹は俺の横に座る。
「お前の家、見てみたいな」

「へえ、ここが純の部屋か……」
 俺の部屋を見回して、感心した様子の輝樹は、女の匂いがするなと言って、部屋の中を物色し始めた。
「正確には、俺と玲の部屋だからね。あまり何でも触らない方が良いよ」
「えっ、お前らまだ付き合ってたの!?」
まだ付き合っていたのが意外らしく、輝樹は目を丸くした。彼としては、浮気騒動あの件で破局したと確信していたのだろう。残念だったな。
「まあ、危ない時はあったけどね」
「お前が浮気したってやつだろ?俺はあれで終わったと思ってたんだけどな」
輝樹は笑いながら言う。おそらくあれで、別れてほしかったのだろう。
……彼を家に連れてきたのは、失敗だったかもしれない。
 それから、少しだけ話をした。あまり長く話していたくなかったが、輝樹があまりにも積極的に話しかけてくるので、帰ってもらうタイミングを逃してしまった。
十九時を回ったころ、輝樹がようやく帰ろうと言い出した。
「もうこんな時間か……邪魔しちゃ悪いし、俺はもう帰ろうかな」
「そ、そうか。送っていこうか?」
「あぁいや、大丈夫。じゃあ、またな」
「うん、また」

 輝樹が帰った一時間後、玲が疲れた様子で帰ってきた。
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