50 / 54
そして物語は、崩れていく
しおりを挟む
この二年で環境が目まぐるしく変わったせいで、高校の同級生と連絡を取ることはなくなった。
親友のはずだった輝樹とも、今では全く話していない。原因はやはり浮気騒動だろう。あの時、玲のクラスだけで拡散されていた写真を輝樹が持っていたことが、犯人だと裏付ける証拠になった。あそこまで陰湿なやり方は輝樹らしくなかったが、何か彼をそうさせる理由があったのだろう。
電車で一人黄昏ていると、一人の男が俺の顔を覗き込んできた。
「お前……純か?」
聞き覚えのある声。金髪で髪型も高校時代とは違っていたので、最初は誰かわからなかったが、目の前の男は間違いなく輝樹だった。
「……輝樹?」
「そう!俺の事、覚えてるか?」
輝樹は満面の笑みで俺の手を取る。久しぶりに会えて嬉しそうだが、彼は自分のしたことをどう思っているのだろう。
「覚えてる……けど」
「急に連絡取れなくなったから、ずっと心配してたんだよ。こんなところで会えるとは思ってなかったから、嬉しいな」
「そ、そう……」
輝樹はなおもグイグイと距離を詰めてきた。正直に言って、あまり彼とは話したくない。
「そうだ、今帰りか?」
「そう、だけど……」
良いことを思いついたと言って、輝樹は俺の横に座る。
「お前の家、見てみたいな」
「へえ、ここが純の部屋か……」
俺の部屋を見回して、感心した様子の輝樹は、女の匂いがするなと言って、部屋の中を物色し始めた。
「正確には、俺と玲の部屋だからね。あまり何でも触らない方が良いよ」
「えっ、お前らまだ付き合ってたの!?」
まだ付き合っていたのが意外らしく、輝樹は目を丸くした。彼としては、浮気騒動で破局したと確信していたのだろう。残念だったな。
「まあ、危ない時はあったけどね」
「お前が浮気したってやつだろ?俺はあれで終わったと思ってたんだけどな」
輝樹は笑いながら言う。おそらくあれで、別れてほしかったのだろう。
……彼を家に連れてきたのは、失敗だったかもしれない。
それから、少しだけ話をした。あまり長く話していたくなかったが、輝樹があまりにも積極的に話しかけてくるので、帰ってもらうタイミングを逃してしまった。
十九時を回ったころ、輝樹がようやく帰ろうと言い出した。
「もうこんな時間か……邪魔しちゃ悪いし、俺はもう帰ろうかな」
「そ、そうか。送っていこうか?」
「あぁいや、大丈夫。じゃあ、またな」
「うん、また」
輝樹が帰った一時間後、玲が疲れた様子で帰ってきた。
親友のはずだった輝樹とも、今では全く話していない。原因はやはり浮気騒動だろう。あの時、玲のクラスだけで拡散されていた写真を輝樹が持っていたことが、犯人だと裏付ける証拠になった。あそこまで陰湿なやり方は輝樹らしくなかったが、何か彼をそうさせる理由があったのだろう。
電車で一人黄昏ていると、一人の男が俺の顔を覗き込んできた。
「お前……純か?」
聞き覚えのある声。金髪で髪型も高校時代とは違っていたので、最初は誰かわからなかったが、目の前の男は間違いなく輝樹だった。
「……輝樹?」
「そう!俺の事、覚えてるか?」
輝樹は満面の笑みで俺の手を取る。久しぶりに会えて嬉しそうだが、彼は自分のしたことをどう思っているのだろう。
「覚えてる……けど」
「急に連絡取れなくなったから、ずっと心配してたんだよ。こんなところで会えるとは思ってなかったから、嬉しいな」
「そ、そう……」
輝樹はなおもグイグイと距離を詰めてきた。正直に言って、あまり彼とは話したくない。
「そうだ、今帰りか?」
「そう、だけど……」
良いことを思いついたと言って、輝樹は俺の横に座る。
「お前の家、見てみたいな」
「へえ、ここが純の部屋か……」
俺の部屋を見回して、感心した様子の輝樹は、女の匂いがするなと言って、部屋の中を物色し始めた。
「正確には、俺と玲の部屋だからね。あまり何でも触らない方が良いよ」
「えっ、お前らまだ付き合ってたの!?」
まだ付き合っていたのが意外らしく、輝樹は目を丸くした。彼としては、浮気騒動で破局したと確信していたのだろう。残念だったな。
「まあ、危ない時はあったけどね」
「お前が浮気したってやつだろ?俺はあれで終わったと思ってたんだけどな」
輝樹は笑いながら言う。おそらくあれで、別れてほしかったのだろう。
……彼を家に連れてきたのは、失敗だったかもしれない。
それから、少しだけ話をした。あまり長く話していたくなかったが、輝樹があまりにも積極的に話しかけてくるので、帰ってもらうタイミングを逃してしまった。
十九時を回ったころ、輝樹がようやく帰ろうと言い出した。
「もうこんな時間か……邪魔しちゃ悪いし、俺はもう帰ろうかな」
「そ、そうか。送っていこうか?」
「あぁいや、大丈夫。じゃあ、またな」
「うん、また」
輝樹が帰った一時間後、玲が疲れた様子で帰ってきた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません
たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。
何もしていないのに冤罪で……
死んだと思ったら6歳に戻った。
さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。
絶対に許さない!
今更わたしに優しくしても遅い!
恨みしかない、父親と殿下!
絶対に復讐してやる!
★設定はかなりゆるめです
★あまりシリアスではありません
★よくある話を書いてみたかったんです!!
私が死ねば楽になれるのでしょう?~愛妻家の後悔~
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢オリヴィアは伯爵令息ダーフィトと婚約中。
しかし結婚準備中オリヴィアは熱病に罹り冷酷にも婚約破棄されてしまう。
それを知った幼馴染の伯爵令息リカードがオリヴィアへの愛を伝えるが…
【 ⚠ 】
・前半は夫婦の闘病記です。合わない方は自衛のほどお願いいたします。
・架空の猛毒です。作中の症状は抗生物質の発明以前に猛威を奮った複数の症例を参考にしています。尚、R15はこの為です。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる