30年越しの手紙

星の書庫

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部活

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 体育祭が終わって、僕は陸上部の部長に声をかけられた。
部長曰く、「フォームは汚いが、直せば絶対に速くなる」らしい。
あまり気乗りはしなかったが、ひなが入って欲しいと言うので、仕方なく入部することにした。
本当に良かったの?と彼女に聞くと、「ハルキが頑張る姿を見ていたい」と笑っていた。

 部長の永瀬先輩は、百メートルでインターハイ出場経験があるらしい。常に笑顔で、僕のような日陰者に対しても優しい、いわゆる陽キャラの鏡の様な人だ。
 副部長のさかきさんは、僕と同じ二年生ながら国体優勝経験を持っている女の子だ。無愛想で笑っている所を見た事がない。
この学校の陸上部は、全国大会出場者が多い。
本当に僕なんかが入部しても良いのか不安になる。
「お前が渡邉春樹か!体育祭、見てたぞ!俺は伊藤六花いとうりっかだ。お前と同じ二年だぜ!よろしくな!」
「あ、あぁ……うん。よろしく」
特に印象が強かったのは、六花という同級生。僕に異様に馴れ馴れしい。
彼は大きな結果こそ残してないが、三年生と全国出場を争うほどの実力者だ。
「つれねぇなぁ。これからは仲間だぜ?仲良くやろうや!」
「……分かったよ」

こうして、僕の陸上部としての生活が始まった。
 ひなと過ごす時間は減ったけれど、陸上をしている時は時間を忘れる程楽しい。
そんな僕を見て、ひなは満足そうにしている。
「ハルキは最近輝いてるねぇ」
「そうかな?」
「うんうん。私、ちょっと妬いちゃうなぁ」
「嫉妬するほどの事はしてないよ」
「そう?榊ちゃんと浮気してそうだなぁ」
「僕が好きなのはひなだけだから、それはないよ」
「分かってるよ。それが聞きたかっただけでーす」
そう言って彼女は笑う。
「今日も終わるまで待っとくよ?」
「待たずに帰って良いのに」
「それじゃハルキが可哀想じゃん!」
「はいはい。待ってて下さいねー」
「うん!……にしし」
僕が陸上部に入ってから、彼女はえらく上機嫌だ。彼女が嬉しそうで、僕も嬉しい。
「じゃあ、行ってくる」
「うん!行ってらっしゃい!」
いつもの通り、僕は陸上部の部室へと足を運ぶ。
部室に行くと、六花が着替えて待っていた。
「よう、ハルキ!ホライズン・ステージ。見たか?」
「……今見てるところだよ」
僕も着替えながら、六花の質問に答えていく。
「お?今何話目だ?」
「……四話目」
「ほほう。結構なハイペースだな。仲間との再会シーンで終わってるな?」
「よくそんなに覚えてるな」
「アニメの知識じゃ誰にも負けないぜ!」
「はいはいすごいすごい」
「むっ?それは煽りか?」
「違うよ」
「そうかそうか!じゃあ、練習いくぞ!」
僕が着替えるのを見計らって、彼は腰を上げた。
僕もそれに続いて、部室の外に出た。

 部活が終わると、彼女と一緒に帰る。
僕の生活も、少しずつ変わりはじめてきたと感じた。
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