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王都戦、開幕です!
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《梓side》
「ついに来たね」
「……ん」
「やっとマーリンさんの仇が討てるよ」
「……ん」
「ちゃんと見てるかなぁ……」
「……多分」
「そっか!じゃあ思いっきりやるだけだね!」
「……ん。ちゃんと覚えてる?」
「うん、覚えてるよ。攻撃魔法は使わない」
「……ん」
王都に来て一週間。遂に王都戦の日がやってきた。今日は雲一つない青空が広がっていて、清々しいを通り過ぎて逆に気持ち悪くもあった。
「じゃあ、行ってくるね」
「……ん。行ってらっしゃい」
「うん!」
そうして私は、たった一人の愛する人を送り出した。正直、マーリンと同じ様に殺されて欲しくない。危なくなればすぐに防御魔法を使う事も約束している。何もなければ良いと言う私の杞憂は、杞憂で終わって欲しかった……。
「いおり……」
《伊織side》
「王都戦の参加者の皆様はここへお集まりください!まもなく受付が終了します!」
「ふぅ……。よし!」
ずっと待ちわびていた日がやってきました。僕とさえちゃんの仇討ちの日が……。師匠を殺された恨みは、僕が絶対に果たしてみせます!
「お、君も王都戦に参加しますか?」
「は、はい!」
「名前と職柄を教えてください」
「えっと……。名前はクジョウイオリです。職柄は、魔導職です!」
「分かりました。王都戦は、死んでも自己責任です。承諾いただけたのなら、コロッセオ内部の闘技場まで足をお運びください。ご武運を」
「ありがとうございます!」
「いえいえ」
案内を受けて、僕はコロッセオの中へと足を進めました。
大きな闘技場の中で待っていたのは、観客達の大歓声と挑戦者を待つ大賢者さんでした。僕より先に闘技場に入ってきていた人もいるみたいです。すると、僕のすぐ後ろにあった門が大きな音を立てて閉まりました。
「さぁ役者は揃った!最後に入ってきた挑戦者はなんと、堕ちた賢者マーリン・セイジャストの弟子!クジョウイオリ!待ち受けるのは歴戦の覇者達と、大賢者チカ様だぁ!」
大きな場内アナウンスに戸惑っていると、大賢者さんが僕に近寄ってきました。手が届きそうな距離まで来ると、大賢者さんはいきなり笑いだしました。
「えへへぇ……。待っていたよぉ?『正賢者の遺志』伊織くん?」
「大賢者さん……。いや、チカ!僕はマーリンさんの仇をここで討つ!」
「えぇ?そうなんだぁ。無理だろうけど頑張ってねぇ?えへへぇ……」
「おい、クジョウイオリ」
「へ?何ですか?」
「貴様、私がいる事を知っての発言か?」
白銀の剣を持った男の人が、明らかな殺意を持って近づいてきました。
「え?誰ですか?」
「ぐっ……!それは私に対しての侮辱と受け取って良いのだな?……覚えておくと良い。我が名はアッシュ・エンシェント!この国において最高の聖騎士。貴様と……大賢者チカを倒して剣聖となる男だ!」
「アッシュさんですか……。頑張りましょうね!」
「貴様……!」
アッシュさんが剣を抜いて斬りかかろうとした時でした。さっきの大きいアナウンスが会場を包み込みます。
「お二人とも、ゴングが鳴る前の戦闘行為は禁止ですぞ!」
「ちっ……。じゃあ、ゴングが鳴ってから会おうな。それまで貴様が生きているかも分からぬがな」
「はい!頑張りましょうね!」
小さく舌打ちをして、アッシュさんが離れていきました。
「さぁさぁ茶番はこれまで!いよいよゴングがなりますぞ!カウントをご唱和ください!さんはい!」
「「「さーん!にー!いーち!」」」
「レディ……ファイッ!!!!」
試合開始のゴングがなりました。
「ついに来たね」
「……ん」
「やっとマーリンさんの仇が討てるよ」
「……ん」
「ちゃんと見てるかなぁ……」
「……多分」
「そっか!じゃあ思いっきりやるだけだね!」
「……ん。ちゃんと覚えてる?」
「うん、覚えてるよ。攻撃魔法は使わない」
「……ん」
王都に来て一週間。遂に王都戦の日がやってきた。今日は雲一つない青空が広がっていて、清々しいを通り過ぎて逆に気持ち悪くもあった。
「じゃあ、行ってくるね」
「……ん。行ってらっしゃい」
「うん!」
そうして私は、たった一人の愛する人を送り出した。正直、マーリンと同じ様に殺されて欲しくない。危なくなればすぐに防御魔法を使う事も約束している。何もなければ良いと言う私の杞憂は、杞憂で終わって欲しかった……。
「いおり……」
《伊織side》
「王都戦の参加者の皆様はここへお集まりください!まもなく受付が終了します!」
「ふぅ……。よし!」
ずっと待ちわびていた日がやってきました。僕とさえちゃんの仇討ちの日が……。師匠を殺された恨みは、僕が絶対に果たしてみせます!
「お、君も王都戦に参加しますか?」
「は、はい!」
「名前と職柄を教えてください」
「えっと……。名前はクジョウイオリです。職柄は、魔導職です!」
「分かりました。王都戦は、死んでも自己責任です。承諾いただけたのなら、コロッセオ内部の闘技場まで足をお運びください。ご武運を」
「ありがとうございます!」
「いえいえ」
案内を受けて、僕はコロッセオの中へと足を進めました。
大きな闘技場の中で待っていたのは、観客達の大歓声と挑戦者を待つ大賢者さんでした。僕より先に闘技場に入ってきていた人もいるみたいです。すると、僕のすぐ後ろにあった門が大きな音を立てて閉まりました。
「さぁ役者は揃った!最後に入ってきた挑戦者はなんと、堕ちた賢者マーリン・セイジャストの弟子!クジョウイオリ!待ち受けるのは歴戦の覇者達と、大賢者チカ様だぁ!」
大きな場内アナウンスに戸惑っていると、大賢者さんが僕に近寄ってきました。手が届きそうな距離まで来ると、大賢者さんはいきなり笑いだしました。
「えへへぇ……。待っていたよぉ?『正賢者の遺志』伊織くん?」
「大賢者さん……。いや、チカ!僕はマーリンさんの仇をここで討つ!」
「えぇ?そうなんだぁ。無理だろうけど頑張ってねぇ?えへへぇ……」
「おい、クジョウイオリ」
「へ?何ですか?」
「貴様、私がいる事を知っての発言か?」
白銀の剣を持った男の人が、明らかな殺意を持って近づいてきました。
「え?誰ですか?」
「ぐっ……!それは私に対しての侮辱と受け取って良いのだな?……覚えておくと良い。我が名はアッシュ・エンシェント!この国において最高の聖騎士。貴様と……大賢者チカを倒して剣聖となる男だ!」
「アッシュさんですか……。頑張りましょうね!」
「貴様……!」
アッシュさんが剣を抜いて斬りかかろうとした時でした。さっきの大きいアナウンスが会場を包み込みます。
「お二人とも、ゴングが鳴る前の戦闘行為は禁止ですぞ!」
「ちっ……。じゃあ、ゴングが鳴ってから会おうな。それまで貴様が生きているかも分からぬがな」
「はい!頑張りましょうね!」
小さく舌打ちをして、アッシュさんが離れていきました。
「さぁさぁ茶番はこれまで!いよいよゴングがなりますぞ!カウントをご唱和ください!さんはい!」
「「「さーん!にー!いーち!」」」
「レディ……ファイッ!!!!」
試合開始のゴングがなりました。
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