教室の魔法使い

中富虹輔

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第二部 運喰らい

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 しばらくの沈黙。
 そして宮島は、こわばった表情で、大山さんに目を向けた。「あたしが危ない、っていう根拠は?」思い出したように、つけ加える。「このあたりにいる魔法使いが、あたしと大山だけ、っていうのはわかるけど、べつに大山がそいつに狙われたって、おかしくないわけでしょ?」
「簡単だよ」
 大山さんはため息混じりに肩をすくめてみせた。「おれは、あいつを自力で追い払えるけど、お前は、できないだろ?」
 言葉に詰まる宮島。彼女は口をとがらせて、「でも、あんただって、絶対に追い払えるかどうかは、わからないんじゃないの?」問うたけれども、「追い払ったんだ、一回」大山さんはあっさりと言葉を返した。
 その、運を食う怪物と大山さんが遭遇したのは、月曜日だったという。奇妙な気配が自分の周りをうろついていることに気づいた大山さんが、特別なんの注意も払わずに、そいつを追い払ったところ、翌日の火曜日に、そいつが、運を食う怪物である、という連絡が来たのだそうだ。
 そして、そいつを退治してほしい、という依頼を受けた大山さんが奴の行方を追っているところにあらわれたのが、ぼくと、そして奴にとりつかれた宮島だった、ということらしい。すぐに、宮島が先日、公園で翼の魔法に失敗した魔法使いだということを思い出した大山さんは、魔法使いの組織に連絡して、宮島の素性を確認し、ここで初めて、彼女が自分と同じ学校に通っている、同学年の女子であるということを知った、ということだった。
「じゃあ、やっぱり昨日の朝、校門にいたのって、あたしたちを待ってた、ってこと?」
 なんであたし「たち」なんだろう? 待っていたのは宮島だけじゃないのか? ぼくの、そんな重箱の隅をつつくような疑問には、当然気づくはずもなく、
「そういうこと」大山さんはうなずいて、「お前にそのことを教えて、協力してもらおうと思ったんだけどな。まさかあんな反応が返ってくるなんて、思ってもいなかったよ」苦笑いしながらつけたした。その言葉に、「悪かったわね」宮島は頬をふくらませたけれども、それも一時だった。今度は不安げな表情で、大山さんに問う。
「ね、さっき、『木曜日に、奴があたしにとりついていた』って、いったよね?」大山さんがうなずくのを待たずに、宮島は問うた。「今も、そいつ、あたしにとりついているの?」
「ああ。見えないか? お前の頭の上で、ひらひらしてるんだけど」
 大山さんの言葉に、宮島は真上を見上げる。ぼくではそれを見ることができないことはわかっていたけれども、「見えない」という事実を確認するためだけに、ぼくも彼女の頭の上に目を向けた。
 しばらく頭上をじっと見据えて、彼女は、大山さんに目を向けなおした。「なにか、そいつを見るためのこつ、みたいなのって、ないの?」
 結局、宮島もそいつを見ることはできなかったらしい。宮島の言葉に、大山さんは首をかしげた。
「うーん。お前、魔法使いの『気配』を見ることはできるよな? 奴も、もとが魔法使いだから、かなり歪んではいるんだけど、魔法使いの『気配』を持っているんだ」
「歪んだ魔法使いの『気配』……」つぶやいて、もう一度宮島は頭上を見上げた。しばらくしてから、視線をまっすぐにし、彼女は首を横に振った。
「だめ。わかんない」
「そうか」大山さんは応え、「見えないものはしょうがないしな。ま、見習いにそんなことまで期待できないし」
「またそうやって見習いだからって、人を馬鹿にする」宮島は口をとがらせた。「馬鹿にしてるわけじゃないって。事実は事実だろ?」大山さんは切り返し、「でも」頭では納得できても、感情の方がついていかない、といった表情で、宮島は言葉を濁した。ちらり、と彼女はなにかいいたそうな目をぼくの方に向けたけれども、彼女がなんといいたかったのかまでは、ぼくにはわからなかった。
 宮島は、ため息をつきながら、大山さんに目を向けた。「で、あたしはどうすればいいわけ? まさか、このままあたしの運を食われるにまかせろ、なんて薄情なことはいわないんでしょ?」
「そんなことをするつもりだったら、わざわざお前に接触したりしてないって」
 なにを馬鹿なことを、とでもいうように、大山さんは応えた。
「こういうのは、早い方がいいだろうな。……二人とも、明日、なにか予定は入ってるか?」

 そして、翌日の日曜日。
 約束の時間は午前十時。
 十五分前の九時四十五分に、ぼくは大山さんに指定されていた駅に到着していた。初めて降りる駅だったので、物珍しさも手伝って、あたりをぐるりと見回すと、ちょうど改札の対面にある切符売り場に、宮島の姿を見つけた。彼女も、改札を抜けたぼくの姿を見つけたようで、ぼくの方へ、小走りに駆け寄ってくる。
「おはよう」と挨拶を交わしたあと、「寝坊しなかったみたいね。感心感心」おねーさんぶってうなずく宮島。
「そんな、五歳六歳の子どもじゃないんだから」ぼくは苦笑しながら言葉を返し、「大山さんは?」
「まだみたいね。まだ十五分もあるし。もう少し待ってれば、くるでしょ」
 ぼくはうなずいた。そのまま、改札前で二人並んでぼうっと大山さんを待つことしばし。なんだか、こうしてだんまりを決め込んでいるのも気詰まりな感じがして、ぼくはなにか話そう、と、口を開いた。
「ずいぶん、変わったね」
「え? なにが?」
 ぼくの言葉に、宮島は顔に疑問符を浮かべて問い返してきた。「大山さんへの態度。……目の敵にしてたのは、ついこの間だろ?」
 苦笑いを浮かべる宮島。「あれはね。ちょっと……」一時いいよどんだ彼女だったけれども、
「本当はね、ちょっと、くやしかったんだ」自嘲の笑みを浮かべて、彼女はいった。「ほら、あたしって、他の人たちよりも優秀だってこと、前にいったよね?」ぼくがうなずくのを待って、
「だから、かな。あたしよりも優秀なのがいる、っていうのがおもしろくなくって」
「なに? それじゃあ、大山さんの才能にやきもちやいていた、ってこと?」
「平たくいっちゃうとね」
 また、自嘲の笑みを浮かべる宮島。「ほんとは、あれじゃいけない、っていうのは、わかっていたんだ。まあ、昨日のがうまいこときっかっけになってくれた、っていうのかな?」
「ふうん、そっか……」ぼくはうなずきを返した。なんだか、これ以上この事で話を続けると、あまり聞きたくないような言葉が、彼女の口から出てきてしまうかもしれない。そんな、いい様のない不安にとらわれ、ぼくは話題を変えることにした。
「そういえば、今日は、やけに早かったね」
「え?」
「ああ。待ち合わせ場所に着いている時間だよ。いつもなら、十分前だろ?」
 宮島は、あはは、と苦笑して、「時間の計算、間違っちゃって。初めての場所だから、どこに何があるかもわからないでしょ? 下手にあっちこっちふらふらすると道に迷ったりするかも知れないから、動くに動けなくって。おかげで、九時半から、ずっとここで立ちんぼ」
「そりゃ災難だったね」ぼくは小さく笑った。「ほーんと、ついてないよねぇ」同意の声を上げた宮島の顔が、急にひきつった。突然の彼女の表情の変化に戸惑ったのは、数瞬だった。
『ついてない』
 彼女の言葉を、頭の中で反芻する。もしかしたら、これも、宮島が運を食われている、その影響なのだろうか?
 たぶん、彼女も同じことを考えていたのだろう。ぼくがゆっくりと彼女の方に目を向けると、彼女もまた、ぼくに視線を返してきた。ひきつった笑いを彼女は浮かべ、そして思考を別の方向にもっていくためだろう。露骨に話題を切り替える。
「そういえばさ、峰岸くん。一つ、聞いていい?」
 先ほどのいやな推測を蒸し返さなければいけない理由もなく、ぼくもまた、素直にそれに応じた。
「なにを?」
「峰岸くんさ、あたしのことは、『宮島』って、呼んでるよね」ぼくがうなずくのを待って、彼女はもう一度、「なのに、なんで大山のことは『大山さん』なわけ?」口を開いた。
「なに? 宮島も『宮島さん』って呼んでほしいの?」
「そういうわけじゃないんだけど」言葉を濁す宮島。「もしかして、あたしを年上って思っていないとかっていう?」
「あたり」ぼくは苦笑まじりに応えた。「初対面の、ぼくの席に座っていたときの印象が強くってね」
 年上なのだから、「宮島さん」なんてふうに呼んだ方がいいのだろうけど、どうしても、初対面の時の漠然とした「こいつは同い年だ」という印象がぬぐい去れずに、そのままずるずると「宮島」で通してきていたのだけれども。
「宮島って呼ばれるのがいやなら、変えてもいいよ?」
「だからそうじゃない、っていってるでしょ」
 少しすねた声で、宮島は応えた。「ちょっと気になったから、聞いてみただけなんだから」
「じゃ、そういうことにしておくよ」ぼくは軽口で返した。「でもさ、大山さんと宮島って、とても同い年には見えないよね」
 頬をふくらます宮島。「あたしがガキっぽい、ってこと?」
「それもあるけど」ぼくは意地悪くうなずき、ますますふくれっ面になる彼女の表情を楽しんだ。「ほら、大山さんも、ずいぶん大人っぽいだろ?」
 ぼくの言葉に、宮島は表情をゆるめ、「そうね」同意のうなずきを返した。
「あいつだって、いろいろと苦労はあるんだろうね、きっと」なにかの感慨にふけるかのように、宮島はいった。その目が、一点に向く。
「あ、来たみたいよ」
「噂をすれば、だね」ぼくは応えながら、宮島が向いている方に目を向けた。ぼくらの姿を探しているのだろう。初めてあったときと同じ、黒ずくめの格好の大山さんが、あたりをゆっくりと見回している。すぐに大山さんはぼくらの姿を認めたようで、ぼくらの方へ歩み寄ってきた。
「わりぃ。準備に手間取って、遅れちまった」いわれてぼくは腕時計に目をやった。いつのまにか、約束の時間を十分ほどもすぎている。
 宮島と話しているうちに、時間を忘れてしまっていたらしい。そんなに長い間、彼女と話していた気はしないのに。
「準備?」
 宮島が問うて、「ああ」大山さんはうなずいた。「時間ももったいないし、歩きながら説明するよ」応えて、ぼくらをうながす。「さ、いこうぜ」

 目的地は、大山さんが魔法の実験をするときに使っている、「秘密の地下室」だという。大山さんが魔法使いになったばかりのころに世話になった老魔法使いが使っていたもので、その魔法使いは何年か前に亡くなってしまったのだけれども、生前、「自分が死んだら、ここは自由に使っていい」といってくれたのだそうだ。
「うわー、贅沢」その話しを聞いて、宮島が最初にもらした感想。確かに、日本の住宅事情を考えれば、(少なくとも外見上は)ただの高校生がそんな場所をもっている、というのは、相当に贅沢なことだろう。
 大山さんは苦笑して、「まあ、贅沢、っていえば贅沢か」言葉を返した。
 その「秘密の地下室」のある場所へ向かって歩いていく道すがら、大山さんが、どんな準備をしていたのかを教えてくれた。
「魔法を完全に中和する空間を作っていたんだ」
 魔法を中和する空間。その中では、宮島にとりついている、運を食う怪物が制御していると思われる、姿隠しの魔法などをはじめとした、ありとあらゆる魔法を打ち消してしまう場所。その中では、姿隠しの魔法のような、継続性のある魔法はもちろんのこと、魔法を使うことすら許されない、いってみれば魔法使いにとっては牢獄にも等しい空間、なのだそうだ。
 大山さんが、ぼくにその魔法中和空間の説明をしてくれている間じゅう、宮島の顔はずっと蒼白だった。それが気になりはしたものの、せっかく魔法のことを説明してくれている大山さんを放り投げるわけにもいかず、ぼくは大山さんの言葉が終わるのを待って、宮島に顔を向けた。
「どうしたの? 具合でも悪くなった?」
「違うわよ」宮島は小さく首を振り、ため息をついた。そして大山さんに眼を向け、「大山、あなた、ほんとにあたしと同い年なの?」確認するように問うた。その問いに大山さんは苦笑を返し、「一応、千九百七十*年生まれ、ってことになってるけど」
「それよりも二十年ぐらい早いんじゃないの、ほんとは?」宮島の疑わしげな視線を、大山さんは不敵な微笑みで受け流した。「どう思う?」
 二人の会話の意味がいまいち飲み込めず、ぼくはただ、その二人のやりとりを眺めているしかなかった。そんな様子のぼくに、先に気づいたのは宮島だった。
「ああ、あのね。大山の『魔法を中和する空間』をつくる魔法、っていうのは、普通だと、あたしに魔法を教えてくれるような、そんなレベルの魔法使いだけしか使えないの」
 つまり、大山さんはそういうレベルの魔法使いである、ということなのだろう。
 この間聞いた、魔法使いの年齢云々という話から総合すると、イメージとしては、小学生が大学卒業程度の学力をもっている、とでもなるのだろうか。ぼくがそう問うと、
「あ、それが一番近いかもね」宮島はそれを肯定し、あらためて大山さんに目を向けた。「何をどうしたら、そんな化け物みたいな魔法使いになれるわけ?」
「おれに聞くなよ。おれだって、あとで『新米』魔法使いの平均年齢を聞いてたまげたんだから」大山さんは憮然と応え、そしてすぐに表情を引き締めた。
「ま、それはそれとして、だ。奴は宮島のそばを離れることはできない、っていう話しだから、宮島が魔法を中和する場の中に入れば、隠れていられないはずだからな。そうしたら……」
 奴を捕獲する。大山さんは力強くいった。

 ぼくらは、大山さんの案内で、駅から数分のところにある住宅街に入っていった。間に、トンネルを一つ挟んでいるせいだろうか。電車でほんの二十分程度の距離の場所のはずなのに、このあたりはずいぶんと家が密集しているうえ、道も入り組んでいる。こりゃ、絶対に帰り道を覚えていられないな。大山さんの背中を見ながら、ぼくはそんなことを考えていた。
 しばらく歩いてごみごみした住宅街を抜けると、目の前に畑が広がっており、ちょうどその畑と住宅地の境界線のようになっているプレハブの建物があった。「**建設株式会社 資材倉庫」という看板のかかっているその建物が、どうやら目的地のようだった。
 大山さんは、いかにもここに通い慣れている、といった様子でプレハブの裏に回り、そこで立ち止まった。
 そこは、一見、なんの変哲もない場所のように見えた。ぐるりとあたりを見回せば、右手に畑、左手に住宅街。とてもこんな場所に、魔法使いの「秘密の地下室」があるようには見えない。ぼくはちょっとどきどきしながら、大山さんが地下室への扉かなにかを、呪文を唱えて出現させるのを、期待して待った。
 けれども。
「峰岸、しばらく、目を閉じててくれ」大山さんの言葉の意味を理解するのに、数瞬が必要だった。
 そんなぁ。ぼくはいいたくなるのをどうにかこらえた。せっかく、宮島の使うような中途半端なものではなく、本物の魔法が見れると思っていたのに。それなのに、「目を閉じていろ」だなんて。
 きっと、その不満が顔に出ていたのだろう。大山さんは苦笑しながら、「どうしても、っていうんなら、目を開けててもいいけどな。たぶん、見ない方がいいと思うけどな。なあ、宮島?」宮島に同意を求める。
 大山さんのいっていることの意味が理解できるのだろう。「あ、うん。ちょっと、あれはきついかも」彼女も、素直に大山さんの言葉に同意した。大山さんと宮島のやりとりに、ぼくは、ほんの少し、疎外感を感じている自分に気づいていた。
 結局ぼくは、二人の言葉に従うことにして、大山さんがいいというまで、目を閉じていることにした。目を閉じて待つことしばし。大山さんが呪文を唱える声が聞こえ、やがてそれがとぎれると、ぼくを奇妙な浮遊感がおそった。初めて宮島と会ったときに、彼女に飲まされた空を飛ぶための薬。あれを飲んだときの、奇妙なふわふわした感触。
 それは、そう長くは続かなかった。
「目を開けていいぞ」大山さんの言葉が聞こえ、ぼくはその言葉に従った。
「秘密の地下室」なんていうくらいだから、薄暗い、じめっとした雰囲気の場所を想像していたのだけれども、思っていたよりもそこは明るく、空気も澄んでいた。ふと、この明かりの光源が気になって、ぼくは天井を見上げた。
 天井には照明器具のようなものはとりつけられておらず、天井それ自体が発光している。そういうあたりが、いかにも「魔法使いの部屋」っぽくて、ちょっと、うれしくなった。うれしいついでにぐるりと当たりを見回してみると、こちらはちょっと物足りないことに、カエルの干物や鶏の生き血、そしてそれを煮込むための大鍋、といったあやしげなものは一切なく、部屋の中は、ずいぶんと殺風景だった。この部屋の中にあるものといえば、せいぜい、大きな事務机と、いす。事務机のそばには、どこから電気をとっているのか、CDラジカセが一台、無造作におかれていた。
 ぼくが立っているところから見て奥の壁に、扉が一つついている。大山さんはそちらへ向かって、「峰岸、宮島、こっちだ」ぼくらに声をかけ、歩き出した。
 ぼくらは素直にその言葉に従い、扉の向こうに消えた大山さんのあとを追った。
 大山さんが開けっぱなしにしておいた扉から中を覗くと、こちらもまた、今ぼくらがいる部屋と同じくらいに、殺風景な部屋。ただちょっと違うのは、部屋の四隅に、なにか奇妙な模様が描かれているということ。これが、きっと大山さんのいっていた「魔法を中和する空間」を作り出すためのものなのだろう。
 まずぼくがその部屋に入り、続いて宮島が、まず扉の向こうで部屋の中をぐるりと眺め、それから、ゆっくりと、部屋に足を踏み入れた。そして、宮島の身体がすべて、部屋の中にはいったそのとき、甲高い悲鳴が上がった。
 そして、それとほぼ同時に、大山さんがぼくに向かって大声を上げる。「峰岸! ドアを閉めるんだ! 急げ!」
 何が何やらわからぬままに、けれどもぼくは反射的に、いわれたとおりに行動していた。宮島が入ってきたばかりのドアに駆け寄り、力一杯ドアを閉じる。同時に、ばしん! と、ドアになにかがぶつかる音がして、ぼくの足下にその、ドアに激突したなにかが墜落する。
 なんだ、これ?
 驚いている間もなく、後ろから、大山さんの声が聞こえた。
 「そこまでだ。観念しろ、魔法使いヤーナス!」
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