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第二話 由姫
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すがすがしい朝だ。おじさんが俺に用意してくれた部屋は風通しがよく、ありがたいことに「部屋の熱気で目が覚める」という、最悪の目覚めはなかった。
目覚まし時計を見てみると、まだ朝の六時にもなっていない。自分の家で生活しているときには考えられないような起床時間に自分自身で苦笑して、俺は布団から出ると、タオルケットと敷き布団をたたんだ。
そのままぼうっとしているのも、なんだかもったいない気がして、俺は部屋を出て、茶の間へ向かった。
台所のほうでなにか音がしていたのでそちらを覗いてみると、おばさんが朝食の用意をしていた。
「おはようございます」声をかけると、
「あら、もう起きたの? もっとゆっくりしていればいいのに」
おばさんは俺のほうに目を向け、まだしばらく食事にはならないから、テレビでも見て時間をつぶしていてくれ、といった。
「はい」
俺は応え、茶の間のほうへ行きかけたけれども、思い直して外に出てみることにした。
「ちょっと、外、ぶらぶらしてきてもいいですか?」
「ええ、どうぞ。あんまり遠くまでいって、迷子にならないでね。あ、朝御飯は七時半くらいからだから、その頃には家に帰ってくるようにしてね」
「はい、わかりました」
応えて、俺は玄関へ向かった。
いい天気だ。真っ青な空と、澄んだ空気。そして白い雲と、緑が真っ盛りの山。土砂の採取でもしているのか、ちょっと遠くに見える山の地肌がむき出しになっている。家の玄関先で大きく伸びをした俺は、すぐ足下で、ゴンベエが丸くなっているのに気付いた。
……一人でそこら辺をぶらぶらするのもなんだしな。俺は玄関の中へ引き返すと、
「ついでだから、ゴンベエ、散歩させますね」
台所のおばさんに向かって声をかけた。
「いいのよ、別に。そんなことしなくても」
おばさんはそういったけれども、「いえ、別に、ついでだから」応えて、俺は再び玄関先に戻った。
「ゴンベエ」
声をかけると、柴犬系列の雑種らしい、やや小柄な、明るい茶色の犬は、ぴくん、とこちらに目を向けた。
「散歩、行くか?」
「あん!」
……もしかしたら、本当にこの犬、俺のいっていることがわかっているのだろうか? 景気のいい返事をしたゴンベエをつないでいる鎖を手にとって、俺はゴンベエと一緒に、朝の田舎道を歩き出した。
ラジオ体操に向かう小学生だろうか。はがき大の紙を、ひもで首からぶら下げた何人かの子どもたちとすれ違った。ふと俺は、椿さんや柊子も、小学生の頃はこんなふうにラジオ体操に通っていたのかな、なんてことを想像してしまった。
少し歩くと、十字路にぶつかった。右か、左か、まっすぐか。
「ゴンベエ、どっちに行く?」
問うと、ゴンベエは俺のほうを向き、「あん!」と一声なくと、道を左に折れた。このあたりの地理には不案内なので、俺は素直にゴンベエの案内に従うことにして、道を左に曲がった。
どうやら、この近くでラジオ体操をやっているらしい。ラジオ体操の出席カードを持った小学生の姿がちらほらと見えるようになってきた。
そんな中を、俺とゴンベエはのんびりと歩いていく。そうしてしばらく道なりに歩いていると、左手に雑木林が見えた。その雑木林に向かっているらしい道路は、途中から砂利を敷き詰めた道に変わっている。
「ゴンベエ、あっちに行ってみるか?」
俺の言葉に、ゴンベエは素直に従ってくれた。一度、「迷子になるなよ」とでもいうかのように俺のほうをちらりと見て、雑木林に向かって歩き出す。そのゴンベエに歩調を合わせて、俺はその砂利道を歩いていった。
雑木林は、思っていたよりも近くにあった。俺たちはすぐに雑木林に到着し、ゴンベエは「これからどうするんだ?」と、俺のほうに目を向けた。
「そう急かすなよ」
俺はゴンベエに苦笑を返して何気なしに雑木林の奥に目を向け……そしてそこから、目をそらすことができなくなった。
彼女が、いた。
それも、驚くほど近くに。
気がつかなければそのまま見落としてしまいそうなくらいにごく自然に、数メートル向こうの杉の木に、背をもたれている。
長い黒髪。よく整った目鼻立ち。
それは見間違えようもなく、昨日、おじさんの運転する車の中から見た、彼女だった。
今の彼女は、見るからに暑そうなセーラー服ではなく、Tシャツにジーンズという、ごくありふれた格好だった。
彼女はあまり感情を感じさせることのない表情で、じっと、俺を見つめていた。そして、俺もまた、思わぬところで「再会」を果たした彼女の顔を、ぽかんと見つめていた。
いったい、どのくらいそうしていたのだろう。
ふと我に返ると、遠くから風に乗って、「ラジオ体操第一」が、細切れに聞こえてきた。
細切れの「ラジオ体操第一」をBGMに、彼女は
「おはよう」
といった。
「あ、ああ。おはよう」
一瞬。彼女が俺に声をかけてきたのだ、ということが理解できず、彼女の言葉に応えるまでに、少しの間があいてしまった。
彼女は、木の幹から身体を離し、ゆっくりと、俺のほうへ歩み寄ってくる。そして彼女は、ごく間近なところで立ち止まった。
「あまり見ない顔だな。ここの人間じゃないな?」
彼女は問うた。
「あ、ああ」
俺がうなずくと、彼女は、
「私は、ユキ。お前は?」
「俺は……将臣。志賀将臣」
「……マサオミか。いい名だな」
そういって、ユキは笑った。
「……ユキって、どういう字を書くんだ?」
俺が問うと、彼女はちょっと苦笑しながら、
「自由の由に、姫、だ」
由姫。その名前は、彼女のイメージにしっくりとくる。
「マサオミ、お前は?」
俺が頭の中で彼女の名前を漢字に変換し終わったちょうどそのタイミングで、今度は彼女が問うてきた。
「あ、俺は……。将軍の将に、大臣の臣」
「将臣、だな。覚えておこう」
そういって、由姫はうなずいた。そのまま、少しの間、奇妙な沈黙が続いた。互いに名前を教えあって、そこから先、次に話すべき「共通の話題」が見つからなかったのだ。
ぱっと見た限りでは同じくらいの歳……セーラー服を着ていたのだから、少なくとも学生ではあるはずだ……のはずなのに、なぜか彼女と気軽に世間話をしてみようとか、そんな気分にはならなかった。
結果として俺たちは、ただ押し黙ったまま、じっと互いを見つめ合っていた。
けれども。
先に口を開いたのは、由姫だった。
「どうした? そんなに、私の顔が珍しいか?」
ちょっといたずらな笑みを浮かべて、由姫は俺に問うた。
「あ、いや……」俺はあわてて、由姫から目をそらした。奇妙な照れくささを感じてしまい、それをごまかすために、俺はふと思いついたことを問うた。
「そういえば……、昨日、俺を見ていなかったか?」
由姫の目が、わずかに大きくなった。けれどもすぐに、その表情に、何かを楽しむような笑みが浮かぶ。
「私が、見えたのか?」
「俺の勘違いじゃなきゃ、な」
ほお、と、由姫は興味深そうにうなずき、「まだ、『先祖返り』はある、ということか」小さくつぶやいた。
先祖返り?
一瞬。俺の心臓がどきんとはねた。
頭の中を横切っていく、昨日のじいちゃんの昔話。
俺のそんな精神状態など関知した様子もなく、由姫は「さっき、お前はここの者ではない、といったな? 誰か、親戚にここの人間はいるのか?」
俺はゆっくりとうなずいた。「母さんが、ここの出身だ」
「なるほど」由姫はうなずいた。
「じゃあ、将臣。お前は鬼の話しを知っているか?」
「昨日聞いた」
「そうか」由姫はうなずき、「なら、話は早いな。私は、鬼だ」
まるで、「ぼくは日本人です」とか「私は札幌に住んでいます」とか、そんなことをいっているような気軽さで、彼女はその事実を告げた。
少しの間。彼女の言葉にどう反応していいかわからずに、俺は呆然と彼女の顔を見つめていた。
「お……に?」
ようやくのことで、それだけの言葉を絞り出すと、由姫は楽しそうにくすくすと笑い、「そう、鬼」と、うなずいた。
「別に驚くことでもないだろう? お前だって、鬼の血を引いているんだから」
いいながら、由姫は足下に転がっていた小石を拾い上げた。そして彼女は、その小石を手にした右手で、林のそばの田んぼのほうを指さし、
「あっちに向かって、投げてみろ」
と、その小石を差し出した。成り行きに流されるままにその小石を受け取った俺は、けれどもぐずくぐずと、小石と由姫とを見比べていた。
「早くしろ。愚図は嫌いだ」
そんな俺に見かねたのか、由姫は冷たい声でいった。
「……あ、ああ」
俺は曖昧にうなずいて、先ほど由姫が指さしたほうに向かって、その石を軽く放り投げた。……少なくとも、俺はそのつもりだった。
ごうっ、とうなりをあげて、その石は遥か彼方まですっ飛んでいった。
……嘘だろ、おい?
今年の春の体育でやった砲丸投げの成績は、ごく平均的なレベルだったはずだ。いくらなんでも、石ころ一つがあんな遠くまで飛んでいくものか。
……まて。
なんで俺は、その遥か彼方まですっ飛んでいく石を、いつまでも目で追っていることができるんだ? なんであんな距離のところにある、小さな石ころを認識しているんだ?
自分の変化に、俺はいい知れぬ悪寒を感じた。
と。
「おー、よく飛ぶものだな」
俺の心境とはまったく正反対の、何かを楽しんでいるような声が、俺の隣で聞こえた。そちらに目を向けてみると、左手でひさしをつくった由姫が、俺の投げた石を目で追っている。
やがて彼女は石を見失ったのか、それとも石に興味を失くしたのか、あるいは俺の視線に気付いたのか。俺のほうに目を向けた。
「いや、これは近年まれにみる逸材だな」
「まれにみるって……」
言葉を失った俺に、さも楽しそうに、由姫は笑った。
「安心しろ。私がそばにいるから、お前の中に流れている鬼の血が活性化しただけだ。私と離れて少しすれば、また元通りになっている」
い、いや。そういう問題じゃなくって……。
「……普通は、ちょっと感覚が敏感になるとか、その程度なんだがな。お前は、身体の能力まで鬼に近づくみたいだな。……それだけ、お前の中の鬼の血が濃い、ということなんだろう」
そういって、由姫は少し何かを考えるような仕草をみせた。
「そうだな。そのうちに暇な時間ができたら、あそこの……」と、彼女は少し遠くに見える、このあたりで一番高い山を指さした。
「山に来るといい。私は、あそこに住んでいるから」
「あ、ああ」
つい、俺はうなずいてしまった。
「それから……。明日も、この時間にここに来い。待っていてやろう」
彼女はにこりと笑った。
「では、私もあまり暇ではないのでな。そろそろ山に戻るぞ」
そういって、彼女は俺に背中を見せて、林のほうへすたすたと歩き始めた。その背中越しに、俺は思わず彼女に声をかけてしまっていた。……声をかけずにはいられなかった。
「なあ、由姫」
「なんだ?」
由姫は、立ち止まって振り返った。そうされてしまったあとで、俺は何がいいたくて彼女を呼び止めたのか、まったく何も考えていないことに気付いてしまった。
……何でもいい、とりあえず、何かいわなければ。
焦った俺の口からでたのは、
「じゃ、またな」
という、ごくありふれた言葉でしかなかった。
由姫はくすりと微笑み、「ああ。じゃあ、また明日」と応え、今度こそ、そこから歩み去ってしまった。
由姫の姿が林の木の間に隠れたのを確認して、俺はゴンベエに目を向けた。
「ゴンベエ、帰るか?」
柴犬系の小柄な雑種犬は、「あん!」と、一声ないた。
おじさんの家に帰ると、家の庭で柊子が、プランターに植えられている花に水をやっていた。柊子は俺の姿を認めると、
「あ、おかえり。ご苦労様」
と、声をかけてきた。
ゴンベエを玄関先につなぎ、家の中に入る。それから少し遅れて、花の水やりを終えた柊子が家の中に入ってきた。時刻は六時四十五分。
「朝、早いんだな、柊子。いつもこのくらいなのか?」
「まあね。そういう将臣くんは? やけに早かったみたいだけど」
「休みの日は、いつもはもっと遅いんだけどな。なんか、今日はたまたま目が覚めた」
ふうん、と、柊子はうなずいた。
「そういえばさ、将臣くん、昨日のおじいちゃんの話、覚えてる?」
「え? 鬼の話か?」
「うん。……あの話、どう思った?」
今さっき、その「鬼」と言葉を交わし、おまけに明日の朝、もう一度会う約束を取り付けてきた、なんてことはさすがにいえず、俺は
「どうって?」
と、逆に問い返した。
「あの話、ほんとだと思う?」
柊子は、ひどくまじめくさった顔で問うた。
「どうなんだろうな?」
白々しく、俺は言葉を返した。由姫自身は、自分のことを他の人にいうなとも、いっていい、ともいっていない。だからもしかしたら、ここで俺は、柊子に由姫のことを話してもいいのかも知れない。けれども。
なぜか俺は、そうする気にはなれなかった。由姫のことは、軽々しく口に出してはいけないような気がしたのだ。
「本当だったら、おもしろいんじゃないのか? 鬼の家系、なんて」
「じゃあ……たとえば。……たとえば、だけど」
いやに「たとえば」を強調して、柊子は何かをいいかけたけれども。
「柊子」
いつの間に、そこにいたのだろう。ふと気づくと、椿さんが茶の間の入り口のところで、俺たちのほうを見ていた。俺と柊子は、同時に椿さんのほうへ目を向けた。
「将臣さんはお客さんなんだから。あんまり変なこといって、困らせちゃだめよ」
「でも……」
柊子の目に、明らかな不安が宿っている。そんな柊子に、椿さんは優しく微笑みかけた。
「大丈夫よ。何も心配することなんてないんだから」
その二人が言葉を交わしている様子を見ながら、俺は二人に声をかけた。
「なあ、椿さん、柊子」
「はい?」
「なに?」
二人は同時に俺のほうを見た。
「隠し事したいんだったら、俺のいないところで相談したほうがいいんじゃない? なんか、そんなに心配するようなことでもあるわけ?」
二人はぽかんと俺のほうを見つめ、そして互いに目配せを交わすと、同時に苦笑した。
「そっ、そうよね。将臣くんに隠しておかなきゃいけないことを、将臣くんの目の前でしゃべっちゃえば、なんにもなんないもんね」
引きつった笑いを浮かべながら柊子はいい、そのあとを椿さんが引き継いだ。
「……別にね、そんなに心配するようなことじゃないのよ。けど……」
「けど?」
言葉に詰まった椿さんの先をうながす。椿さんは周りをきょろきょろと見回し、声を潜めた。
「あんまり、大声で話せる内容でもないから、外に行きましょう」
「外?」
椿さんはこくんとうなずいた。「この時間なら、外を出歩いてる人、あんまり多くないから。庭を見るふりでもしながら……」
「わかった」
俺はうなずいて、椿さん、柊子とともに外に出た。
しばらくの間、何かをためらった後で、ようやく椿さんは口を開いた。
「ええと、ね。昨日のおじいちゃんの話で、山に住んでいた鬼が、二手に分かれたって話をしたでしょう?」
「うん」
「そのときにね、鬼の中に占い師みたいな人がいて、その人が『将来、純粋な鬼が、人の血を引く鬼を滅ぼすだろう』っていう予言をしたんですって」
……なるほどね。純粋な鬼、つまり人間と交わることを選ばず、鬼の里に引きこもった鬼たちが、この集落の人たちを滅ぼす、っていうことか。
……あれ?
「でも、昨日はじいちゃん、そんな話は一言もいってなかったよな?」
「うん」とうなずいたのは、柊子だった。「これね、私たちの家にだけ伝わっている秘密だから、誰にも話すな、って」
なるほど。それで、じいちゃんはよそ者の俺にはその話を教えてくれず、椿さんや柊子も、こうして辺りをはばかりながら、こうして説明している、ということなのか。
「でも、それっていつ頃か、ってこともわかっていないんだろ? だったら、そんなに柊子が怖がる必要もないんじゃないのか?」
俺の言葉に、椿さんが苦笑いを浮かべながら、首を横に振った。
「期日もね、はっきり切ってあるの。……今年の、里降り祭りの日。今週の土曜日なのよ」
目覚まし時計を見てみると、まだ朝の六時にもなっていない。自分の家で生活しているときには考えられないような起床時間に自分自身で苦笑して、俺は布団から出ると、タオルケットと敷き布団をたたんだ。
そのままぼうっとしているのも、なんだかもったいない気がして、俺は部屋を出て、茶の間へ向かった。
台所のほうでなにか音がしていたのでそちらを覗いてみると、おばさんが朝食の用意をしていた。
「おはようございます」声をかけると、
「あら、もう起きたの? もっとゆっくりしていればいいのに」
おばさんは俺のほうに目を向け、まだしばらく食事にはならないから、テレビでも見て時間をつぶしていてくれ、といった。
「はい」
俺は応え、茶の間のほうへ行きかけたけれども、思い直して外に出てみることにした。
「ちょっと、外、ぶらぶらしてきてもいいですか?」
「ええ、どうぞ。あんまり遠くまでいって、迷子にならないでね。あ、朝御飯は七時半くらいからだから、その頃には家に帰ってくるようにしてね」
「はい、わかりました」
応えて、俺は玄関へ向かった。
いい天気だ。真っ青な空と、澄んだ空気。そして白い雲と、緑が真っ盛りの山。土砂の採取でもしているのか、ちょっと遠くに見える山の地肌がむき出しになっている。家の玄関先で大きく伸びをした俺は、すぐ足下で、ゴンベエが丸くなっているのに気付いた。
……一人でそこら辺をぶらぶらするのもなんだしな。俺は玄関の中へ引き返すと、
「ついでだから、ゴンベエ、散歩させますね」
台所のおばさんに向かって声をかけた。
「いいのよ、別に。そんなことしなくても」
おばさんはそういったけれども、「いえ、別に、ついでだから」応えて、俺は再び玄関先に戻った。
「ゴンベエ」
声をかけると、柴犬系列の雑種らしい、やや小柄な、明るい茶色の犬は、ぴくん、とこちらに目を向けた。
「散歩、行くか?」
「あん!」
……もしかしたら、本当にこの犬、俺のいっていることがわかっているのだろうか? 景気のいい返事をしたゴンベエをつないでいる鎖を手にとって、俺はゴンベエと一緒に、朝の田舎道を歩き出した。
ラジオ体操に向かう小学生だろうか。はがき大の紙を、ひもで首からぶら下げた何人かの子どもたちとすれ違った。ふと俺は、椿さんや柊子も、小学生の頃はこんなふうにラジオ体操に通っていたのかな、なんてことを想像してしまった。
少し歩くと、十字路にぶつかった。右か、左か、まっすぐか。
「ゴンベエ、どっちに行く?」
問うと、ゴンベエは俺のほうを向き、「あん!」と一声なくと、道を左に折れた。このあたりの地理には不案内なので、俺は素直にゴンベエの案内に従うことにして、道を左に曲がった。
どうやら、この近くでラジオ体操をやっているらしい。ラジオ体操の出席カードを持った小学生の姿がちらほらと見えるようになってきた。
そんな中を、俺とゴンベエはのんびりと歩いていく。そうしてしばらく道なりに歩いていると、左手に雑木林が見えた。その雑木林に向かっているらしい道路は、途中から砂利を敷き詰めた道に変わっている。
「ゴンベエ、あっちに行ってみるか?」
俺の言葉に、ゴンベエは素直に従ってくれた。一度、「迷子になるなよ」とでもいうかのように俺のほうをちらりと見て、雑木林に向かって歩き出す。そのゴンベエに歩調を合わせて、俺はその砂利道を歩いていった。
雑木林は、思っていたよりも近くにあった。俺たちはすぐに雑木林に到着し、ゴンベエは「これからどうするんだ?」と、俺のほうに目を向けた。
「そう急かすなよ」
俺はゴンベエに苦笑を返して何気なしに雑木林の奥に目を向け……そしてそこから、目をそらすことができなくなった。
彼女が、いた。
それも、驚くほど近くに。
気がつかなければそのまま見落としてしまいそうなくらいにごく自然に、数メートル向こうの杉の木に、背をもたれている。
長い黒髪。よく整った目鼻立ち。
それは見間違えようもなく、昨日、おじさんの運転する車の中から見た、彼女だった。
今の彼女は、見るからに暑そうなセーラー服ではなく、Tシャツにジーンズという、ごくありふれた格好だった。
彼女はあまり感情を感じさせることのない表情で、じっと、俺を見つめていた。そして、俺もまた、思わぬところで「再会」を果たした彼女の顔を、ぽかんと見つめていた。
いったい、どのくらいそうしていたのだろう。
ふと我に返ると、遠くから風に乗って、「ラジオ体操第一」が、細切れに聞こえてきた。
細切れの「ラジオ体操第一」をBGMに、彼女は
「おはよう」
といった。
「あ、ああ。おはよう」
一瞬。彼女が俺に声をかけてきたのだ、ということが理解できず、彼女の言葉に応えるまでに、少しの間があいてしまった。
彼女は、木の幹から身体を離し、ゆっくりと、俺のほうへ歩み寄ってくる。そして彼女は、ごく間近なところで立ち止まった。
「あまり見ない顔だな。ここの人間じゃないな?」
彼女は問うた。
「あ、ああ」
俺がうなずくと、彼女は、
「私は、ユキ。お前は?」
「俺は……将臣。志賀将臣」
「……マサオミか。いい名だな」
そういって、ユキは笑った。
「……ユキって、どういう字を書くんだ?」
俺が問うと、彼女はちょっと苦笑しながら、
「自由の由に、姫、だ」
由姫。その名前は、彼女のイメージにしっくりとくる。
「マサオミ、お前は?」
俺が頭の中で彼女の名前を漢字に変換し終わったちょうどそのタイミングで、今度は彼女が問うてきた。
「あ、俺は……。将軍の将に、大臣の臣」
「将臣、だな。覚えておこう」
そういって、由姫はうなずいた。そのまま、少しの間、奇妙な沈黙が続いた。互いに名前を教えあって、そこから先、次に話すべき「共通の話題」が見つからなかったのだ。
ぱっと見た限りでは同じくらいの歳……セーラー服を着ていたのだから、少なくとも学生ではあるはずだ……のはずなのに、なぜか彼女と気軽に世間話をしてみようとか、そんな気分にはならなかった。
結果として俺たちは、ただ押し黙ったまま、じっと互いを見つめ合っていた。
けれども。
先に口を開いたのは、由姫だった。
「どうした? そんなに、私の顔が珍しいか?」
ちょっといたずらな笑みを浮かべて、由姫は俺に問うた。
「あ、いや……」俺はあわてて、由姫から目をそらした。奇妙な照れくささを感じてしまい、それをごまかすために、俺はふと思いついたことを問うた。
「そういえば……、昨日、俺を見ていなかったか?」
由姫の目が、わずかに大きくなった。けれどもすぐに、その表情に、何かを楽しむような笑みが浮かぶ。
「私が、見えたのか?」
「俺の勘違いじゃなきゃ、な」
ほお、と、由姫は興味深そうにうなずき、「まだ、『先祖返り』はある、ということか」小さくつぶやいた。
先祖返り?
一瞬。俺の心臓がどきんとはねた。
頭の中を横切っていく、昨日のじいちゃんの昔話。
俺のそんな精神状態など関知した様子もなく、由姫は「さっき、お前はここの者ではない、といったな? 誰か、親戚にここの人間はいるのか?」
俺はゆっくりとうなずいた。「母さんが、ここの出身だ」
「なるほど」由姫はうなずいた。
「じゃあ、将臣。お前は鬼の話しを知っているか?」
「昨日聞いた」
「そうか」由姫はうなずき、「なら、話は早いな。私は、鬼だ」
まるで、「ぼくは日本人です」とか「私は札幌に住んでいます」とか、そんなことをいっているような気軽さで、彼女はその事実を告げた。
少しの間。彼女の言葉にどう反応していいかわからずに、俺は呆然と彼女の顔を見つめていた。
「お……に?」
ようやくのことで、それだけの言葉を絞り出すと、由姫は楽しそうにくすくすと笑い、「そう、鬼」と、うなずいた。
「別に驚くことでもないだろう? お前だって、鬼の血を引いているんだから」
いいながら、由姫は足下に転がっていた小石を拾い上げた。そして彼女は、その小石を手にした右手で、林のそばの田んぼのほうを指さし、
「あっちに向かって、投げてみろ」
と、その小石を差し出した。成り行きに流されるままにその小石を受け取った俺は、けれどもぐずくぐずと、小石と由姫とを見比べていた。
「早くしろ。愚図は嫌いだ」
そんな俺に見かねたのか、由姫は冷たい声でいった。
「……あ、ああ」
俺は曖昧にうなずいて、先ほど由姫が指さしたほうに向かって、その石を軽く放り投げた。……少なくとも、俺はそのつもりだった。
ごうっ、とうなりをあげて、その石は遥か彼方まですっ飛んでいった。
……嘘だろ、おい?
今年の春の体育でやった砲丸投げの成績は、ごく平均的なレベルだったはずだ。いくらなんでも、石ころ一つがあんな遠くまで飛んでいくものか。
……まて。
なんで俺は、その遥か彼方まですっ飛んでいく石を、いつまでも目で追っていることができるんだ? なんであんな距離のところにある、小さな石ころを認識しているんだ?
自分の変化に、俺はいい知れぬ悪寒を感じた。
と。
「おー、よく飛ぶものだな」
俺の心境とはまったく正反対の、何かを楽しんでいるような声が、俺の隣で聞こえた。そちらに目を向けてみると、左手でひさしをつくった由姫が、俺の投げた石を目で追っている。
やがて彼女は石を見失ったのか、それとも石に興味を失くしたのか、あるいは俺の視線に気付いたのか。俺のほうに目を向けた。
「いや、これは近年まれにみる逸材だな」
「まれにみるって……」
言葉を失った俺に、さも楽しそうに、由姫は笑った。
「安心しろ。私がそばにいるから、お前の中に流れている鬼の血が活性化しただけだ。私と離れて少しすれば、また元通りになっている」
い、いや。そういう問題じゃなくって……。
「……普通は、ちょっと感覚が敏感になるとか、その程度なんだがな。お前は、身体の能力まで鬼に近づくみたいだな。……それだけ、お前の中の鬼の血が濃い、ということなんだろう」
そういって、由姫は少し何かを考えるような仕草をみせた。
「そうだな。そのうちに暇な時間ができたら、あそこの……」と、彼女は少し遠くに見える、このあたりで一番高い山を指さした。
「山に来るといい。私は、あそこに住んでいるから」
「あ、ああ」
つい、俺はうなずいてしまった。
「それから……。明日も、この時間にここに来い。待っていてやろう」
彼女はにこりと笑った。
「では、私もあまり暇ではないのでな。そろそろ山に戻るぞ」
そういって、彼女は俺に背中を見せて、林のほうへすたすたと歩き始めた。その背中越しに、俺は思わず彼女に声をかけてしまっていた。……声をかけずにはいられなかった。
「なあ、由姫」
「なんだ?」
由姫は、立ち止まって振り返った。そうされてしまったあとで、俺は何がいいたくて彼女を呼び止めたのか、まったく何も考えていないことに気付いてしまった。
……何でもいい、とりあえず、何かいわなければ。
焦った俺の口からでたのは、
「じゃ、またな」
という、ごくありふれた言葉でしかなかった。
由姫はくすりと微笑み、「ああ。じゃあ、また明日」と応え、今度こそ、そこから歩み去ってしまった。
由姫の姿が林の木の間に隠れたのを確認して、俺はゴンベエに目を向けた。
「ゴンベエ、帰るか?」
柴犬系の小柄な雑種犬は、「あん!」と、一声ないた。
おじさんの家に帰ると、家の庭で柊子が、プランターに植えられている花に水をやっていた。柊子は俺の姿を認めると、
「あ、おかえり。ご苦労様」
と、声をかけてきた。
ゴンベエを玄関先につなぎ、家の中に入る。それから少し遅れて、花の水やりを終えた柊子が家の中に入ってきた。時刻は六時四十五分。
「朝、早いんだな、柊子。いつもこのくらいなのか?」
「まあね。そういう将臣くんは? やけに早かったみたいだけど」
「休みの日は、いつもはもっと遅いんだけどな。なんか、今日はたまたま目が覚めた」
ふうん、と、柊子はうなずいた。
「そういえばさ、将臣くん、昨日のおじいちゃんの話、覚えてる?」
「え? 鬼の話か?」
「うん。……あの話、どう思った?」
今さっき、その「鬼」と言葉を交わし、おまけに明日の朝、もう一度会う約束を取り付けてきた、なんてことはさすがにいえず、俺は
「どうって?」
と、逆に問い返した。
「あの話、ほんとだと思う?」
柊子は、ひどくまじめくさった顔で問うた。
「どうなんだろうな?」
白々しく、俺は言葉を返した。由姫自身は、自分のことを他の人にいうなとも、いっていい、ともいっていない。だからもしかしたら、ここで俺は、柊子に由姫のことを話してもいいのかも知れない。けれども。
なぜか俺は、そうする気にはなれなかった。由姫のことは、軽々しく口に出してはいけないような気がしたのだ。
「本当だったら、おもしろいんじゃないのか? 鬼の家系、なんて」
「じゃあ……たとえば。……たとえば、だけど」
いやに「たとえば」を強調して、柊子は何かをいいかけたけれども。
「柊子」
いつの間に、そこにいたのだろう。ふと気づくと、椿さんが茶の間の入り口のところで、俺たちのほうを見ていた。俺と柊子は、同時に椿さんのほうへ目を向けた。
「将臣さんはお客さんなんだから。あんまり変なこといって、困らせちゃだめよ」
「でも……」
柊子の目に、明らかな不安が宿っている。そんな柊子に、椿さんは優しく微笑みかけた。
「大丈夫よ。何も心配することなんてないんだから」
その二人が言葉を交わしている様子を見ながら、俺は二人に声をかけた。
「なあ、椿さん、柊子」
「はい?」
「なに?」
二人は同時に俺のほうを見た。
「隠し事したいんだったら、俺のいないところで相談したほうがいいんじゃない? なんか、そんなに心配するようなことでもあるわけ?」
二人はぽかんと俺のほうを見つめ、そして互いに目配せを交わすと、同時に苦笑した。
「そっ、そうよね。将臣くんに隠しておかなきゃいけないことを、将臣くんの目の前でしゃべっちゃえば、なんにもなんないもんね」
引きつった笑いを浮かべながら柊子はいい、そのあとを椿さんが引き継いだ。
「……別にね、そんなに心配するようなことじゃないのよ。けど……」
「けど?」
言葉に詰まった椿さんの先をうながす。椿さんは周りをきょろきょろと見回し、声を潜めた。
「あんまり、大声で話せる内容でもないから、外に行きましょう」
「外?」
椿さんはこくんとうなずいた。「この時間なら、外を出歩いてる人、あんまり多くないから。庭を見るふりでもしながら……」
「わかった」
俺はうなずいて、椿さん、柊子とともに外に出た。
しばらくの間、何かをためらった後で、ようやく椿さんは口を開いた。
「ええと、ね。昨日のおじいちゃんの話で、山に住んでいた鬼が、二手に分かれたって話をしたでしょう?」
「うん」
「そのときにね、鬼の中に占い師みたいな人がいて、その人が『将来、純粋な鬼が、人の血を引く鬼を滅ぼすだろう』っていう予言をしたんですって」
……なるほどね。純粋な鬼、つまり人間と交わることを選ばず、鬼の里に引きこもった鬼たちが、この集落の人たちを滅ぼす、っていうことか。
……あれ?
「でも、昨日はじいちゃん、そんな話は一言もいってなかったよな?」
「うん」とうなずいたのは、柊子だった。「これね、私たちの家にだけ伝わっている秘密だから、誰にも話すな、って」
なるほど。それで、じいちゃんはよそ者の俺にはその話を教えてくれず、椿さんや柊子も、こうして辺りをはばかりながら、こうして説明している、ということなのか。
「でも、それっていつ頃か、ってこともわかっていないんだろ? だったら、そんなに柊子が怖がる必要もないんじゃないのか?」
俺の言葉に、椿さんが苦笑いを浮かべながら、首を横に振った。
「期日もね、はっきり切ってあるの。……今年の、里降り祭りの日。今週の土曜日なのよ」
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