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発砲とアグレッサー隊員

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 マサキとティナは取り敢えず落ち着く為に、ストバ(笑)のオープンカフェでお茶をしているが、二人とも今後の事や色々考える事が多く口数が少ない。
 マサキは煙草を口に加えてボーッとしている。
 そんなマサキを見て「マサキ灰落ちるよ!」とティナに注意され、灰皿に灰を落とした。

「服見に行くかぁ~?」

「うん。」
 余り嬉しそうでは無い返答が返って来た。
(そうだよな……それどころじゃ無いって言えば、それどころじゃ無いもんなぁ……)

 ローズの街は、流石ギルド本部があるだけあって、やはり主要都市らしく多種多様な人が道を行き来して居た。中でも軍人率がかなり多く見掛けられる。

「ここ、軍人多いな……」

「うん。やっぱ本部あるし司令部も有るからじゃないの?」
(あ~……納得……)

 マサキは隣のオープンカフェで話している輩が、さっきからキャイキャイと喋りまくってとてもうるさく気になっていた。
(るせぇなぁ~ペラペラ喋りがって……周りに気を使えないのか?ゴミが……)

「マサキ!ダメだって!顔こわいよ!」
 イラッとして居たのが顔に出ていたのかティナに指摘された。

「だって、うるさいじゃん。周りの迷惑も考えずに大声で話しててさ……」

「ほっときなって!!」
 
 ペラペラ話してる連中は男が二人に女四人である。
(全く……女三人集まれば姦しいと言うけど、ホントだよな……パリピかよ……ゴミが。)


「なんかさぁ、副隊長がさぁルーキー連れて来るとか言って無かったぁ?」
「あ~知ってる知ってる!」
「え?エビデンスは?」
「なんか、急にに隊長が移動したじゃん!その理由が、要はそのルーキーの引き抜きとか聞いたよ!」
「ウチらにルーキーとかマジウケるんですけどぉ~!」
「まぁ、副隊長には副隊長なりのイデオロギーがあるんだろうし…にしても、思いの外隊長はフレキシブルに行動するんだな。」
「で、でもさ、い、意外とマッチポンプ狙ってるんじゃないのかな?」
「そこはどうなんだろうね、彼には立場的にバイアス掛かってるんじゃないのかな?」
「あはは、超ウケるぅ~!」
「とは言えガバナンスする上で我々に一つもエクスキューズが無いのはどうかと思うけどね。」
「ウチらそんなにセンシティブじゃないっつーのwww」
「いや、でもエクスキューズ無しのプロセスで、我々のコンセンサスは取れないのでは?」
「その辺は隊長が隊のインフルエンサーだから問題無いっしょ!」


「ティナさんや……」

「何よ。」
 ティナも少しウンザリした顔でこちらを向く。

「アレ、同じ人種なのか?何を言ってるのか全く解らん。」

「大丈夫!私もさっぱり分からないから!」
 
(アレだよな…所謂意識高い系って奴か。マジウゼエ…異世界でもストバとか意識高い系が寄ってくるのか。マジゴミだわ。)
 顔を向けずに眼だけを向けると何故か向こうもこちらを見ていた。
(なんだ?ゴミに見られているぞ。あ、おらもゴミだった……)

「ちょっとおじさぁ~ん、さっきから何?何かウチらに用事あんの?」
(無視だ、無視。)
 マサキはコミュ障なのでこう言ったイレギュラーな事に弱い。
 落ち着く為に煙草に魔法で火を点けた。

「ちょっと!無視すんなよ!おっさん!」
「あははぁ~ビビってるぅ~!超ウケるんですけどぉ~!」
「やめたまえ君達、彼が困って居るじゃないか!」

(なに、この三文芝居は……)
 そう思って居ると一人の若い女がマサキの前に来て威勢よくオラついた。
「おっさん!無視すんなってんだろ!補聴器必要なのか?あはは!何見てんだか言えっつーの!」
(あ~……ギャルだ。ゴミギャルだ。)

「い、いや、何も……」
(取り敢えずティナは逃がさんと……)

「どもってるしぃ!超ウケるぅ~!」
「やめなってぇ~!相手おっさんだしビビってるんだからァ~!」
(止めろと言ってても顔は止めろの表情じゃ無いよな。)

「あ、すみません、我々の連れが絡んでしまいまして……」
 そう言ったのは長身で眼鏡を掛けている如何にも神経質そうな男だった。
(こいつはマトモなのか?)

「い、いや、大丈夫です。あはは!」
(人と話すの苦手なのに…何これ……)

「あ~あ……隊長が引き抜くって言うからどんな奴かと思えばこんなしょーもないおっさん何だもんなぁ…」
「それねぇ!もぅ興醒めも良いとこだってぇ~!」
「それね!ルーキーがおっさんって超ウケるんですけどぉ~!」

(え?何こいつら。もしかしてスチュアートさんの部下達か?てかしつこい……)

 突然ティナが立ち上がり
「マサキはしょうもなくなんか無いもん!」
と啖呵を切った。

「ぷぷぷ~!「もん!」とか超ウケるんですけどぉ!いつのアイドル?」
「いやいやこんなブスせいぜい地下アイドルがお似合いだよ!ケラケラ!」
(え?なんて?)
「何言ってんの可哀想じゃん!地下アイドルじゃなくて娼婦小屋のアイドルじゃん!ナンバーワンになれるよぉ~!」
(今、なんて言った?)
「お、おい!言い過ぎだぞ!やめろって!」
「大丈夫だってぇ、こんなおっさんとブス、武器も持ってないじゃん?ウチでも勝てるよ~ん!」

 既に遅かった。マサキの脳内でプチっと何かが爆ぜる音が聞こえた。
(自分の事だけ言われるのは仕方ないと思うが、自分と居ただけで、自分以外の事まで言われる事は許せなかった。)

「………………………………」

「あ、本当にすみません!ほらお前らも謝れよ!」
「何でウチらが謝んないと行けないの?先に見てたのはこのおっさんじゃん?」

「良いから謝れって!」

 マサキは無言でM360を背中から取り出し銃口を口の立つ女に向けた。

「謝れ。」
 マサキの眼の瞳孔が開いた。

「はぁっ?だからなんでウチらが謝んないと行けないんだっつーの!」

「ティナに謝れ。何度も言わせるな。ゴミが。」

「バカじゃんこのおっさん!頭おかしいんじゃないの?」

「マサキっ!」
 ティナはマサキの心配をしている訳ではなく、彼女らの心配をして居た。
 
(このクソアマ……ゴミはゴミに……)

パァァーッン!
その瞬間マサキは銃口を向けてる女を撃った。
 女は至近距離で撃たれた為、数歩後ろに歩き倒れた。
 驚いて振り返るもう一人のゴミ女に向けて
パァァーッン!
と続けて二発目を撃った。

「マサキ!だめ!殺しちゃだめだってぇ!」
 咄嗟にティナが腕を掴むが三発目を連続発射する。
パァァーッン!
 自分らに何が起きて居るのか解らないまま三人目のゴミ女がどうと地面に倒れる。

 「私は大丈夫だから、やめてって!」
 ティナは叫びながらマサキに訴えるが、その腕を振り払い四発目を残ったゴミ女にぶち込んだ。
パァァーッン!

「ちょ、あんた、何やってんだよ!」
 庇うように倒れている女共に近寄った長身の男が言った。

「あ?」

 男は撃たれた仲間の所へ行き治癒魔法を掛けている。

「大丈夫だって、死んでないから。ただのスライム弾だ。」
(こんな事も有ろうかと非致死性弾を装填しといて良かったぜ。)

「あんた、何やったのか解ってんのかよ!」
 怒気を含む言い方で長身の男が言った。

「あ・や・ま・れ。」
パァァーッン!
 躊躇なく男の腕を撃った。

「ぐっ!」
治癒魔法を途中で止め腕を抑えている。

「謝れ。」

 すると今まで黙って居た男が割って入って来た。
「この度の無礼、申し訳ありませんでした。」

「いや、お前には聞いてない。」
おもむろにM360のシリンダーを開き、全弾を再装填する。

「今はこの様な状態ですので自分が仲間を代表して謝罪致します。すみませんでした。」

「マサキ……もう良いって!」
 ティナは二度目だからなのか、それとも非致死性弾を使ったからなのか意外と普通だ。
 
「お前ら、俺らの事知っててわざとやったよな。」

「ええ、すみませんでした。エイドリアン隊長とスチュアート副隊長から少々小耳に挟んだもので、どんな人かと興味が湧いてこうなった次第ですが、悪ふざけが過ぎました。」

 オープンカフェは一時騒然となり、店員が駆け付けるも手の施しようがないと言った感じで呆然と立っている。他の客も遠巻きに事の行方を見ている感じだ。

「取り敢えず、椅子とテーブルを戻そう。」
マサキは銃を背中にしまい、その男に言った。

「わかりました。おい、アクセル!お前も手伝え!」
(あの長身はアクセルって言うのか。)

「こいつらまだ眼を覚まさないから……」
(何こいつ、まだ根に持ってんのか?自分らが火種巻いた癖に。)

「椅子に座らせときゃ勝手に目が覚める。」
 ボソッっとマサキが伝える。
 ティナも粛々と椅子やテーブル、散らばったコップ等を片付けている。そしていつの間にか店員も混ざって片付けをしている。
(あれ?俺、悪者扱い?ま、いいや……)



先程の騒然とした空気は無くなり、七人が二つのテーブルに着いて居るが、気絶している四人はテーブルに突っ伏している。

「御挨拶が遅れましたが、私は第一近衛兵隊大隊、第二教導アグレッサー部隊所属のスミス・E・ヒューストンと言います。」
「俺は同じくアグレッサー部隊のアクセル・R・ローズだ。」
(こいつらがアグレッサー隊員?マジかよ……)

「俺はクラタナ、マサキ。そしてこっちが……」
「ウェールズ・デ・マルティーニ・ティナです。」
(何この合コンみたいな自己紹介は……)

「この度はすみませんでした。」
とお通夜の様な雰囲気の中、スミスが口を開いた。

「ほら、お前も……」とアクセルに言っている。
「すみませんでした~。」
(え?謝って無いよなこいつ。口だけだよな。)
「馬鹿、真面目に謝れって!」
(あ~……スミスって奴はゴミ達のお守りか…大変だろうな……)

「あー……まぁ取り敢えずは良いって。それより……」

ホッとした感じでスミスの力が抜ける。それに対してアクセルは未だ反抗的な態度を取っていた。

「ふ~ん……」
(何こいつムカつく。マジムカつく。)
いつの間にかティナがマサキの腕を抑えていた。それを見てか、アクセルの表情が一瞬曇る。

「君さ……」とマサキはアクセルの方を向く。
「な、なんだよおっさん!」
少し身構えながらも挑発的な言葉を吐いた。

「初対面の相手に、その口の聞き方は無いんじゃ無いのかな?」

 ギクッとしてアクセルは眼をそらした。
「す、すみません。」

「次があったら殺す。」

「え?」
スミスとアクセルは、何を言われて居るのか解らない様な素っ頓狂な声を出した。

「殺すて……ははは!それはやりすぎでしょ!ははは……」
スミスとアクセルはチラッっとティナを見て、その表情が強ばって居るのを確かめ確信した。
「すみません……」

(マジ実弾で撃ってやろうかと思ったわ……)
ティナは未だ真剣な眼をして腕を抑えている。

「で、この状況をどうするつもり?」
マサキはいよいよめんどくさくなって来てスミスに投げた。

「いえ、どうもこうも無い次第で、彼女らが眼を覚まし次第撤収するつもりであります。」

「スミスさん、あのゴミ女共もまさかアグレッサー隊員?」

「そうです。また機会がある様なら、自分で自己紹介はして貰うとして彼女等も一応モアライダーのスキルを保有しております。」
(なるほどね。他の奴らには指導する立場だから、負け知らずだったんだな。それであんなになったのか。あれ、と言うよりキャバのナンバーワンがいきがるのと同じ感じだよなwwwワロス。)

「あのオラついてたゴミ女が一番モア扱うの上手いんじゃない?」

「あ、ええ、よく解りましたね…そうです、彼女がこの中では一番モアの扱いが上手くa取得も間近な人材です。……と、申し訳無いのですが、出来ればゴミ女と言うのはやめて頂きたいと思って居るのですが……」

「なんて?」

「いえ、だから彼女等の事をゴミ女と言うのはやめて欲しいとお願いして居るのですが……」

「まぁ、スミスさん、あんたに言っても仕方が無いけど、俺はさっき、そこの寝た振りしてる、ゴミ女に同じ様に仲間を侮辱されたんだよね。自分はしてもさ、されたくないってのは道理に反して無いかい?」

 すると、テーブルに突っ伏して寝ていたゴミ女共四人が一斉に立ち上がり整列してティナに謝罪した。

「誠に申し訳ありませんでした………」


ティナは慌てて「いえいえ、撃たれた所は大丈夫ですか?」とか言っちゃってる。
(ティナタソ……あんたは天使か……天使ちゃんマジ天使!)

 「え、あ、はい!」とか悪態を付いた相手に、逆に心配をされて居心地悪そうな表情になるゴミ女四人。
(なんだこれ……)
 ティナに一通りの謝罪が終わりマサキの元に来る。
「この度はご迷惑をお掛けして誠に申し訳ありませんでした。」
(あ~……何かこう言うの、俺苦手なの。だから最初のオラついた感じでヨロー……)

「僭越ながら自己紹介をさせて頂きます。私は第一近衛兵隊大隊、第二教導アグレッサー部隊所属 ジェニファー・K・ダグラスです。」
(一番オラついてた奴だ。)
「私は、同所属、アリス・H・ウィリアムズです。」
(元々の話題を知らなかった奴か。)
「私はぁシャーロット・A・ミラーでぇす。」
(あ~……超ウケるの人ね。お前みたいなのに、まともな名前がある事に超ウケるんですけどぉ~!)
「わ、私はあ、アリシア・N・アンダーソンです。」
(こいつ?あ、マッチポンプ女か。)

「あ、俺はクラタナ。こっちがティナ。」

「はい。ウェールズさんからは先程、御名前をお聞きしました。」

「あ、そ。」
(俺、こいつらマジ印象悪いわ……)

「先程の件……自分らはしても良くてもされるのは嫌ということ、よく分かりました。本当にすみません……」

「もう良いって…スミスさん、この人達も眼を覚ました事だし撤収すれば?」
(もう相手すんのめんどくさいよ……)

「そうですねぇ……」

「スミス、ちょっとまって!」
とジェニファーが言った。
「私達、お二人にご迷惑をお掛けしてしまったので、お詫びをしたいのですが……」
(え?何?何でもしてくれるの?だ、だったら……はぁはぁ……)

「いえ、大丈夫です。お詫びとかはしなくて結構ですよ!」
とティナが穏便に断った。
(お、俺みたいな心の汚れたゴミには、ティナタソが眩し過ぎて見えない……)

「でも、何でも良いんです、せめての償いでお役に立ちたいと……」
(この人二重人格なのかな?この数分でキャラが凄い変わったぞ……)

 ティナは困り顔でこっちを見て、助けを求めるの合図をしている。

「あ~……だったら、俺らは今からティナの服を買いに行く予定だったんだけど、いい所が有れば教えて欲しい。で、いいかな?実際、俺とかが選ぶより、歳の近いアンタらの方がセンスもあるだろうからな。」

「おお!そ、それは名案です!」
とアリシアが言った。

「確かに私もこの街は初めてですし、お洋服のお店とか知らないので教えて貰えると助かります。」
ティナがこっちを見て指を立てた。
(俺にしてはグッジョブだ!)

「教えるんじゃ無くてお店までご一緒しますって!」
とジェニファーがティナの手を引っ張った。
(え、マジか……)

「じ、じゃぁ、そういう事で、俺は……先に……」

「マーサーキー!付いて来るんだよね?」
と企み顔である。

「え?いや、俺みたいなおっさん行っても仕方ないし、ほら、ナイスセンスなヤングなギャルが居るじゃん!」
 何となく反射的にスミスとアクセルを見るが、眼を瞑り首を振っていた……(マジか……なんてこった……)

「クラタナさん……」とジェニファーに呼ばれ、「悪ふざけが過ぎた事、本当にすみませんでした。あの様な話し方も実は付け焼きで、隊長が言う程の人かとクラタナさんを試してしまいました。」

「もう良いって、終わった事だから。」
(俺、ここに来て何回試されてんの?)

「本当は彼女らは、このような事をするのは反対して居たのですが、どうしてもと私が協力を頼んだ為にこんな事になってしまったので、彼女らを悪く思わないで下さい。宜しく御願いします。」
と深々頭を下げた。
(え?何これ、コレってギャップ萌えって奴か?なんか凄く良い奴じゃんこの娘……)

「解った。」と思わず下げてる頭をポンと叩いた。

「じゃティナの服宜しく頼むな!」
 皆の元へと歩きながら言うと、「は、はい!」
と、どもりながら言うジェニファーの顔がほんのり赤くなって居た事を、マサキは知らなかった。
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