愛犬とズボラな飼い主との奮闘記

不安は連鎖する②

　犬たちが体調を崩すたびに思い出すのは、はじめて飼ったワンコのことだ。
　二月の寒い時期だった。
　いつもなら、朝から遊んでと追いかけまわしてくるワンコがおとなしくしているのだ。
　大人になった？
　そんなわけない。撫でてあげれば毛がかたい感じがするし、毛づやもよくない。おなかも少しゆるめ。おかしいな、と思って病院に連れていった。けれど病院では、元気にしっぽを振り、愛想を振りまく。
　寒さに負けたのかな？
　同じような症状の子で病院はいっぱいだった。二日経っても、三日経っても症状は良くならず、その夜は処方された薬は全力で飲みたがらなかった。
　明日はちゃんと飲むんだよ。
　そう話し掛けて、ハウスに寝かせた。
　翌朝、ワンコは冷たくなっていた。
　生後半年の命だった。
　未だに後悔している。もっと出来たことがあったんじゃないかと。それなのに平和ボケしていたのだろう。Ｌちゃんに対し、同じ轍を踏みそうになった。今回はかろうじてとどまることが出来たが。

　犬たちとは今年の春から一緒の部屋で眠るようになっていた。今まではリビングに寝かせていたのだが、夜、人の気配がなくなると一晩中鳴き続けるようになったのだ。はじめの内は、その都度出向いて相手をしてあげたり、寝る場所の環境を何度も整えてみたりしたが、一向に改善がみられず、人も犬も疲れてしまったのが理由である。
　Ｌちゃんが頻尿になってからは、寝る場所を寝室からリビング横の部屋に移した。すぐトイレに行けるようにとの配慮である。
　もちろん、わたしが高熱で寝込んでいようとも、犬たちは関係なく一緒の布団で眠る。頭痛が酷くても、咳き込んで苦しくても、眠りから覚めてまずはじめにすることは、Ｌちゃんが生きているか確かめること。
　温もりはあるか、息はしているか。
　そして撫でてあげる度に、毛の柔らかさがなくなっていることに愕然とする。吠えて興奮するたびに漆黒にさせていた毛艶ももうない。白髪混じりでパサパサしているだけだ。
　そんな中、ふたたびＳちゃんがおなかを壊した。便にゼリー状のものが付着し、その量の割合が便よりも多くなる。そのうち、すっかり下痢をし、血も混じるようになっていた。
　わたしの方は、咳が残っているものの、熱の方はすっかり下がり、いつも通りの生活に戻りつつある頃だった。
　病院に連れて行かないと。
　しかし、ただいま絶賛お盆休み中。どこの病院もやってない。
　湯たんぽでお腹を温めてあげたり、服を着せてカイロを貼ってあげたり出来るだけのことはしてあげた。いつものフードを工夫してみても食べてくれず、少しでもお腹に入れられそうなものを調べて与えたり、状況に応じて様子を見守ることに徹した。
　お盆明け。さっそく病院に連れて行く。
　その日は前日の夜から何も食べていなかったので、エコー検査をすることになった。夕方までお預かりである。そして、迎えに行って知らされる。
「腎臓に奇形がみられます」
　どういうこと？
　頭の中は疑問符だらけである。
　今回の下痢とは別に、どうやら生まれつき腎臓の形が悪かったらしい。
「Ｓちゃんのこれからについてお話しをする機会をもうけましょう」
　ウソでしょ!?　たて続け？
　精神的に病んだせいか、頭痛が市販薬を飲んでも一向に治まらず、病院に行き、高血圧を指摘されたのはまた別の話である。