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第2章 いきなりロボットアニメみたいな世界に放り込まれたんですけど
7:回収
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異獣の身体から爆轟が走り、衝撃波が白い波となって広がった。もうひとつ男の声がする。
『お前はいつも派手過ぎんだよ!!』
もう1機の骨骼兵器が大きな槌で異獣を襲う。異獣の横っ面に槌が直撃して、その巨体が人形のように吹き飛んだ。飛翔体を放った方がすでにメツトリのそばに駆け寄っていた。
『サードOS、行動不能』
『回収してくれ、アビド』
いきなりイーサンの声がした。飛翔体を放った骨骼兵器がメツトリを抱きかかえて、背中のロケットパックで飛び立っていった。
『じゃあ、こいつは俺が!!』
残った方が大きくジャンプして、倒れている異獣へ槌を勢いよく振り下ろした。凄まじい破裂音と共に青い血が街に飛び散った。
あっという間の出来事だった。現れた2機の骨骼兵器はいずれもメツトリと同様に肩に星条旗がついていた。
『日本の領内で勝手は困る』司令の声だ。『四路坂、異獣の状況を確認しろ』
言われるがままに潰された異獣のそばへ。その遺骸を見下ろして、言葉を失った。
潰れた異獣の躯体の隙間から、青い髪をした少年の身体が覗いていた。まるで私たちが骨骼兵器を操るように、異獣も人が操縦していた……?
──助けなきゃ。
胸の奥底からそんな衝動が溢れ出していた。
『イーサン、まずい! 素体が……!』
槌を持った骨骼兵器のドライバーが叫び立てる。私は建御名方を跪かせ、コックピットを開いた。そして、勢いよく飛び出す。
『あのバカが汚染源に飛び降りたぞ!』
コックピットの中から声がしたが、無視をしてドロドロになった青い血の海を少年の方へ進んでいく。
少年は服を着ておらず、その白い肌が青い血でべっとりと濡れていた。その身体を異獣の肉の隙間から引きずり出す。その身体には、股についているべきものがなかった。まるでマネキンのようだった。
ヘリが近づいて来て、アイギスと思われる特殊部隊が降りてきた。容赦なく銃口を向けられる。
──邪魔だよ。
無意識だった。右手で空を薙ぐと、巻き起こった烈風が特殊部隊の人間を残らず上空に吹き飛ばした。無我夢中で青い髪の少年を担ぎ上げて、異獣の遺骸から離れる。
向こうから葦原鎮守府のマークをつけた車が猛スピードで近づいてくる。思わず身構えた。だが、運転席から顔を出したのは、あの無口な少女ドライバーだった。
「早く乗って!」
少年の身体を引きずって後部座席に滑り込む。少女が車を急発進させるので、私の身体はシートに押しつけられた。
「免許持ってるの?!」
我ながらバカなことを訊いた。
「持ってない!」
大人しそうな少女がすごい剣幕でハンドルを切った。タイヤが悲鳴を上げて疾駆する。
「なんで?!」
こんなことを? と尋ねたつもりだった。
「その人、きっと鎮守府に連れて行かれる!」
「どういうこと?!」
「これで私たちは日本からもアメリカからも追われる!」
話が噛み合わない。きっと彼女も我を失っているのだ。
後方からヘリが近づいてくる。
『ただちに停車しろ!』
ヘリのスピーカーから打ち出される警告を合図にして、少女はアクセルを踏み込んだ。
意外と思い切りがいい。そう思った瞬間、進路方向の地面が爆ぜた。ダダダと機関砲が火を噴いていた。
「あの不思議な力で助けて!」
少女が無茶振りをかましてくる。
「そんなこと言われても!!」
言いながら後ろを振り返って手を翳した。金色の光陣が現れて射線を切る。そしてヘリが光の壁に激突して轟音と共に墜落した。
「すごい!」
少女が興奮して叫ぶ。
──この力は……一体何だ?
『お前はいつも派手過ぎんだよ!!』
もう1機の骨骼兵器が大きな槌で異獣を襲う。異獣の横っ面に槌が直撃して、その巨体が人形のように吹き飛んだ。飛翔体を放った方がすでにメツトリのそばに駆け寄っていた。
『サードOS、行動不能』
『回収してくれ、アビド』
いきなりイーサンの声がした。飛翔体を放った骨骼兵器がメツトリを抱きかかえて、背中のロケットパックで飛び立っていった。
『じゃあ、こいつは俺が!!』
残った方が大きくジャンプして、倒れている異獣へ槌を勢いよく振り下ろした。凄まじい破裂音と共に青い血が街に飛び散った。
あっという間の出来事だった。現れた2機の骨骼兵器はいずれもメツトリと同様に肩に星条旗がついていた。
『日本の領内で勝手は困る』司令の声だ。『四路坂、異獣の状況を確認しろ』
言われるがままに潰された異獣のそばへ。その遺骸を見下ろして、言葉を失った。
潰れた異獣の躯体の隙間から、青い髪をした少年の身体が覗いていた。まるで私たちが骨骼兵器を操るように、異獣も人が操縦していた……?
──助けなきゃ。
胸の奥底からそんな衝動が溢れ出していた。
『イーサン、まずい! 素体が……!』
槌を持った骨骼兵器のドライバーが叫び立てる。私は建御名方を跪かせ、コックピットを開いた。そして、勢いよく飛び出す。
『あのバカが汚染源に飛び降りたぞ!』
コックピットの中から声がしたが、無視をしてドロドロになった青い血の海を少年の方へ進んでいく。
少年は服を着ておらず、その白い肌が青い血でべっとりと濡れていた。その身体を異獣の肉の隙間から引きずり出す。その身体には、股についているべきものがなかった。まるでマネキンのようだった。
ヘリが近づいて来て、アイギスと思われる特殊部隊が降りてきた。容赦なく銃口を向けられる。
──邪魔だよ。
無意識だった。右手で空を薙ぐと、巻き起こった烈風が特殊部隊の人間を残らず上空に吹き飛ばした。無我夢中で青い髪の少年を担ぎ上げて、異獣の遺骸から離れる。
向こうから葦原鎮守府のマークをつけた車が猛スピードで近づいてくる。思わず身構えた。だが、運転席から顔を出したのは、あの無口な少女ドライバーだった。
「早く乗って!」
少年の身体を引きずって後部座席に滑り込む。少女が車を急発進させるので、私の身体はシートに押しつけられた。
「免許持ってるの?!」
我ながらバカなことを訊いた。
「持ってない!」
大人しそうな少女がすごい剣幕でハンドルを切った。タイヤが悲鳴を上げて疾駆する。
「なんで?!」
こんなことを? と尋ねたつもりだった。
「その人、きっと鎮守府に連れて行かれる!」
「どういうこと?!」
「これで私たちは日本からもアメリカからも追われる!」
話が噛み合わない。きっと彼女も我を失っているのだ。
後方からヘリが近づいてくる。
『ただちに停車しろ!』
ヘリのスピーカーから打ち出される警告を合図にして、少女はアクセルを踏み込んだ。
意外と思い切りがいい。そう思った瞬間、進路方向の地面が爆ぜた。ダダダと機関砲が火を噴いていた。
「あの不思議な力で助けて!」
少女が無茶振りをかましてくる。
「そんなこと言われても!!」
言いながら後ろを振り返って手を翳した。金色の光陣が現れて射線を切る。そしてヘリが光の壁に激突して轟音と共に墜落した。
「すごい!」
少女が興奮して叫ぶ。
──この力は……一体何だ?
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