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【冥界の番犬:ケルベロス】
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戦いは当初、帝国軍が劣勢だったが、ブルーノ騎士長が呼び寄せたらしい三人の冒険者が、途中から戦闘に加わり戦況が一変した。
エリックは戦場で黒髪の大男と魔法使いの女、それから虎の獣人の戦いぶりを見て、「戦鬼」いや「戦神」が現れたと思った程だ。
戦士が二名、魔法使いが一名だったが、戦士の一人は3Mもあろうかと思える虎の獣人だった。
虎の獣人は『ガルルル』と雄叫びを上げながら、鋭い牙と鉤爪(かぎつめ)、右手には大剣を持ち、オークやゴブリンの武器を砕き、次々と醜い者たちを切り裂いていった。
黒い髪をした少女は、その虎の肩に器用に乗り、爆翔焔陣(ファイアブレス)・雷極光陣(ライトニングボルト)・焔爆裂(ヴァンフレア)といった属性の違う、ハイレベルの攻撃魔法を、いとも簡単に呪文も唱えず、次々と放った。
魔術師見習いのエリックには、黒髪の少女が放ったレベルの高い魔法、そして、違った属性の魔法を無詠唱で放つことが、どんなに凄いことか知っていたので驚いた。
黒髪の少女は戦場の花にも思える美形だったが、魔物を仕留めた時に見せる微笑は何故か、殺戮(さつりく)を楽しんでいるように思えて、空恐ろしさを感じた。
極め付けは黒髪の男だった。
全身に闘気を纏い、常人の目に留まらない速さで動きながら、ゴブリンやオークの剣を躱し、剣と剣が合うこともなく、斬撃で胴を掃い仕留めていった。
彼の持つ珍しい片刃の剣は、あまりにも切れ味が鋭く、恐らく切られた事を知らない魔物もいたのではないだろうか・・・?
そして、人間離れした「神の力」で、遠くの山を持ち上げ、砕き、大小の無数の岩石を飛ばし流星雨を戦場に降らした。
神の技なのか、無数の岩石は友軍にはあたらないようにコントロールされていた。
戦いは山場を向かえて、エリックの放屁(おなら)魔法で仕留めた5Mクラスのオークより、一回りは大きなボスらしい巨大オークが、沢山の取り巻きを連れて、黒髪の戦士に対峙(たいじ)した。
この巨大ボスオークはただの肉の塊りではなかった。
黒魔術らしき魔法の詠唱をし、恐ろしい魔物を召喚した。
魔物は三つの頭に巨大な犬の顔を持ち、竜の尾と蛇のたてがみをなびかせた、黒いオーラを纏う魔物だった。
三つ頭の魔物は突然、召喚されたからか、不機嫌そうに『グルルー』と唸り声を上げた。
エリックは、この魔物が魔導書で描かれているハーデースが支配する冥界の番犬、冥界の住人も恐れるケルベロス(底無し穴の霊)であることに気づいた。
冥界の番犬、ケルベロスが現れるなんて・・・人は生きている間は絶対に見ることがない魔物が今、目の前に現れたのだ。
彼には目の前に現れたことが、信じられない思いだった。
竜馬は召喚された獣に動揺することなく、妖刀村正を三つの頭を持つ魔物に向けて構えた。
村正は、この戦いで多くの魔物の血を吸ったからなのか?刀身から立ち上るオーラが、何時もより勢いよく揺れて、笑っているかのように見えた。
竜馬はエルのパワーを借りず、自らの力が発する赤い闘気で、青の闘気でしか使えなかった超能力を使えるようになっていた。
多くの戦いを経験して、パワーが格段に上がっていたのだ。
だが、竜馬は得体の知れない強敵を前にして、更に力を得るために、エルに『ちから:能力』の開放を求めた。
『能力開放 超開放 MAX』その瞬間、エルの本体にある核融合エンジンから、パワーが流れ込み、赤の闘気から更にパワーを上げて、青の闘気を纏った。
青の闘気を纏う時、竜馬の隠れた力が開放される。
MAX状態で、三つ頭の魔物とぶつかった。
魔物はパワーUPした竜馬とスピードと力は大差が無いように思えたが、厄介なことは頭が三つあり、交互に攻撃をしてきた。
エルが『あの牙には毒がありそうだから、気を付けて』と竜馬に注意喚起があった。
竜馬とケルベロスの戦いは重力が存在しないかのように地上から空中戦になり、上下左右、自在に動き、ぶつかり合った。
常人には見えない動きで、ぶつかるたびに稲妻と衝撃波が発生し、大地が震えた。
竜馬とケルベロスの戦いは、まさに神と神の戦いを想像させるものだった。
何度もぶつかり合い、その戦いは永遠に続くかと思われた・・・だが、結末は突然、ケルベロスの姿が薄くなり消えて、戦いは勝負が付かないまま終わりを告げた。
竜馬と魔物が戦っている間に「さつき」が、巨大ボスオークを魔法で仕留めたのだ。
冥界から召喚したボスオークがいなくなったので、ケルベロスは元の世界に強制的に引き戻されたのか?急に姿を消した。
さらにブルーノ騎士長とエリックが巨大オークを一匹ずつ、竜馬がボスオークを倒したことで、悪魔軍は総崩れになって敗走した。
ラウジッツ辺境伯の軍、帝国直属軍を合わせて、約数百人の戦死者が出たが、この辺境での戦いで時間を稼ぐという本来の目的も達成できて、大勝利と言える戦いだった。
この後、エリックは「さつき」に教えを請い、無属性のユニーク(放屁)魔法と火炎魔法を合わせて使うことで、対魔物用に最強の魔法を完成させた。
そして、エリックはこの後、ラウジッツ辺境伯に魔術師として雇われ、大魔術師への道を歩むことになった。
エリックは戦場で黒髪の大男と魔法使いの女、それから虎の獣人の戦いぶりを見て、「戦鬼」いや「戦神」が現れたと思った程だ。
戦士が二名、魔法使いが一名だったが、戦士の一人は3Mもあろうかと思える虎の獣人だった。
虎の獣人は『ガルルル』と雄叫びを上げながら、鋭い牙と鉤爪(かぎつめ)、右手には大剣を持ち、オークやゴブリンの武器を砕き、次々と醜い者たちを切り裂いていった。
黒い髪をした少女は、その虎の肩に器用に乗り、爆翔焔陣(ファイアブレス)・雷極光陣(ライトニングボルト)・焔爆裂(ヴァンフレア)といった属性の違う、ハイレベルの攻撃魔法を、いとも簡単に呪文も唱えず、次々と放った。
魔術師見習いのエリックには、黒髪の少女が放ったレベルの高い魔法、そして、違った属性の魔法を無詠唱で放つことが、どんなに凄いことか知っていたので驚いた。
黒髪の少女は戦場の花にも思える美形だったが、魔物を仕留めた時に見せる微笑は何故か、殺戮(さつりく)を楽しんでいるように思えて、空恐ろしさを感じた。
極め付けは黒髪の男だった。
全身に闘気を纏い、常人の目に留まらない速さで動きながら、ゴブリンやオークの剣を躱し、剣と剣が合うこともなく、斬撃で胴を掃い仕留めていった。
彼の持つ珍しい片刃の剣は、あまりにも切れ味が鋭く、恐らく切られた事を知らない魔物もいたのではないだろうか・・・?
そして、人間離れした「神の力」で、遠くの山を持ち上げ、砕き、大小の無数の岩石を飛ばし流星雨を戦場に降らした。
神の技なのか、無数の岩石は友軍にはあたらないようにコントロールされていた。
戦いは山場を向かえて、エリックの放屁(おなら)魔法で仕留めた5Mクラスのオークより、一回りは大きなボスらしい巨大オークが、沢山の取り巻きを連れて、黒髪の戦士に対峙(たいじ)した。
この巨大ボスオークはただの肉の塊りではなかった。
黒魔術らしき魔法の詠唱をし、恐ろしい魔物を召喚した。
魔物は三つの頭に巨大な犬の顔を持ち、竜の尾と蛇のたてがみをなびかせた、黒いオーラを纏う魔物だった。
三つ頭の魔物は突然、召喚されたからか、不機嫌そうに『グルルー』と唸り声を上げた。
エリックは、この魔物が魔導書で描かれているハーデースが支配する冥界の番犬、冥界の住人も恐れるケルベロス(底無し穴の霊)であることに気づいた。
冥界の番犬、ケルベロスが現れるなんて・・・人は生きている間は絶対に見ることがない魔物が今、目の前に現れたのだ。
彼には目の前に現れたことが、信じられない思いだった。
竜馬は召喚された獣に動揺することなく、妖刀村正を三つの頭を持つ魔物に向けて構えた。
村正は、この戦いで多くの魔物の血を吸ったからなのか?刀身から立ち上るオーラが、何時もより勢いよく揺れて、笑っているかのように見えた。
竜馬はエルのパワーを借りず、自らの力が発する赤い闘気で、青の闘気でしか使えなかった超能力を使えるようになっていた。
多くの戦いを経験して、パワーが格段に上がっていたのだ。
だが、竜馬は得体の知れない強敵を前にして、更に力を得るために、エルに『ちから:能力』の開放を求めた。
『能力開放 超開放 MAX』その瞬間、エルの本体にある核融合エンジンから、パワーが流れ込み、赤の闘気から更にパワーを上げて、青の闘気を纏った。
青の闘気を纏う時、竜馬の隠れた力が開放される。
MAX状態で、三つ頭の魔物とぶつかった。
魔物はパワーUPした竜馬とスピードと力は大差が無いように思えたが、厄介なことは頭が三つあり、交互に攻撃をしてきた。
エルが『あの牙には毒がありそうだから、気を付けて』と竜馬に注意喚起があった。
竜馬とケルベロスの戦いは重力が存在しないかのように地上から空中戦になり、上下左右、自在に動き、ぶつかり合った。
常人には見えない動きで、ぶつかるたびに稲妻と衝撃波が発生し、大地が震えた。
竜馬とケルベロスの戦いは、まさに神と神の戦いを想像させるものだった。
何度もぶつかり合い、その戦いは永遠に続くかと思われた・・・だが、結末は突然、ケルベロスの姿が薄くなり消えて、戦いは勝負が付かないまま終わりを告げた。
竜馬と魔物が戦っている間に「さつき」が、巨大ボスオークを魔法で仕留めたのだ。
冥界から召喚したボスオークがいなくなったので、ケルベロスは元の世界に強制的に引き戻されたのか?急に姿を消した。
さらにブルーノ騎士長とエリックが巨大オークを一匹ずつ、竜馬がボスオークを倒したことで、悪魔軍は総崩れになって敗走した。
ラウジッツ辺境伯の軍、帝国直属軍を合わせて、約数百人の戦死者が出たが、この辺境での戦いで時間を稼ぐという本来の目的も達成できて、大勝利と言える戦いだった。
この後、エリックは「さつき」に教えを請い、無属性のユニーク(放屁)魔法と火炎魔法を合わせて使うことで、対魔物用に最強の魔法を完成させた。
そして、エリックはこの後、ラウジッツ辺境伯に魔術師として雇われ、大魔術師への道を歩むことになった。
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