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【帝都:城郭都市・湯殿の楽しみ】

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ドラゴンの墓場から帝都に至る約二か月程の道のりは、ようやく終わろうとしていた。

『皆の者、帝都までもう直ぐだ』ブルーノ騎士長から声が掛かり、最後の難所になった急な坂道に登りきると、そこから見える辺り一帯は広大な穀倉地帯になっていた。
さらに遠くにはエストランドの帝都と思われる城郭都市が見えた。
城郭都市は全体を城壁が囲い、外敵の攻撃から守る作りになっている。
かなり大きな城郭なので、どれくらいの規模なのだろうか?と気になった。

『レーテ、帝都にはいったい、どれ位の人がいるんだい?』

『そうね・・・どの位かしら?辺境で魔物との戦いが始まって、帝都にはエルフや獣人の方も、最近、たくさん流れ込んでいるから、以前よりもかなり多くなっている様だけれど・・・誰も数えたことがないから、はっきりわからないわ』という返事だった。

代わりに、エルが『この星に初めてきた時に情報偵察用bug(バグ:虫)が得た帝都の人口密度のデーターから推測すれば、大体、50万人程の住民がいる計算になります。
さらに付け加えれば文化レベルが同じ古代地球では14世紀頃になりますが、その時代に存在した最大のパリという町が7~8万だったと記録に残っているので、対比較で、帝都は、かなり大きい町ということになります』と教えてくれた。

城郭に入る門は重厚な作りになっていて、警備兵が人の出入りを監視していた。
竜馬たちの隊列が近づくと、慌てたように警備隊長らしき兵が『これは、これは姫様、よくご無事で』と愛想をしながら近づいてきた。

『フレデリック隊長ですか、私たちが遠征の間、変わったことはなかったですか?』

『はい、姫様、残念ながらヴィルヘルム王は、お身体の様子が、いま一つのご様子で・・・』

『そうか、で・兄上は?相変わらずなのか?』

『は・・・』言っただけで、隊長は、それ以上の事は答えにくそうだった。

『そうか兄者は相変わらずのようだな』姫は隊長の様子で何かを悟ったようだった。
その様子を見ていた竜馬は気になったので、レーテに小声で聞いた。

『レーテ、イレーネ姫の兄は何かあるのか?』

『姫様の兄、ヘンリック王子は優しいのですが、芸術に凝っておられて、政務には無関心で、王の代理印が貰えず行政が滞って困っているんです』と教えてくれた。
イレーネ姫が兄を差し置いて、危険な聖剣を持ち帰る遠征に出たのは、兄の性格に関係があるようだった。

竜馬は取り敢えず王城の離れにあるイレーネ姫の館に厄介になることになった。
その日の夜は美味しい食事を頂いた後、久しぶりの湯浴びをすることにした。
帝都にはテルマエという大衆浴場があるが、イレーネの館にある湯殿で風呂を使わさせて貰って、旅の疲れを癒(い)やすことにした。
竜馬が湯浴びをしている時、湯けむりに女性の人影が見えたので、若い女性かと淡い期待を抱いたが、残念ながら齢(よわい)50歳を越えているのではと思える使用人の「おばさん」が湯けむりの中から現れた。
この世界の平均寿命は恐らく戦場に駆りだされる男より、当然、女性の方が長生きするが、それでも40歳を越えていないだろうから、おばさんは、かなり年配にあたるのではと思えた。
竜馬の湯浴びの世話をするために湯殿に入って来たのだ。
流石の竜馬も初めての経験だったので、恥ずかしさのあまり内心オロオロした。
慌てて大事な物を隠したが、タオルの隙間から、当然、体が大きいだけあって、あそこは標準サイズより大きく、布からはみ出しそうになっている※デカ〇〇を、しっかりと見られてしまった。
竜馬は慌てて、隠したが彼女的には決して見逃す筈がなかった。
彼女は湯殿に入った時から真っ先に竜馬の〇〇を目で捉えていたのだ。
客人の〇〇を覗き見し、年配の待女が集まる井戸端会議で話題にすることが、何よりも楽しみだったのだ。

『わぁ、凄い、こんなの見るの久しぶりだわ・・・』彼女は喜びに震えた。
『ねえ、この年になって、長年、こびりついた脂肪で、三段腹になったけれど、胸よりお腹が出ないように頑張ってきたのよ!だからご褒美をくれない・・・♡
少し不格好になったけど、若い時はモテたのよ!うふふ、だから、どう?・・・いいことをしようか?
これでも若い時に一緒になる筈だった男(ひと)がいたの、でも、その男はある時、戦いに駆り出されて・・・うふん・・・それが最後、戦場から帰ってこなかった。
それ以来、私は戦場で散った彼に一途な愛を貫き通しているの・・・。
だから、毎日、この子宮が疼くのよ!
ねえ、今日は初めて、処女なの・・・あなただったら大事な操をあげてもいいわ、どう?』

竜馬は突然、おばさんに言い寄られて、ビックリ、慌てて湯殿から逃げようとした。

『まあ、初心なのね、冗談よ!うふふ、可愛いわ』とおばさんに笑われた。
歴戦の強者もおばさんに掛かれば、かたなしである。
『嘘だろう、今のは本気だっただろう』とツッコミを心の中で入れた。
冗談だったとは到底思える筈がなく、おばさんという生き物が魔物より怖く思えた。
だから逃げる様に湯殿を後にした。

翌日、レーテが帝都の案内を買って出てくれた。
帝都を見て回りながら、出来れば、これから仮住まいができるところと、普段着、武具などを見て回ることにした。
竜馬は日常生活で着て怪しまれない服と、鎧については重い鎧を着ると、逆に身動きがやりづらくなるので、皮鎧を買うことにした。
それから村正の鞘(さや)を注文し、鞘が出来るまでの繋ぎで、店で一番良さそうな剣を買うことにした。
道具屋のオヤジが竜馬の刀を見て『ほほう、珍しい剣ですな?』と言って興味を示した。
竜馬が『磨げるか?』と聞くと『う~ん、時間は掛かりますが、何とか、やらして頂きます』と言ったので、ついでに刃先を整えて貰うために砥(とぎ)も依頼した。
この星に来て、報酬としてもらった、35枚の金貨の内、金貨を7枚使った。
住まいについては取り敢えず、宿を取ることにした。
レーテに案内されて町を歩いていると、広場では「月の市」が行われていた。
市場には沢山の露店があり、人や獣人、それにケットシー・エルフなど雑多な種族が集まり活気が感じられた。
少し離れた場所で、ひと際、人だかりができている場所があったので、面白そうなので、見てみることにした。
人だかりは、月の市に合わせ、奴隷売買が行われている最中だった。
奴隷売買は通常は奴隷商館で行われるが、例外的に月に一度の月の市で行われているそうだ。
レーテが『ここで奴隷として売られる人たちは可哀想な人たちなので、助けてあげたいけれど、なかなか助けてあげる事ができないの・・・』と悲しげな表情で竜馬に話しかけた。
彼女はお金が入ると、出来る限り奴隷を買ってあげることにしているが、競売に掛かると競り落とされる金額が高くなり、手だしができないそうだ。
ここに奴隷として売られる人は親の借金のかたや税金の代わりに売られた人たちが多かった。
以前は帝国が領土拡大のため、戦争した時の捕虜や犯罪者が殆どだったが、魔物との戦いが始まってからは生活苦のため、やむを得ず奴隷にされたケースが増えた様だ。
男奴隷は主に鉱山などの重労働に回され、女奴隷は娼婦館で働かされる運命を辿る人が多かった。
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