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【秘宝と契約の箱】NO1
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「これはどうした事なんだ・・・」気が付くと凛太朗は灰色の世界にいた。
異変は、それだけでなかった。
事故の後、騒がしかった救急車やパトカーのサイレン、それに野次馬達の喧騒が聞こえない。
そればかりか傍らにいたデルフィーヌやタイガーは蠟人形の様に固まっている。
死んでいるのか・・・いや、そうじゃない。
動作が止まっているんだ。
明らかに先程迄とは違った世界に自分だけ突然、入り込んだ気がした。
その時だった。
「ケッケッケ」品のない下衆の笑い声が聞こえてきた。
『時の魔導士か・・・』
お道化たピエロの格好をした小太りの男が、灰色が裂けた向こう側にいるカトリーヌに攻撃しようとしているのが見えた。
何時もは戦いで見せる余裕は今の彼女にはない。
『危ない‼』彼女に危機が迫っている様に思えた。
凛太朗は咄嗟に闘気を高め、幻想銃を顕現化、ピエロに向かってトリガーを絞った。
その瞬間、必殺の死霊弾がピエロを貫いた。
時の魔導士が仕掛けた時間停止の状態異常を破った凛太朗にカトリーヌは驚きを隠せなかった。それは神達や亜神が持つ力に近づいていることを意味していたからである。
冥界の狭間に根を下ろす神達の『桃の実』を食べた人間だからこそ成せる事ではあるが、では神の実を食べれば必ず、神の能力が顕現するかというと、それはそういう訳ではない。
幾多の闘いを経験し死線を潜り抜けなければ神の高みに達する事など到底ありえない。
カトリーヌは彼に強い意志と覚悟を垣間見た気がした。
そこには前世、魔族との戦いの中で、血に染まった戦友達の記憶、悲しみがきっとあるに違いない。
時の魔導士を倒した後、円城寺証券にいったん帰った。
そこには夜更けにも拘わらず円城寺室長の姿があった。
室長は、最近、姿を見せる事が無かったが、それはカトリーヌから聞いた話では人には想像すら出来ない宇宙の果てに行き、増大するダークエネルギーを抑え込む為に奮闘しているからだという。
その憂いを抱えている彼女が俺達を待ち構えていたという事は余程、重要な事があるのかも知れない。と凛太朗は思った。
「時の魔導士を倒した様ですね・・・でも、奴は執念深いから、やがて復活するでしょう。
数年後か?数十年後か?いや数百年後かも知れないが、再び襲って来る。
ですが、奴を追い払う事は出来ます。どうすればいいか分かりますか?
凛太朗、時間とは何ですか・・・ループ量子重力理論を知っていますか?
最近、ビックバン以前の事を説明するために天才科学者が唱えた一般相対性理論と量子力学を統合した理論です。
その理論では『時間は存在しない』とされている。
時間は重力により曲げられる。
高地と平地では時間の進み方に違いがある。
それに凛太朗、身近な例では美人の前にいると一時間でもあっという間に過ぎてしまうと感じた事はありませんか?
例えば、私の様な可愛い子と一緒だと時間が経つのが速いと思わない?」
「五月、そこは違うだろう。
僕の様な可愛い聖女と一緒にいればそうかも知れんが・・・。」
「オホン・・・カトリーヌ、死神になる前は聖女の様な心根を持っていたかも知れないけれど、死神に転生したら聖女なんて言うのは可笑しいわ・・・。」
「うーあんただって、女子高生の格好をして清純を売っているじゃない‼」
「え、それは・・・私は数万年生きているけれど、歳を取っていないからこの恰好でいいの・・・まあ、いいわ、カトリーヌと言い合いをしても始まらないわ・・・話が折れたから、ここは大人の雰囲気を持っているデルフィーヌにしましょう。
デルフィーヌと一緒だと、時間が経つのが速いというのは同意出来る?」
「オイラは納得出来る。」
「こら、エロタイガーは黙ってなさい。」
「フフフ、タイガーは正直だね・・・。
じゃ、話を戻すわね。何処まで話をしたっけ?
あそうだわ・・・宇宙はビックバンにより始まったと言われますが、実は、そうじゃない。
それは過去の出来事と言えるし未来の出来事かも知れない。
そう、時間という概念は作られたものなのです。過去も未来も存在しない。
現在の宇宙を造った私が言うことですから、間違いはありません。
だから時の魔導士が、もし目の前に現れたら時間という概念を否定してやればいい。
彼らの存在の根源を否定してあげるのです。きっと尻尾を巻いて逃げ出す事でしょう。
ところで、カトリーヌ、凛太朗、タイガー、新たな任務を与えます。
次の仕事はデルフィーヌが受け持っている異次元に行き失われた『契約の箱』と言われる古代の遺物を持ち帰る事です。
その箱の中には、あまりにも強力であるが故に禁呪となった古代魔法の呪文が書かれた魔法書が入っている筈です。
何処に行ったのか行方知れずになっていたのですが、魔女の水晶玉に啓示があった。
再び封印が解かれ魔族の手に渡れば大きな禍が起ります。
禁呪魔法は神格級の魔法です。それを決して魔族の手に渡してはいけません。
嘗て、全宇宙を巻き込んで繰り広げられた宇宙連合と魔族との戦いは、この禁呪魔法が魔族の手に渡った為に起こったと言われています。
数千年に亘る終わりなき血泥の戦いを再び起こしてはならない。
最悪の場合は契約の箱ごと処分しても下さい」
異変は、それだけでなかった。
事故の後、騒がしかった救急車やパトカーのサイレン、それに野次馬達の喧騒が聞こえない。
そればかりか傍らにいたデルフィーヌやタイガーは蠟人形の様に固まっている。
死んでいるのか・・・いや、そうじゃない。
動作が止まっているんだ。
明らかに先程迄とは違った世界に自分だけ突然、入り込んだ気がした。
その時だった。
「ケッケッケ」品のない下衆の笑い声が聞こえてきた。
『時の魔導士か・・・』
お道化たピエロの格好をした小太りの男が、灰色が裂けた向こう側にいるカトリーヌに攻撃しようとしているのが見えた。
何時もは戦いで見せる余裕は今の彼女にはない。
『危ない‼』彼女に危機が迫っている様に思えた。
凛太朗は咄嗟に闘気を高め、幻想銃を顕現化、ピエロに向かってトリガーを絞った。
その瞬間、必殺の死霊弾がピエロを貫いた。
時の魔導士が仕掛けた時間停止の状態異常を破った凛太朗にカトリーヌは驚きを隠せなかった。それは神達や亜神が持つ力に近づいていることを意味していたからである。
冥界の狭間に根を下ろす神達の『桃の実』を食べた人間だからこそ成せる事ではあるが、では神の実を食べれば必ず、神の能力が顕現するかというと、それはそういう訳ではない。
幾多の闘いを経験し死線を潜り抜けなければ神の高みに達する事など到底ありえない。
カトリーヌは彼に強い意志と覚悟を垣間見た気がした。
そこには前世、魔族との戦いの中で、血に染まった戦友達の記憶、悲しみがきっとあるに違いない。
時の魔導士を倒した後、円城寺証券にいったん帰った。
そこには夜更けにも拘わらず円城寺室長の姿があった。
室長は、最近、姿を見せる事が無かったが、それはカトリーヌから聞いた話では人には想像すら出来ない宇宙の果てに行き、増大するダークエネルギーを抑え込む為に奮闘しているからだという。
その憂いを抱えている彼女が俺達を待ち構えていたという事は余程、重要な事があるのかも知れない。と凛太朗は思った。
「時の魔導士を倒した様ですね・・・でも、奴は執念深いから、やがて復活するでしょう。
数年後か?数十年後か?いや数百年後かも知れないが、再び襲って来る。
ですが、奴を追い払う事は出来ます。どうすればいいか分かりますか?
凛太朗、時間とは何ですか・・・ループ量子重力理論を知っていますか?
最近、ビックバン以前の事を説明するために天才科学者が唱えた一般相対性理論と量子力学を統合した理論です。
その理論では『時間は存在しない』とされている。
時間は重力により曲げられる。
高地と平地では時間の進み方に違いがある。
それに凛太朗、身近な例では美人の前にいると一時間でもあっという間に過ぎてしまうと感じた事はありませんか?
例えば、私の様な可愛い子と一緒だと時間が経つのが速いと思わない?」
「五月、そこは違うだろう。
僕の様な可愛い聖女と一緒にいればそうかも知れんが・・・。」
「オホン・・・カトリーヌ、死神になる前は聖女の様な心根を持っていたかも知れないけれど、死神に転生したら聖女なんて言うのは可笑しいわ・・・。」
「うーあんただって、女子高生の格好をして清純を売っているじゃない‼」
「え、それは・・・私は数万年生きているけれど、歳を取っていないからこの恰好でいいの・・・まあ、いいわ、カトリーヌと言い合いをしても始まらないわ・・・話が折れたから、ここは大人の雰囲気を持っているデルフィーヌにしましょう。
デルフィーヌと一緒だと、時間が経つのが速いというのは同意出来る?」
「オイラは納得出来る。」
「こら、エロタイガーは黙ってなさい。」
「フフフ、タイガーは正直だね・・・。
じゃ、話を戻すわね。何処まで話をしたっけ?
あそうだわ・・・宇宙はビックバンにより始まったと言われますが、実は、そうじゃない。
それは過去の出来事と言えるし未来の出来事かも知れない。
そう、時間という概念は作られたものなのです。過去も未来も存在しない。
現在の宇宙を造った私が言うことですから、間違いはありません。
だから時の魔導士が、もし目の前に現れたら時間という概念を否定してやればいい。
彼らの存在の根源を否定してあげるのです。きっと尻尾を巻いて逃げ出す事でしょう。
ところで、カトリーヌ、凛太朗、タイガー、新たな任務を与えます。
次の仕事はデルフィーヌが受け持っている異次元に行き失われた『契約の箱』と言われる古代の遺物を持ち帰る事です。
その箱の中には、あまりにも強力であるが故に禁呪となった古代魔法の呪文が書かれた魔法書が入っている筈です。
何処に行ったのか行方知れずになっていたのですが、魔女の水晶玉に啓示があった。
再び封印が解かれ魔族の手に渡れば大きな禍が起ります。
禁呪魔法は神格級の魔法です。それを決して魔族の手に渡してはいけません。
嘗て、全宇宙を巻き込んで繰り広げられた宇宙連合と魔族との戦いは、この禁呪魔法が魔族の手に渡った為に起こったと言われています。
数千年に亘る終わりなき血泥の戦いを再び起こしてはならない。
最悪の場合は契約の箱ごと処分しても下さい」
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