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【アサシン:暗殺者】NO2
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社長室にあるドアの向こうは巨大なドーム状の建造物の中だった。
事前に渡された小型の原子時計は、きっかり西暦3530年8月14日、午前9:00時を差している。アンドロイドのエルザが魔女の水晶玉に指示した時間帯だ。
一瞬の間に1250年程、タイムトラベルした事になる。
事前に得た情報では、このドーム状のコロニーは月の表側、静かの海に幾つかあるクレーターの中に位置するとされている。
地球から見れば月で餅つきをしている兎(うさぎ)に見える場所だ。1969年にアポロ11号、月面着陸船が、着地した地点でもある。
凛太朗は、神話の時代から伝わる月兎の話を思い出した。
その話は老人に扮した帝釈天という神に、猿と狐と兎が出会い、やつれた格好で食べ物を乞う老人に対し、猿は木の実を狐は魚を持って来たが、兎は一生懸命に食べ物を探したが、結局、食べ物を見つける事が出来ず、悩んだ末、老人に食べ物を与えるために火の中に飛び込み自分の身を捧げたという。この話のオチは兎を憐れんだ神が、焼けた皮を剥ぎ月に映し兎を生き返らす事で終わる。だが、兎の皮を月に映したという話が、まことしやかに後世に伝えられ、やがて、兎が神に餅を食べさせるために餅をついているという昔ばなしになったと言われている。
少し物悲しい話だが、凛太朗は古代の人々が天を仰いで見ていた地に自分が立っている事に感慨深げになった。
ドームの強化ガラスは太陽からの直射日光を遮っているが、窓から宝石のサファイヤの様に青く美しい地球が垣間見え感動した。
宇宙空港はドームの外にあり、地下通路で繋がっていだ。
月の重力は地球の六分の一の筈だが、このドーム内では、それを感じさせない様に重力が調節されている。
空港カウンターでチェックイン等の手続と保安検査を済ませ、搭乗口から地下通路を通り、月面コロニー発、地球の太平洋上にある宇宙空港行きJAL313便、200人乗りのシャトルに乗り込んだ。
アサシンは何処で、ターゲットを狙って来るのか?
当然、空港には厳重なセキュリティチェックがあり武器の類は持ち込めない。
それに視覚・聴覚・臭覚等の能力を強化し、空港のターミナルから監視しているが、怪しい人物は見当たらなかった。
事前にエルザに手配してもらった普通席20Cの座り、簡易型の宇宙服を着て、目の前の19Cの座席に来る目的の人物を待った。
ガードの対象は資料ではイヴォンヌ・フルノーという科学者になっている。
名前からヨーロッパにルーツを持つ者ではないか・・・そんな事を考えながら目的の人物が現れるのを待った。すると案の定、知的な感じがする金髪の若い女性が現れた。
事前の情報では年齢迄、書かれていなかったが、姿から察するに二十歳前後といったところに思えた。
機内に入ってからも魔物掛かった者が放つ特有の死臭や瘴気の匂いはしなかった。
もしかしたら、魔女の水晶玉からガセネタをつかまされたのかも知れない。
素敵な客室乗務員が、乗客の宇宙服、シートベルトや手荷物等のチェックで巡回して来た。
好色のタイガーが見れば、きっと鼻の下を長くすることだろう。
では、自分はと言うと勘違いして貰っては困る。俺は、そんなに面食いではない。
抗魔執行官には美人が多いからかも知れないが、特に美人でなくてもハートが暖かい女性であればいいと思っている。その事については誓ってもいい。
大きなスクリーンに機内の脱出カプセル等の位置が映し出された。フライトアテンダントから宇宙服の着用するデモがあり、間もなく出発のアナウンスがあった。重力が小さいためなのか、スムーズにシャトルは月面から離陸し、殆ど重力も感じずに、あっという間に宇宙空間に出て水平飛行に移った。シートベルトに固定されてはいるが、少し体が浮いた。機内が無重力状態になった様だ。月から地球まで、シャトルで約50時間程の旅だ。このシャトルには地球の大気圏に突入時の摩擦による高熱に耐えきれないので、窓は付いていない。だが、スクリーンで機外の様子が映し出された。地球が時間の経過と共に徐々に大きくなった。
何気なくスクリーンに見入っている時だった。
『ウゥワー・・・』思わずビックリして声が出てしまった。
ホラー映画ではないが、スクリーンの画面から山高帽を被りステッキを持った黒いスーツを着た男が突然出て来たのだ。
見間違いかと思ったので、他の乗客の様子を伺ったが、特に驚いた様子はない。俺以外に男が見えていないのだ。
この怪しい男から殺気を感じれば、乗客の目はあるが、一撃必殺で倒すための能力を開放していただろう。だが、男から危険な気は感じられなかった。
「・・・チョット攻撃は、お待ちください。
僕はカトリーヌ様、配下の死神です。怪しものではありません。
旦那、もしかしたら抗魔執行官の方ですよね?
以前、死神村で、カトリーヌ様と一緒に来られているのをお見掛けしたのを覚えています」男が思念を頭に直接送って来た。
「カトリーヌ、配下の死神殿が何故、こんなところに現れたんだ?」
「ふふふ、旦那は、もうお分かりになっているでしょう。
僕達、死神のアイテム『死の書』に、この乗り物に乗っている人達の顔が現れたものですから、慌てやって来たという次第です。
いい魂を集めて点数を稼がなきゃ、食べていけませんからね・・・。
抗魔官様は少々の事で死ぬ事はないでしょうが、気を付けて下さい」
「このシャトルに何かあるのか・・・?」
「そこまでは僕達、死神でも分かりません。
ただ、言える事は、その時は近いという事です」
事前に渡された小型の原子時計は、きっかり西暦3530年8月14日、午前9:00時を差している。アンドロイドのエルザが魔女の水晶玉に指示した時間帯だ。
一瞬の間に1250年程、タイムトラベルした事になる。
事前に得た情報では、このドーム状のコロニーは月の表側、静かの海に幾つかあるクレーターの中に位置するとされている。
地球から見れば月で餅つきをしている兎(うさぎ)に見える場所だ。1969年にアポロ11号、月面着陸船が、着地した地点でもある。
凛太朗は、神話の時代から伝わる月兎の話を思い出した。
その話は老人に扮した帝釈天という神に、猿と狐と兎が出会い、やつれた格好で食べ物を乞う老人に対し、猿は木の実を狐は魚を持って来たが、兎は一生懸命に食べ物を探したが、結局、食べ物を見つける事が出来ず、悩んだ末、老人に食べ物を与えるために火の中に飛び込み自分の身を捧げたという。この話のオチは兎を憐れんだ神が、焼けた皮を剥ぎ月に映し兎を生き返らす事で終わる。だが、兎の皮を月に映したという話が、まことしやかに後世に伝えられ、やがて、兎が神に餅を食べさせるために餅をついているという昔ばなしになったと言われている。
少し物悲しい話だが、凛太朗は古代の人々が天を仰いで見ていた地に自分が立っている事に感慨深げになった。
ドームの強化ガラスは太陽からの直射日光を遮っているが、窓から宝石のサファイヤの様に青く美しい地球が垣間見え感動した。
宇宙空港はドームの外にあり、地下通路で繋がっていだ。
月の重力は地球の六分の一の筈だが、このドーム内では、それを感じさせない様に重力が調節されている。
空港カウンターでチェックイン等の手続と保安検査を済ませ、搭乗口から地下通路を通り、月面コロニー発、地球の太平洋上にある宇宙空港行きJAL313便、200人乗りのシャトルに乗り込んだ。
アサシンは何処で、ターゲットを狙って来るのか?
当然、空港には厳重なセキュリティチェックがあり武器の類は持ち込めない。
それに視覚・聴覚・臭覚等の能力を強化し、空港のターミナルから監視しているが、怪しい人物は見当たらなかった。
事前にエルザに手配してもらった普通席20Cの座り、簡易型の宇宙服を着て、目の前の19Cの座席に来る目的の人物を待った。
ガードの対象は資料ではイヴォンヌ・フルノーという科学者になっている。
名前からヨーロッパにルーツを持つ者ではないか・・・そんな事を考えながら目的の人物が現れるのを待った。すると案の定、知的な感じがする金髪の若い女性が現れた。
事前の情報では年齢迄、書かれていなかったが、姿から察するに二十歳前後といったところに思えた。
機内に入ってからも魔物掛かった者が放つ特有の死臭や瘴気の匂いはしなかった。
もしかしたら、魔女の水晶玉からガセネタをつかまされたのかも知れない。
素敵な客室乗務員が、乗客の宇宙服、シートベルトや手荷物等のチェックで巡回して来た。
好色のタイガーが見れば、きっと鼻の下を長くすることだろう。
では、自分はと言うと勘違いして貰っては困る。俺は、そんなに面食いではない。
抗魔執行官には美人が多いからかも知れないが、特に美人でなくてもハートが暖かい女性であればいいと思っている。その事については誓ってもいい。
大きなスクリーンに機内の脱出カプセル等の位置が映し出された。フライトアテンダントから宇宙服の着用するデモがあり、間もなく出発のアナウンスがあった。重力が小さいためなのか、スムーズにシャトルは月面から離陸し、殆ど重力も感じずに、あっという間に宇宙空間に出て水平飛行に移った。シートベルトに固定されてはいるが、少し体が浮いた。機内が無重力状態になった様だ。月から地球まで、シャトルで約50時間程の旅だ。このシャトルには地球の大気圏に突入時の摩擦による高熱に耐えきれないので、窓は付いていない。だが、スクリーンで機外の様子が映し出された。地球が時間の経過と共に徐々に大きくなった。
何気なくスクリーンに見入っている時だった。
『ウゥワー・・・』思わずビックリして声が出てしまった。
ホラー映画ではないが、スクリーンの画面から山高帽を被りステッキを持った黒いスーツを着た男が突然出て来たのだ。
見間違いかと思ったので、他の乗客の様子を伺ったが、特に驚いた様子はない。俺以外に男が見えていないのだ。
この怪しい男から殺気を感じれば、乗客の目はあるが、一撃必殺で倒すための能力を開放していただろう。だが、男から危険な気は感じられなかった。
「・・・チョット攻撃は、お待ちください。
僕はカトリーヌ様、配下の死神です。怪しものではありません。
旦那、もしかしたら抗魔執行官の方ですよね?
以前、死神村で、カトリーヌ様と一緒に来られているのをお見掛けしたのを覚えています」男が思念を頭に直接送って来た。
「カトリーヌ、配下の死神殿が何故、こんなところに現れたんだ?」
「ふふふ、旦那は、もうお分かりになっているでしょう。
僕達、死神のアイテム『死の書』に、この乗り物に乗っている人達の顔が現れたものですから、慌てやって来たという次第です。
いい魂を集めて点数を稼がなきゃ、食べていけませんからね・・・。
抗魔官様は少々の事で死ぬ事はないでしょうが、気を付けて下さい」
「このシャトルに何かあるのか・・・?」
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ただ、言える事は、その時は近いという事です」
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