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【パラレルワールド】NO2 異次元の魔王
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田園調布にある西洋風の館に凛太朗は来ていた。
全世界が嘗て経験した事がない災厄は、そう、ここから始まったからだ。
あの時、インキュバスの悪巧みを未然に防いでいたなら世界を救えた筈だ。
口惜しさが、こみあげて来る。それを思って眠れない夜もあった。だがそれもこれで終わりだ。きっと明日から安眠できる日が来るに違いない。
時間を遡り過去を修正するために凛太朗達、抗魔官は始まりの時にやって来た。
だが、今からする行為は時の禁忌を犯す事になる。
過去の重要な出来事を変えれば、そこが分岐点となりパラレルワールド、並行世界が出来る事になるからである。
時間の禁忌を犯す者は大いなる力に依って妨害を受け、改ざんすれば抹殺にされる運命を辿る。
神格が高い者でない限り、到底、その力に抗う事は出来ない。
例えば、ある能力者が、飛行機事故を予知したとしよう。
その日、フライトする筈だった知人に死亡フラグ(flag:前兆・予想)が立っている事を教えたとすればどうなるか・・・?
仮に知人が難を逃れたとしても、今度は別の不慮の事故で命を落とすことになる。
タイムトラベルを行う際の注意すべき事は、未来に影響を与える恐れがある人物に極力、接触するのを避ける事である。そうしなければ知らないうちに歴史を改変してしまう事になり、禁忌を犯せば遅かれ早かれ死神を見る事になる。
時の部屋での交渉は過去を改変することで、起こる影響を憂い、当初は女神が難色を示した。
だが、『美味しいケーキが、もう食べれなくなるわよ!』と円城寺室長が放った言葉が女神を動かした。
室長は大いなる力に逆らってでも歴史を改変する覚悟を決め、交渉に臨んだ様だが、難しいと思われていた時神の赦しを貰う事が出来たのである。
時の女神がスイーツに目が無いという情報を彼女は事前に得ていたのだ。
彼女の作戦勝ちであるが、凛太朗は神という存在が如何に理不尽で身勝手な存在であるかを知った。
神を信じれば梯子を外され裏切られるかも知れない。この事を肝に銘じる事にした。
これで、時間のタブーを犯しても、時間という大きな力に妨害を受ける事はない。
後は自分達の力を信じて、確実に仕事をこなすだけだ。
今度は魔法陣を起動させる失敗は決して赦されない。
室長は破壊神に壊された星々や強大化するダークエネルギーを抑え込むため、宇宙の果てに出向く事も多い。だから抗魔官の活動は死神マスターのカトリーヌに殆ど任せているのだが、この日はインキュバスの企みを阻止する事を優先し、自ら抗魔官のメンバーを従えていた。
円城寺室長から生贄の少女の保護と女性の敵、インキュバスの瞬殺命令が下された。
洋風館の塀の外には、室長以下、全ての抗魔官が顔を揃える。
ダンスホールの広間に突入する者は特殊なフェロモンを発散し、雌の能力を無力化するインキュバスを封じる必要がある。
室長は凛太朗とタイガーの男二人にプラス、異次元に体があり現実空間ではアストラル体(精神的身体)に近い死神マスターのカトリーヌ、それにアンドロイドのエルザを選んだ。
タイガーの代わりに戦闘力の高い吸血鬼のデルフィーヌと悪魔のアンナを使いたいところだが、同じ轍を踏んで失敗する危険を避けた様だ。
指揮をする室長と吸血鬼のデルフィーヌ、エルフのチェリー、それに悪魔のアンナが万が一のために中庭で待機する事になった。
中庭には凶暴なドーベルマンが放たれている。
ダンスホールに4人が突入してから速やかに殺処分することにした。
逃亡を防ぎ秘密裏に災厄の元凶を断つため、室長は神通力で隔離空間を作り洋風館を覆い外部と遮断する。
偵察のため蝙蝠姿になりダンスホールの広間を窓ガラス越しに覗きながら、突入のタイミングを見ていたアンナが合図を送って来た。
凛太朗は、女神の強運の力を発動した。
「強運UP、10倍、1000倍、無限大、
そしてすべての抗魔官に同じ祝福を与えたまえ!」
この瞬間、神魔晶石のブレスレットの鎖が切れた。
室長から「GO」の指差があり、凛太朗とタイガーは女性陣に先駆けて行動を起こした。
タイガーは大虎に獣化、ニメートル近い塀を難なく飛び越える。
凛太朗は能力を使い、ダンスホールのレイアウト、インキュバスと覆面姿のインプ達の立ち位置を思い返しながら一気にダンスホールまでテレポートで飛んだ。
タイガーは中庭に降りると襲って来たドーベルマンを威嚇、怯んでいるのを横目で見ながら、そのまま跳躍し窓ガラスを割って突っ込んだ。
少し遅れて、アンドロイドのエルザは強拳で、派手な音を立てながら塀や建物の外壁を突き破り、ダンスホールに侵入した。途中、中庭で飛びっ掛かって来たドーベルマンを強烈なパンチを繰り出し一撃で鎮める。
エルザはダンスホールに侵入すると魔法陣に寝かされている少女を抱き上げダンスホールからいち早く連れだした。少女の血が誤って魔法陣に流れたら、幾何学模様に紡がれた魔法を起動させる事になるからだ。
凛太朗は、絶妙なタイミングで、一歩踏み込めば触手に妖刀村正の刃が届く範囲にテレポートした。
瞬間移動で実体化した凛太朗の目前にはダンスホールの高天井に届く大柄のインキュバスが、突然の侵入者に驚いて棒立ちになりながら凛太朗を睨み付けていた。
インキュバスの股間からは甘酸っぱい匂いを漂わせながら、醜い触手の頭が前方に突き出ている。
触手は毒蛇のキングコブラが蛇使いの笛に合わせて踊る様に、頭を左右に動かしながら頭をもたげていた。
インキュバスの隙を見逃さず次元ポケットの保管庫から妖刀村正を物体移動能力で召喚し、嫌悪感がある触手を難なく断ち切った。
「ぎぎゃー」インキュバスが、急所の触手を断ち切られて断末魔の悲鳴を上げた。
インキュバスは、そのまま口から泡を吹きながら倒れ込む、それを見たインプ、小悪魔達は一斉に逃走を図るが、カトリーヌとタイガーの圧倒的な力の前に反撃する事も赦されなかった。
これでインキュバス達の隙を突いた奇襲攻撃は役割分担が功を奏し作戦は見事に成功したかに思えたが・・・。
《だが・・・》これで終わりで無かった。
予想外の禍々しい気が魔法陣から立ち上がる。凛太朗達は慌て距離を取った。
魔法陣の幾何学模様が赤い血で、なぞった様に浮彫になり、吐き気を伴う瘴気が立ち上って来た。その瘴気はやがて集まり形作る。
あらわれたのは大きな角と尻尾を持つ、真っ赤な異次元の悪魔だった。
この悪魔から感じる禍々しい気は火炎竜に変態した悪魔すら可愛く思える大きさだった。
凛太朗に備わった危険予知の能力が働き警笛を鳴らした。
こいつはきっと魔界を支配する魔王か、少なくとも魔将軍クラスではないかと直感した。
全世界が嘗て経験した事がない災厄は、そう、ここから始まったからだ。
あの時、インキュバスの悪巧みを未然に防いでいたなら世界を救えた筈だ。
口惜しさが、こみあげて来る。それを思って眠れない夜もあった。だがそれもこれで終わりだ。きっと明日から安眠できる日が来るに違いない。
時間を遡り過去を修正するために凛太朗達、抗魔官は始まりの時にやって来た。
だが、今からする行為は時の禁忌を犯す事になる。
過去の重要な出来事を変えれば、そこが分岐点となりパラレルワールド、並行世界が出来る事になるからである。
時間の禁忌を犯す者は大いなる力に依って妨害を受け、改ざんすれば抹殺にされる運命を辿る。
神格が高い者でない限り、到底、その力に抗う事は出来ない。
例えば、ある能力者が、飛行機事故を予知したとしよう。
その日、フライトする筈だった知人に死亡フラグ(flag:前兆・予想)が立っている事を教えたとすればどうなるか・・・?
仮に知人が難を逃れたとしても、今度は別の不慮の事故で命を落とすことになる。
タイムトラベルを行う際の注意すべき事は、未来に影響を与える恐れがある人物に極力、接触するのを避ける事である。そうしなければ知らないうちに歴史を改変してしまう事になり、禁忌を犯せば遅かれ早かれ死神を見る事になる。
時の部屋での交渉は過去を改変することで、起こる影響を憂い、当初は女神が難色を示した。
だが、『美味しいケーキが、もう食べれなくなるわよ!』と円城寺室長が放った言葉が女神を動かした。
室長は大いなる力に逆らってでも歴史を改変する覚悟を決め、交渉に臨んだ様だが、難しいと思われていた時神の赦しを貰う事が出来たのである。
時の女神がスイーツに目が無いという情報を彼女は事前に得ていたのだ。
彼女の作戦勝ちであるが、凛太朗は神という存在が如何に理不尽で身勝手な存在であるかを知った。
神を信じれば梯子を外され裏切られるかも知れない。この事を肝に銘じる事にした。
これで、時間のタブーを犯しても、時間という大きな力に妨害を受ける事はない。
後は自分達の力を信じて、確実に仕事をこなすだけだ。
今度は魔法陣を起動させる失敗は決して赦されない。
室長は破壊神に壊された星々や強大化するダークエネルギーを抑え込むため、宇宙の果てに出向く事も多い。だから抗魔官の活動は死神マスターのカトリーヌに殆ど任せているのだが、この日はインキュバスの企みを阻止する事を優先し、自ら抗魔官のメンバーを従えていた。
円城寺室長から生贄の少女の保護と女性の敵、インキュバスの瞬殺命令が下された。
洋風館の塀の外には、室長以下、全ての抗魔官が顔を揃える。
ダンスホールの広間に突入する者は特殊なフェロモンを発散し、雌の能力を無力化するインキュバスを封じる必要がある。
室長は凛太朗とタイガーの男二人にプラス、異次元に体があり現実空間ではアストラル体(精神的身体)に近い死神マスターのカトリーヌ、それにアンドロイドのエルザを選んだ。
タイガーの代わりに戦闘力の高い吸血鬼のデルフィーヌと悪魔のアンナを使いたいところだが、同じ轍を踏んで失敗する危険を避けた様だ。
指揮をする室長と吸血鬼のデルフィーヌ、エルフのチェリー、それに悪魔のアンナが万が一のために中庭で待機する事になった。
中庭には凶暴なドーベルマンが放たれている。
ダンスホールに4人が突入してから速やかに殺処分することにした。
逃亡を防ぎ秘密裏に災厄の元凶を断つため、室長は神通力で隔離空間を作り洋風館を覆い外部と遮断する。
偵察のため蝙蝠姿になりダンスホールの広間を窓ガラス越しに覗きながら、突入のタイミングを見ていたアンナが合図を送って来た。
凛太朗は、女神の強運の力を発動した。
「強運UP、10倍、1000倍、無限大、
そしてすべての抗魔官に同じ祝福を与えたまえ!」
この瞬間、神魔晶石のブレスレットの鎖が切れた。
室長から「GO」の指差があり、凛太朗とタイガーは女性陣に先駆けて行動を起こした。
タイガーは大虎に獣化、ニメートル近い塀を難なく飛び越える。
凛太朗は能力を使い、ダンスホールのレイアウト、インキュバスと覆面姿のインプ達の立ち位置を思い返しながら一気にダンスホールまでテレポートで飛んだ。
タイガーは中庭に降りると襲って来たドーベルマンを威嚇、怯んでいるのを横目で見ながら、そのまま跳躍し窓ガラスを割って突っ込んだ。
少し遅れて、アンドロイドのエルザは強拳で、派手な音を立てながら塀や建物の外壁を突き破り、ダンスホールに侵入した。途中、中庭で飛びっ掛かって来たドーベルマンを強烈なパンチを繰り出し一撃で鎮める。
エルザはダンスホールに侵入すると魔法陣に寝かされている少女を抱き上げダンスホールからいち早く連れだした。少女の血が誤って魔法陣に流れたら、幾何学模様に紡がれた魔法を起動させる事になるからだ。
凛太朗は、絶妙なタイミングで、一歩踏み込めば触手に妖刀村正の刃が届く範囲にテレポートした。
瞬間移動で実体化した凛太朗の目前にはダンスホールの高天井に届く大柄のインキュバスが、突然の侵入者に驚いて棒立ちになりながら凛太朗を睨み付けていた。
インキュバスの股間からは甘酸っぱい匂いを漂わせながら、醜い触手の頭が前方に突き出ている。
触手は毒蛇のキングコブラが蛇使いの笛に合わせて踊る様に、頭を左右に動かしながら頭をもたげていた。
インキュバスの隙を見逃さず次元ポケットの保管庫から妖刀村正を物体移動能力で召喚し、嫌悪感がある触手を難なく断ち切った。
「ぎぎゃー」インキュバスが、急所の触手を断ち切られて断末魔の悲鳴を上げた。
インキュバスは、そのまま口から泡を吹きながら倒れ込む、それを見たインプ、小悪魔達は一斉に逃走を図るが、カトリーヌとタイガーの圧倒的な力の前に反撃する事も赦されなかった。
これでインキュバス達の隙を突いた奇襲攻撃は役割分担が功を奏し作戦は見事に成功したかに思えたが・・・。
《だが・・・》これで終わりで無かった。
予想外の禍々しい気が魔法陣から立ち上がる。凛太朗達は慌て距離を取った。
魔法陣の幾何学模様が赤い血で、なぞった様に浮彫になり、吐き気を伴う瘴気が立ち上って来た。その瘴気はやがて集まり形作る。
あらわれたのは大きな角と尻尾を持つ、真っ赤な異次元の悪魔だった。
この悪魔から感じる禍々しい気は火炎竜に変態した悪魔すら可愛く思える大きさだった。
凛太朗に備わった危険予知の能力が働き警笛を鳴らした。
こいつはきっと魔界を支配する魔王か、少なくとも魔将軍クラスではないかと直感した。
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