【伝説の強戦士 異次元 抗魔執行官編:ゴスロリ死神娘の淡い恋】

藤原サクラ

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【淫 魔(インキュバス)】NO2 悪魔アンナの憂鬱(ゆううつ)

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カトリーヌに声を掛けられたエルザは清潔感のあるビジネススーツ姿だった。
アンナは内心『この子が・・・嘘だろう』と叫んだ。アンドロイドだというが、何処をどう見ても人間に見える。しかも雌の、※あたいから見てもゾクゾク来る超の付く美人だ。
地獄の腐界で棲んでいた竜鬼のコアを使って作ったアンデットのマリオネット(Marionette:あやつり人形)は完成度が高くて、あたい的には上出来に思えたが、エルザを見ていると魔界で人形を作らせれば右に出る者はいないと言われたあたいの技術が稚拙に思えてくる。
人間らしいと言うより透き通った肌や容姿は普通の人間の域を越えている。
しかも、誰が彼女のボディを作ったのか、あたいの胸の様に洗濯板ではない。
吸血鬼のデルフィーヌ程、超爆乳ではないが、それなりに出るところは出ている。羨ましい限りだ。
彼女は円城寺証券の情報担当をしており8000年の未来のテクノロジーで作られたAI(人工知能)だという。
今は人間のボディを持っているが、何でも宇宙戦争時代にはバトルアーマー(battle armor:戦闘鎧)という空飛ぶゴーレムだったらしい。
彼女がメイドやナース服を着る時、物理的な戦闘では無双になると虎男のタイガーが言ってた。
メイドやナース服を着ればというのは、カトリーヌから何時もエロタイガーと言われる獣男のエロ願望が含まれている気がしないでもないが・・・タイガーの話は戦闘メイドはかなり強いらしい。
所謂、戦闘メイドかあるいは戦闘ナースと言ったところか?
だから機会があればエルザを怒らせて強さを確かめて見るのも面白いかなとアンナは思った。
もちろんメイドやナースの姿のエルザとである。『うふふ・・・楽しみだわ!』あたい的にはスーツ姿でもいいと思うが・・・。

エルザの話では一昔前であれば何処かに端末が無ければ、大都会東京の、あらゆる情報を集めたデーターバンクにクラッキング(不正に侵入)が出来なかったそうだが、最近では技術革新がありWi-FiやLTEの電波を利用して基地局からセキュリティの厳しいデーターバンクにアクセスし侵入ができる様になったらしい。この時代の人間達の知恵も捨てたものではない。
そればかりか遥か彼方の未来に於いて、人間達は神をも凌ぐテクノロジー(technology:科学技術)を持つ様になると信じがたい未来を彼女が話してくれた。
でも、それは現段階では予想という言葉が付くらしい。
ビックバン(Big Bang:宇宙開始時の爆発的膨張)以前の世界で、それは事実、あった事である。
だが、現在進行形の、この世界で恐竜達の様に絶滅しないで、再び神を凌ぐ力を持ち得るかどうかは未だ分からないそうだ。
ダークエネルギーの増大、巨大隕石や銀河の衝突など絶滅の要因が沢山ある。
人間が未来永劫生き延びるとは限らないからだ。だから未来に※予想が付くというのがエルザの話だ。
悪魔の、あたい的には神を凌ぐ力を、ひ弱い人間が持ち得るなど俄かに信じ難い話だが、彼女が本当に人間に作られたアンドロイドなら、人間の未来のテクノロジーは、まさに神レベルだ。神を倒すという話もなまじ嘘ではないかも知れない。

エルザは、いとも簡単にデーターバンクから防衛相の高野副大臣の立ち回り情報を取出し教えてくれた。
彼の選挙区は神奈川にあるが、何故か秘書も連れず田園調布に頻繁に通っているという情報を得て凛太朗と人間の姿になっているタイガーの三人で向かった。
勝手について来た虎男は置いておき、凛太朗に同行してもらったのは、あたいが、この世界に不慣れなので道案内を頼んだのだ。
冥界の辺境から、この世界に来た頃、もの珍しい事もあり蝙蝠姿で夜景を楽しんだ後、ネズミの姿になって街の探検をした時、何気に地下街に入ったのが間違いだった。
人間達がいう駅地下、地下迷宮に惑わされて出れなくなり、途中、人間達に踏みつぶされる様になるわで、散々な目に合った。
こんなことなら異世界でダンジョンの探索をこなして経験を積んで置くべきだったと後悔した。
この世界の電車には冥界にも地獄に行く幽霊列車があったので、驚かなかったが、円城寺証券がある麹町(こうじまち)から東京メトロ有楽町線に乗り、永田町と渋谷という所で乗り換え東急東横線の田園調布という所で降りるらしい。
『え、乗り換え?こんなの初めて乗る者には分かりゃしない。
きっと悪意があって人を惑わすために、この様に作ったに違いない。
いや、いい様に取れば日常に変化を与えるためかも知れない。
まったく、もっと考えて作れよな!  
ほんとうに人間というのはとんでもない物を作るものだ』
アンナは地下迷宮に迷った事を思い出し怒りが沸々と湧いて来た。

電車の中では小さなハムスターに姿を変え、凛太朗のポケットに入った。
『この男、ルックスがいいので、女性陣には人気がある様だが、さり気なく香水でも使っているのだろうか、いい匂いがする。男前というのはこういう匂いがするものなのか・・・?
嗚呼、僕の下半身が、子宮が疼く・・・。
それに比べて、隣にいる獣男は人間の姿になっちゃいるが、体をあまり洗った事がない様な汗の混じった独特の匂いがする。多分、こういう匂いを獣臭いと言うんだろう。
まあ、好きな男の汗や体臭、フェロモンに執着する匂いフェチの性癖を持った者もいるだろうが・・・。
それにしても、人間達は帰宅途中で昼間の仕事に疲れたのだろうが、この電車にいる殆どの者の心はグレー(灰色)、病んでいる。
スマホなる物をいじっている者は言葉を交わす訳でもなく、ひたすら何かに憑りつかれた様に小さな箱を操っているが、彼らは機械に心を蝕まれ操られているのに気が付いているのだろうか?
酒を飲んで寝込んでいる者、疲れた顔で目を閉じている者、様々な人間がいた。
悪魔のアンナには人間達の様々な心の叫び、人間模様が手に取る様に分かった。
『部長の奴、偉そうな事を言いやがって、自分で、やれってちゅうの・・・』 『あいつ生意気な事、言いやがって』 『今月、売り上げどうするかな、また課長にどやされそうだ』
『明日のプレゼンどうすっか・・・』 『今晩、ご飯のおかず何にしようかな?もう、結婚なんてするんじゃなかった』  『ああ疲れた、もうどうでもいいや、死んじゃおか・・・』etc

この心の叫び声は何なんだ!  『彼らの心は病んでいる』

悪魔らしくないが、アンナは少し人間達が哀れに思えて可哀想になった。

田園調布駅で降りて対象者の立ち寄り先を探した。
このあたりは都内有数の高級住宅街だと凛太朗が教えてくれた。
親から相続したか、余程の事をしなければ、この辺りには住めないらしい。
毎日、頑張って仕事で心をすり減らした人達が電車の中にいたが、彼らの心の叫びはともかく、あの人達はサイレント・マジョリティ(silent majority:静かな大衆)というそうだ。
彼らは、どんなに頑張っても、この田園調布には住めないとの事だ。

その家は西洋造りの建物で広い庭があり高い塀で囲まれていた。
凛太朗とタイガーには少し離れた場所で待機してもらい蝙蝠姿で塀を越えて窓に取りついた。
窓の中はダンスホールの様な広間になっていた。中には某国の秘密結社の様なローブに覆面を被った見るからに怪しい者達が数十人、ロウソクを持って幾何学模様の円環を取り囲んでいた。
悪魔のアンナには、その幾何学模様が何なのか直ぐに分かった。

『あれは魔法陣』

まもなく気を失った少女が運ばれてきた。
悪魔のアンナには、この後、覆面の者達が何をするつもりなのか予想が付いた。

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