【伝説の強戦士 異次元 抗魔執行官編:ゴスロリ死神娘の淡い恋】

藤原サクラ

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【淫 魔(インキュバス)】

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パーカー男は帝国ホテルでの密会を終えた後、再び山手線に乗り駒込駅で降りた。
食料でも買うつもりなのか、駅前のコンビニに立ち寄る。
凛太朗は先回りをして、マンションに行く道すがらの電柱の陰に再び身を隠した。
部屋に押し込んで殺る事も選択肢の一つだったが、防犯カメラに映像が残る事や騒がれる恐れもありマンションの外で奴を狙う事にした。
それに、どしゃ降りの雨は依然として続いている。それが幸いし人通りが何時もより少なく傘が隠れ蓑になるので、奴を殺処分する絶好の機会に思えたのだ。
造形能力を使い懐に村正を短剣に変えて隠し持ち傘で顔を隠しながらパーカー男がやって来るのを待った。
凛太朗は抗魔執行官になって人を何人も倒している。
それは古代ローマでの剣闘士との死闘や関ケ原での戦いで異常な精神の状況に置かれての事だ。殺さなければ命を失う事になり、やむを得なかった。
だが、これからは抗魔執行官の仕事として必要ならば殺し屋にならなければならない。
雨の音で、かき消され分かりにくい筈の奴の足音が、神経が研ぎ澄まされているからなのか異常に大きく聞こえる。
すぐそこまで来た。奴が角を曲がれば真横を通る事になる。
パーカー男は電柱の横に斜めに傘を差して、顔を隠し立っている凛太朗には気に留めていない。
心臓の鼓動が、激しく波打った。
『今だ・・・』凛太朗は妖刀村正に闘気を上げて流した。
その瞬間、切先が細長く伸びて傘の生地から突き抜け、男の延髄に突き刺さった。
脳の呼吸、心拍中枢を貫いたのだ。
男は、よろけながらも少し歩き、そのまま雨に濡れた路上に崩れ落ちた。
あっけない幕切れだ。
パーカーのフードから充血した目、浅黒い顔が覗き、口からは犬歯が見える。
息が絶えた事で魔力を使ってカモフラージュしていた本来の姿が現れたのか・・・。
人と交わり魔族の血を薄めてはいるが、奴は、やはり魔族だったに違いない。
凛太朗は、そう思った事で、少し気が楽になった。
傷口は蟲に刺された程度にしか付いていない筈だ。
証拠を残す様なヘマはしていないつもりだが、後は処理班が処置をしてくれるだろう。
情報担当をしているアンドロイドの美人、エルザに簡単に報告して現場を立ち去った。

時間を遡る事2時間前、帝国ホテルの一室ではパーカー男と初老の紳士が密談をしていた。

「15号が持ち帰ったパラレルワールドで見つけた魔樹の種子計画は、その後、どうなっているのかね?我々魔族の復活を妨げる勢力が動いている様だが・・・。」

「インキュバス様、僕が出入りしていたライブハウスで、試しに種子をバラまいたところ、案の定、発病して世間を騒がしてくれました。
モンスター病と呼ばれているみたいですが、お笑いですよ!
脳からウイルスが見つかったらしいですが、まさか種子が発病の根本的な原因だとは思いもよらないでしょう。
もう少しパラレルワールドに行って、種子を持ち帰るつもりです。
ウイルスだけでは感染力が今一つ弱いですから・・・」

「インプ15号、もう少し騒がして、世間の目をモンスター病とやらに向けるのじゃ・・・。この淫魔であるワシが人間の女達の夢に入り込んで種付けした子等が、今、着々と、この生ぬるい腐りきった人間社会を一変させる準備を進めている。
山手線に沿って巨大な魔法陣を作る計画だ。
ウフフ・・・どうやって作るか分かるか?」

「・・・・・」

「ははは・・・分かるまい。
決起の日、Xデーが来たら、種明かしをしてやるから待っているがいい。
事が成就して暗黒神様の、ご尊顔を拝める日も近いという事だけ言って置こう。

なあ、儂の精液を、お前の母親に分けてやったから15号、お前が生まれたのだ。
分かっているな、有難く思うがいい」

「インキュバス様、分かっております。
異次元に行けたり他人の夢を覗ける能力は下等な人間にはない。インキュバス様の血があってこそ、感謝しております。
欲を言えば夢を操る力が欲しいのですが・・・」

「分かっておる。
その力はきっと暗黒神様が与えて下さる」

「はは・・・」

「ふむ、分かったら、これからも励めよ!」

帝国ホテルでパーカー男と会っていた防衛相の副大臣も恐らくは魔族の流れを汲む者ではないか、そう考えた凛太朗は円城寺証券にいったん帰り五月やカトリーヌの指示を仰ぐ事にした。
相手が現政権の中枢にいる人物だけに軽はずみな行動は出来なかったからだ。

「カトリーヌ、凛太朗が目撃したという、その副大臣、少し怪しいと思わない」

「そうね、なかなか尻尾を出さないでしょうけど調べる必要がありそう。
アンナ、いる?」

「マスター、お呼びでしょうか・・・」
三人が話をしている応接室に浮かび上がる様に悪魔のアンナが現れた。

「アンナ、名前を呼ばれる前からそこにいたのか?」

「あたいは皆様の使い魔ですから、抗魔執行官、どなたからでも声が掛かれば瞬間的に、お傍に控える様に心掛けています」

「そうか、それにしても何時も君の現れ方には驚かされる。
それはさておき、防衛相の副大臣の行動を探ってくれないか・・・。
エルザ、副大臣の名前を何と言うのだ」

「高野(こうの)副大臣と言う名前かと・・・」

「アンナに、その高野副大臣の個人情報を分かる範囲で教えてあげてくれないか」

「分かりました」

「アンナ出来るだけ早く身辺を洗ってくれないか・・・嫌な予感がする」
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