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【抗魔執行官:殺し屋】

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凛太朗が異次元世界で魔物を相手に奮闘していた頃、東京では緊急事態宣言が出された後、戒厳令に切り換えられ、統治権が一時的に自衛隊に移された。
市民には何が起こっているのか知らされないまま不要不急の外出が制限され、自衛隊に加え、機動隊、SIT(特殊犯・特殊捜査係)やSAT(特殊奇襲部隊)、一般の警察官迄もが、出動し厳戒体制が敷かれた。これにより眠らない街、朝まで喧騒が絶えない大都会東京も、ひっそりと静まり返った。
対悪魔対策室、抗魔執行官にも秘密裏に警察庁から魔物退治の実行部隊として、命令が伝達された。だが、それを知る者は一部の警察幹部に限られた。
警察や自衛隊が治安を守る表の組織だとすれば対悪魔対策室は言わば裏の組織である。
UFO・宇宙人の存在を超極秘情報として政府が、ひた隠しにしている様に、魔族絡みの事件も警察上層部の指示により異次元ファイルに綴じられ不可解な事件として迷宮入り(おみや)となる。
魔族の存在を一般市民に知られては恐怖に駆られた群衆が、特殊な心理状態になり暴走するのを恐れたからである。
従って、魔族の殺し屋である抗魔執行官に陽があたる事はない。
時には戦いで命を投げ出す覚悟が必要であるにも拘わらずだ。

****************************************************************

ここは歌舞伎町、真夜中の2時、普段であれば、この時間でも酔客、アウトロー(無法者)、外国人など、さまざまな人種が闊歩し、金と女に対する欲望が渦巻き煌々と明るいネオン街には人通りが絶える事はない。だが、今夜は緊急事態宣言がされた事もあり人通りは疎らだった。
歌舞伎町では暴力事件や男女の諍(いさか)いは日常茶飯事の出来事であり、特に話題になる事ではない。この辺りで棲む住民にとっては自分の生活に影響が無ければ余程の事が無い限り無関心なのである。
突然の深夜の出来事は、もし誰かが気に留めて見ていたなら、あまりのも現実離れしており映画会社の戦隊モノの特撮をしているのか、ぐらいに勘違いされたであろう。
それは、特撮ならば、なまめかしい女性が背中から羽根が生えたコスプレ姿で剣を持ち、蜈蚣(ムカデ)や蠍(サソリ)、それに蜘蛛(クモ)姿の者達と戦うシーンだ。
女の唇からは犬歯が覗いている。

「まあ、よく見れば、私の嫌いな蟲達ばかりじゃない。
あなた達を見ていると鳥肌が立つわ・・・。
さあ蟲さん達、一気に殺してあげるから、悍(おぞ)ましい蟲に生まれ変わった事を後悔しなさい」

吸血鬼のデルフィーヌは、そう言うと、だらりと下げた手に持ったティソナデルシドという「炎の剣」に怒りの気持ちを伝えた。すると炎が立ち上がった。
その剣を横なぎにすると、炎は命を与えられた火炎の竜になり蟲達に襲い掛かった。
蟲魔族の中でも最強であるは筈のムカデ・サソリ・クモは火炎の竜に為す術もなく切り裂かれた。
ド迫力である。

港区にある青山霊園は都心にあるにも拘わらず昼間でも静粛な空気が流れている。
春にはお花見やピクニック、それに明治時代からの偉人や有名人の墓石があってパワースポットになっている。墓マニアのマニアックな趣味がなくても散策を楽しめる憩いの場所だ。夜には男女のカップルが恋を確かめる隠れた穴場になっているが、今夜の青山霊園は少し違った。

寒気がする薄気味悪い雰囲気が漂っていた。
そこにいたのは大鎌を持った髑髏顔の死神マスターのカトリーヌと使い魔になった悪魔のアンナだ。
本来、死神と悪魔は人間の魂の扱いの違いから敵対する者であり、分かり合う事はない。
ましてやアンナは魔王に仕えた元上級悪魔だ。プライドが高い上級悪魔としては隷属の印を付けられたとはいえ使い魔になる事は屈辱以外の何者でもない。
だが、今では死神マスターの力に憧れ、信奉者になり自ら進んで抗魔執行官の使い魔としての仕事をこなしていた。

「マスター、ここは僕、いや、あたいに任せて・・・。
竜鬼のコアを使ったアンデットが、上手く動くかどうかを出来具合を確かめたいんだ。
それに、あの蟲には苦手意識がある婦女子が多い様だから・・・」

「アンナ、助かるわ、ありがとう! 
黒っぽい扁平の押し潰された様な形の蟲を見た時から、
どうしようかと思っていたところなの、
あの蟲は女性の敵だわ・・・」

「でしょう。うふふ、そうだと思ったわ・・・。
さあ、あたいの人形さん、出てくるのよ!」
アンナが声を掛けると、空間が歪み、そこから鎧の上にマントを着た髑髏剣士が現れた。
彼女は傀儡子(くぐつし)の能力を使い作り出したのは髑髏剣士のアンデッドだった。
骨の間から竜鬼を倒して手に入れた赤いコアが見えている。

墓場の闇で蠢いていたのは婦女子に不快害虫として忌み嫌われる大きくなったゴキブリ型魔物だ。蟲達はカトリーヌ達を食べ物と認識したのか、4本の足と羽根を使い素早く動き襲って来た。
そこに髑髏剣士が立ちはだかり袈裟懸けに剣を振るった。
剣士は無言であるが、繰り出した剣は唸りをあげるほど鋭かった。
ゴキブリ型魔物は背中から斜めに腹まで切り裂かれ真っ二つになり血汁が飛び散った。それでも魔物は死に至らず強い生命力を見せる。
アンナはアンテッドに自ら考えて行動する知恵とネクロマンサー(死霊使い)の力を与えた様である。
髑髏剣士は数で向かって来る蟲達に対抗するため髑髏の兵隊を異世界から召喚した。

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