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【強運の力:LP(ラッキーポイント: lucky:幸運数値)】
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「あ・・・」
凛太朗が思わず、シマッタと思い声を漏らした。
その時、部屋の中に吹く筈がない風が通り抜けた気がした。
プレイヤー達はルーレットのウィール(回転盤:ホイール)の中を転がるボールを注視しているので、誰も気が付かない。
通り抜けた風によりウィールの中を転がるボールに小さな奇跡が起こした。
ほんの小さな風だったが、ボールの軌道を変えるには充分だった。
プレイヤーの衆目を集めたボールは凛太朗がチップを置いた黒10の隣、ルーレットの赤27のポケットに吸い込まれたと一瞬、思われたが、手前で滑って軌道を変え、凛太朗の賭けた黒10に入った。
「おー・・・」驚きの声と溜息が聞こえた。
「凛ちゃん、やったね!」
隣に座っていたチェリーが嬉しそうに笑いながら凛太朗に声を掛けて来て、意味ありげにウインクをするのが見えた。
この時、凛太朗は確信した。
チェリーが風魔法を使ったのだと・・・。
ぎりぎりの所で勝負に勝って、チップは360枚になった。
これでタイガーの剣と皮鎧を買い戻し、食事代、それに今夜の宿を払うには充分だったが、ルーレットを囲んでいるプレーヤー達の目に、まさか、これで止めないよな的な雰囲気があって、この場から離れる事が出来なかった。
それに強運の能力について、確認して置きたい事があったので、もう少しゲームを続ける事にした。
疑問を抱いたのは、もし、チェリーが風魔法を使わなかったら、賭けに負けていたのではないかという事だった。
いや、それは運があったからチェリーが風魔法を使ったのだと考える事も出来る。
今後、この強運を武器として、使う必要があるならば、運についてもう少し知って置く必要がある様に思えた。
凛太朗はここで仮説を立て考察してみる。
もしかしたら、戦闘では魔力の量を表すMP(マジックポイント :magic point) やダメージを数値化したHP(ヒットポイント :hit point)という考え方がある様に、運についても仮にLP(ラック・ラッキーポイント:luck:幸運数値)があるとすればどうなのか・・・。
賭け事の場合、偶数か奇数、赤か黒の場合、確率は1-2あり高確率で当たる。
当てようとすると確率が高いとLP(運の力)の消費は少なく済むと考える事ができる。
数字を一つに絞った場合は当然、的中する確率は1-36と低くなり、LPの必要量は多くなるのではないか・・・。
この考えが正しいかどうか仮説を実証してみる事にした。
赤か黒を選ぶ賭け方で100枚ずつチップを置いた。
そして、「女神よ!幸運を与えたまえ・・・」と誰にも気づかれない様に指示をし賭ける。
強運を使う事に少し後ろめたい気もしないでは無かったが、面白い様にチップが積み上がった。
100*2*2*2*2*2=3200枚
5回ゲームを繰り返し、倍々ゲームで3200枚、手持ちの260枚と合わせて3460枚になった。
今度は100枚のチップをラッキーセブンの赤7に一目に賭けた。
これは外れて隣の黒11入った。
この後、2度繰り返した。
当たらずとも遠からずではあるが、36倍の配当を狙った場合、的中したのは1度だけだった。
次にチップ500枚を黒10に賭け、「強運 2倍」と宣言して賭けた。
ボールは見事に賭けた数字に吸い込まれた。
2度繰り返し、見事に二回とも的中した。
「やはりな・・・」凛太朗は、この時、未知の女神の力、幸運の使い方を何となく会得した様に思えた。
凛太朗は神魔晶石のブレスレットで無限大の運を制約されている状態の運、それでも普通の人より数倍強い運を基準に、この時から、漠然とした願いからLPを2倍、3倍、MAXという様に数値化し明確に指示する事にした。
チップは合計42860枚になった。
少し、勝過ぎだと思ったが、勝つ者がいれば当然の事として負ける者がいる。
それが、賭け事なのだと自分に言い聞かせる。
店の片隅でタバコを吸い屯している用心棒らしき男達が、鋭い視線を送っているのが気になった。
彼らには尻尾があり、人とは違う種の者達だ。
明らかに彼らの視線には殺気があり、この後、何か起こりそうな気がした。
チップをギガに交換、飲食代を払ってギャンブル酒場を三人は出た。
酒場の外は漆黒の闇が広がっていた。
道端には所々ギガを使った隅灯りが置かれているが、殆どの場所は先が見えない闇夜だ。
闇には得体の知れない魔物達が蠢いている気配があり、時々遠吠えが聞こえてくる。
闇夜に灯りを点けながら通り過ぎる小人がいた。灯籠鬼と言われる小鬼だ。
この小鬼は闇を照らす防人の役目になっている様だ。
道行く人達は灯籠鬼に運よく出会わなければ魔物に襲われるかも知れないという不安を抱きながら、遠くにある小さな灯りを頼りに家路を急ぎ通り過ぎる。
凛太朗達はチェリーが魔法で火炎玉を空中に浮かべ灯り代わりした。
この世界では食べなくても死なないが、疲れは確実にやって来る。
ギャンブル酒場で飲んだモルヒネ成分が含まれる一角獣の馬乳酒が体から抜け切れていないのか、気分はいいが体がだるく暗闇では歩いていても眠りを誘ってくる。
チェリーが軽装だったので、儲けたギガで戦闘用の鎧を買ってあげたかったが、武具屋に行く前に宿を探し休む事にした。
ゾンビや人外の者は避けて、まともに話が出来そうな道行く人に宿の場所を聞きながら暗闇の道を歩いた。
すると予想通りにギャンブル酒場で見掛けた用心棒達が道を塞いだ。
「うひひ・・・お兄さん達、そんなに急いで何処へ行くんだい」
現れたのはギャンブル酒場で屯していた人外の者達だった。
儲けたギガをオーナーの指示で、恐らく横取りをしに来たに違いない。
「ギガの持ち逃げは困るんだな・・・お兄さんは勝過ぎなんだ。
可哀想だが、自我の無いゾンビになって貰うしかない」
彼らは見る限り武器は携帯していない様だが、理由は直ぐに分かった。
「ギギーギギー」「ワオー」「ワウ」という鳴き声と共に体が膨れ上がった。
凛太朗が思わず、シマッタと思い声を漏らした。
その時、部屋の中に吹く筈がない風が通り抜けた気がした。
プレイヤー達はルーレットのウィール(回転盤:ホイール)の中を転がるボールを注視しているので、誰も気が付かない。
通り抜けた風によりウィールの中を転がるボールに小さな奇跡が起こした。
ほんの小さな風だったが、ボールの軌道を変えるには充分だった。
プレイヤーの衆目を集めたボールは凛太朗がチップを置いた黒10の隣、ルーレットの赤27のポケットに吸い込まれたと一瞬、思われたが、手前で滑って軌道を変え、凛太朗の賭けた黒10に入った。
「おー・・・」驚きの声と溜息が聞こえた。
「凛ちゃん、やったね!」
隣に座っていたチェリーが嬉しそうに笑いながら凛太朗に声を掛けて来て、意味ありげにウインクをするのが見えた。
この時、凛太朗は確信した。
チェリーが風魔法を使ったのだと・・・。
ぎりぎりの所で勝負に勝って、チップは360枚になった。
これでタイガーの剣と皮鎧を買い戻し、食事代、それに今夜の宿を払うには充分だったが、ルーレットを囲んでいるプレーヤー達の目に、まさか、これで止めないよな的な雰囲気があって、この場から離れる事が出来なかった。
それに強運の能力について、確認して置きたい事があったので、もう少しゲームを続ける事にした。
疑問を抱いたのは、もし、チェリーが風魔法を使わなかったら、賭けに負けていたのではないかという事だった。
いや、それは運があったからチェリーが風魔法を使ったのだと考える事も出来る。
今後、この強運を武器として、使う必要があるならば、運についてもう少し知って置く必要がある様に思えた。
凛太朗はここで仮説を立て考察してみる。
もしかしたら、戦闘では魔力の量を表すMP(マジックポイント :magic point) やダメージを数値化したHP(ヒットポイント :hit point)という考え方がある様に、運についても仮にLP(ラック・ラッキーポイント:luck:幸運数値)があるとすればどうなのか・・・。
賭け事の場合、偶数か奇数、赤か黒の場合、確率は1-2あり高確率で当たる。
当てようとすると確率が高いとLP(運の力)の消費は少なく済むと考える事ができる。
数字を一つに絞った場合は当然、的中する確率は1-36と低くなり、LPの必要量は多くなるのではないか・・・。
この考えが正しいかどうか仮説を実証してみる事にした。
赤か黒を選ぶ賭け方で100枚ずつチップを置いた。
そして、「女神よ!幸運を与えたまえ・・・」と誰にも気づかれない様に指示をし賭ける。
強運を使う事に少し後ろめたい気もしないでは無かったが、面白い様にチップが積み上がった。
100*2*2*2*2*2=3200枚
5回ゲームを繰り返し、倍々ゲームで3200枚、手持ちの260枚と合わせて3460枚になった。
今度は100枚のチップをラッキーセブンの赤7に一目に賭けた。
これは外れて隣の黒11入った。
この後、2度繰り返した。
当たらずとも遠からずではあるが、36倍の配当を狙った場合、的中したのは1度だけだった。
次にチップ500枚を黒10に賭け、「強運 2倍」と宣言して賭けた。
ボールは見事に賭けた数字に吸い込まれた。
2度繰り返し、見事に二回とも的中した。
「やはりな・・・」凛太朗は、この時、未知の女神の力、幸運の使い方を何となく会得した様に思えた。
凛太朗は神魔晶石のブレスレットで無限大の運を制約されている状態の運、それでも普通の人より数倍強い運を基準に、この時から、漠然とした願いからLPを2倍、3倍、MAXという様に数値化し明確に指示する事にした。
チップは合計42860枚になった。
少し、勝過ぎだと思ったが、勝つ者がいれば当然の事として負ける者がいる。
それが、賭け事なのだと自分に言い聞かせる。
店の片隅でタバコを吸い屯している用心棒らしき男達が、鋭い視線を送っているのが気になった。
彼らには尻尾があり、人とは違う種の者達だ。
明らかに彼らの視線には殺気があり、この後、何か起こりそうな気がした。
チップをギガに交換、飲食代を払ってギャンブル酒場を三人は出た。
酒場の外は漆黒の闇が広がっていた。
道端には所々ギガを使った隅灯りが置かれているが、殆どの場所は先が見えない闇夜だ。
闇には得体の知れない魔物達が蠢いている気配があり、時々遠吠えが聞こえてくる。
闇夜に灯りを点けながら通り過ぎる小人がいた。灯籠鬼と言われる小鬼だ。
この小鬼は闇を照らす防人の役目になっている様だ。
道行く人達は灯籠鬼に運よく出会わなければ魔物に襲われるかも知れないという不安を抱きながら、遠くにある小さな灯りを頼りに家路を急ぎ通り過ぎる。
凛太朗達はチェリーが魔法で火炎玉を空中に浮かべ灯り代わりした。
この世界では食べなくても死なないが、疲れは確実にやって来る。
ギャンブル酒場で飲んだモルヒネ成分が含まれる一角獣の馬乳酒が体から抜け切れていないのか、気分はいいが体がだるく暗闇では歩いていても眠りを誘ってくる。
チェリーが軽装だったので、儲けたギガで戦闘用の鎧を買ってあげたかったが、武具屋に行く前に宿を探し休む事にした。
ゾンビや人外の者は避けて、まともに話が出来そうな道行く人に宿の場所を聞きながら暗闇の道を歩いた。
すると予想通りにギャンブル酒場で見掛けた用心棒達が道を塞いだ。
「うひひ・・・お兄さん達、そんなに急いで何処へ行くんだい」
現れたのはギャンブル酒場で屯していた人外の者達だった。
儲けたギガをオーナーの指示で、恐らく横取りをしに来たに違いない。
「ギガの持ち逃げは困るんだな・・・お兄さんは勝過ぎなんだ。
可哀想だが、自我の無いゾンビになって貰うしかない」
彼らは見る限り武器は携帯していない様だが、理由は直ぐに分かった。
「ギギーギギー」「ワオー」「ワウ」という鳴き声と共に体が膨れ上がった。
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