【伝説の強戦士 異次元 抗魔執行官編:ゴスロリ死神娘の淡い恋】

藤原サクラ

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【ギガ 王国:悪霊退治】

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優しそうな駅員に急かされて、凛太朗達は焼爛れた感じがする古ぼけた列車に飛び乗った。
行先プレートに地獄行と書かれた、この列車は三人を待っていたかの様に発車した。
車内は最近、使用されている一般的なロングシートでは無く、一昔前のレトロな感じの木枠が付いているボックスシートだ。
車内を見渡すと座席には所々に影らしき者が座っている。
それが、この列車の乗客なのだろう。シートで向かい合っている人影が、何か、こちらを伺いながら話をしている。
廃墟の町で見掛けたゾンビの類やエルフのチェリーの様に肉体を持っている者は車内には見当たらない。
三人は人影がない席を探し腰を掛けた。
何時の間にか列車は廃墟の町を抜けて、車窓から見える風景は、靄と灰色の何もない世界になっていた。
少し経って、車掌が、「次は下廃墟」と告げながら車内改札が必要ないかを確認に来た。

「車掌さん、俺達、ギガ王国迄、行きたいんだが、何処で降りればいいですか?」

「そこなら、ここから5つ目の駅ですよ」

「俺達、時間が無かったから切符を買ってないんですが・・・」

「ああ、それはキップを確認する真似はしていますが、この列車は切符は要らない事になっています。
昔は六文銭を持っている人がいましたが、最近は殆どの人がお金なんて持っていませんからね・・・。
この列車を走らせている僕達は皆、生前は鉄道マニアだった者達で、ここでは営利目的ではなく、好きな者達が列車を走らせて楽しんでいるだけですから・・・。
ところで、お客さん達、ギガ王国に行くのでしたら、ギガ通貨を持っていたら便利ですよ!
あそこは、この辺りで唯一、娯楽がある町、色んな楽しみがあって欲望を叶えてくれる。
ギガ駅を降りて直ぐの所に両替商や質屋があるので、そこで金目、そうだな、硬貨だったら交換してくれる筈ですから行ってみてください。
ここでは水を飲んだり物を食べなくても過ごせますが、厄介な事に以前の記憶が残っているので、普通にお腹が減り、お酒が飲みたくなる。
ギガ国は何でもあるので欲望を満たすにはもってこい場所ですよ!」と車掌は色々と教えてくれた。

廃墟の駅から2駅程、過ぎた頃、隣の車両から「誰か助けてくれ⁉ゴースト、悪霊が乗っている」という声がして、影達が一斉にこちらに逃げ出して来た。

「あ・あれはゴースト、逃げないと危ない。皆さん逃げてください」と慌てた様に車掌が叫んだ。

凛太朗は「え、ゴーストって、ここにいる者達、皆、幽霊じゃないか」とツッコミを入れたくなった。
タイガーに「そうだろう?」と同意を求めたが、既に彼の顔は何時もの、にやけ顔から抗魔官の顔になり立ち上がり既に背負った大剣を抜き身構えている。
彼はこのゴーストを倒す事が抗魔官の仕事として既に認識している様だ。
影達が逃げてくる方向から禍々しい者が、逃げ遅れた影を取り込みながら近づいて来るのが見えた。
タイガーは闘気を高め出遭い頭に袈裟懸けに切り裂いた。だが、剛剣も悪霊には手ごたえがなく素通りしてしまった。

「駄目だ、凛太朗、あれはエーテル体(Etheric body)だ、俺の剣では倒せない」

「チェリー、少し魔法で、時間を稼げないか?」

「凜ちゃん、任せて、エアカッター」チェリーは狭い通路なので、大掛かりな魔法は使わなかったが、時間稼ぎにエアカッターを無詠唱で連発した。
「何、何だい‼これは驚いた無詠唱かい⁉」、タイガーは彼女が魔法を無詠唱で連発したことに驚いた。
彼が以前、住んでいた異世界では無詠唱で魔法が使える術者が少なかったからだ。

凛太朗は彼女が魔法攻撃をしている間に呼吸を整えた。胸あてに変えていた村正に闘気を流して本来の姿の妖刀村正に戻す。
悪霊は、エアカッターで足止めをされていたが、チェリーが魔法を止めると、凛太朗達に襲い掛かってきた。
そこを闘気を流した村正で切り裂いた。
悪霊を切り裂く寸前に村正の闘気に大きな口を開けた顔が現れ悪霊を呑み込むのが見えた。

悪霊退治が終わると車掌が来て礼を言って頭を下げた。そして、また、何も起こらなかった様に次の車両の検札に行った。
この世界では当たり前の様に悪霊に襲われる様な事が起こっているのかも知れない。
だからきっと事が治まったら騒ぎたてる事がないのだと凛太朗は思った。

ギガ国駅を降りて、車掌が教えてくれた通り両替商に行った。
タイガーと凛太朗は、そこで持っている硬貨を両替した。
親父風の店主からギガはGB(ギガバイト)という単位で、鉱石のパワーの容量を現していると教えてくれた。
この世界では昼間、遠くにある何かの光源が辛うじて暗闇になるのを防いでいる。
その光が夜には無くなり靄と暗闇が支配する場所になる。
ギガ国ではギガを使って灯りを付け、寒さを凌ぐため火を起こす。
だから、ここでの生活にギガは不可欠な物であり、それを通貨としても、この国では使用している様だ。
ギガはタイガーの話では魔物のコア、魔石の一種ではないかと思ったとの事だが、店主の話では魔物から採れる魔石とは違い鉱山で採掘されるそうだ。
タイガーの持ち金、銀貨と銅貨数枚と凛太朗の財布の中に入っていた硬貨をギガ通貨に両替し、全部で100ギガ程になった。
両替商を出た時には既に夜になっていたが、所々にギガを利用した外灯が付いていて、営業中だと思われる店が直ぐに見つかった。
三人はギガを使い簡単な食事を取り休息をする事にした。
その店は食事処と言うより、店内にはウエイトレスの他に兎耳のバニガールが接客していて酒を飲みながら賭け事が出来る様になっていた。

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