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【灰色と混沌の世界:赤鬼 青鬼 エルフ娘】
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「ドスン・・・」
「いてて・・・姉貴のおっぱいが、ちっぱいなんて、そりゃ思いはしたが、これっぽっちも口に出しちゃいないのに、酷いぜ・・・こりゃ、打ちどころが、もう少し悪かったら、死ぬところだったぜ・・・」
「タイガー、大丈夫か・・・」
「大丈夫と言いたいところだが、2~3本肋骨を折っちまったかも・・・」
虎は猫科のなかでも特に戦闘力が高く、空中戦に於いても右にでる者はいない。
だから体を捻っての着地技は朝飯前で、少々の高さから落下しても普通は怪我をすることは無いのだが、カトリーヌに突然、突き落とされ、体を捻る余裕がなかった。
それに落ちた場所には石や岩が多かった事などが重なり、思いも依らない怪我を負ってしまったのである。
「早速、運が悪いところが出ちまった・・・それより坊やは、どうなんだ?」
「俺は、ほら、この通り、衝撃はあったが、柔らかい砂の上に落ちたのが幸いして、かすり傷ひとつ負っていない、女神から貰った幸運の加護が働いたみたいだ。
タイガー、怪我をしたのなら地獄からの再生の風とやらが吹くまで休んでいくか・・・」
「いや、それには及ばん、俺っちは、これぐらいは怪我の内に入らないから、むしろ頭が、はっきりする位さ・・・」
タイガーは、運の無さに理不尽を感じながらも傷口から滲む血を手でふき取り、舌で味わう仕草を見せながら笑った。
凛太朗は再生の風が吹くから死ぬことが無いと、少し、たかを括り後先の事を考えずに勢いで飛び降りたが、生き返るにしても、怪我をすれば痛い思いをしていただろうと考えると少し無謀だったと反省した。
それにしても獣人という種族が、どの様な者なのか知らないが、ビルにすれば5~6階がある高さから落とされ、運悪く石と硬そうな岩がある所に激突したのに肋骨が折れるぐらいの怪我で済んだのが驚かされる。
何故、この男は平気な顔で笑っているのか・・・強がりなのか、「おい、タイガー、肋骨が折れてんだろう、ほんとうに大丈夫なのか・・・」と言葉が出そうになったが、抗魔官の先輩としてのプライドがあるのかと思い口を噤んだ。
実はタイガーには痛みを受けると脳内に快楽物質のドーパミンが出て、快感と感じる性癖があるのだが、凛太朗は、そんな事は当然、知らないから、強がっているとしか思えなかった。
凛太朗が、タイガーに変態的な性癖があるのを知るのは、もう少し後になってからになる。
上空にぽっかり空いた穴から顔を覗かせて笑顔で手を振っているカトリーヌが可愛いく思えた。
少し手を上げ暫しの別れを告げてから、先ずは腐界が何処にあるのか、元刑事の経験を活かし聞き込みをして情報取集をする事にした。
この世界は灰色の空に覆われ、廃墟の様な町には霞が掛かっていた。
それでも暗くて何も見えないという訳ではなく、遠くの地平線に見える光源が辛うじて暗闇になるのを防いでいる様に思えた。
二人が落下した近くは人通りが多く、賑やかそうに見えたが、派手に音を立て落下したにも拘わらず彼らは遠巻きに見ているだけで、誰ひとり心配して声を掛けて来る者はいなかった。
よく見ると殆どの人は表情が乏しく、多くは血の気の無い青ざめた顔をしている。
ここにいる住人は人間だけではなく、異星人やタイガーの様な獣人・神話や伝説に伝承されているエルフ・ケットシー・ゴブリン、なかには首と胴、手や足が逆方向に付いたゾンビの類迄、雑多な者達が混じり人種のるつぼ?いや種族のるつぼ状態だったが、彼らは一様に何かを探しているかの様に徘徊していた。
生者に見える人に交じって、ゾンビはかなりの割合で含まれており、それは、ここがやはり死者の町である事を物語っていた。
凛太朗達は生き人に見える数人に声を掛けた。
だが、腐界の事を知る者はいないばかりか殆どの人に「ここは何処なんだ・・・知っていたら教えて欲しい」と逆に聞かれる羽目になった。
彼らは、不慮の事故など思わぬ理由で、突然、命を落としたに違いない。
自分は何処から来たのか、誰なのか、死んだ自覚すらないので、不安に苛まれているのかも知れない。
いや、もしかしたら、ここは死後、転生した別世界なのかもと凛太朗を思った。
数人に声を掛け腐界の情報を得るのは難しかもと思い始めたところ、ひとりの皮鎧を着た耳が長い女の子が目に付いたので声を掛ける。
この子は他の死人と違う反応をみせ、意外と早く手掛かりを掴む事が出来た。
「ちょっとお嬢さん、腐界っていう所を知らないかい」
「え、腐界・・・兄さん達、何処で腐界の話を聞いたんだい。
あそこは、こことは違う別世界に繋がっているという話があるから私も行ってみたいけど、途中、恐ろしい魔物がいるらしい・・・。
あ・そうだ、腐界に行くのなら一緒に連れて行ってくれないかい、兄さん達、強そうだし、この陰気臭いところが嫌だったんだ・・・そしたら道案内するからさ・・・」
「分かった。タイガー、この子を道案内に連れて行くがいいだろう・・・」
「ああ、俺っちは構わないぜ、エルフの可愛い子は大歓迎さ・・・」
その時、遠くで、「火車(かしゃ)だ、逃げろ・・・」と言う声がした。
見ると太鼓を叩き車輪から炎をあげた大きな火の車が上空から迫って来た。
「ドンドンドン・・・俺たちゃ地獄の赤鬼だ!青鬼だ!ワハハ、ワハハ、ドンドンドン・・・悪い奴らを一網打尽、ドンドンドン」
火車には頭から角が生えた大きな鬼達が乗っていて、台車の上から投網を投げて住人を捕らえ始めた。
「火車だ・・・兄さん達、逃げるわよ・・・あれに捕まると二度と、ここには帰ってこられないよ・・・」凛太朗達も彼女につられて、一緒に走り出した。
「きゃ~」だが、タイガーとエルフ娘は捕縛の網に絡み取られてしまった。
「おい坊や、獣人化すれば、こんな網など引き千切るんだが、そうすると、この娘を潰してしまいそうなんで、網を何とかしてくれ・・・」
「ははは・・・本当に運が悪いな」凛太朗は、そう言いながら、村正を抜刀し火車から伸びる手網を断ち切った。
そして、村正の鞘、内側の溝に取りつけてある小柄(こずか)を抜き、タイガーに投げる。
「タイガー、それで網を斬るんだ」
火車から先駆けて飛び降りて来たのは金棒を肩に担いだ赤鬼と人を制圧する時に使う刺又を持った青鬼だった。
凛太朗は村正の切先を鬼に向けながら大きく息をし、呼吸を整え闘気を高めた。
二匹とも彼が見上げる程、化け物じみた大きさで威圧感を感じる。
赤鬼が持つ金棒を叩き付けられたら一撃で潰されるのを覚悟しなければならない。
金棒に剣を合わすのは危険か・・・ここはスピードを活かす攻撃しかないと凛太朗は考えた。
青鬼がリーチを生かして突いてきた刺又を村正の棟(むね)で受け躱し、相手の懐に飛び込み胴を水平に切った。
村正は鬼の鎧を意に返さず肉を切る感触が手に伝わり血飛沫があがった。
赤鬼は金棒を振り回し打撃を加えてきていたが、力任せの攻撃が素早い動きをする凛太朗にあたる筈もなく空を切り大地を叩く、そこに隙を見た凛太朗は籠手を切りつけ赤鬼の手首を斬り落とした。
赤鬼は地面に倒れ手首を切られた痛さで倒れ悶絶した。
二匹の鬼をあっけなく倒した凛太朗だったが、僅かの間に次々と火車が駆け付け、何時の間にか周りを囲まれてしまった。
タイガーも網から出て大剣を構えるが、数十匹の鬼達を前に劣勢を覚悟した。
その時だった。
「待ちな、ここは私が殺るから、お前達は手出しするんじゃない」
鬼達を手で制し、現れたのは露出が大きい鎧を着た超爆乳の雌の鬼だった。
「いてて・・・姉貴のおっぱいが、ちっぱいなんて、そりゃ思いはしたが、これっぽっちも口に出しちゃいないのに、酷いぜ・・・こりゃ、打ちどころが、もう少し悪かったら、死ぬところだったぜ・・・」
「タイガー、大丈夫か・・・」
「大丈夫と言いたいところだが、2~3本肋骨を折っちまったかも・・・」
虎は猫科のなかでも特に戦闘力が高く、空中戦に於いても右にでる者はいない。
だから体を捻っての着地技は朝飯前で、少々の高さから落下しても普通は怪我をすることは無いのだが、カトリーヌに突然、突き落とされ、体を捻る余裕がなかった。
それに落ちた場所には石や岩が多かった事などが重なり、思いも依らない怪我を負ってしまったのである。
「早速、運が悪いところが出ちまった・・・それより坊やは、どうなんだ?」
「俺は、ほら、この通り、衝撃はあったが、柔らかい砂の上に落ちたのが幸いして、かすり傷ひとつ負っていない、女神から貰った幸運の加護が働いたみたいだ。
タイガー、怪我をしたのなら地獄からの再生の風とやらが吹くまで休んでいくか・・・」
「いや、それには及ばん、俺っちは、これぐらいは怪我の内に入らないから、むしろ頭が、はっきりする位さ・・・」
タイガーは、運の無さに理不尽を感じながらも傷口から滲む血を手でふき取り、舌で味わう仕草を見せながら笑った。
凛太朗は再生の風が吹くから死ぬことが無いと、少し、たかを括り後先の事を考えずに勢いで飛び降りたが、生き返るにしても、怪我をすれば痛い思いをしていただろうと考えると少し無謀だったと反省した。
それにしても獣人という種族が、どの様な者なのか知らないが、ビルにすれば5~6階がある高さから落とされ、運悪く石と硬そうな岩がある所に激突したのに肋骨が折れるぐらいの怪我で済んだのが驚かされる。
何故、この男は平気な顔で笑っているのか・・・強がりなのか、「おい、タイガー、肋骨が折れてんだろう、ほんとうに大丈夫なのか・・・」と言葉が出そうになったが、抗魔官の先輩としてのプライドがあるのかと思い口を噤んだ。
実はタイガーには痛みを受けると脳内に快楽物質のドーパミンが出て、快感と感じる性癖があるのだが、凛太朗は、そんな事は当然、知らないから、強がっているとしか思えなかった。
凛太朗が、タイガーに変態的な性癖があるのを知るのは、もう少し後になってからになる。
上空にぽっかり空いた穴から顔を覗かせて笑顔で手を振っているカトリーヌが可愛いく思えた。
少し手を上げ暫しの別れを告げてから、先ずは腐界が何処にあるのか、元刑事の経験を活かし聞き込みをして情報取集をする事にした。
この世界は灰色の空に覆われ、廃墟の様な町には霞が掛かっていた。
それでも暗くて何も見えないという訳ではなく、遠くの地平線に見える光源が辛うじて暗闇になるのを防いでいる様に思えた。
二人が落下した近くは人通りが多く、賑やかそうに見えたが、派手に音を立て落下したにも拘わらず彼らは遠巻きに見ているだけで、誰ひとり心配して声を掛けて来る者はいなかった。
よく見ると殆どの人は表情が乏しく、多くは血の気の無い青ざめた顔をしている。
ここにいる住人は人間だけではなく、異星人やタイガーの様な獣人・神話や伝説に伝承されているエルフ・ケットシー・ゴブリン、なかには首と胴、手や足が逆方向に付いたゾンビの類迄、雑多な者達が混じり人種のるつぼ?いや種族のるつぼ状態だったが、彼らは一様に何かを探しているかの様に徘徊していた。
生者に見える人に交じって、ゾンビはかなりの割合で含まれており、それは、ここがやはり死者の町である事を物語っていた。
凛太朗達は生き人に見える数人に声を掛けた。
だが、腐界の事を知る者はいないばかりか殆どの人に「ここは何処なんだ・・・知っていたら教えて欲しい」と逆に聞かれる羽目になった。
彼らは、不慮の事故など思わぬ理由で、突然、命を落としたに違いない。
自分は何処から来たのか、誰なのか、死んだ自覚すらないので、不安に苛まれているのかも知れない。
いや、もしかしたら、ここは死後、転生した別世界なのかもと凛太朗を思った。
数人に声を掛け腐界の情報を得るのは難しかもと思い始めたところ、ひとりの皮鎧を着た耳が長い女の子が目に付いたので声を掛ける。
この子は他の死人と違う反応をみせ、意外と早く手掛かりを掴む事が出来た。
「ちょっとお嬢さん、腐界っていう所を知らないかい」
「え、腐界・・・兄さん達、何処で腐界の話を聞いたんだい。
あそこは、こことは違う別世界に繋がっているという話があるから私も行ってみたいけど、途中、恐ろしい魔物がいるらしい・・・。
あ・そうだ、腐界に行くのなら一緒に連れて行ってくれないかい、兄さん達、強そうだし、この陰気臭いところが嫌だったんだ・・・そしたら道案内するからさ・・・」
「分かった。タイガー、この子を道案内に連れて行くがいいだろう・・・」
「ああ、俺っちは構わないぜ、エルフの可愛い子は大歓迎さ・・・」
その時、遠くで、「火車(かしゃ)だ、逃げろ・・・」と言う声がした。
見ると太鼓を叩き車輪から炎をあげた大きな火の車が上空から迫って来た。
「ドンドンドン・・・俺たちゃ地獄の赤鬼だ!青鬼だ!ワハハ、ワハハ、ドンドンドン・・・悪い奴らを一網打尽、ドンドンドン」
火車には頭から角が生えた大きな鬼達が乗っていて、台車の上から投網を投げて住人を捕らえ始めた。
「火車だ・・・兄さん達、逃げるわよ・・・あれに捕まると二度と、ここには帰ってこられないよ・・・」凛太朗達も彼女につられて、一緒に走り出した。
「きゃ~」だが、タイガーとエルフ娘は捕縛の網に絡み取られてしまった。
「おい坊や、獣人化すれば、こんな網など引き千切るんだが、そうすると、この娘を潰してしまいそうなんで、網を何とかしてくれ・・・」
「ははは・・・本当に運が悪いな」凛太朗は、そう言いながら、村正を抜刀し火車から伸びる手網を断ち切った。
そして、村正の鞘、内側の溝に取りつけてある小柄(こずか)を抜き、タイガーに投げる。
「タイガー、それで網を斬るんだ」
火車から先駆けて飛び降りて来たのは金棒を肩に担いだ赤鬼と人を制圧する時に使う刺又を持った青鬼だった。
凛太朗は村正の切先を鬼に向けながら大きく息をし、呼吸を整え闘気を高めた。
二匹とも彼が見上げる程、化け物じみた大きさで威圧感を感じる。
赤鬼が持つ金棒を叩き付けられたら一撃で潰されるのを覚悟しなければならない。
金棒に剣を合わすのは危険か・・・ここはスピードを活かす攻撃しかないと凛太朗は考えた。
青鬼がリーチを生かして突いてきた刺又を村正の棟(むね)で受け躱し、相手の懐に飛び込み胴を水平に切った。
村正は鬼の鎧を意に返さず肉を切る感触が手に伝わり血飛沫があがった。
赤鬼は金棒を振り回し打撃を加えてきていたが、力任せの攻撃が素早い動きをする凛太朗にあたる筈もなく空を切り大地を叩く、そこに隙を見た凛太朗は籠手を切りつけ赤鬼の手首を斬り落とした。
赤鬼は地面に倒れ手首を切られた痛さで倒れ悶絶した。
二匹の鬼をあっけなく倒した凛太朗だったが、僅かの間に次々と火車が駆け付け、何時の間にか周りを囲まれてしまった。
タイガーも網から出て大剣を構えるが、数十匹の鬼達を前に劣勢を覚悟した。
その時だった。
「待ちな、ここは私が殺るから、お前達は手出しするんじゃない」
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