【伝説の強戦士 異次元 抗魔執行官編:ゴスロリ死神娘の淡い恋】

藤原サクラ

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【運命の球と神魔晶石のブレスレット】

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運を決める抽選器のハンドルを回すと穴から玉が飛び出し転げ落ちた。
注目の中、落ちて来たのは白でも緑でも青でも、そして金でも銀でも無く、奇麗な七色の球だった。
凛太朗が、それを拾い上げ球に書いてある字を確認した。
すると球体に8という字が書かれているのが分かった。

「女神様、数字の8なので、運が8倍になるのでしょうか?
末広がりなので、縁起が、いいのでは・・・」

凛太朗の問いに先程まで口数が多く笑顔を絶やさなかった女神は何も答えず急に無口になった。そればかりか顔の表情は消え、固まって顔をひきつらせている様子が伺えた。

変に思ったカトリーヌは「凛太朗、ちょっと、それを見せて・・・え、これは・・・ひよっとして、末広がりの8ではなく・・・インフィニィー(infinity:無限)記号?」彼女も一瞬8に見えたが、よく見ると8と区別するためにクロス部分が、2か所少し切れており数字とは違う無限大の記号だと分かった。

「凛太朗、これは8では無く、無限大と表す記号だわ・・・」

「ちょっ、ちょっと待たぬか、カトレーヌ、これは何かの間違いに違いない・・・」明らかに女神は動揺していた。

「この様な球が出る筈がない・・・1000年に一度の大凶が出た次に今度は宇宙が始まって以来、初めての超大吉が出るなんて馬鹿げている。
カトリーヌ、ひよっとして神通力を使ったのか・・・」

「女神様、神の神器である抽選器に死神如きの神通力が通じる筈がありません、その事は、あなた様が一番ご存知なのでは・・・」

「うむ・・・そうであった。
だが、レインボーの球が出たからと言って、はい、そうですかと無限大の運を与えることは出来ぬ事情がある。
カトレーヌ、考えてみるがいい、これが仮に一万倍の幸運だとすると、それと同じだけの不幸が誰かに降り注ぐことになる。
幸運の女神として、金銀と数多の宝石で飾られた超豪華な神殿に住んでいるが、これは貧乏神という存在があって成り立っていることなのだ。
もう少し分かり易く説明すれば、欲深い人間達がするギャンブルを知っていよう、それに例えれば、ある人間が金貨100枚を掛けで稼いだとする。
この100枚の金貨は何処から来たのか分かるか?・・・それは10人、いや100人が勝負に負けることに依って成り立っている。
運というものは、その様なものなのじゃ・・・総量は決まっているのだ。
このイケメンの坊やに神を超える無限大の運を与えたら、同じだけ運の無い者を作ることになる。
色々な運があるが、金運に限って言えば、ひとりの人間が富を独占する事に依って、大多数の人々は餓えで苦しみ命を落とす者が増える。
カトリーヌ、それでよいのか・・・。」

「・・・分かりました、僕とて不幸な人を増やしたくはありません。
女神様、じゃ取引をしましょう・・・彼に魔族と戦える程度でいいから勝負運・強運を与えてやって下さい。
それと、100倍の凶を引いたバカ従者にも、これ以上の不運に合わない様に神の加護を与えてやってくれませんか・・・」

「ふむ、分かった、その程度ならば人間達を含めた森羅万象に、そう影響はないだろう・・・」女神は差し出した掌を開いた。すると金と銅の鎖で出来たブレスレットが現れた。

「では、この神魔晶石の付いたブレスレットを二人に与える事のしよう・・・これを首に提げておれば強運と凶運のコントロール(control:制御)が出来る。すぐれモノのアイテム(item:品物)じゃ・・・。
イケメンの坊やが持てば自身と助けたい者に神の加護を与え幸運で守る事ができる。
従者が持てば自身に降り注ぐ不運を防ぎ、それに加えて相手から運を吸い取り、災厄を与える強力な武器となる。
使い方は至って簡単、たとえば相手に向かって「超災厄を発動する」と宣言をすれば効果が現れ、相手は、その瞬間から不運に見舞われる。
魔族から見れば厄介な能力に見えるだろう・・・その代わり、どちらも効果が及ぶ範囲に制限を設ける事にする。
運のプラス、マイナスを広範囲で刈り取ってしまえば前に言った様に大変なことになるからな・・・カトリーヌ、それでよかろう・・・。」

「フォルトゥーナ様、ありがとうございます。寛大な女神様に加護があります様に・・・」

「え、ちょっと待たぬか、死神マスターの加護を受けると、数千・万年生きる神とは言え寿命が刈られ死期が早まるではないか、そんなもの、いらぬわ・・・」

「うふふ・・・遠慮はいらないですよ・・・あ、そうだ、それなら、お礼に、私の管理下にある寿命を伸ばす『桃の実』が必要になったら、何時でも食べに行って下さい。
私の配下のケルベロス達に女神様が来ても追い払わない様に言って置きますから・・・」

「おーそうか、それなら心使い受け取って置こう・・・ははは・・・カトリーヌは気が利く、死神にして置くのは惜しい逸材じゃ、人間達の間では菓子箱の底に小判を入れ内々に便宜を図って貰う習慣があると聞くが、神の世界も心づけ次第だからな、その内、上位神のなるのも夢じゃないだろう・・・」

「うふふ・・・ありがとうございます。上位神に成れる様に推薦をお願いします。
じゃ、女神様、これから腐界に棲む竜鬼の肝を取りに行きますので、お暇させて頂きます。」

「腐界の竜鬼か・・・奴は危険な魔獣、アイテムが早速、役立つかも知れん・・・。
そうだ、カトリーヌ、今度、来る時は、人間の女子達が好んで食べる洋菓子を持って来てくれないか・・・冥界では食せずとも、お腹は減らぬが、人として生きた記憶が甘い物を欲しているのじゃ・・・この間、地上に降りた天使が、仲間内で話をしているのを小耳に挟んだのだが、ドンペリニョンのシャンパンケーキが芳醇な香りがして美味だったと聞いた。
私の様な上位神は天使の手前、簡単に地上に降りる訳にいかないからな・・・その代わり、これを彼らに特別あげよう、この指輪は相手の中級魔法位なら攻撃を無効にする必須アイテムじゃ・・・」

「もう、フォルトゥーナ様ったら現金なんだから・・・分かりました、忘れずに手土産を持って来ることにします。」

女神から強運と凶運のコントロールできるブレスレットと、予想しなかった魔法攻撃を無効にできるアイテムを貰ったカトリーヌは、公平で無ければならない女神が、あれでいいのか疑問に思わずにはいられなかった。
死神のマスターにはなる事が出来たが、依然として、神の中では最下位の死神から上位神に這い上がるため、利用出来る人脈は使わせて貰うわと心に決めるのだった。

再びカトリーヌは凛太朗の手を握り、そして、タイガーにはスカートのフリルを持たせ異界の扉を開き腐界のある地獄に向かった。
カトリーヌは、今度は、いきなり外に出ることはしないで、何やら下の方を覗き込んでいる。

「凛太朗、タイガー、下を見て、ここが地獄の入り口、無数の死者達がいるのが見えるでしょう・・・彼らは冥界の門を抜けた先にあった誘惑の館で欲に誘われた者達、五欲に執着している人やオタク系の人よ、彼らは根っからの悪人ではないから、いったんは地獄に落ちるけれど魂の浄化を受けた後、短い期間で転生できる事になっている。
生前の行いが良くてポイントが溜まっていた者は再び人間に生まれ変わり、そうでない人は動物とか昆虫に生まれ変わる様に定められているらしい。
根っからの悪人は、ここを経由せず直接地獄に向かう事になっているそうだから、それは自業自得なのかも・・・。
ここは小さいけれど、ひとつの世界になっていて、町や村があり偶にやって来る地獄の鬼達の捕縛から逃げきれば生きていた時と同じ様に自由な生活ができる。
だから、彼らは未だ自分が死んだという意識が無いものが多いそうだ。
この世界の何処かに奈落の底に通じる穴があるので、そこから入って最下層の腐界を目指しなさい。
腐界には魔物達が沢山いるから竜鬼の所に行く頃には、かなり戦闘レベルが上がっているので、そう簡単には負けない筈、竜鬼を倒して肝を食べることが出来れば悪魔のメンタル攻撃にも耐える精神力が身に付くから頑張ってね・・・。
竜鬼は、少し手強いけれど、ここにも地獄の再生の風が吹くから、大怪我をしても死ぬことは無いから安心しなさい。
あと僕が一緒だとレベル上げにならないから今回は行かないわ、でも精神感応、分かり易い言葉で言えばテレパシーで何時でも話が出来る様、チャンネルは開けとくね・・・。
それと、あなたは神の桃を食べているから、切っ掛けがあれば能力が発動する筈、大切なのは上手くイメージすること、それができれば恐らくこの世界では貴方に敵う者はいないわ・・・。」

「分かった。カトリーヌ、色々、ありがとう、きっと成長して返ってくるから・・・」
凛太朗は意を決し死者の世界へ飛び降りた。

「姉貴、坊やが行っちゃいましたね・・・ひとりで大丈夫ですかね・・・」

「そうね、僕も心配なところもあるわ・・・それはそうと、タイガー、もう少し下を覗き込んで、爆乳の可愛い女の子が見えるわよ・・・」

「どこ、どこですか・・・え、押さないで、わー、落ちる・・・」

「タイガー、下では少しぐらい怪我をしても痛いだけ、直ぐに再生の風で傷が治るわ・・・
あんた、死神村で、村の子の爆乳を見て鼻の下を伸ばしていたわね、そればかりか私の乳を見て、ちっぱいなんて、きっと思ったのでしょう・・・だからバツよ!
下で凛太朗を助けなさい。」

「姉貴、それはないっす・・・わ~」       

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