【伝説の強戦士 異次元 抗魔執行官編:ゴスロリ死神娘の淡い恋】

藤原サクラ

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【死神の舞と哀歌】

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武器庫は神殿の奥にあり、扉の前に立っていた衛士に了解を得て中に入った。
そこには夥しい数の武器が置かれていた。

「凛太朗、どの武器にするかね?
ここには宇宙が創造されてから数多の星系で作られた選りすぐりの武器が揃っている。
特に対魔族に有効なのは嘗て勇者や神々が使ったとされる聖剣や神剣だが、神族を倒す事が出来る呪われた魔剣や魔法剣、それにレアな精霊剣や時空を切る事が出来る剣の類まで、大型の超未来兵器は無いが、対魔用の剣や弓、銃器など、あらゆる得物がある。
何れもアーサー王伝説に登場するエクスカリバーに匹敵する宝剣と言っても過言ではない。
神殿を守る衛士達、金鎧の兵士が腰に提げていたのが、そこに立て掛けているロングソードという剣だ。比較的軽量に出来ているから盾を持ちながら片手で扱える。
銀鎧の兵士が手に持っていたのが、槍先に斧が付いているハルバードという武器、魔族の硬い皮膚鎧を砕くのに有効だが、混戦では扱い辛い難点がある。
そして、タイガーが背中に何時も提げているのがクレイモア(大剣:Claymore)と呼ばれる破壊力のある剣だが、少々重いので凛太朗には向かぬかも知れぬ・・・主な物はこんなところかな・・・」

「坊やの体格からすれば・・・レイピアやロングソードいった剣が合っている様に思うが、これも突く、切るにスピードが無ければ魔族は倒せぬ・・・そうだ、俺っちの様に力を付けてクイレイモアを扱うか、打撃系の武器で、これに勝る物はないぞ・・・」

「タイガー、それは無理だろう、将来的には凛太朗のクレイモアもありかと思うが・・・」

「カトリーヌ、以前、警視庁で剣道を習っていたので、少しは剣も扱えると思うが、できれば、そこにある銃を使いたいのだが、駄目なのか・・・」

「戦う相手が人間や小悪魔程度なら銃でも倒せるが、相手が悪魔や眷属、それに妖魔ともなれば、それでは倒す事は出来ないわ・・・魔族には再生能力があるから、一撃で相手にダメージを与えなければ倒せないの・・・だから剣の類が一番無難な武器よ!」

凛太朗は仕方なく銃を諦めて、聖剣や魔剣を扱えるかどうか触って確かめる事にした。
奇麗な宝石や金銀で装飾された鞘に収まった神剣を持とうとした時だった。

「あ、そうだ、ちょっと待って・・・大事なこと言うのを忘れていたわ・・・。
ここにある剣には付喪神という人をたぶらかす精霊が宿った物や悪意がある魔剣もあるから、むやみやたらに触るのは危険だわ・・・いい、凛太朗、目を閉じ、心を沈めて、すると剣の声が聞こえてくる筈だから・・・剣と対話するのよ・・・。」
「剣の声、話をする?・・・」凛太朗はカトリーヌが言っていることが、半信半疑に思えたが、言われるままに目を閉じて心を沈める様にした。

「凛太朗、体の力を抜いて、さあ、リラックッスするの、ゆっくり・・・ゆっくり、そう、ゆっくりよ・・・」

カトリーヌの声が聞こえて、その声が頭の中で何度も木霊した。
やがて、何処までも深い暗闇に落ちて行く感じになり、何時の間にか意識を無くしていた。
この時、カトリーヌの催眠術に掛かっていたのかも知れない。
意識を失っていたのは一瞬だったのか、いやそうでもないかも分からない、暗闇の底から意識が戻った時、時間の感覚が無かった。

「何、なんだ・・・」

目を開けると剣達の顔やガヤガヤした声が耳に入って来た。

「おい、兄ちゃん、俺を使いな、毒をもって毒を制すという諺を知ってるかい、魔には魔剣だ。気難しい聖剣じゃ勝つ戦いも勝てはしないよ・・・」

「あら、何を言うのかと思えば、開いた口が塞がらないわ・・・あなた達だって剣の使い手に悪手を教えて何時も危うくしているじゃない」

「何を、兄ちゃん、聖剣の戯言を聞かず、俺の言う事を聞きな」「兄さん、魔剣の言うことを聞いちゃ駄目、私の事を信じて使いなさい、必ず勝たせてみせるわ」「嘘を言うな、この性悪女めが」「まあ、性悪女ですって、聞き捨てならないわ、謝りなさい」
剣達の罵り合いが続き、凛太朗は何を選んだらいいのか、余計に分からなくなった。

「凛太朗、剣の言う事に惑わされてはだめ、心意を掴むのよ」

剣達のざわめきの中、もう一度、心を落ち着かせ剣を見回してみた。
すると、武器庫の奥からで青い光を放つ剣が目に留まり、凛太朗は一瞬にして魅入られてしまった。それは有り得ない事かも知れないが、何故か旧友に会った気がしたからである。

「あ、その剣は・・・凛太朗、それはだめだ」

予想外の剣に凛太朗が手を伸ばしたため、カトリーヌの制止は間に合わなかった。
彼はソードでもクレイモアでもない、片刃の剣を選んだのである。
その剣は嘗て、魔族との宇宙戦争を繰り広げていた時代に活躍した強戦士が使った日本刀であり、銘(めい)は村正という刀だった。
刃の切れ味と、「切る物を求める」という逸話から妖刀村正と呼ばれていた業物である。
駆け出しの使い手が触ろうものなら、殆どの者が正気を無くし殺人鬼になるか、そうでなければ命を失う運命を辿ったと言われる。

「うぅぅ、熱い、胸が焼けそうだ・・・」

凛太朗が村正を触った瞬間、悪霊達の苦しむ顔が・・・悲しみ・怒り・嫌悪・恐怖といった感情が流れ込んで来て胸を焼き息が出来ない程、苦しくなった。
カトリーヌは凛太朗から血の気が引き、体が震えているのを見て刀を手から引き剥がそうとするが既に遅かった。

「こうなったら凛太朗を信じるしかないわ・・・もし、彼の気が狂っていたら、僕が責任を取る。残念だけれど僕が迂闊だったのだから、創造主に叱られる覚悟で殺処分にするわ・・・」

カトリーヌは心配していたが、目を覚ました凛太朗は何ら変わったところがなく、そればかりか、今までより落ち着いた雰囲気を纏っている様に見えた。
それは気のせいなのか・・・。

「これはどうした事なの?何を意味するのだろう・・・悪霊達が凛太朗を認めたという事なのか・・・」
凛太朗は彼女の心配をよそに刀の波紋を薄ら笑いを浮かべながら見入っていた。
彼の薄笑いが何を意味するのか・・・やはり気が触れたのか、カトリーヌは判断に迷ったので少し様子を見る事にした。

凛太朗の武器を見つけるという目的を果たし、死神村を離れる時が来た。
転移門では沢山の死神達が見送りに来ていた。
なかでも黒装束に身を包んだ爆乳の可愛い死神娘達が、舞送りをしながら哀歌を披露してくれた。

「桜の花びら ひとつ ひらひらひら 花びらふたつ ゆらゆらゆら
彷徨い何処かへ舞い落ちる 舞い落ちる
人の世は夢幻(ゆめまぼろし)のことのよう 嗚呼、悲しく無情なり 嗚呼、悲しく無情なり」

カトリーヌは死神村を訪れる度に舞子達が披露してくれる舞と歌が好きだった。
それは死神に相応しい悲しい舞と歌であり、心に沁みる哀愁を感じるからに他ならないが、同時に人として生きた時を思い出させてくれるからだった。
瞼から泪が流れ落ちるのを抑えきれずに、何時も感涙するカトリーヌだが、許せないのは泣いている僕を尻目に何時もタイガーが、死神娘達の揺れる爆乳を見て、鼻の下を長くする事だった。
この時も煩悩から、このエロタイガーが、解放される様に、みぞおちに傘で強烈な突きを見舞った。
「うぅぅ・・・」タイガーが、パラダイス(Paradise:天国)モード(mode:状態)から強引に引き戻されて、その場で崩れ落ちたのは言うまでもない。

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