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【死神の村】
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そこには住み慣れた東京の空と同じ様に太陽が昇っていた。
しかし、ここの太陽は少し赤み掛かった色をしているので、薄暗い感じがする。
驚いた事に太陽光が弱いためなのか、他にも青や緑の星が中空に浮かび幻想的に見えた。
三人が来た場所は大理石造りの広場で、足元には何か、幾何学的な模様が描かれていた。
凛太朗はガンマニアを自称しているが、結構、ファンタジー小説が好きで、読み漁った時期もあったので、その模様が魔法陣だということが直ぐに分かった。
社長室にあった扉の中に入って、内心は驚きの連続だったが、夢でも幻でも無い、自分が想像を超えた奇妙にも思える世界に来ているのだという事をあらためて実感じた。
「着いたわ、ここが、死神村、この村にある神殿の奥に武器庫がある。
少し、用を済ましたら案内をするから、それまで黙ってついて来て・・・」
すると、突然、現れた人影を見つけたのか、慌てた様子で数名の髑髏(ドクロ)の顔をした黒いナイトローブを着た者達が大鎌を手にして近づいてきた。
『まじなのか・・・』
凛太朗は死神村と彼女が口にした時点で、嫌な予感がしていたが、実際に彼らを見て震えがきそうになった。
「彼らは、この広場、転移門を守って貰っている僕の下僕達、
だから、心配しなくていい」
「えー」凛太朗はカトリーヌが何気に言った言葉に驚いた。
どう見ても髑髏顔・黒装束で大鎌を持っていれば死神じゃないか、
彼女が主人とはどういう事なんだ。
頭がパニくりそうになり額から冷汗が流れるのが分かった。
近づいて来た髑髏顔のひとりが声を掛けてきた。
「これはカトリーヌ様、よくぞお戻りくださいました。
神殿の客間に直ぐに賄(まかない)をさせますので、
おい、マスター【master:責任者】が来られた。皆に知らせるのだ。」
「隊長、気を使わなくてよい。
今日は他に用事があったので来た迄の事、だから、あまり時間が無い。
情勢報告だけ聞くことにするわ・・・」
「はー、畏まりました」
転移門から神殿までは北欧風のカラフルな家屋が連なっていた。
凛太朗は、この時、初めて馬車に乗ったが、神殿に繋がる道は石畳になっていて、殆ど揺れることは無かった。
途中、広場には女神の彫刻があり噴水の周りには死神村の住人達が集まっているのが見えた。
「凛太朗、彼らは人間の姿をしている様に見えるが、当然の事ながら人間ではない。
死神は人間を死に誘う神という事で、忌み嫌われているが、人が死に向き合う時、迷って地縛霊にならない様に冥府へ送る役目を担っているんだ。
それを僕達は冥府おくりと言っている。
冥府おくりは、三つの事「死の書」を確認し、「最後の言葉」を聞き、そして「魂の紐」の切断が一連の死神に与えられた仕事なのだ。
彼らは武装をしていない様に見えるが、戦士は戦う時に鎧を身に付けるのと同じで、死神は神通力を高める事で、髑髏顔の黒装束姿の戦闘モードになる。
そして、もう一つ冥界の神の先兵として、冥界や地獄界からの逃亡者を刈るアサシン(Assassin:刺客)の役割も与えられているんだ。」
神殿の前で馬車から降りて神殿を守っている衛士に大広間に案内された。
そこは重厚な感じがする総大理石で作られていた。
神殿の門を守っている死神兵とは違い、大広間の警備をしているのは金銀の鎧を着た兵士だった。
その衛士に案内されて、壇上に向かった。
凛太朗とタイガーは手前で待つようにカトリーヌに促され待機する。
彼女は煌びやかなローブを着た死神にエスコート(escort:付き添う)されて、ひとり壇上に上がり宝石が飾られた椅子に着席した。
「姉御は、冥界の女神ペルセポネーの右腕であり、そして、死神達を纏めるマスターなのさ・・・」タイガーは誇らしげに凛太朗に耳打ちした。
上級のローブを着た死神達は片膝を付きカトリーヌを見上げていたが、その内の一人の神が挨拶の口上を述べ、続いて情勢報告をした。
死神世界の話だけに凛太朗には殆ど理解を超えるものだったが、タイガーが死神界の情勢に付いて噛み砕いて説明してくれた。
「生きている者は誰であろうと滅せぬ者はいない、何時か朽ち果てる。
その時に魂の再生を担うのが姉御を頂点とする死神さん達なのだ。
坊や分かるか・・・。
それに対し、悪魔は人間や生き物達を甘い欲望で誘い、契約の罠に嵌める。
永遠の責め苦を与える事で、人間達から苦痛や恐怖など負のエナジー【energy:精力・元気】を絞り取るためだ。
死神と悪魔には魂の扱いに根本的に違いがある。
だから、両者には小競り合いは絶えない。宿敵だと言っていい。
本来、死神と悪魔の力は互角だったが、最近、悪魔の力が強くなってきている。
それが、カトリーヌの心配の種になっている。
彼女は死神の頂点として、機会を見つけては、ああして、心を砕いているのさ・・・」
「分かった。
ペルセポネー様に上申し、神の加護を更に高めて貰える様にする。」
「何卒、良しなに願いまする・・・」
「ところで、カトリーヌ様、この者達は何者ですか・・・」
「ああ、この者達は創造主の眷属、抗魔執行官達だ。」
「これは、これは、創造主様の眷属の方とは失礼を致しました」
「人間の彼は抗魔官見習いなので、彼に合う武器を探しに、この神殿にある武器庫にきたのだ」
「人間とは・・・我々でも悪魔は手に余る。
その眷属の魔物とて同じ、例え聖剣を使っても人間には無理があるのでは?」
「それは心配に及ばぬ、彼は神に選ばれた者、
神達の食べ物、冥界の狭間に成る桃の実を食べた者なのだ」
「何と、神の実を食べたと・・・」
「お~」死神達から、どよめきが上がった。
しかし、ここの太陽は少し赤み掛かった色をしているので、薄暗い感じがする。
驚いた事に太陽光が弱いためなのか、他にも青や緑の星が中空に浮かび幻想的に見えた。
三人が来た場所は大理石造りの広場で、足元には何か、幾何学的な模様が描かれていた。
凛太朗はガンマニアを自称しているが、結構、ファンタジー小説が好きで、読み漁った時期もあったので、その模様が魔法陣だということが直ぐに分かった。
社長室にあった扉の中に入って、内心は驚きの連続だったが、夢でも幻でも無い、自分が想像を超えた奇妙にも思える世界に来ているのだという事をあらためて実感じた。
「着いたわ、ここが、死神村、この村にある神殿の奥に武器庫がある。
少し、用を済ましたら案内をするから、それまで黙ってついて来て・・・」
すると、突然、現れた人影を見つけたのか、慌てた様子で数名の髑髏(ドクロ)の顔をした黒いナイトローブを着た者達が大鎌を手にして近づいてきた。
『まじなのか・・・』
凛太朗は死神村と彼女が口にした時点で、嫌な予感がしていたが、実際に彼らを見て震えがきそうになった。
「彼らは、この広場、転移門を守って貰っている僕の下僕達、
だから、心配しなくていい」
「えー」凛太朗はカトリーヌが何気に言った言葉に驚いた。
どう見ても髑髏顔・黒装束で大鎌を持っていれば死神じゃないか、
彼女が主人とはどういう事なんだ。
頭がパニくりそうになり額から冷汗が流れるのが分かった。
近づいて来た髑髏顔のひとりが声を掛けてきた。
「これはカトリーヌ様、よくぞお戻りくださいました。
神殿の客間に直ぐに賄(まかない)をさせますので、
おい、マスター【master:責任者】が来られた。皆に知らせるのだ。」
「隊長、気を使わなくてよい。
今日は他に用事があったので来た迄の事、だから、あまり時間が無い。
情勢報告だけ聞くことにするわ・・・」
「はー、畏まりました」
転移門から神殿までは北欧風のカラフルな家屋が連なっていた。
凛太朗は、この時、初めて馬車に乗ったが、神殿に繋がる道は石畳になっていて、殆ど揺れることは無かった。
途中、広場には女神の彫刻があり噴水の周りには死神村の住人達が集まっているのが見えた。
「凛太朗、彼らは人間の姿をしている様に見えるが、当然の事ながら人間ではない。
死神は人間を死に誘う神という事で、忌み嫌われているが、人が死に向き合う時、迷って地縛霊にならない様に冥府へ送る役目を担っているんだ。
それを僕達は冥府おくりと言っている。
冥府おくりは、三つの事「死の書」を確認し、「最後の言葉」を聞き、そして「魂の紐」の切断が一連の死神に与えられた仕事なのだ。
彼らは武装をしていない様に見えるが、戦士は戦う時に鎧を身に付けるのと同じで、死神は神通力を高める事で、髑髏顔の黒装束姿の戦闘モードになる。
そして、もう一つ冥界の神の先兵として、冥界や地獄界からの逃亡者を刈るアサシン(Assassin:刺客)の役割も与えられているんだ。」
神殿の前で馬車から降りて神殿を守っている衛士に大広間に案内された。
そこは重厚な感じがする総大理石で作られていた。
神殿の門を守っている死神兵とは違い、大広間の警備をしているのは金銀の鎧を着た兵士だった。
その衛士に案内されて、壇上に向かった。
凛太朗とタイガーは手前で待つようにカトリーヌに促され待機する。
彼女は煌びやかなローブを着た死神にエスコート(escort:付き添う)されて、ひとり壇上に上がり宝石が飾られた椅子に着席した。
「姉御は、冥界の女神ペルセポネーの右腕であり、そして、死神達を纏めるマスターなのさ・・・」タイガーは誇らしげに凛太朗に耳打ちした。
上級のローブを着た死神達は片膝を付きカトリーヌを見上げていたが、その内の一人の神が挨拶の口上を述べ、続いて情勢報告をした。
死神世界の話だけに凛太朗には殆ど理解を超えるものだったが、タイガーが死神界の情勢に付いて噛み砕いて説明してくれた。
「生きている者は誰であろうと滅せぬ者はいない、何時か朽ち果てる。
その時に魂の再生を担うのが姉御を頂点とする死神さん達なのだ。
坊や分かるか・・・。
それに対し、悪魔は人間や生き物達を甘い欲望で誘い、契約の罠に嵌める。
永遠の責め苦を与える事で、人間達から苦痛や恐怖など負のエナジー【energy:精力・元気】を絞り取るためだ。
死神と悪魔には魂の扱いに根本的に違いがある。
だから、両者には小競り合いは絶えない。宿敵だと言っていい。
本来、死神と悪魔の力は互角だったが、最近、悪魔の力が強くなってきている。
それが、カトリーヌの心配の種になっている。
彼女は死神の頂点として、機会を見つけては、ああして、心を砕いているのさ・・・」
「分かった。
ペルセポネー様に上申し、神の加護を更に高めて貰える様にする。」
「何卒、良しなに願いまする・・・」
「ところで、カトリーヌ様、この者達は何者ですか・・・」
「ああ、この者達は創造主の眷属、抗魔執行官達だ。」
「これは、これは、創造主様の眷属の方とは失礼を致しました」
「人間の彼は抗魔官見習いなので、彼に合う武器を探しに、この神殿にある武器庫にきたのだ」
「人間とは・・・我々でも悪魔は手に余る。
その眷属の魔物とて同じ、例え聖剣を使っても人間には無理があるのでは?」
「それは心配に及ばぬ、彼は神に選ばれた者、
神達の食べ物、冥界の狭間に成る桃の実を食べた者なのだ」
「何と、神の実を食べたと・・・」
「お~」死神達から、どよめきが上がった。
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