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【異界への扉】武神への挑戦 episode1
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その日の内に、これまで麴町にあった警察官の独身者向けの官舎から、このオフィスビルの上階に用意された部屋に最小限の荷物を持って移る様に命じられた。
残った荷物は後日、会社が引越センターに依頼し荷物を運んで来てくれるとのことだった。
「特に家族との思いでの物があれば身の回りに置いて大切にするがいいわ・・・」カトリーヌから、意味ありげな言葉を投げかけられた。
その時は何も思わなかったが、勘当同然に家を出てからも時々携帯で話をしていた母親に住まいが変わったことを連絡して衝撃を受けた。
「母さん、俺、証券会社に出向になったんだ」
「え、あなたどなた、番号間違っていてよ」
「母さんどうしたんだ。俺、凛太朗だよ!」
「凛太朗?家(うち)には、そんな子供はいないわよ!
どうして、私の携帯番号を知っているの?
あなた、もしかして振り込め詐欺ね・・・プププ」
その後、数回、電話したが、取り合ってもらえなかった。
挙句の果てには警察に通報するわよと言われてしまった。
『母さんが、ふざけているのか?何処かのドッキリ番組か・・・』
知人や友達にも連絡を取ったが、やはり同じ様にあしらわれた。
この時になり、漸く、カトリーヌが、何気に言った言葉の意味を理解した。
既に社会から個人の存在を消され抹殺されてしまっていたのだ。
『どうすればこんな事が出来るんだ。
人の存在を消す事ができる彼女らは何者なんだ。』
凛太朗は彼女に空恐ろしいものを感じずにはおれなかった。
もしかしたら、やまさんの存在を消したのも彼女ではと疑念が生まれた。
そして、この日から、凛太朗の日常が大きく変化した。
その不思議な扉は社長室の奥にあった。
社長室は秘書室を通る必要がある。そこには秘書室のメンバーや強面のあの虎男、タイガーが座っているので、当然、部外者は招かない限りは入室することは難しい。
それに入室管理システム、生体認証により異常な程、厳重にセキュリティ(防犯:security)がされていた。
『何があるのか・・・』
社長室に入ることができるのは抗魔執行官とマルガリーテなど少数の関係者、それに裏の仕事を手助けしてくれる幹部社員に限られていた。
普通は社長室に入室するのにセキュリティはない。
それを必要とする程、知られてはいけない何かがあるに違いない。
その答えを知る時が間もなくやって来た。
「凛太朗、廃墟で経験しただろうが、人間レベルの戦闘力では余程の強力な武器でも使わない限り、悪魔の眷属どころか、インプ(小悪魔:imp)でも手を焼くだろう。
だから、これから魔族と戦うための武器とフィジカル(肉体的・物理的:physical)を高めるために出掛けることにする。
扉の向こうで、いま見えている世界が全てじゃない事を知ることになるが、決して口外しない様に・・・。
まあ、誰も信じないだろうけれど、それは抗魔執行官の規約、掟と言った方がいいかしら、残念だけれど、漏らせば、あなたを消去しなければならない。
そうならない事を祈るわ・・・。
でも、もう後戻りは出来ないから、これからは人としての幸せは望んじゃだめ、あなたが悲しむだけだから・・・。
繰り返すわ、この事は絶対に忘れてはならない。分かった?
それじゃ行こうとするか・・・」
カトリーヌとタイガーに連れられて、凛太朗は扉の中に入ろうとした。
その時だった。
「そこの、お人、この箱から外にだして連れていってくれぬか・・・」
誰もいない筈の室内から誰かの声が聞こえた様な気がした。
「今の声は・・・」
「ああ、あれは少し性悪な魔女の水晶玉、あまりうるさいものだから反省させるため、カバンの中に閉じ込めているの・・・これから社長室に入ることがあっても、あの子に拘わっちゃだめだよ。扱いが難しいから、多分、ろくな事がないわ・・・さあ、そんな事より行くわよ!」
扉を開けた先には世界がひっくり返る秘密が隠されていた。
突然、浮遊感と体が少し捩じられる感じがして、明るい光溢れる世界が現れた。
そこの空は何処までも透き通る様に青く、奇麗だった。
遠くには虹が掛かっていて、暖かい陽射しが降り注ぎ、水平線まで色とりどりの草花が咲き乱れていた。
カトリーヌに案内され小道を歩いて行くと、遠くに大きな大樹が聳え立っていた。
「この大樹は微睡(まどろみ)の木と言うの・・・。
夥しい人や異形の動物の形をした彫刻が見えるでしょう。
あれは、この場所を訪れた異次元に入り込んで、迷い人になった成れの果て、彼らは未だ死んではいないけれど永遠に夢の世界の住人になっている。
もう彼らは現実に戻る事は出来ない。
微睡の木に殆どの生命力を吸い取られていて、今は少しの生きる力を貰って生きている状態なの・・・。
ここは冥界に近い場所、地獄の再生の風も天国の眠りに誘う優しい風も吹くから、少しでも休もうと思っちゃだめ、永遠に夢を見続けることになるから気を付けてね・・・」
微睡の木から、さらに小一時間歩くと、今度は地平線にストーンサークル(石を環状に配置した古代の遺跡)状になった場所が見えた。
中央には、甘い香りがするピンク色の花と、桃がたわわに実った木がたっていた。
この木は花を見せながらも恵の実を与えるという生態系に反する不思議な植物だった。
三人で近づくと突然、三つ首の獰猛そうな二匹の魔物がカトリーヌに襲い掛かってきた。
「あぶない」凛太朗は思わず声を出した。
「きゃ~」
カトリーヌは悲鳴を上げた。
だが、それは嬉しい悲鳴だった。
一瞬、獰猛そうな大きな猛獣が襲い掛かった様に見えたが、その猛獣は何時の間にか小さなヨークシャーテリアに姿を変えた。
そして、ちゃっかり二匹とも彼女に抱かれ尻尾をフリフリ喜んでいる。
突然、襲い掛かった狼に似た猛獣はケルベロスと言い、本来、神ハーデースが支配する冥界の番犬なのだそうだ。
使い魔の使命を与えられていて、不思議な桃の木、神の実を守るため番犬をしているとのことだった。
「ポチとハチ公、元気だった?
ここでは、お腹は減らないでしょうが、人間界から土産にドックフードを買ってきて上げたわ」
カトリーヌはゴスロリ服のスカートの中に手を入れ、大きな袋に入ったドックフードと、お椀を二つ取りだして愛犬達に与えた。
その時、黒いゴスロリ服に似つかわしくない花柄のパンティが顕わになった。
「・・・あら、二人ともパンティを見たわね?」
カトーリヌは許さないというジト目で問い詰めて来た。
「え・・・」
凛太朗は、カトリーヌが神の力を使って、異空間に物を収納していたなどと露知らず、大きな袋をどうやってスカート中に隠し持っていたのか?手品なのか?とそこが気になっていたから、突然、見ただろうと言われて気が動転した。
そればかりか顔がほてって来る。
それでも直ぐに機転を利かし知らないふりをすればよかったのかも知れないが、コミュ症が、もたげて言い繕うことが出来ず自分自身が歯痒かった。
だが、そんな事は彼女には分かりはしない。
タイガーは「姉貴、おいらは見てない、見てないすよ!」と大きなジェスチャー(身振り手振り)をしながら、とぼけている。
だが、顔の表情は言葉とは裏腹に妙な薄笑いを浮かべていた。
この男は多分、何時も彼女が、スカートから物を取り出すことを知っていて、隙間から見えるパンティの色や柄をチラ見て喜んでいるのではないか?と思った。
『奴は確信犯だ』
その時、凛太朗も彼の様な性癖を羨んだかどうかわからない。
何故、スカートの中から物を出す必要があるのかという突っ込みは、さて置き、凛太朗は目を吊り上げ恐ろしい顔をしている彼女が怖く素直に謝ってしまった。
それで、機嫌を直したのか、初心な男を虜にする笑顔で「まあいいわ」と、お許しが出たのでほっとした。
「でも、タイガー、あんたは駄目、嘘がみえみえなのよ!」
「げぇ・・・」
タイガーは、カトリーヌに、みぞおちを日傘で突かれて、唸りながら、その場に崩れ落ちた。
獣人ターガーは持ち前の軽さも働いて、言葉巧みに上手く誤魔化したつもりでいたが、彼女は彼の動物的な本能、習性などは既に、お見通しだったのである。
「さあ、凛太朗、桃の実を取って食べるのよ!
この実を食べれば本来持っている隠れた能力を何倍にも引き出すことができる。
ある日、きっと自分の能力に驚く日が来るわ・・・」
凛太朗は言われるままに木になっている桃を手に取り、皮の産毛を気にせず桃を齧った。
実は水蜜桃の様に、みずみずしく甘酸っぱく、蜜が口の中に広がった。
甘味は体に沁み透る気がして、体に何か分からないが変化が起きた気がした。
「どう、美味しかった?これで凛太朗も正式に神の眷属になったのよ!
この桃の実は神々の食べ物、上位神も永遠に寿命がある訳でないから、この実を食べて寿命を伸ばす必要がある。だから神々も時々食べにくる。
本来、欲望がある人間が食べれば、何が起こるか分からない。人間に与えることは許されないけど、今回は特別、ある方から許可をもらっているから大丈夫よ!
それで、この後、少し、レベル上げをして貰う。
凛太朗は格闘技を習っていたようだけど、それは人間レベルの話、魔族と戦える様になって貰うわ・・・」
桃の大樹が根を下ろしているストーンサークルから再び花畑を何時間か歩いた。
そこには花畑の中にポツンと赤い扉が立っている場所があった。
不思議にも、その扉が立つ向こう側を覗いても花畑があるだけだ。
彼女は、ここで何をさせるつもりなのか?疑問が頭に浮かんだ。
「さあ、凛太朗着いたわ・・・さあ、この扉の中に入るのよ!
向こうには武神がいるから修行をして来なさい。
いったん扉の向こうに入ると彼が認めなければこの扉から出る事はできない。
魔族と戦えるレベルまで、戦闘力を付けて貰える筈、それにここには地獄の再生の風が吹くからどんな事があっても死ぬ事はないわ・・・。
この扉の中では時間は止まっているから歳を取る事はない。
でも、忘れないで、気持ちをしっかり持って必ず帰って来るのよ!分かった⁈」
凛太朗は言われるまま、恐る恐る扉を開けて中に入った。
「姐さん、奴は帰って来るでしょうか?」
「それは分からん。今までに、人間で、この扉の中に入り戻って来た者はいない。」
「じゃ、何故?」
「それは凛太朗が、もし、僕が知る男の生まれ代わりなら、必ず戻って来ると思ったからだ。
結果は、ここでは直ぐ分かる筈」
『ふん、また、性懲りもなくやって来たか・・・。
どれどれ、今度の奴は、どんなステータスだ?
・・・何?お前は人間族ではないか?しかも生きている。これは驚きだ。
誰から聞いて、ここにやって来たかは知らないが、お前も力を求めてここまで、やって来た野郎どもの一人か・・・うふふふ、だが、そう簡単にいかないぞ‼
この世界では地獄の再生の風が吹く、だから決して死ぬ事はないが、儂を倒さなければ、永遠に外に出る扉は現れない。
最初に言って置く、泣きたくば、泣け、痛ければ痛いと喚き散らせ、だが、ここでは誰も助けてはくれぬ。
心が折れ、懇願するなら、手加減してやってもいい。
だが、その代わり、お前の汚いケツを差しだせ、儂の慰み者になり楽しませてくれたなら助けてやってもいい。はっはっは・・・』マッチョな武神は、そう言って高笑いした。
それから地獄の様な日が気が遠くなるほど過ぎた。
「姉貴、もう戻りましょう。奴は戻ってきはしない」
「そうだな・・・」カトリーヌ達が諦めて帰ろうとした時だった。
何者かが、扉ノブを廻すのに気が付いた。
現れたのは髭を生やし風貌が変わる程逞しくなった凛太朗だった。
「凛太朗、帰ってこれたのか・・・」カトリーヌは涙を抑えきれなかった。
「ああ、運が良かったのかも知れない。
扉の向こうには恐ろしく強い奴がいた。
多分、奴が武神だろうが、強そうな亜人達が何人も挑んでいた。
だが、何時までも誰ひとり土を付ける事さえ出来なかった。
不思議と腹が減らず餓死する事は無かったが、奴は俺達を鍛えるために手加減をしなかったので、死ぬような痛みで、心が折れそうだった。
何度も殺され掛けた。こいつには絶対勝てないと思ったが・・・でも、風が吹くとまた、俺には※神の桃を食べたからなのか、不思議と戦う力が沸いて来た。
武神と俺達の力の差はあまりのも大きかった。
時が経つにつれ、一人、二人と心が折れ、諦める奴が出た。
その内、戦うのを止める者がいた。
あそこにはただ、青い空を眺めて過ごしている奴が沢山いた。
そいつらはきっと心が折れて戦えなくなった者達だ。
最後は俺一人になった。
俺も武神が決して手が届かない高みにある事が分かっていたが、奴を倒さない扉から出られない。
俺は武神に弄ばれるという悪夢を取り払い必死で強くなるために鍛錬に集中した。
それが、結果的に俺を強くした。
やがて、奴の動きが見える様になり、それから攻撃を防げる様になった。
そして、その日は突然来た。
ある日、奴に偶々かも知れないが、勝つ事が出来たという訳だ」
「そうか、大変だったな、凛太朗が帰ったら五月も喜ぶだろう。
凛太朗、こちら側では未だ君が扉の中に入って、数日しか経っておらんが、この扉の向こうでは、数百年、いや数千年、時間が過ぎた筈だ。だから既に君には人のレベルを遥かに超える力が身に付けているだろう。
だが、これで、決して終わった訳ではない。
君には何時か魔王や魔将軍と戦える力を身に付けて欲しいと思っている。
未だ抗魔官としての修行は始まったばかりだ。
これからも命を落とさない為に鍛錬を続ける事だ。分かったな・・・。
次は凛太朗が魔族と戦うために必要な武器を探しに異界の狭間にある僕が支配する死神村の神殿に行く事にする。
そこには歴史上存在した勇者が使った聖剣や、それに魔剣の類まであるから、きっと、凛太朗にあった武器、得物が見つかる筈だ」
「えー死神村?」
「そう、怖がる事はない。
人間の知らない裏の世界は、ビックリする様な世界がある。
神々が作る世界だから何でもあり、だから、その内に慣れるだろう。
さあ、これからは先は便利な異界に繋がる扉は無いから、僕から離れるな、
異界を彷徨う迷い人になっちゃうからね・・・じゃ、凛太朗、僕の手を強く握って・・・。
タイガー、あなたは手を握っちゃだめ、やらしいからスカートのフリルでも掴んでらっしゃい。」
「姉貴、それはないっすよ」
「ふん、黙れ! エロ、タイガーめ・・・」
残った荷物は後日、会社が引越センターに依頼し荷物を運んで来てくれるとのことだった。
「特に家族との思いでの物があれば身の回りに置いて大切にするがいいわ・・・」カトリーヌから、意味ありげな言葉を投げかけられた。
その時は何も思わなかったが、勘当同然に家を出てからも時々携帯で話をしていた母親に住まいが変わったことを連絡して衝撃を受けた。
「母さん、俺、証券会社に出向になったんだ」
「え、あなたどなた、番号間違っていてよ」
「母さんどうしたんだ。俺、凛太朗だよ!」
「凛太朗?家(うち)には、そんな子供はいないわよ!
どうして、私の携帯番号を知っているの?
あなた、もしかして振り込め詐欺ね・・・プププ」
その後、数回、電話したが、取り合ってもらえなかった。
挙句の果てには警察に通報するわよと言われてしまった。
『母さんが、ふざけているのか?何処かのドッキリ番組か・・・』
知人や友達にも連絡を取ったが、やはり同じ様にあしらわれた。
この時になり、漸く、カトリーヌが、何気に言った言葉の意味を理解した。
既に社会から個人の存在を消され抹殺されてしまっていたのだ。
『どうすればこんな事が出来るんだ。
人の存在を消す事ができる彼女らは何者なんだ。』
凛太朗は彼女に空恐ろしいものを感じずにはおれなかった。
もしかしたら、やまさんの存在を消したのも彼女ではと疑念が生まれた。
そして、この日から、凛太朗の日常が大きく変化した。
その不思議な扉は社長室の奥にあった。
社長室は秘書室を通る必要がある。そこには秘書室のメンバーや強面のあの虎男、タイガーが座っているので、当然、部外者は招かない限りは入室することは難しい。
それに入室管理システム、生体認証により異常な程、厳重にセキュリティ(防犯:security)がされていた。
『何があるのか・・・』
社長室に入ることができるのは抗魔執行官とマルガリーテなど少数の関係者、それに裏の仕事を手助けしてくれる幹部社員に限られていた。
普通は社長室に入室するのにセキュリティはない。
それを必要とする程、知られてはいけない何かがあるに違いない。
その答えを知る時が間もなくやって来た。
「凛太朗、廃墟で経験しただろうが、人間レベルの戦闘力では余程の強力な武器でも使わない限り、悪魔の眷属どころか、インプ(小悪魔:imp)でも手を焼くだろう。
だから、これから魔族と戦うための武器とフィジカル(肉体的・物理的:physical)を高めるために出掛けることにする。
扉の向こうで、いま見えている世界が全てじゃない事を知ることになるが、決して口外しない様に・・・。
まあ、誰も信じないだろうけれど、それは抗魔執行官の規約、掟と言った方がいいかしら、残念だけれど、漏らせば、あなたを消去しなければならない。
そうならない事を祈るわ・・・。
でも、もう後戻りは出来ないから、これからは人としての幸せは望んじゃだめ、あなたが悲しむだけだから・・・。
繰り返すわ、この事は絶対に忘れてはならない。分かった?
それじゃ行こうとするか・・・」
カトリーヌとタイガーに連れられて、凛太朗は扉の中に入ろうとした。
その時だった。
「そこの、お人、この箱から外にだして連れていってくれぬか・・・」
誰もいない筈の室内から誰かの声が聞こえた様な気がした。
「今の声は・・・」
「ああ、あれは少し性悪な魔女の水晶玉、あまりうるさいものだから反省させるため、カバンの中に閉じ込めているの・・・これから社長室に入ることがあっても、あの子に拘わっちゃだめだよ。扱いが難しいから、多分、ろくな事がないわ・・・さあ、そんな事より行くわよ!」
扉を開けた先には世界がひっくり返る秘密が隠されていた。
突然、浮遊感と体が少し捩じられる感じがして、明るい光溢れる世界が現れた。
そこの空は何処までも透き通る様に青く、奇麗だった。
遠くには虹が掛かっていて、暖かい陽射しが降り注ぎ、水平線まで色とりどりの草花が咲き乱れていた。
カトリーヌに案内され小道を歩いて行くと、遠くに大きな大樹が聳え立っていた。
「この大樹は微睡(まどろみ)の木と言うの・・・。
夥しい人や異形の動物の形をした彫刻が見えるでしょう。
あれは、この場所を訪れた異次元に入り込んで、迷い人になった成れの果て、彼らは未だ死んではいないけれど永遠に夢の世界の住人になっている。
もう彼らは現実に戻る事は出来ない。
微睡の木に殆どの生命力を吸い取られていて、今は少しの生きる力を貰って生きている状態なの・・・。
ここは冥界に近い場所、地獄の再生の風も天国の眠りに誘う優しい風も吹くから、少しでも休もうと思っちゃだめ、永遠に夢を見続けることになるから気を付けてね・・・」
微睡の木から、さらに小一時間歩くと、今度は地平線にストーンサークル(石を環状に配置した古代の遺跡)状になった場所が見えた。
中央には、甘い香りがするピンク色の花と、桃がたわわに実った木がたっていた。
この木は花を見せながらも恵の実を与えるという生態系に反する不思議な植物だった。
三人で近づくと突然、三つ首の獰猛そうな二匹の魔物がカトリーヌに襲い掛かってきた。
「あぶない」凛太朗は思わず声を出した。
「きゃ~」
カトリーヌは悲鳴を上げた。
だが、それは嬉しい悲鳴だった。
一瞬、獰猛そうな大きな猛獣が襲い掛かった様に見えたが、その猛獣は何時の間にか小さなヨークシャーテリアに姿を変えた。
そして、ちゃっかり二匹とも彼女に抱かれ尻尾をフリフリ喜んでいる。
突然、襲い掛かった狼に似た猛獣はケルベロスと言い、本来、神ハーデースが支配する冥界の番犬なのだそうだ。
使い魔の使命を与えられていて、不思議な桃の木、神の実を守るため番犬をしているとのことだった。
「ポチとハチ公、元気だった?
ここでは、お腹は減らないでしょうが、人間界から土産にドックフードを買ってきて上げたわ」
カトリーヌはゴスロリ服のスカートの中に手を入れ、大きな袋に入ったドックフードと、お椀を二つ取りだして愛犬達に与えた。
その時、黒いゴスロリ服に似つかわしくない花柄のパンティが顕わになった。
「・・・あら、二人ともパンティを見たわね?」
カトーリヌは許さないというジト目で問い詰めて来た。
「え・・・」
凛太朗は、カトリーヌが神の力を使って、異空間に物を収納していたなどと露知らず、大きな袋をどうやってスカート中に隠し持っていたのか?手品なのか?とそこが気になっていたから、突然、見ただろうと言われて気が動転した。
そればかりか顔がほてって来る。
それでも直ぐに機転を利かし知らないふりをすればよかったのかも知れないが、コミュ症が、もたげて言い繕うことが出来ず自分自身が歯痒かった。
だが、そんな事は彼女には分かりはしない。
タイガーは「姉貴、おいらは見てない、見てないすよ!」と大きなジェスチャー(身振り手振り)をしながら、とぼけている。
だが、顔の表情は言葉とは裏腹に妙な薄笑いを浮かべていた。
この男は多分、何時も彼女が、スカートから物を取り出すことを知っていて、隙間から見えるパンティの色や柄をチラ見て喜んでいるのではないか?と思った。
『奴は確信犯だ』
その時、凛太朗も彼の様な性癖を羨んだかどうかわからない。
何故、スカートの中から物を出す必要があるのかという突っ込みは、さて置き、凛太朗は目を吊り上げ恐ろしい顔をしている彼女が怖く素直に謝ってしまった。
それで、機嫌を直したのか、初心な男を虜にする笑顔で「まあいいわ」と、お許しが出たのでほっとした。
「でも、タイガー、あんたは駄目、嘘がみえみえなのよ!」
「げぇ・・・」
タイガーは、カトリーヌに、みぞおちを日傘で突かれて、唸りながら、その場に崩れ落ちた。
獣人ターガーは持ち前の軽さも働いて、言葉巧みに上手く誤魔化したつもりでいたが、彼女は彼の動物的な本能、習性などは既に、お見通しだったのである。
「さあ、凛太朗、桃の実を取って食べるのよ!
この実を食べれば本来持っている隠れた能力を何倍にも引き出すことができる。
ある日、きっと自分の能力に驚く日が来るわ・・・」
凛太朗は言われるままに木になっている桃を手に取り、皮の産毛を気にせず桃を齧った。
実は水蜜桃の様に、みずみずしく甘酸っぱく、蜜が口の中に広がった。
甘味は体に沁み透る気がして、体に何か分からないが変化が起きた気がした。
「どう、美味しかった?これで凛太朗も正式に神の眷属になったのよ!
この桃の実は神々の食べ物、上位神も永遠に寿命がある訳でないから、この実を食べて寿命を伸ばす必要がある。だから神々も時々食べにくる。
本来、欲望がある人間が食べれば、何が起こるか分からない。人間に与えることは許されないけど、今回は特別、ある方から許可をもらっているから大丈夫よ!
それで、この後、少し、レベル上げをして貰う。
凛太朗は格闘技を習っていたようだけど、それは人間レベルの話、魔族と戦える様になって貰うわ・・・」
桃の大樹が根を下ろしているストーンサークルから再び花畑を何時間か歩いた。
そこには花畑の中にポツンと赤い扉が立っている場所があった。
不思議にも、その扉が立つ向こう側を覗いても花畑があるだけだ。
彼女は、ここで何をさせるつもりなのか?疑問が頭に浮かんだ。
「さあ、凛太朗着いたわ・・・さあ、この扉の中に入るのよ!
向こうには武神がいるから修行をして来なさい。
いったん扉の向こうに入ると彼が認めなければこの扉から出る事はできない。
魔族と戦えるレベルまで、戦闘力を付けて貰える筈、それにここには地獄の再生の風が吹くからどんな事があっても死ぬ事はないわ・・・。
この扉の中では時間は止まっているから歳を取る事はない。
でも、忘れないで、気持ちをしっかり持って必ず帰って来るのよ!分かった⁈」
凛太朗は言われるまま、恐る恐る扉を開けて中に入った。
「姐さん、奴は帰って来るでしょうか?」
「それは分からん。今までに、人間で、この扉の中に入り戻って来た者はいない。」
「じゃ、何故?」
「それは凛太朗が、もし、僕が知る男の生まれ代わりなら、必ず戻って来ると思ったからだ。
結果は、ここでは直ぐ分かる筈」
『ふん、また、性懲りもなくやって来たか・・・。
どれどれ、今度の奴は、どんなステータスだ?
・・・何?お前は人間族ではないか?しかも生きている。これは驚きだ。
誰から聞いて、ここにやって来たかは知らないが、お前も力を求めてここまで、やって来た野郎どもの一人か・・・うふふふ、だが、そう簡単にいかないぞ‼
この世界では地獄の再生の風が吹く、だから決して死ぬ事はないが、儂を倒さなければ、永遠に外に出る扉は現れない。
最初に言って置く、泣きたくば、泣け、痛ければ痛いと喚き散らせ、だが、ここでは誰も助けてはくれぬ。
心が折れ、懇願するなら、手加減してやってもいい。
だが、その代わり、お前の汚いケツを差しだせ、儂の慰み者になり楽しませてくれたなら助けてやってもいい。はっはっは・・・』マッチョな武神は、そう言って高笑いした。
それから地獄の様な日が気が遠くなるほど過ぎた。
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「そうだな・・・」カトリーヌ達が諦めて帰ろうとした時だった。
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「凛太朗、帰ってこれたのか・・・」カトリーヌは涙を抑えきれなかった。
「ああ、運が良かったのかも知れない。
扉の向こうには恐ろしく強い奴がいた。
多分、奴が武神だろうが、強そうな亜人達が何人も挑んでいた。
だが、何時までも誰ひとり土を付ける事さえ出来なかった。
不思議と腹が減らず餓死する事は無かったが、奴は俺達を鍛えるために手加減をしなかったので、死ぬような痛みで、心が折れそうだった。
何度も殺され掛けた。こいつには絶対勝てないと思ったが・・・でも、風が吹くとまた、俺には※神の桃を食べたからなのか、不思議と戦う力が沸いて来た。
武神と俺達の力の差はあまりのも大きかった。
時が経つにつれ、一人、二人と心が折れ、諦める奴が出た。
その内、戦うのを止める者がいた。
あそこにはただ、青い空を眺めて過ごしている奴が沢山いた。
そいつらはきっと心が折れて戦えなくなった者達だ。
最後は俺一人になった。
俺も武神が決して手が届かない高みにある事が分かっていたが、奴を倒さない扉から出られない。
俺は武神に弄ばれるという悪夢を取り払い必死で強くなるために鍛錬に集中した。
それが、結果的に俺を強くした。
やがて、奴の動きが見える様になり、それから攻撃を防げる様になった。
そして、その日は突然来た。
ある日、奴に偶々かも知れないが、勝つ事が出来たという訳だ」
「そうか、大変だったな、凛太朗が帰ったら五月も喜ぶだろう。
凛太朗、こちら側では未だ君が扉の中に入って、数日しか経っておらんが、この扉の向こうでは、数百年、いや数千年、時間が過ぎた筈だ。だから既に君には人のレベルを遥かに超える力が身に付けているだろう。
だが、これで、決して終わった訳ではない。
君には何時か魔王や魔将軍と戦える力を身に付けて欲しいと思っている。
未だ抗魔官としての修行は始まったばかりだ。
これからも命を落とさない為に鍛錬を続ける事だ。分かったな・・・。
次は凛太朗が魔族と戦うために必要な武器を探しに異界の狭間にある僕が支配する死神村の神殿に行く事にする。
そこには歴史上存在した勇者が使った聖剣や、それに魔剣の類まであるから、きっと、凛太朗にあった武器、得物が見つかる筈だ」
「えー死神村?」
「そう、怖がる事はない。
人間の知らない裏の世界は、ビックリする様な世界がある。
神々が作る世界だから何でもあり、だから、その内に慣れるだろう。
さあ、これからは先は便利な異界に繋がる扉は無いから、僕から離れるな、
異界を彷徨う迷い人になっちゃうからね・・・じゃ、凛太朗、僕の手を強く握って・・・。
タイガー、あなたは手を握っちゃだめ、やらしいからスカートのフリルでも掴んでらっしゃい。」
「姉貴、それはないっすよ」
「ふん、黙れ! エロ、タイガーめ・・・」
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ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。
扉を閉めて、鍵をかけて。
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死神には生命の火が消せるって言うじゃないですか。
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わたしたちに火を消す権利などは無く、ただ、生命の側に行き、灯が消えるまで寄り添って、お話をする。
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異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
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なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
巻き込まれ召喚された賢者は追放メンツでパーティー組んで旅をする。
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2019年ファンタジー小説大賞 190位!
読者の皆様、ありがとうございました!
婚約破棄され家から追放された悪役令嬢が実は優秀な槍斧使いだったり。
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小説大賞参加中
外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件
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2024/10/05 HOT男性向けランキング一位。
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
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10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
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これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます(Ver.02)
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俺の名は錬是(れんぜ)。開拓や開発に適した惑星を探す惑星ハンターだ。
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筆者より。
なろうで連載中の「未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます」に若干の手直しを加えたVer.02として連載します。
なお、連載も長くなりましたが、第五章の「幸せ」までで錬是を主人公とした物語自体はいったん完結しています。それ以降は<錬是視点の別の物語>と捉えていただいても間違いではないでしょう。
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