86 / 133
第七章 白山女子寮連続パンツ失踪事件-前編
第八話 上原いちごの消失
しおりを挟む
翌々日の日曜日――午後から梨恵は登校していた。
最近は雨が続いている。テニス部の活動は、体育館でのトレーニングばかりだ。ゆえに、晴れている日曜日に練習しようということになった。
練習は十六時に終わり、梨恵は寮へ帰って来た。部屋に一冴の姿はない。今日は紅子と街へ出ているのだ。いつもは二人がいる部屋に一人でいる。
同居人のことが気にかかったのはそんな時だ。
一冴に対する違和感は、梨恵の中で一つの想像につながっていた。あくまでもそれは想像にすぎない――何しろ、あまりにも突拍子がないのだから。
――いちごちゃんが男の子だなんて。
だが、もしもそう考えると、ばらばらの違和感が一つに繋がる。女性に恋をするのも、軍事が好きなのも男子らしい。クラスメイトの前で着替えたがらないのもそうだ。夜中にいなくなるのは――。
更衣室にトランクスが落ちていた件も、下着泥棒も――ひょっとしたら。
いや、トランクスの件は関係がないのかもしれない。それこそ一冴にはアリバイがある。
――なら、何で落ちてた?
妙なことが一冴の周りで起きているのはなぜだ。
気になりだしたら止まらなかった。
同時に、魔が差す。一冴は紅子とよく外出するが、帰るのはいつも十七時すぎだ。それまでに、少し調べてみるのはどうだろう。
当然、気は咎める。
事実、常識的に考えればあり得ないではないか。周りには女子しかいない、恋の一つも咲かない。だからそんな想像をするのではないか。
何かを盗むわけではない――一冴が女子であるという当然のことを確認するだけだ。それくらい罪はないではないか。
一冴のクローゼットへそっと近づいた。
クローゼットを開け、下にある小型の箪笥を開ける。一冴の下着が竝んでいた。ショーツにブラジャーに靴下。一冴が帰ってくることを警戒し、廊下の跫音に耳をそばだてる。すぐに閉めても違和感がないよう、慎重に調べた。
――やっぱ、私の箪笥の中と変わらんが。
当然の事実に安心すると同時に落胆する。
もちろん、盗まれたショーツなどあるわけがない。
そう思っていた矢先であった。
箪笥の最奥部に、見たことがない物を見た。
それは、ビニール袋に入れられた女性の胸だった。当然、作り物なのだが、リアルな乳首までついている。明らかに、ない胸を盛るための物だ。
――あの貧乳のいちごちゃんにぇ?
そこまで考え、箪笥の奥に偽乳を戻した。元と同じように下着も整え、箪笥を閉める。見てはいけない物を見てしまったからだ。
それに、一冴もいつ帰ってくるか分からない。
だが、梨恵は引っかかる。
――誰が?
この部屋へ帰ってくるのは「誰」なのだろう。
最近は雨が続いている。テニス部の活動は、体育館でのトレーニングばかりだ。ゆえに、晴れている日曜日に練習しようということになった。
練習は十六時に終わり、梨恵は寮へ帰って来た。部屋に一冴の姿はない。今日は紅子と街へ出ているのだ。いつもは二人がいる部屋に一人でいる。
同居人のことが気にかかったのはそんな時だ。
一冴に対する違和感は、梨恵の中で一つの想像につながっていた。あくまでもそれは想像にすぎない――何しろ、あまりにも突拍子がないのだから。
――いちごちゃんが男の子だなんて。
だが、もしもそう考えると、ばらばらの違和感が一つに繋がる。女性に恋をするのも、軍事が好きなのも男子らしい。クラスメイトの前で着替えたがらないのもそうだ。夜中にいなくなるのは――。
更衣室にトランクスが落ちていた件も、下着泥棒も――ひょっとしたら。
いや、トランクスの件は関係がないのかもしれない。それこそ一冴にはアリバイがある。
――なら、何で落ちてた?
妙なことが一冴の周りで起きているのはなぜだ。
気になりだしたら止まらなかった。
同時に、魔が差す。一冴は紅子とよく外出するが、帰るのはいつも十七時すぎだ。それまでに、少し調べてみるのはどうだろう。
当然、気は咎める。
事実、常識的に考えればあり得ないではないか。周りには女子しかいない、恋の一つも咲かない。だからそんな想像をするのではないか。
何かを盗むわけではない――一冴が女子であるという当然のことを確認するだけだ。それくらい罪はないではないか。
一冴のクローゼットへそっと近づいた。
クローゼットを開け、下にある小型の箪笥を開ける。一冴の下着が竝んでいた。ショーツにブラジャーに靴下。一冴が帰ってくることを警戒し、廊下の跫音に耳をそばだてる。すぐに閉めても違和感がないよう、慎重に調べた。
――やっぱ、私の箪笥の中と変わらんが。
当然の事実に安心すると同時に落胆する。
もちろん、盗まれたショーツなどあるわけがない。
そう思っていた矢先であった。
箪笥の最奥部に、見たことがない物を見た。
それは、ビニール袋に入れられた女性の胸だった。当然、作り物なのだが、リアルな乳首までついている。明らかに、ない胸を盛るための物だ。
――あの貧乳のいちごちゃんにぇ?
そこまで考え、箪笥の奥に偽乳を戻した。元と同じように下着も整え、箪笥を閉める。見てはいけない物を見てしまったからだ。
それに、一冴もいつ帰ってくるか分からない。
だが、梨恵は引っかかる。
――誰が?
この部屋へ帰ってくるのは「誰」なのだろう。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる