女装男子は百合乙女の夢を見るか? ✿【男の娘の女子校生活】学園一の美少女に付きまとわれて幼なじみの貞操が危なくなった。

千石杏香

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第七章 白山女子寮連続パンツ失踪事件-前編

第六話 男がいるという疑惑が上がった

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昼休憩のこと、いつものメンバーと共に梨恵は教室で昼食を摂っていた。

メロンパンを手に取りながら口を開く。

「にしてもな、今朝の伊吹先生すごかったなー。」

一冴いちごは苦笑する。

「みんなびっくりしてたよね。挙句、持ち物検査ですだなんて絶叫してたもんだから。多分、昂奮したせいでさらにドバドバ鼻血が出たんじゃないかな?」

一方、紅子は難しい顔で言う。

「けど――何で薄い本が落ちてたんだ?」

一瞬、その場が静まり返った。

紅子は声をひそめる。

「ここだけの話――男がいるんだと思うよ、男が。」

梨恵は首をひねる。

「――男?」

「だって――そうじゃん。でなきゃ、男向けの薄い本なんて何で落ちてるんだ? しかも、男の娘が女子寮に潜入してるって内容の。もし菊花の言う通り、下着泥棒の犯人が内部の者だったなら、女装した男が寮に潜り込んでるという可能性もあり得るぞ?」

菊花が口をはさむ。

「いくら何でも非現実的でない?」

一冴いちごも同意する。

「そうだよ、ラノベじゃあるまいし。」

「だが、戸締りもされているのに、誰が薄い本を誰が置いたんだ? しかも、あの薄い本は白い液体で濡れていたそうじゃないか。」

牛乳パックのストローに口をつけかけ、菊花は眉をひそめた。

一冴いちごは目を逸らす。

「いや――いくら何でも男がいるとか――」

小さな声で梨恵はささやく。

「え、けど、男子がおるだったら、そういうこともあるでないの? だって、男子って毎日でもしとるだら?」

そして、ふっと考え込んだ。

自分は――今、何を言ったのであろう。

一冴いちごの後をつけたあの夜、トイレで感じた気這けはいは何だったのだ。

紅子は気まずそうな顔となる。

「な、何を――してるというんだ?」

菊花が口を開く。

「でも――下着泥棒は去年から始まったんだけど。つまり、犯人は今の二年生か三年生の可能性が高い。けど、あのエロ漫画が落ちてたのは一階だったじゃん。何の関係もない悪戯いたずらだとも考えられる。」

居心地の悪そうな顔をしたあと、一冴いちごは訊ねる。

「ところで菊花ちゃん――下着ドロについて聴き込みするとか何とか言ってたけど、本当にやってるの? 昨日は部室にも来なかったけど。」

「うん、やってるよ。」

「なんか分かったの?」

それなりには――と菊花は言う。

「とりあえず、パンツが消えた時間に洗濯場で変な人を見なかったか――って訊いて廻ったの。そしたら、一〇三号室の宇津木さんと、二〇一号室の木花先輩が、ちょうどその時間に洗濯場を使ってた。この二人も、変な人は見てなかったって。」

「――そうなんだ。」

「まあ、二人のどちらかが犯人という可能性もあるけど。」

「あんま人を疑うのやめなよ。」

「だって、犯人を捜すってそういうことじゃん。」

菊花は少しふくれっ面となる。

「あとは――朝美先生に聞いたんだけど、一昨年までは、窃盗事件は寮では全く起きてなかったって。けれども、昨年の五月からパンツが消え始めてる。被害者の中には木花このはな先輩もいるの。木花先輩は、昨年は岩永いわなが先輩とルームメイトだったのに、岩永先輩のは盗まれてない――ピンポイントで木花先輩のが盗まれてる。」

木花と岩永の姿を梨恵は思い浮かべる。

木花は美人だ。一方、岩永は綿菓子のように太っている。

「今までの事件と今回の事件との犯人が同一人物か――っていう問題はあるのね。けれども、可愛い子のパンツをピンポイントで盗んだのは、犯人が寮生だったからじゃ?」

「なるほど。」

梨恵は軽く溜息をついた。

「にしても、菊花ちゃんすごいな――ほんに聴き込み調査やっとるんだ。」

紅子は呆れた顔となる。

「ちょっとやりすぎじゃないか? いや、変質者がまぎれ込んでるかもしれないわけだし、気持ちは分かるが――。神経質になりすぎっていうか――。寝る前には必ずお経も唱えてるし、ちょっと怖いんだが。」

一冴いちごはうなづく。

「うん。夜中にトイレに起きたときとか、廊下からも聞こえるんだけど。」

菊花は目を瞬かせる。

「何が?」

「お経。」

「そんな聞こえてた?」

「うん。しかも消灯時間が過ぎて結構たった頃に。」

「さすがにそんな時間には唱えないよ。」

「そうなの?」

「うん。唱えるのは、消灯時間の前だよ?」

一冴は首をかしげた。

「じゃ――あれ何だったんだろうね。」
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