女装男子は百合乙女の夢を見るか? ✿【男の娘の女子校生活】学園一の美少女に付きまとわれて幼なじみの貞操が危なくなった。

千石杏香

文字の大きさ
上 下
59 / 133
第五章 仮面の告白

第七話 幼なじみ陥落寸前

しおりを挟む
異様な心臓の高鳴りを菊花は覚えていた。

重たい熱のようなものが胸から腹へと降りてきている。いつもと同じ目で蘭を見られない。蘭を同性愛者だと意識すると、あちら側へ自分も行ってしまうのではないかと思ってしまう。

――いやいや、そんなはずはない。

内心、焦っていた。

――私が好きなのは。

続いて、女装した一冴の姿が頭に浮かんだ。

そして、さらに恥ずかしくなる。

「大丈夫ですか――菊花ちゃん? お顔が紅くなってゐますわよ?」

「いや、あの――だって――そんな話をされると――」

「えゝ、もちろん、戸惑ひは分かります。わたくしも、自分のことに気づいた当初は随分と悩みました。けれども自分の気持ちに素直になってしまへば、気持ちはすっと楽になります。同性愛者として生まれたことは、本当は『愉しいこと』なのですから。」
 
「いや――あの、私、ノンケ、ノンケで。」

「あら? 本当は断りたくはないと先ほどは仰ってをられませんでした?」

「えっと、あの、その――」

ふっと、蘭はほほえむ。

「それにしても――この部屋、少し暑くありません?」

「え――そうですか?」

そう言った菊花の額から、一筋の汗が流れた。

部屋というより、身体が熱い。

「最近はどん〳〵と気温が上がってゐるやうですわ。」

言いながら、上着のぼたんを蘭は外してゆく。

菊花は硬直したまま動かない。

妙に派手な紫色のブラジャーが露わとなった。胸元に菊花は釘づけとなる。白い頸筋と鎖骨の下に、紫色の布に包まれたふくらみがある。自分の胸よりもはるかに大きい。蘭が大人びて見えた理由の一つはこれだったのだ。

「あら、菊花ちゃん、目が釘づけになってゐますよ?」

菊花は目を逸らす。

「あ――いや、その。」

「いえ――もっとじっと見ていゝんですのよ。」

蘭は立ち上がり、菊花へ近づく。

大きな胸が目の前に迫った。

「あ――いや。」

菊花は顔を逸らし、逃げ出そうとする。

そんな菊花の肩を蘭は掴む。

立ち上がろうとして菊花はバランスを崩した。そして床へ倒れる。

顔を上げた。

蘭の顔が――胸が――目の前にある。

今さらながら、整った顔立ちにみとれた。

「菊花ちゃん――わたくしは本気です。愛してゐるといふことが、お遊びで言へますか?」

不覚にも時めく。

「――蘭先輩。」

蘭に全てを委ねたい――そんな気持ちとなった。

蘭の人差し指が、菊花の下唇にそっと触れる。

「菊花ちゃん――キスしたことありますか?」

「あの――それは――」

ない。

「大丈夫です――怖がらないで。」

ゆっくりと蘭の顔が近づいてゆく。

菊花は動けない。

ドアが開いたのはそのときだ。

心臓が縮み上がりそうになる。

顔を向けると、そこには紅子と一冴がいた。

紅子は困惑している。

一冴は――顔を凍りつかせていた。

「あー」と紅子は言う。「お取り込み中でしたか?」

そして――蘭は、

勝ち誇ったような笑みを一冴へ向けた。

「えゝ――これからのところだったのです。」

一冴は菊花へ視線をやり、見る見る軽蔑の顔となった。瞳を動かさないまま顔だけを上に退く。全ての光を吸い込んでしまいそうなほど瞳は黒い。

こちこちに固まりつつ、紅子は言う。

「そうですか。失礼しました。」

そしてドアを閉めようとした。

閉まりつつあるドアの狭間から、黒い瞳を一冴は向けている。

「お幸せに。」

ドアが閉まった。

菊花は驚愕し、起き上がる。

「あ、違う! 違うの!」

慌てて立ち上がり、ドアへ駈け寄る。

しかしドアを開いたとき、二人は既に廊下から走り去ったあとであった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...