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第八章 遺跡
3 動きゆく運命
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給食時間が終わり、冬樹と共に教室を出た。
一階へ下り、校舎の端にある職員室へ這入る。
その奥の席で、何かの書類に築島は目を通していた。近づくと、美邦らに気づいて築島は顔を上げる。やはり先週より白っぽい。来てくださいましたかと言って書類を仕舞った。
「ここで話すことではないと思います。第二図書室へ行きましょう。」
ええ――と、冬樹と同時に美邦はうなづく。
導かれて職員室を出る。
渡り廊下へ差し掛かったとき、プールを工事する音が体育館の方から聞こえた。転校初日から工事は続いている――何を直しているのだろう。
心配そうな目が冬樹へ向けられる。
「藤村君――大丈夫なんですか? 耳が聞こえなくなったと聞きましたが。」
「ええ――。左耳が。」
歩きながら、先週の出来事について冬樹は説明した。
鉄筋校舎へ這入る。
説明を聴き終え、築島は眉を顰めた。
「どうか気を付けてください。右耳まで聞こえなくなったら――大変なことでは済まなくなります。」
「ええ――。そうですけど――。」
気をつけろと言われてもどうしようもないのだろう。怪訝そうに冬樹は目を細めた。
「そういう先生も――大丈夫なんですか? 先週より、えらげに見えますが――」
自分と同じものを見ていると知り、美邦は安心する。同じように感じる者は一人だけではないし、決して幻視でもない。
築島は足を止めた。
「藤村君にも――そう見えるのですか?」
刹那、ちらりと冬樹は美邦と目を交わす。戸惑いが、視線を通じて伝わった。すぐに視線を逸らし、ええ――と、困惑ぎみに冬樹はうなづいた。
自分のほほへと築島は触れる。
「僕は――何も感じないのですが。」
冬樹へと自然と顔が向かい、再び目が合う。
――由香と同じ。
同じやり取りが以前にもあった。それどころか、由香が顔色を激変させたとき、本人はおろか岩井すら理解しなかったのだ。
うやむやのまま第二図書室へ這入る。
築島は、廊下を見まわしてから慎重に扉を閉めた――まるで何かを警戒するように。自分の顔色でなければ何かを意識しているようだ。
美邦はパイプ椅子を引き出し、冬樹と竝んで坐る。
その対面に築島は腰を下ろした。そして、胸元のポケットから何かを取り出す。
「どうぞ、こちらを。」
二つのお守りが差し出される。
「日曜日に、出雲へと行ってきました。藤村君の言うことも一理あるかなと思い、お祓いをしてきたのです。これは、そのときに作ってもらった特別なお守りです。――どうか受け取ってください。」
冬樹は恐縮していた。
「まさか――本当に行ってこられるとは。」
「いえ、気休めにでもなればいいのですが。」
美邦は頭を下げ、お守りを受け取る。
「――ありがとうございます。」
お守りには、有名な神社の名前が刺繍されていた。
同時に、築島の顔色が気にかかる。一体、いつから変化し始めたのだろうか。
築島は本題を切り出す。
「メモは見ていただけたでしょうか。」
美邦と冬樹の声が重なった。
「はい。」「ええ。」
老眼鏡の位置が軽く直される。
「この一週間、友人や知人に電話をかけて廻りました。平坂神社を覚えていた人は一人もいません。それでも、詳しく話してゆくうちに思いだしてくれたのですが――忘れていた自分自身に驚いていました。」
以前と同じ引っかかりを覚えた。
――思い出そうと思えば、やっぱり思い出せる。
だが、叔父夫婦はなぜ思い出せないのだろう。
「それで――なにぶん十年以上前のことですので、記憶が曖昧なところはあったのですが――十一年前から十三年前の一年神主については、一人を除いて現状を掴むことができました。」
冬樹が声音を下げる。
「祭りについて詳しく知る人から消えとりますね。自治会のかたも全て亡くなられましたし――そもそも、最初に亡くなったんは大原家のかたでした。」
具合の悪そうな顔が縦に振られた。
「ええ――。加えて言えば、十一年前の冬至に神送りが行なわれたことは間違いないようです。ただし、十年前の春分――大原家抜きの神迎えなどという妙なことは、やはりないようでした。」
冬樹は黙り込む。何か矛盾に思い当たった顔だ。その理由に美邦もすぐ行き着いた。
「やっぱり、神社が消えたあとで神迎えが行なわれることはないんじゃ――もしも――祭りを消すことが最初から目的だったなら。」
「ああ。でも――神送りは行なわれたはずだに。」
しかし、神は今もいる。送られなかったのだ。
隠れている――依代か何かの中にいると言ったのは美邦自身だ。当然、考えられる可能性は一つしかない。
「十一年前の冬至――神様は神社にいなかったのかも。」
築島は目をまたたかせる。
「と――言いますと?」
「えっと。」
まだ伝えていないことが多い。どう説明すればいいか分からなかった。結果、続く言葉は不器用なものとなる。
「その――。ご神体や、儀式で使う依代とは別の場所に――いたかもしれません。」
迷うことなく冬樹は同意する。
「まあ、そう考えるのが筋か。」
築島は首をかしげた。それを受け、冬樹が説明を始める。美邦が打ち明けたこと――主に、神がいないと感じることや、鉄鐸の模様などについて。
聴きながら美邦は思う。
やはり――自分はまだ、このように話せない。
それは、引っ込み思案な性格だけが原因ではなかった。霊や神について――いや、自分が感じたことを、それらと絡めて語ることができない。
美邦が見るものは、外見と密接な障碍に関連している。また、見たものを、障碍以外の原因に求めることも怖かった。ゆえに、この手の話は苦手だ――霊が見えると語る人々に漠然と忌避感を持つほど。
しかし、語らざるを得ない状況になっている。だから――自分が見たものについて、築島に話すことは事前に許していた。
もちろん、全てを他人任せにもできない。補足するように美邦も口を開く。
神社の跡地へ由香と行ったときに見たものについて話が及んだとき、築島が反応した。
「小指の欠けた男性――ですか?」
ええ――と美邦はうなづく。
「右手の第二関節から先がない人でした。海水の臭いがすごいしていて――」
それは美邦だけでなく、由香も見たのだ。
ふと顔を上げると、築島は呆気に取られた顔をしていた。美邦と目が合い、顔を逸らす。
「実相寺さんの従兄に、同じように指のないかたがいました。七年ほど前でしたか――港の排水溝に転落して亡くなられたのですが。」
空気が凍った。
またしても――見たはずのないものを見ていたのだ。
美邦は目を伏せる。
「そう――でしたか。」
それから、冬樹の助けを借りつつ、由香が亡くなった時に見たものについて述べた。
スクールカウンセラーにかかっていることや、竹下から聴いたことについては美邦が専ら説明する。常識外れの経験でなければ説明に躊躇はない。
集合的無意識の話は築島の興味を惹いたようだ。老眼鏡に手を当て、面白い解釈ですねと言う。
「集合的無意識は、科学的に認められていると言いがたいです。しかし、誰から教えられずとも、同じような行動を人はみな取ります――動物も、昆虫も、植物も同じです。」
刹那、思い出す光景があった――小学二年生の時に受けた国語の授業の内容と、教科書に載っていた画像だ。そのことが自然と口をこぼれる。
「いつのことか習ったことがあります――紋白蝶の幼蟲は、葉っぱを複雑に折り畳んで、その中で融けて蝶になるって。葉っぱの折りかたなんて、誰から教えられたんだろうと思っていましたけれど。」
「それは、生まれた時から知っていたのでしょう。」
築島の顔が冬樹へ向いた。
「藤村君は、この件についてどう思いますか?」
冬樹は静かに考え込む。
「心理学のことは詳しくありません。でも、巫病のようにも感じられます。」
ふびょう――と築島は訊き返す。
「巫女の巫に病と書きます。シャーマンがその力を開花させるとき、コントロールできずに錯乱してしまうことがある――と、先日、僕も知ったばかりですけど。」
自分が――それなのか。
ややたしなめるような表情が現れる。
「精神医学については、専門的な意見を伺うしかありませんね。」
「ええ。――ただ、今の大原さんが錯乱しとるやには僕には見えんです。」
安心したように、同感です、と築島はうなづく。
「精神的な不調を抱えた生徒は何人か見てきました。誰もが、落ち着きがなかったり、学力が低くなったりしたものです。けれども、大原さんは落ち着いておられますし、学力もむしろ高いレベルをキープしています。」
自分の精神状態について探られたような――同時に安心したような複雑な気分となった。
だが――どうあれ、嘘をついているとも、妄想を語っているとも思われてはいないらしい。
やはり、あの夢も何か意味があるのではないか。今朝――メモを見たときから気にかかり続けている。
「先生――。十一年前から十三年前の当屋――女性の一年神主の中に、妹がいたかたはいますか?」
築島は不思議そうな顔をしていた。やがて、何かを思い出したように目を瞠る。
「なぜ――それを。」
いや――と築島は言う。
「それも――何か見られたのですか?」
反応に少し驚く。随分と限られた範囲に該当人物がおり、しかもそのことを築島も知っているようだ。
ええ――と言い、美邦は目を伏せる。
そして、いないはずの姉がいる夢を見たことについて語った。はっきり覚えている光景は多くない。それでも、ノートに事前にまとめていただけあり、言い淀むことなく説明できた。
にわかに信じがたいような顔で築島は聴いている。だが、説明を終えたあとは落ち着いた声で告げた。
「妹がおられたのは――寺田直美さんです。この学校を卒業して間もない頃に当屋となられました。確か――その年のうちに、妹さんが鉄道事故で亡くなられたはずです。」
弦が弾かれたように耳に響いた。
――また、鉄道事故。
冬樹は身を乗り出す。一瞬のあと、思い出したように胸ポケットからメモを取り出した。
「寺田直美さん――唯一、行方が分からんってかたですか?」
「ええ。」
気になることがある。寺田直美は、学校を卒業して間もない頃に当屋となったという。
「学校を卒業して間もない頃――っていうことは、高校生ですか?」
築島は眉間に手を当てる。
「恐らくは――そうではなかったかと。でなければ、ここまで覚えていないはずです。」
夢の中の自分が何歳だったのか思い出そうとする。だが、幼児期の頃の記憶のように酷く霞んでいた。恐らくは、ばらばらの年齢を、何度かに分けて見たためだろう。
それでも、なんとなく判ることはある。
「夢の中の私は、『姉』とはそんなに年は離れていませんでした。たぶん――『姉』は十代ではないでしょうか。」
軽く息を吸う音が聞こえた。
「卒業してすぐなら十代だな。」
何かを思い出したように築島は目を上げる。
「寺田さんの妹さんは、中学校におられませんでした。小学生のはずです。」
視線が向いた。その意味を察して美邦は答える。
「私が見た夢は――小学低学年くらいのものが多いです。見た夢ごとに色々とバラつきがあるんだろうけれど、もう少し年齢が上のものもあったと思います。」
誰に言うでもなく冬樹はつぶやいた。
「いま――生きとったら何歳だらあか?」
そして、顔を上げて問う。
「行方が分からなくなっとる――って。」
「ええ――。少なくとも、引っ越していて平坂町にはおられないようです。」
「なんとかして、調べることはできませんか?」
築島は言い淀み、やがて続けた。
「ご存じのかたがおられるかどうかは分かりませんが――やれるだけのことはやってみましょう。」
「ありがとうございます。」
冬樹につられ、美邦も頭を下げる。
築島は言葉を続けた。
「どうあれ――大原さんの夢に現れたかたが寺田さんか確認する必要があります。一つ一つ可能性を検討すべきでしょう――実際、そのような夢を見たからといって、神社の消失とどこまで関係があるのかも分かりません。」
冬樹の顔に余裕が浮かぶ。
「いえ、ほぼ間違いなく関係あると思います。」
その横顔へ目を向けた。
ややあって、静かに築島が尋ねる。
「その理由は――」
「大原さんの話を聴く限り、夢の中に出てきた姉は、神様のやなものを感じとります。そがぁな力はあったんでしょう。ざっくり言ってシャーマン――神様を祀ることのできる人でないでしょうか。」
それは、なんとなく美邦も予感していたことだ――自分と同じものを「姉」が感じていたことと、依代か何かの中に神がいることは関連しているのではないかと。
「神様が送れなかったのは――」
「ああ――別の依代に移ったけぇだ。普通ではない何かの力が働いた。誰かの意志が関わっとるなら――神様を祀ることのできる人である可能性が高い。」
ふむ――と築島は言う。
「別の場所に、誰かが今も祀っていると?」
あくまでも可能性の一つですが――と冬樹は念を押した。
「どうあれ――大原さんの見たもんには意味があるはずです。」
――意味が。
「やはり――あるの?」
「うん。神送りのために動いてきとるんだと思う。」
詳しく理解できずとも、解ることはある。全ての出来事は、一つの目的に向かって動いているようなのだ。
一方、事態を完全に呑み込んでいるわけではない築島は首をかしげる。
先を制するように冬樹は問うた。
「話は変わりますが――。菅野さんからは、平坂神社の神様は目が一つしかないと聞きました。これについて、先生は、何かご存知でないですか?」
レンズの奥が少し曇る。
しかし、思い当たることがあったようだ。そういえばと言い、白い額へと手を当てた。
「随分と昔の話ですが――宮司さん――大原糺さんから聞いたことがあります。大物主命が平坂町に来られたとき――釣竿が目に当たり、片目を失明したと。そのような伝承が大物主に伝わっているのは、平坂神社だけだそうですが。」
美邦は、普段は意識しない左の視界を意識する。
神が――自分と同じ障碍を負ったのだ。
「なので、平坂神社の境内には、尖った物――特に釣竿は持ち込んではならない――と言われました。」
話している途中から、ますます険しい顔となる。
「しかし、そんなことをなぜ――?」
すぐには冬樹は答えなかった。言い淀み、やがて覚悟を決めたように述べる。
「恐らく、隻眼だったのは神様ではなくて一年神主です。そして、今年の当屋は大原さんでしょう。」
後半の言葉は、先週も耳にしていた。一方、前半は初耳だ。
「神様ではなくて、一年神主――?」
「ああ。」
冬樹を見守るような視線が向けられる。
「藤村君の考えには興味がありますが――繊細な問題であるということは認識していますか?」
「ええ――もちろんです。ですから、考えを固めるまで迂闊には今まで言えませんでした。」
冬樹の横顔から、相当な根拠を揃えた覚悟が見て取れた。
「先生――先ほど、大物主命が失明されたと仰いましたが、その話って少し妙でないですか?」
「妙――と言いますと?」
「平坂神社の神様は年ごとに交代します。同じ傷を持ち続けるでしょうか?」
「ふむ――?」
「それに、大物主が片目を失明したなんて話は確かに聞きません。恐らく、平坂神社の神様に言い伝えられとった話でしょう。でも――神様は人間でないですし、人間の形をしとるかも分かりません――そもそも怪我をするかって疑問もあります。」
美邦は首を縦に振る。恐らく神に形はない。
「依代に宿るような存在だし――確かに。」
同時に、千秋から聞いた話が頭に蘇る。
真紅な光を二つ灯した輪郭の曖昧な姿――それはスレッドにも書かれていた。
「けれども、神様が隻眼でなきゃならん理由――釣竿で怪我をして失明した話まである理由があるはずです――当然、大物主という特定の神でなきゃならん理由も。」
自然と左眼に手が触れる。神話に登場する存在が、このような障碍を負うのか。
「神様なら、大きな目が一つとかもありだよね。」
「ああ――。多分、一つ目よりも、隻眼のほうが実像に近いでないかいな?」
「実像?」
「平坂神社の神様が大物主に比定されとるのは、海の向こうから来る神様だけぇだ。あと、疫病のイメージもあったかもしらん。そして――常世の国は、神様の国であると同時に、死後の国でもある。」
実像という言葉の意味を理解した。春の彼岸に――いや、彼岸から神は来るのだ。
「海から帰ってきた人――っていうこと?」
「ああ。先祖とも解釈できる――いや、解釈した人がおったと言うべきか。」
曖昧な言い回しに戸惑う。隻眼なのは祖先で、彼岸から帰って来るという話ではないのか。
だが、築島はすぐに察したようだ。
「何が来るのか、実際は分かりませんからね。ただ――解釈が存在する。客神を祖霊と解釈するのは、迎える人にとって非常に分かりやすいですが。」
思わず息を呑む。
――存在するのは解釈。
僅かな知識しかなくとも理解できた。疫病、侵掠、溺死体――あらゆるものが海からは来る。それらは、神の贈り物や、神そのものとして祀られてきた。そもそも、「神様」という言葉を自分が遣うのでさえ、一つの解釈であり、名前づけに過ぎないのではないか。
ですね――と冬樹はうなづく。
「解釈され易いってところなんです。でも、神様の姿としてイメージし易い人がおったから生まれた伝承でしょう――隻眼だったのは一年神主です。」
刹那、何かを思い出しかけた。まるで、古い記憶の層に雫が落ち、同心円状の波紋が立つように。
かつていた自分と同じ人たち――彼らは、はるか昔には自分と同じ障碍を負っていたという。
築島が問うた。
「そう考える理由はなんですか?」
「一年神主の役割は恐らくシャーマンだけぇです。」
その言葉の意味を美邦はよく分かっていない。イメージに近い単語を引き合いにして確認する。
「巫女さんということ?」
「まあ――そうかな。」少し引っ掛かる顔をされた。「男であれ、女であれ、神様の意志を伝える人――どういうわけか女性が多いけど。」
冬樹は築島に向き直る。
「例えば――平坂神社とよぅ似た制度に、恵比寿の総本山・美保神社の一年神主があります。こっちは男性が二人選ばれますが――その役割は、神様の言葉を聞くことです。江戸時代には、意識不明の状態になって言葉を発することもあったようですけど。」
身に沁みた。由香が亡くなったとき、美邦はまさに意識不明だったのだ。当然、自分が見たものは神の意志とは少し違うが。
「そして、シャーマンと呼ばれる人には、視覚障碍者――特に隻眼の人が多いです。」
一瞬を置いて実感を抱く。それは、シャーマンという単語を、巫女という言葉で理解したためだった。
この町に来て、母と同じ制服を着た。しかし、母と同じ衣装には――もっと相応しいものがある。
「そうなの?」
冬樹は、ああ――と、やや遠慮がちに言った。
「たとえば、東北地方のイタコなんか典型的だ。これは、神様や死者の声を聞いたり、占いをしたりする巫女だけど。視覚障碍者で、しかも女性しかなれん。元は、視覚障碍者を救うための制度だったとも言われとる。」
あと――と冬樹は続ける。
「木曽麻衣子っていう霊能力者も左眼が見えんかったらしい。この人は左眼を失明してから霊が見えだしたそうだが――実は、シャルル゠ボネ症候群だったでないかって説もあるに。」
木曽麻衣子さんですか――と築島は興味を示す。
「懐かしいですね。昭和の頃は、心霊現象を扱ったテレビ番組によく出演されていましたが――」
老眼鏡の位置が少し直された。
「ただ――藤村君の言うとおり、シャーマンや霊能力者と呼ばれるかたには片目の見えない人が多いように思います。悪い例ですが、ソウル教事件の赤坂洋光も左眼が見えませんでした。ご存知ですか――赤坂洋光って。」
「あの――ひげが凄い人ですよね?」
「はい。ソウル教の元信者によれば、超能力と呼べるものが赤坂には確かにあったそうです。ただし、それは特別なものではないし、赤坂は悪用することしかできなかったそうですが。」
それと――と築島は言葉を継ぐ。
「戦前、クーデター事件の指導者として処刑された志田義吉という思想家もそうです。志田は右眼が見えなかったのですが、霊告によって決起将校を指導していたと言われています。」
確かに、あまりよい例ではない。
ソウル教が国を転覆させようとしたことはなんとなく知っている。どうあれ、そのような形で日本史に名を遺した人物が二人もいるということか。
冬樹は少し考え、やがて口を開いた。
「隻眼の人に、シャーマンや霊能者が多いのは偶然でないでしょう。シャルル゠ボネ症候群もありますし、いわゆる『見える』人が多いのではないでしょうか。そして――」
平坂神社には神主が三人おります――と言った。
「というより、一年神主こそが本来の神主です。神主っていうのは本来、適任者が選ばれるもんでした。だからこそ――宮司のほかに神主が必要なんです。」
「それが――視覚障碍者ですか?」
その一瞬だけ、冬樹は閊えたように見えた。
「というより――特定の血筋に、そがぁな人が高頻度で現れたでないでしょうか。」
築島の顔が曇る。
「それは――本筋に?」
「ええ。」
冬樹の顔が向き、切れ長の目が美邦を捉えた。
「大原さん――夢の中の『姉』って視覚障碍者だったりした?」
美邦は少し考え、そして言葉を継ぐ。
「いや――そんな感じは受けなかったけど――」
それか――と冬樹は言い、あごに手を当てた。
「ていうことは――視覚障碍者であることと適任であることは少しずれるんか。」
「ずれる?」
美邦の問いかけに、冬樹はうなづく。
「視覚障碍者が適任者に多い――ってことは、適任者が視覚障碍でなきゃならんってことでない。」
思い当たることがあった。障碍の有無とは逆の条件が一年神主にはあるのだ。思わず美邦は口ずさむ。
「一年神主の条件は、本筋であることだもんね。」
「ああ。神迎えのあとで一年神主が選ばれるんは、神意を咨るためだけぇだ。でも、絶対条件が血筋なら、遺伝的な要件は欠かせんと思う――障碍の有無ではなくて。」
ふむ――と考え込み、老眼鏡の央橋に築島は手を当てた。
「遺伝が条件であるならば、大原さんの夢に出てきた人――それが寺田さんかは分かりませんが――その人が、ごく限られた血筋から、特殊な能力を持って生まれたのは偶然ではないでしょうね。」
ええ――と、冬樹は首を縦に振る。
「本筋ってのは、多分、大原家の超遠縁でないでしょうか。神社と祭りの起源に大原家が関わっとらんとは思えません。でも、能力のある人が必ずしも本家に生まれるわけでないですし――そうなれば、遠縁からでも引っ張ってくるでしょう。」
「それが、一年神主であると?」
「はい。」
――特定の血筋から適格者が現れる。
美邦が失明したのは恐らく十年前だ。そこから見える結論は一つしかない。
「私が帰ってきたのは――神様を送るために?」
ああ――と冬樹はうなづく。
「儀式には一年神主が必要だに。」
「それに異論はないけれど――」少し不安がある。「一年神主の最低年齢は十五歳ではないの? 私はまだ――十三歳なのだけど。」
「たぶん――候補者が多すぎんやにするためのもんでないかな。適格者がおるんなら違うはずだに。実際――宮座がない以上、神主は選び出せん。」
美邦は気づいた。
――選べない中で、神送りを行なわなければならない。
「十年前、何かの『異変』が起きて常世の国に神様は送り返されなんだ。神社は消えて、宮座は壊滅した。この非常事態を収拾するための力が働いたでないかいな。つまり――」
一年神主と宮司が再統合されたと冬樹は言った。
波紋が拡がってゆくように、その言葉が美邦の中に響いてゆく。
宮司は自分だ。同時に、一年神主でもある。そのことに矛盾は全くない――古代にあった形へと戻っただけなのだから。
「やっぱり――私が宮司なんだ。」
第二図書室を静寂が支配する。
築島は、納得したような――何かを考えこむような顔をしていた。だが、やがてこう反論する。
「藤村君の論は非常に興味深いです。ただし、気にかかることを挙げるならば――なぜ一年神主は男女二人でなければならないかというところです。一年神主の役割がシャーマンならば、性別によって一人ずつという制限も生まれないのではないでしょうか。」
この反論は、冬樹にとって予想外だったらしい。途端に、それまでの余裕が顔から消えた。
「それは――そうですが。」
「加えて言えば――大原さんが当屋だとして、男性の頭屋はどうなりますか? 神送りを行なうのであれば、この一組が必要のはずです。」
「ええ。」
美邦は考え込む。
――私と同じ人が町には他にもいる?
冬樹の説を補う考えは美邦にはない。しかし、間違っていないとは感じる。
そんなとき浮かんだのが、千秋から聴いた「怪物」の話だった。ずっと気にかかっていただけあり、おずおずと口にする。
「関係があるかどうかは分からないんですけど――最近、変な噂が流行ってるみたいなんです。」
噂――と冬樹は尋ねた。
「うん。」
それから、千秋から聞いた話を反芻する。冬樹は初耳だったようだ――難しげな顔で考え込む。
「俺には小学生の知り合いはおらんに、そんな噂があったなんて初めて知ったが――」
「一応、中学校でも噂されてるみたいだけど――」
岩井から聴いた話についても軽く述べた――ついでに、美邦が引っ越してきたあたりから流行りだしたことも。
築島が反応する。
「それならば、僕も聴いたことがあります。B組の教室で給食を摂っていたときでしたか――。一部の女子達が、大きな犬のようなものが海辺を徘徊していると仰ってました。実際に、見た人もいるとか。」
「見た――んですか?」
「ええ。離れた席での会話でしたので、詳しくは存じませんが。」
この学校にも見た者がいるのだ。
築島は考え込む。
「ですが、そのような噂が今になって拡まっているのは不思議ですね。夜を怖がる人がいても、夜の中に何かを見る人は今までいませんでした。」
ええ――と美邦はうなづく。
「私が帰ってきて、姿を現すようになった――ような。まるで動き出すように。」
鉄筋校舎の外から、生徒たちのはしゃぐ声が聞こえる。
しばらくは静寂が続いた。
黙り込んでいた冬樹が口を開く。
「どうあれ――神送りに向けた動きがあるでないかなって思います。でも、送るにしても、今年の冬至にできるか分かりません。逆に、来年の冬至ってのは遅すぎるやな――」
僕もそう思います――と築島は同意する。
「今までにないことが起きているということは――その時が近づいているということでしょう。来年の冬至まで待ったら、それまでに何が起きるかも分からない。」
「ええ。ただ――儀式に必要なものを揃えられるか問題ですね。祝詞だって作らないけんし、神楽舞も覚えなきゃならんはずですが――その内容も分からない。」
ふと、築島は何かに思い当たったようだ。
「神楽舞でしたら、恐らくはどなたかがビデオに撮っていたと思いますよ? 神嘗祭のとき、人々の前で演じられていましたから。知人を当たれば、持っている人がいるかもしれません。」
冬樹は身を乗り出す。
「本当ですか!」
「ええ――。儀式についても、知人・友人に当たってゆけば、何か分かるかもしれません。」
ありがとうございます――と冬樹は頭を下げる。
美邦もまた頭を下げた。
「お手数をおかけします。」
ただ――と築島は言う。
「重要なのは神を返すことですので、難しい手順など必要ないかもしれません。そもそも――神楽舞というものも昔からあったのでしょうか?」
ふっと、冬樹は考え込む。
「記憶が曖昧なのですが――神楽舞は歴史が新しくなかったような。」
美邦は、漠然と覚えていた違和感の正体に気づいた。
「十年前、そういう儀式があったからといって、大昔にもあったとは限らないしね。」
仰る通りです――と築島は同意する。
「僕達が神社で神様に祈るとき、難しい祝詞を頭の中で唱えているわけではありません。もし何かの運命によって大原さんが町へ帰って来られたのならば――そんなものはいらないのかもしれません。」
その言葉に、美邦も冬樹も静かにうなづいた。
一階へ下り、校舎の端にある職員室へ這入る。
その奥の席で、何かの書類に築島は目を通していた。近づくと、美邦らに気づいて築島は顔を上げる。やはり先週より白っぽい。来てくださいましたかと言って書類を仕舞った。
「ここで話すことではないと思います。第二図書室へ行きましょう。」
ええ――と、冬樹と同時に美邦はうなづく。
導かれて職員室を出る。
渡り廊下へ差し掛かったとき、プールを工事する音が体育館の方から聞こえた。転校初日から工事は続いている――何を直しているのだろう。
心配そうな目が冬樹へ向けられる。
「藤村君――大丈夫なんですか? 耳が聞こえなくなったと聞きましたが。」
「ええ――。左耳が。」
歩きながら、先週の出来事について冬樹は説明した。
鉄筋校舎へ這入る。
説明を聴き終え、築島は眉を顰めた。
「どうか気を付けてください。右耳まで聞こえなくなったら――大変なことでは済まなくなります。」
「ええ――。そうですけど――。」
気をつけろと言われてもどうしようもないのだろう。怪訝そうに冬樹は目を細めた。
「そういう先生も――大丈夫なんですか? 先週より、えらげに見えますが――」
自分と同じものを見ていると知り、美邦は安心する。同じように感じる者は一人だけではないし、決して幻視でもない。
築島は足を止めた。
「藤村君にも――そう見えるのですか?」
刹那、ちらりと冬樹は美邦と目を交わす。戸惑いが、視線を通じて伝わった。すぐに視線を逸らし、ええ――と、困惑ぎみに冬樹はうなづいた。
自分のほほへと築島は触れる。
「僕は――何も感じないのですが。」
冬樹へと自然と顔が向かい、再び目が合う。
――由香と同じ。
同じやり取りが以前にもあった。それどころか、由香が顔色を激変させたとき、本人はおろか岩井すら理解しなかったのだ。
うやむやのまま第二図書室へ這入る。
築島は、廊下を見まわしてから慎重に扉を閉めた――まるで何かを警戒するように。自分の顔色でなければ何かを意識しているようだ。
美邦はパイプ椅子を引き出し、冬樹と竝んで坐る。
その対面に築島は腰を下ろした。そして、胸元のポケットから何かを取り出す。
「どうぞ、こちらを。」
二つのお守りが差し出される。
「日曜日に、出雲へと行ってきました。藤村君の言うことも一理あるかなと思い、お祓いをしてきたのです。これは、そのときに作ってもらった特別なお守りです。――どうか受け取ってください。」
冬樹は恐縮していた。
「まさか――本当に行ってこられるとは。」
「いえ、気休めにでもなればいいのですが。」
美邦は頭を下げ、お守りを受け取る。
「――ありがとうございます。」
お守りには、有名な神社の名前が刺繍されていた。
同時に、築島の顔色が気にかかる。一体、いつから変化し始めたのだろうか。
築島は本題を切り出す。
「メモは見ていただけたでしょうか。」
美邦と冬樹の声が重なった。
「はい。」「ええ。」
老眼鏡の位置が軽く直される。
「この一週間、友人や知人に電話をかけて廻りました。平坂神社を覚えていた人は一人もいません。それでも、詳しく話してゆくうちに思いだしてくれたのですが――忘れていた自分自身に驚いていました。」
以前と同じ引っかかりを覚えた。
――思い出そうと思えば、やっぱり思い出せる。
だが、叔父夫婦はなぜ思い出せないのだろう。
「それで――なにぶん十年以上前のことですので、記憶が曖昧なところはあったのですが――十一年前から十三年前の一年神主については、一人を除いて現状を掴むことができました。」
冬樹が声音を下げる。
「祭りについて詳しく知る人から消えとりますね。自治会のかたも全て亡くなられましたし――そもそも、最初に亡くなったんは大原家のかたでした。」
具合の悪そうな顔が縦に振られた。
「ええ――。加えて言えば、十一年前の冬至に神送りが行なわれたことは間違いないようです。ただし、十年前の春分――大原家抜きの神迎えなどという妙なことは、やはりないようでした。」
冬樹は黙り込む。何か矛盾に思い当たった顔だ。その理由に美邦もすぐ行き着いた。
「やっぱり、神社が消えたあとで神迎えが行なわれることはないんじゃ――もしも――祭りを消すことが最初から目的だったなら。」
「ああ。でも――神送りは行なわれたはずだに。」
しかし、神は今もいる。送られなかったのだ。
隠れている――依代か何かの中にいると言ったのは美邦自身だ。当然、考えられる可能性は一つしかない。
「十一年前の冬至――神様は神社にいなかったのかも。」
築島は目をまたたかせる。
「と――言いますと?」
「えっと。」
まだ伝えていないことが多い。どう説明すればいいか分からなかった。結果、続く言葉は不器用なものとなる。
「その――。ご神体や、儀式で使う依代とは別の場所に――いたかもしれません。」
迷うことなく冬樹は同意する。
「まあ、そう考えるのが筋か。」
築島は首をかしげた。それを受け、冬樹が説明を始める。美邦が打ち明けたこと――主に、神がいないと感じることや、鉄鐸の模様などについて。
聴きながら美邦は思う。
やはり――自分はまだ、このように話せない。
それは、引っ込み思案な性格だけが原因ではなかった。霊や神について――いや、自分が感じたことを、それらと絡めて語ることができない。
美邦が見るものは、外見と密接な障碍に関連している。また、見たものを、障碍以外の原因に求めることも怖かった。ゆえに、この手の話は苦手だ――霊が見えると語る人々に漠然と忌避感を持つほど。
しかし、語らざるを得ない状況になっている。だから――自分が見たものについて、築島に話すことは事前に許していた。
もちろん、全てを他人任せにもできない。補足するように美邦も口を開く。
神社の跡地へ由香と行ったときに見たものについて話が及んだとき、築島が反応した。
「小指の欠けた男性――ですか?」
ええ――と美邦はうなづく。
「右手の第二関節から先がない人でした。海水の臭いがすごいしていて――」
それは美邦だけでなく、由香も見たのだ。
ふと顔を上げると、築島は呆気に取られた顔をしていた。美邦と目が合い、顔を逸らす。
「実相寺さんの従兄に、同じように指のないかたがいました。七年ほど前でしたか――港の排水溝に転落して亡くなられたのですが。」
空気が凍った。
またしても――見たはずのないものを見ていたのだ。
美邦は目を伏せる。
「そう――でしたか。」
それから、冬樹の助けを借りつつ、由香が亡くなった時に見たものについて述べた。
スクールカウンセラーにかかっていることや、竹下から聴いたことについては美邦が専ら説明する。常識外れの経験でなければ説明に躊躇はない。
集合的無意識の話は築島の興味を惹いたようだ。老眼鏡に手を当て、面白い解釈ですねと言う。
「集合的無意識は、科学的に認められていると言いがたいです。しかし、誰から教えられずとも、同じような行動を人はみな取ります――動物も、昆虫も、植物も同じです。」
刹那、思い出す光景があった――小学二年生の時に受けた国語の授業の内容と、教科書に載っていた画像だ。そのことが自然と口をこぼれる。
「いつのことか習ったことがあります――紋白蝶の幼蟲は、葉っぱを複雑に折り畳んで、その中で融けて蝶になるって。葉っぱの折りかたなんて、誰から教えられたんだろうと思っていましたけれど。」
「それは、生まれた時から知っていたのでしょう。」
築島の顔が冬樹へ向いた。
「藤村君は、この件についてどう思いますか?」
冬樹は静かに考え込む。
「心理学のことは詳しくありません。でも、巫病のようにも感じられます。」
ふびょう――と築島は訊き返す。
「巫女の巫に病と書きます。シャーマンがその力を開花させるとき、コントロールできずに錯乱してしまうことがある――と、先日、僕も知ったばかりですけど。」
自分が――それなのか。
ややたしなめるような表情が現れる。
「精神医学については、専門的な意見を伺うしかありませんね。」
「ええ。――ただ、今の大原さんが錯乱しとるやには僕には見えんです。」
安心したように、同感です、と築島はうなづく。
「精神的な不調を抱えた生徒は何人か見てきました。誰もが、落ち着きがなかったり、学力が低くなったりしたものです。けれども、大原さんは落ち着いておられますし、学力もむしろ高いレベルをキープしています。」
自分の精神状態について探られたような――同時に安心したような複雑な気分となった。
だが――どうあれ、嘘をついているとも、妄想を語っているとも思われてはいないらしい。
やはり、あの夢も何か意味があるのではないか。今朝――メモを見たときから気にかかり続けている。
「先生――。十一年前から十三年前の当屋――女性の一年神主の中に、妹がいたかたはいますか?」
築島は不思議そうな顔をしていた。やがて、何かを思い出したように目を瞠る。
「なぜ――それを。」
いや――と築島は言う。
「それも――何か見られたのですか?」
反応に少し驚く。随分と限られた範囲に該当人物がおり、しかもそのことを築島も知っているようだ。
ええ――と言い、美邦は目を伏せる。
そして、いないはずの姉がいる夢を見たことについて語った。はっきり覚えている光景は多くない。それでも、ノートに事前にまとめていただけあり、言い淀むことなく説明できた。
にわかに信じがたいような顔で築島は聴いている。だが、説明を終えたあとは落ち着いた声で告げた。
「妹がおられたのは――寺田直美さんです。この学校を卒業して間もない頃に当屋となられました。確か――その年のうちに、妹さんが鉄道事故で亡くなられたはずです。」
弦が弾かれたように耳に響いた。
――また、鉄道事故。
冬樹は身を乗り出す。一瞬のあと、思い出したように胸ポケットからメモを取り出した。
「寺田直美さん――唯一、行方が分からんってかたですか?」
「ええ。」
気になることがある。寺田直美は、学校を卒業して間もない頃に当屋となったという。
「学校を卒業して間もない頃――っていうことは、高校生ですか?」
築島は眉間に手を当てる。
「恐らくは――そうではなかったかと。でなければ、ここまで覚えていないはずです。」
夢の中の自分が何歳だったのか思い出そうとする。だが、幼児期の頃の記憶のように酷く霞んでいた。恐らくは、ばらばらの年齢を、何度かに分けて見たためだろう。
それでも、なんとなく判ることはある。
「夢の中の私は、『姉』とはそんなに年は離れていませんでした。たぶん――『姉』は十代ではないでしょうか。」
軽く息を吸う音が聞こえた。
「卒業してすぐなら十代だな。」
何かを思い出したように築島は目を上げる。
「寺田さんの妹さんは、中学校におられませんでした。小学生のはずです。」
視線が向いた。その意味を察して美邦は答える。
「私が見た夢は――小学低学年くらいのものが多いです。見た夢ごとに色々とバラつきがあるんだろうけれど、もう少し年齢が上のものもあったと思います。」
誰に言うでもなく冬樹はつぶやいた。
「いま――生きとったら何歳だらあか?」
そして、顔を上げて問う。
「行方が分からなくなっとる――って。」
「ええ――。少なくとも、引っ越していて平坂町にはおられないようです。」
「なんとかして、調べることはできませんか?」
築島は言い淀み、やがて続けた。
「ご存じのかたがおられるかどうかは分かりませんが――やれるだけのことはやってみましょう。」
「ありがとうございます。」
冬樹につられ、美邦も頭を下げる。
築島は言葉を続けた。
「どうあれ――大原さんの夢に現れたかたが寺田さんか確認する必要があります。一つ一つ可能性を検討すべきでしょう――実際、そのような夢を見たからといって、神社の消失とどこまで関係があるのかも分かりません。」
冬樹の顔に余裕が浮かぶ。
「いえ、ほぼ間違いなく関係あると思います。」
その横顔へ目を向けた。
ややあって、静かに築島が尋ねる。
「その理由は――」
「大原さんの話を聴く限り、夢の中に出てきた姉は、神様のやなものを感じとります。そがぁな力はあったんでしょう。ざっくり言ってシャーマン――神様を祀ることのできる人でないでしょうか。」
それは、なんとなく美邦も予感していたことだ――自分と同じものを「姉」が感じていたことと、依代か何かの中に神がいることは関連しているのではないかと。
「神様が送れなかったのは――」
「ああ――別の依代に移ったけぇだ。普通ではない何かの力が働いた。誰かの意志が関わっとるなら――神様を祀ることのできる人である可能性が高い。」
ふむ――と築島は言う。
「別の場所に、誰かが今も祀っていると?」
あくまでも可能性の一つですが――と冬樹は念を押した。
「どうあれ――大原さんの見たもんには意味があるはずです。」
――意味が。
「やはり――あるの?」
「うん。神送りのために動いてきとるんだと思う。」
詳しく理解できずとも、解ることはある。全ての出来事は、一つの目的に向かって動いているようなのだ。
一方、事態を完全に呑み込んでいるわけではない築島は首をかしげる。
先を制するように冬樹は問うた。
「話は変わりますが――。菅野さんからは、平坂神社の神様は目が一つしかないと聞きました。これについて、先生は、何かご存知でないですか?」
レンズの奥が少し曇る。
しかし、思い当たることがあったようだ。そういえばと言い、白い額へと手を当てた。
「随分と昔の話ですが――宮司さん――大原糺さんから聞いたことがあります。大物主命が平坂町に来られたとき――釣竿が目に当たり、片目を失明したと。そのような伝承が大物主に伝わっているのは、平坂神社だけだそうですが。」
美邦は、普段は意識しない左の視界を意識する。
神が――自分と同じ障碍を負ったのだ。
「なので、平坂神社の境内には、尖った物――特に釣竿は持ち込んではならない――と言われました。」
話している途中から、ますます険しい顔となる。
「しかし、そんなことをなぜ――?」
すぐには冬樹は答えなかった。言い淀み、やがて覚悟を決めたように述べる。
「恐らく、隻眼だったのは神様ではなくて一年神主です。そして、今年の当屋は大原さんでしょう。」
後半の言葉は、先週も耳にしていた。一方、前半は初耳だ。
「神様ではなくて、一年神主――?」
「ああ。」
冬樹を見守るような視線が向けられる。
「藤村君の考えには興味がありますが――繊細な問題であるということは認識していますか?」
「ええ――もちろんです。ですから、考えを固めるまで迂闊には今まで言えませんでした。」
冬樹の横顔から、相当な根拠を揃えた覚悟が見て取れた。
「先生――先ほど、大物主命が失明されたと仰いましたが、その話って少し妙でないですか?」
「妙――と言いますと?」
「平坂神社の神様は年ごとに交代します。同じ傷を持ち続けるでしょうか?」
「ふむ――?」
「それに、大物主が片目を失明したなんて話は確かに聞きません。恐らく、平坂神社の神様に言い伝えられとった話でしょう。でも――神様は人間でないですし、人間の形をしとるかも分かりません――そもそも怪我をするかって疑問もあります。」
美邦は首を縦に振る。恐らく神に形はない。
「依代に宿るような存在だし――確かに。」
同時に、千秋から聞いた話が頭に蘇る。
真紅な光を二つ灯した輪郭の曖昧な姿――それはスレッドにも書かれていた。
「けれども、神様が隻眼でなきゃならん理由――釣竿で怪我をして失明した話まである理由があるはずです――当然、大物主という特定の神でなきゃならん理由も。」
自然と左眼に手が触れる。神話に登場する存在が、このような障碍を負うのか。
「神様なら、大きな目が一つとかもありだよね。」
「ああ――。多分、一つ目よりも、隻眼のほうが実像に近いでないかいな?」
「実像?」
「平坂神社の神様が大物主に比定されとるのは、海の向こうから来る神様だけぇだ。あと、疫病のイメージもあったかもしらん。そして――常世の国は、神様の国であると同時に、死後の国でもある。」
実像という言葉の意味を理解した。春の彼岸に――いや、彼岸から神は来るのだ。
「海から帰ってきた人――っていうこと?」
「ああ。先祖とも解釈できる――いや、解釈した人がおったと言うべきか。」
曖昧な言い回しに戸惑う。隻眼なのは祖先で、彼岸から帰って来るという話ではないのか。
だが、築島はすぐに察したようだ。
「何が来るのか、実際は分かりませんからね。ただ――解釈が存在する。客神を祖霊と解釈するのは、迎える人にとって非常に分かりやすいですが。」
思わず息を呑む。
――存在するのは解釈。
僅かな知識しかなくとも理解できた。疫病、侵掠、溺死体――あらゆるものが海からは来る。それらは、神の贈り物や、神そのものとして祀られてきた。そもそも、「神様」という言葉を自分が遣うのでさえ、一つの解釈であり、名前づけに過ぎないのではないか。
ですね――と冬樹はうなづく。
「解釈され易いってところなんです。でも、神様の姿としてイメージし易い人がおったから生まれた伝承でしょう――隻眼だったのは一年神主です。」
刹那、何かを思い出しかけた。まるで、古い記憶の層に雫が落ち、同心円状の波紋が立つように。
かつていた自分と同じ人たち――彼らは、はるか昔には自分と同じ障碍を負っていたという。
築島が問うた。
「そう考える理由はなんですか?」
「一年神主の役割は恐らくシャーマンだけぇです。」
その言葉の意味を美邦はよく分かっていない。イメージに近い単語を引き合いにして確認する。
「巫女さんということ?」
「まあ――そうかな。」少し引っ掛かる顔をされた。「男であれ、女であれ、神様の意志を伝える人――どういうわけか女性が多いけど。」
冬樹は築島に向き直る。
「例えば――平坂神社とよぅ似た制度に、恵比寿の総本山・美保神社の一年神主があります。こっちは男性が二人選ばれますが――その役割は、神様の言葉を聞くことです。江戸時代には、意識不明の状態になって言葉を発することもあったようですけど。」
身に沁みた。由香が亡くなったとき、美邦はまさに意識不明だったのだ。当然、自分が見たものは神の意志とは少し違うが。
「そして、シャーマンと呼ばれる人には、視覚障碍者――特に隻眼の人が多いです。」
一瞬を置いて実感を抱く。それは、シャーマンという単語を、巫女という言葉で理解したためだった。
この町に来て、母と同じ制服を着た。しかし、母と同じ衣装には――もっと相応しいものがある。
「そうなの?」
冬樹は、ああ――と、やや遠慮がちに言った。
「たとえば、東北地方のイタコなんか典型的だ。これは、神様や死者の声を聞いたり、占いをしたりする巫女だけど。視覚障碍者で、しかも女性しかなれん。元は、視覚障碍者を救うための制度だったとも言われとる。」
あと――と冬樹は続ける。
「木曽麻衣子っていう霊能力者も左眼が見えんかったらしい。この人は左眼を失明してから霊が見えだしたそうだが――実は、シャルル゠ボネ症候群だったでないかって説もあるに。」
木曽麻衣子さんですか――と築島は興味を示す。
「懐かしいですね。昭和の頃は、心霊現象を扱ったテレビ番組によく出演されていましたが――」
老眼鏡の位置が少し直された。
「ただ――藤村君の言うとおり、シャーマンや霊能力者と呼ばれるかたには片目の見えない人が多いように思います。悪い例ですが、ソウル教事件の赤坂洋光も左眼が見えませんでした。ご存知ですか――赤坂洋光って。」
「あの――ひげが凄い人ですよね?」
「はい。ソウル教の元信者によれば、超能力と呼べるものが赤坂には確かにあったそうです。ただし、それは特別なものではないし、赤坂は悪用することしかできなかったそうですが。」
それと――と築島は言葉を継ぐ。
「戦前、クーデター事件の指導者として処刑された志田義吉という思想家もそうです。志田は右眼が見えなかったのですが、霊告によって決起将校を指導していたと言われています。」
確かに、あまりよい例ではない。
ソウル教が国を転覆させようとしたことはなんとなく知っている。どうあれ、そのような形で日本史に名を遺した人物が二人もいるということか。
冬樹は少し考え、やがて口を開いた。
「隻眼の人に、シャーマンや霊能者が多いのは偶然でないでしょう。シャルル゠ボネ症候群もありますし、いわゆる『見える』人が多いのではないでしょうか。そして――」
平坂神社には神主が三人おります――と言った。
「というより、一年神主こそが本来の神主です。神主っていうのは本来、適任者が選ばれるもんでした。だからこそ――宮司のほかに神主が必要なんです。」
「それが――視覚障碍者ですか?」
その一瞬だけ、冬樹は閊えたように見えた。
「というより――特定の血筋に、そがぁな人が高頻度で現れたでないでしょうか。」
築島の顔が曇る。
「それは――本筋に?」
「ええ。」
冬樹の顔が向き、切れ長の目が美邦を捉えた。
「大原さん――夢の中の『姉』って視覚障碍者だったりした?」
美邦は少し考え、そして言葉を継ぐ。
「いや――そんな感じは受けなかったけど――」
それか――と冬樹は言い、あごに手を当てた。
「ていうことは――視覚障碍者であることと適任であることは少しずれるんか。」
「ずれる?」
美邦の問いかけに、冬樹はうなづく。
「視覚障碍者が適任者に多い――ってことは、適任者が視覚障碍でなきゃならんってことでない。」
思い当たることがあった。障碍の有無とは逆の条件が一年神主にはあるのだ。思わず美邦は口ずさむ。
「一年神主の条件は、本筋であることだもんね。」
「ああ。神迎えのあとで一年神主が選ばれるんは、神意を咨るためだけぇだ。でも、絶対条件が血筋なら、遺伝的な要件は欠かせんと思う――障碍の有無ではなくて。」
ふむ――と考え込み、老眼鏡の央橋に築島は手を当てた。
「遺伝が条件であるならば、大原さんの夢に出てきた人――それが寺田さんかは分かりませんが――その人が、ごく限られた血筋から、特殊な能力を持って生まれたのは偶然ではないでしょうね。」
ええ――と、冬樹は首を縦に振る。
「本筋ってのは、多分、大原家の超遠縁でないでしょうか。神社と祭りの起源に大原家が関わっとらんとは思えません。でも、能力のある人が必ずしも本家に生まれるわけでないですし――そうなれば、遠縁からでも引っ張ってくるでしょう。」
「それが、一年神主であると?」
「はい。」
――特定の血筋から適格者が現れる。
美邦が失明したのは恐らく十年前だ。そこから見える結論は一つしかない。
「私が帰ってきたのは――神様を送るために?」
ああ――と冬樹はうなづく。
「儀式には一年神主が必要だに。」
「それに異論はないけれど――」少し不安がある。「一年神主の最低年齢は十五歳ではないの? 私はまだ――十三歳なのだけど。」
「たぶん――候補者が多すぎんやにするためのもんでないかな。適格者がおるんなら違うはずだに。実際――宮座がない以上、神主は選び出せん。」
美邦は気づいた。
――選べない中で、神送りを行なわなければならない。
「十年前、何かの『異変』が起きて常世の国に神様は送り返されなんだ。神社は消えて、宮座は壊滅した。この非常事態を収拾するための力が働いたでないかいな。つまり――」
一年神主と宮司が再統合されたと冬樹は言った。
波紋が拡がってゆくように、その言葉が美邦の中に響いてゆく。
宮司は自分だ。同時に、一年神主でもある。そのことに矛盾は全くない――古代にあった形へと戻っただけなのだから。
「やっぱり――私が宮司なんだ。」
第二図書室を静寂が支配する。
築島は、納得したような――何かを考えこむような顔をしていた。だが、やがてこう反論する。
「藤村君の論は非常に興味深いです。ただし、気にかかることを挙げるならば――なぜ一年神主は男女二人でなければならないかというところです。一年神主の役割がシャーマンならば、性別によって一人ずつという制限も生まれないのではないでしょうか。」
この反論は、冬樹にとって予想外だったらしい。途端に、それまでの余裕が顔から消えた。
「それは――そうですが。」
「加えて言えば――大原さんが当屋だとして、男性の頭屋はどうなりますか? 神送りを行なうのであれば、この一組が必要のはずです。」
「ええ。」
美邦は考え込む。
――私と同じ人が町には他にもいる?
冬樹の説を補う考えは美邦にはない。しかし、間違っていないとは感じる。
そんなとき浮かんだのが、千秋から聴いた「怪物」の話だった。ずっと気にかかっていただけあり、おずおずと口にする。
「関係があるかどうかは分からないんですけど――最近、変な噂が流行ってるみたいなんです。」
噂――と冬樹は尋ねた。
「うん。」
それから、千秋から聞いた話を反芻する。冬樹は初耳だったようだ――難しげな顔で考え込む。
「俺には小学生の知り合いはおらんに、そんな噂があったなんて初めて知ったが――」
「一応、中学校でも噂されてるみたいだけど――」
岩井から聴いた話についても軽く述べた――ついでに、美邦が引っ越してきたあたりから流行りだしたことも。
築島が反応する。
「それならば、僕も聴いたことがあります。B組の教室で給食を摂っていたときでしたか――。一部の女子達が、大きな犬のようなものが海辺を徘徊していると仰ってました。実際に、見た人もいるとか。」
「見た――んですか?」
「ええ。離れた席での会話でしたので、詳しくは存じませんが。」
この学校にも見た者がいるのだ。
築島は考え込む。
「ですが、そのような噂が今になって拡まっているのは不思議ですね。夜を怖がる人がいても、夜の中に何かを見る人は今までいませんでした。」
ええ――と美邦はうなづく。
「私が帰ってきて、姿を現すようになった――ような。まるで動き出すように。」
鉄筋校舎の外から、生徒たちのはしゃぐ声が聞こえる。
しばらくは静寂が続いた。
黙り込んでいた冬樹が口を開く。
「どうあれ――神送りに向けた動きがあるでないかなって思います。でも、送るにしても、今年の冬至にできるか分かりません。逆に、来年の冬至ってのは遅すぎるやな――」
僕もそう思います――と築島は同意する。
「今までにないことが起きているということは――その時が近づいているということでしょう。来年の冬至まで待ったら、それまでに何が起きるかも分からない。」
「ええ。ただ――儀式に必要なものを揃えられるか問題ですね。祝詞だって作らないけんし、神楽舞も覚えなきゃならんはずですが――その内容も分からない。」
ふと、築島は何かに思い当たったようだ。
「神楽舞でしたら、恐らくはどなたかがビデオに撮っていたと思いますよ? 神嘗祭のとき、人々の前で演じられていましたから。知人を当たれば、持っている人がいるかもしれません。」
冬樹は身を乗り出す。
「本当ですか!」
「ええ――。儀式についても、知人・友人に当たってゆけば、何か分かるかもしれません。」
ありがとうございます――と冬樹は頭を下げる。
美邦もまた頭を下げた。
「お手数をおかけします。」
ただ――と築島は言う。
「重要なのは神を返すことですので、難しい手順など必要ないかもしれません。そもそも――神楽舞というものも昔からあったのでしょうか?」
ふっと、冬樹は考え込む。
「記憶が曖昧なのですが――神楽舞は歴史が新しくなかったような。」
美邦は、漠然と覚えていた違和感の正体に気づいた。
「十年前、そういう儀式があったからといって、大昔にもあったとは限らないしね。」
仰る通りです――と築島は同意する。
「僕達が神社で神様に祈るとき、難しい祝詞を頭の中で唱えているわけではありません。もし何かの運命によって大原さんが町へ帰って来られたのならば――そんなものはいらないのかもしれません。」
その言葉に、美邦も冬樹も静かにうなづいた。
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