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女装男が女湯に入っても合法になる日
6.変態がマイノリティになるとき。
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昨年五月、一人の男が大阪府警に任意同行される。
当時、大阪市内にある商業施設から府警察は相談を受けていた。すなわち、「週末のたびに女装した男が女子トイレを使いに来る」という。そして、商業施設のトイレを捜査員が警戒する。
結果、女装した男が捕らえられた。
取り調べを受けた男は、「子供の頃から女性用の物が好きで、自分は女性だと自覚している」と答えた。ただし、性別適合手術は受けておらず、性同一性障碍による通院歴や診断書もなかった。女装していたのは週末だけだったという。
一方、NHKニュースにはこう書かれていた。
「心と体の性が一致しないトランスジェンダーであることが確認されたということで、刑事事件として扱うべきか警察は慎重に検討しています。」
『自認の性と周囲の受け止め トイレ利用の難しさ』
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211210/k10013382491000.html
いや――ちょっと待て。
どうやって、「心と体の性が一致していない」ことを確認したのだろう。まさかとは思うが、「女性用の物が好き」だから「心が女性」と判断されたのか。
もちろん、誰が越境性差かという基準はそれで問題ない。しかし、女子トイレを使う基準としては問題がある。もし性同一性障碍ならば、なぜ今まで通院しなかったのか。
この記事に寄せられた専門家の言葉も酷かった。
最初に取り上げられていたのは、『宇崎ちゃん』のポスターを燃やした太田啓子の言葉だ。曰く、「戸籍上の性別と異なるトイレを使ってもただちに違法になるということはない」という。
――そんなわけがないだろう。
確かに、女子トイレに男性が入ることを禁じる法律はない。あるのは住居侵入罪だ。条文には「正当な理由がなく」住居などに侵入した場合は罪に問われるとある。太田弁護士は、「自認が女性ならば正当な理由がある」と言いたいのだ。
太田弁護士はさらに主張する――「インターネットには、『「心が女性」と言い張れば男性でも女子トイレを利用できる』『周囲の女性は不安に思ったとしても何もできない』という誤解が溢れている」と。
――何の誤解だ。
「女子トイレを男性が使ってもただちに違法にならない」と主張したあとに、「自認が女性と言えば女子トイレを利用できるのは誤解」と言うのは矛盾だ。
また、女子トイレで女装男と鉢合わせしても、多くの人は咄嗟には何もできない。だからこそ、「週末になるたびに」女子トイレに男が入って来るという相談があったのだ。
次に載せられていたのは、中京大学の風間孝教授の主張だ。曰く、「性自認に合ったトイレを使いたいというトランスジェンダーの思いとトイレを使っている女性の不安が衝突した出来事だと思う」。いや、「思い」ではなくて「犯罪」だし。
今や、「私は女だ」と主張するだけの男性も「マイノリティ」「配慮すべき存在」となってしまった。
しかし、性同一性障碍と越境性差は、意図的にか混同されている。
中日新聞には次の記事が載っていた。
『遠い虹色社会 トランスジェンダー差別 言葉の刃に「どこにでもいる人間です」』
https://www.chunichi.co.jp/article/261248
「生まれたときの性別と自身の性の認識(性自認)が異なる『トランスジェンダー』への差別や偏見をあおる誹謗(ひぼう)中傷が広がっている。特に、生まれた時の性が男性で性自認が女性の人(トランスの女性)に対して『女に見えない』『女装した性犯罪者の男と見分けがつかない』などと言葉の刃(やいば)を向ける傾向が強い。」
「『女装で女子トイレの入り方を指南する変態野郎』『女装した人が女湯に入って逮捕されたりしている。(トランスの女性を)受け入れない女性を批判するのは間違い』『自称女性は化け物』…。会員制交流サイト(SNS)にはトランス女性を中傷する匿名の投稿があふれる。」
もし「トランスジェンダー=性同一性障碍」だと思っていたら、これらの言葉は誹謗中傷に見えるだろう。
この記事の卑怯なところは、性別適合手術を済ませた河上りさという人を取り上げ、「犯罪者のイメージと結び付けている」「どこにでもいる人間です」と言わせているところだ。
だが、女子トイレの入り方を指南する自称トランスの男や、女湯に入って逮捕された男は実在する。
二〇二一年・二月二十七日――「琵琶湖の妖精るらな」という YouTuber の動画が炎上した。
「琵琶湖の妖精」はトランス女性だ。炎上したのは、「女装して女子トイレを使いたい方へ」という動画だった。そこで、「多くの人は暇じゃないので警察を呼びません」と「琵琶湖の妖精」は放言する。
批判が殺到した結果、「琵琶湖の妖精」は動画を消した。
当時、大阪市内にある商業施設から府警察は相談を受けていた。すなわち、「週末のたびに女装した男が女子トイレを使いに来る」という。そして、商業施設のトイレを捜査員が警戒する。
結果、女装した男が捕らえられた。
取り調べを受けた男は、「子供の頃から女性用の物が好きで、自分は女性だと自覚している」と答えた。ただし、性別適合手術は受けておらず、性同一性障碍による通院歴や診断書もなかった。女装していたのは週末だけだったという。
一方、NHKニュースにはこう書かれていた。
「心と体の性が一致しないトランスジェンダーであることが確認されたということで、刑事事件として扱うべきか警察は慎重に検討しています。」
『自認の性と周囲の受け止め トイレ利用の難しさ』
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211210/k10013382491000.html
いや――ちょっと待て。
どうやって、「心と体の性が一致していない」ことを確認したのだろう。まさかとは思うが、「女性用の物が好き」だから「心が女性」と判断されたのか。
もちろん、誰が越境性差かという基準はそれで問題ない。しかし、女子トイレを使う基準としては問題がある。もし性同一性障碍ならば、なぜ今まで通院しなかったのか。
この記事に寄せられた専門家の言葉も酷かった。
最初に取り上げられていたのは、『宇崎ちゃん』のポスターを燃やした太田啓子の言葉だ。曰く、「戸籍上の性別と異なるトイレを使ってもただちに違法になるということはない」という。
――そんなわけがないだろう。
確かに、女子トイレに男性が入ることを禁じる法律はない。あるのは住居侵入罪だ。条文には「正当な理由がなく」住居などに侵入した場合は罪に問われるとある。太田弁護士は、「自認が女性ならば正当な理由がある」と言いたいのだ。
太田弁護士はさらに主張する――「インターネットには、『「心が女性」と言い張れば男性でも女子トイレを利用できる』『周囲の女性は不安に思ったとしても何もできない』という誤解が溢れている」と。
――何の誤解だ。
「女子トイレを男性が使ってもただちに違法にならない」と主張したあとに、「自認が女性と言えば女子トイレを利用できるのは誤解」と言うのは矛盾だ。
また、女子トイレで女装男と鉢合わせしても、多くの人は咄嗟には何もできない。だからこそ、「週末になるたびに」女子トイレに男が入って来るという相談があったのだ。
次に載せられていたのは、中京大学の風間孝教授の主張だ。曰く、「性自認に合ったトイレを使いたいというトランスジェンダーの思いとトイレを使っている女性の不安が衝突した出来事だと思う」。いや、「思い」ではなくて「犯罪」だし。
今や、「私は女だ」と主張するだけの男性も「マイノリティ」「配慮すべき存在」となってしまった。
しかし、性同一性障碍と越境性差は、意図的にか混同されている。
中日新聞には次の記事が載っていた。
『遠い虹色社会 トランスジェンダー差別 言葉の刃に「どこにでもいる人間です」』
https://www.chunichi.co.jp/article/261248
「生まれたときの性別と自身の性の認識(性自認)が異なる『トランスジェンダー』への差別や偏見をあおる誹謗(ひぼう)中傷が広がっている。特に、生まれた時の性が男性で性自認が女性の人(トランスの女性)に対して『女に見えない』『女装した性犯罪者の男と見分けがつかない』などと言葉の刃(やいば)を向ける傾向が強い。」
「『女装で女子トイレの入り方を指南する変態野郎』『女装した人が女湯に入って逮捕されたりしている。(トランスの女性を)受け入れない女性を批判するのは間違い』『自称女性は化け物』…。会員制交流サイト(SNS)にはトランス女性を中傷する匿名の投稿があふれる。」
もし「トランスジェンダー=性同一性障碍」だと思っていたら、これらの言葉は誹謗中傷に見えるだろう。
この記事の卑怯なところは、性別適合手術を済ませた河上りさという人を取り上げ、「犯罪者のイメージと結び付けている」「どこにでもいる人間です」と言わせているところだ。
だが、女子トイレの入り方を指南する自称トランスの男や、女湯に入って逮捕された男は実在する。
二〇二一年・二月二十七日――「琵琶湖の妖精るらな」という YouTuber の動画が炎上した。
「琵琶湖の妖精」はトランス女性だ。炎上したのは、「女装して女子トイレを使いたい方へ」という動画だった。そこで、「多くの人は暇じゃないので警察を呼びません」と「琵琶湖の妖精」は放言する。
批判が殺到した結果、「琵琶湖の妖精」は動画を消した。
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