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同性婚を誰が望んでいるのか?
1.私の周りの当事者はどう考えているか。前編。
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同性婚について、私の周りの同性愛者はどう考えているのか。
第一章で述べた通り、リアルで会う当事者には何となく訊き辛かった。しかし、カミングアウトしてからは俄かに気になりだす。なので、思い切って訊いてみた。
今から挙げる例は、みな実際に顔を合わせて訊いたのである――どのようなシチュで訊いたかはお察しください。
最初に尋ねたのは、四十代後半のゲイだ。
「いいと思う」と彼は言った。「だって、結婚って、時代と共に進化してきてるでしょ? 元は親が認めなきゃ結婚できなかったのが、好きな人同士で結婚できるようになってきたように。それと同じで、同性婚も認められていくんじゃないの?」
一方、私が同性婚に否定的であることを知ると、少し驚いたような顔をしていた。
「え、じゃあ、僕は君の敵なの?」
「いえ――私の敵は、ゲイパレードで裸になりながら、同性婚ほしいとか言ってる人ですよ。」
「ああ。」彼は苦笑する。「確かにありゃ『やりすぎ』だ。」
次に尋ねたのは、私より一つ年上のゲイである。
「いいんじゃない?」
そうは言ったものの、やや悩ましげな顔となる。
「けど――それをやることによって、何をするかだよね。はたして、税制上の優遇を得たいのか――それとも、偏見をなくしたいのか――。」
そして、「珍しいね、こんな話するなんて」とも言った。なので、このようなことを訊くことになった経緯や、ゲイリブに対して私が否定的な考えを持つようになった経緯も説明したのだ。
「ゲイリブって何?」
「同性愛者解放運動のことですよ。」
「解放?」股間の前で銃を構える仕草を彼はする。「何? 解放するの?」
全く何も知らないようだったので、日本で行われているゲイパレードの画像を彼に見せた。すると、顔を引きつらせながら「こんなんされたらもっと偏見広まるわ!」と言ったのである。
「てか、同性婚ほしいとか言いつつ、この人たちも複数人とやりまくってるんじゃないの?」
三人目に訊いたのは、三十代半ばほどの両性愛者だ。
正直、あまり頭の良くない男だった。「いいんじゃない」と彼も言ったのだが、話をよく聴いてみると、私が男と結婚することに賛成かどうかと尋ねたと勘違いしている。
「いえ、そうではなくて、この日本で同性婚を認めるかどうかですよ。」
そして、同性婚のメリットとデメリットを話してみたところ、「え、ああ、うーん」と黙り込んでしまった。「分からないですか?」と問うたところ、「うん」と彼は答える。
「けど、俺は結婚するなら女とするわ。」
四人目に訊いたのは、三十代半ばほどのゲイだ。
寡黙な男だった。今までの男の中で顔立ちは最も好い。
このようなことを訊ることとなった経緯について私が話すと、むっつりと黙り込んだ。政治の話を唐突に振られたので怒ってしまったのかなと少し心配になる。しかし、やがて彼はこう言った。
「枠が違う。」
「—―枠?」
うん――と彼はうなづく。
「あちら側に認められた枠を、こっち側に持ってくるのには違和感がある。」
驚いた。私と同じ意見の人を、リアルの世界で初めて見たのだ。
「こはかすがいって言うでしょ?」
「――え?」
「子は鎹。」
後に調べたのだが、鎹とは、木材を繋ぎ止めるための「コ」の字の釘である。つまり、子供がいるからこそ夫婦の仲が保たれている状況を指す言葉だ。
「離婚するときのデメリットを考えると、同性婚したがる人はあまりいないんじゃないかな。今は好きでも、いつまで好きでいられるか分からない。異性愛者だったら、子供が鎹になることもあるだろうけど――同性愛者に子供は出来ないわけで。いつだったか、同性愛に生産性がないって言ってた人がいるけど――ああいうことを政治家が言うのもどうかと思うけど――結局はそういうことじゃないかな。」
五番目に尋ねたのは、二つ年上の両性愛者である。
「ウーン、反対。」
あっさりと彼はそう答える。
「俺は元々結婚してたのよ――経済的な理由で別れたんだけど。で、別れた後で、男と同棲したこともあるの。けれど、男と同棲してたときってのは、嫁さんの婚姻届けに、ポンッ、て判子を捺したときみたいな――あの感覚がないの。」
私も両性愛者であるため、「あの感覚」とやらは分からなくもない。女性と付き合う時と男性と付き合うときでは、貞操意識と言おうか、二人のつながりと言おうか、そういったものの強さが大きく違う。
六人目に尋ねたのは年下のゲイだ。
「いいんじゃないですか。」
「何で?」
「え、だって――僕は元はノンケで、今は完全にゲイですけど、そういう制度が出来たら嬉しいじゃないですか。」
「ていうことは、君、誰かと結婚するの?」
「いや――それは分からないですけど。」
そうして、彼は黙ってしまった。
七番目に尋ねたのは、四十代半ばほどのゲイである。
「僕は――どちらかといえば反対かなあ。」
「ほう。なぜですか?」
「うーん。だって――結婚すれば様々な優遇措置が得られるのは、要するに日本国民が一人でも多く生まれることを期待したもんなわけで――。けど、同性愛者はそれがあらへんやん。」
「まあ、そうですよね。」
「せや。」妙に納得したような顔を彼はする。「結婚は男と女でするもんや。」
さらには、会社内でLGBTの講習が行われていることについても彼は語った。
「そのLGBTの講師の人は、心が女性の人には女子トイレを使わせるのが正しいんやって言うんやけど、うちの上司も困っとったわ。他の女の子も職場にはおるのに、どうやって彼女らを納得させるんやって言って――ほんまおかしいな。」
八人目に尋ねたのは、三十代半ばの両性愛者である。
「いいんじゃない。」
今までの賛成派と同じように彼もそう答えた。
「だって、知人や友人が結婚しようと、俺にとって知ったことじゃないし。それと同じで、男と男が結婚しようったって、別にどうってことないじゃん。俺と君がこうして会ってるのだって、世間からしたら気味の悪いことだけど、他人の知ったことじゃないんじゃない?」
それにしても、賛成派たちは異口同音に「いいんじゃない」と答える。どちらかと言えば他人事のような賛成だ。しかし、これが平均的な男性当事者の意識かもしれない。
もし読者にゲイの知人がいたとして、同性婚のことについて訊ねたとしよう。彼が賛成派ならば、やはり「いいんじゃない」と答えるのではないだろうか。
第一章で述べた通り、リアルで会う当事者には何となく訊き辛かった。しかし、カミングアウトしてからは俄かに気になりだす。なので、思い切って訊いてみた。
今から挙げる例は、みな実際に顔を合わせて訊いたのである――どのようなシチュで訊いたかはお察しください。
最初に尋ねたのは、四十代後半のゲイだ。
「いいと思う」と彼は言った。「だって、結婚って、時代と共に進化してきてるでしょ? 元は親が認めなきゃ結婚できなかったのが、好きな人同士で結婚できるようになってきたように。それと同じで、同性婚も認められていくんじゃないの?」
一方、私が同性婚に否定的であることを知ると、少し驚いたような顔をしていた。
「え、じゃあ、僕は君の敵なの?」
「いえ――私の敵は、ゲイパレードで裸になりながら、同性婚ほしいとか言ってる人ですよ。」
「ああ。」彼は苦笑する。「確かにありゃ『やりすぎ』だ。」
次に尋ねたのは、私より一つ年上のゲイである。
「いいんじゃない?」
そうは言ったものの、やや悩ましげな顔となる。
「けど――それをやることによって、何をするかだよね。はたして、税制上の優遇を得たいのか――それとも、偏見をなくしたいのか――。」
そして、「珍しいね、こんな話するなんて」とも言った。なので、このようなことを訊くことになった経緯や、ゲイリブに対して私が否定的な考えを持つようになった経緯も説明したのだ。
「ゲイリブって何?」
「同性愛者解放運動のことですよ。」
「解放?」股間の前で銃を構える仕草を彼はする。「何? 解放するの?」
全く何も知らないようだったので、日本で行われているゲイパレードの画像を彼に見せた。すると、顔を引きつらせながら「こんなんされたらもっと偏見広まるわ!」と言ったのである。
「てか、同性婚ほしいとか言いつつ、この人たちも複数人とやりまくってるんじゃないの?」
三人目に訊いたのは、三十代半ばほどの両性愛者だ。
正直、あまり頭の良くない男だった。「いいんじゃない」と彼も言ったのだが、話をよく聴いてみると、私が男と結婚することに賛成かどうかと尋ねたと勘違いしている。
「いえ、そうではなくて、この日本で同性婚を認めるかどうかですよ。」
そして、同性婚のメリットとデメリットを話してみたところ、「え、ああ、うーん」と黙り込んでしまった。「分からないですか?」と問うたところ、「うん」と彼は答える。
「けど、俺は結婚するなら女とするわ。」
四人目に訊いたのは、三十代半ばほどのゲイだ。
寡黙な男だった。今までの男の中で顔立ちは最も好い。
このようなことを訊ることとなった経緯について私が話すと、むっつりと黙り込んだ。政治の話を唐突に振られたので怒ってしまったのかなと少し心配になる。しかし、やがて彼はこう言った。
「枠が違う。」
「—―枠?」
うん――と彼はうなづく。
「あちら側に認められた枠を、こっち側に持ってくるのには違和感がある。」
驚いた。私と同じ意見の人を、リアルの世界で初めて見たのだ。
「こはかすがいって言うでしょ?」
「――え?」
「子は鎹。」
後に調べたのだが、鎹とは、木材を繋ぎ止めるための「コ」の字の釘である。つまり、子供がいるからこそ夫婦の仲が保たれている状況を指す言葉だ。
「離婚するときのデメリットを考えると、同性婚したがる人はあまりいないんじゃないかな。今は好きでも、いつまで好きでいられるか分からない。異性愛者だったら、子供が鎹になることもあるだろうけど――同性愛者に子供は出来ないわけで。いつだったか、同性愛に生産性がないって言ってた人がいるけど――ああいうことを政治家が言うのもどうかと思うけど――結局はそういうことじゃないかな。」
五番目に尋ねたのは、二つ年上の両性愛者である。
「ウーン、反対。」
あっさりと彼はそう答える。
「俺は元々結婚してたのよ――経済的な理由で別れたんだけど。で、別れた後で、男と同棲したこともあるの。けれど、男と同棲してたときってのは、嫁さんの婚姻届けに、ポンッ、て判子を捺したときみたいな――あの感覚がないの。」
私も両性愛者であるため、「あの感覚」とやらは分からなくもない。女性と付き合う時と男性と付き合うときでは、貞操意識と言おうか、二人のつながりと言おうか、そういったものの強さが大きく違う。
六人目に尋ねたのは年下のゲイだ。
「いいんじゃないですか。」
「何で?」
「え、だって――僕は元はノンケで、今は完全にゲイですけど、そういう制度が出来たら嬉しいじゃないですか。」
「ていうことは、君、誰かと結婚するの?」
「いや――それは分からないですけど。」
そうして、彼は黙ってしまった。
七番目に尋ねたのは、四十代半ばほどのゲイである。
「僕は――どちらかといえば反対かなあ。」
「ほう。なぜですか?」
「うーん。だって――結婚すれば様々な優遇措置が得られるのは、要するに日本国民が一人でも多く生まれることを期待したもんなわけで――。けど、同性愛者はそれがあらへんやん。」
「まあ、そうですよね。」
「せや。」妙に納得したような顔を彼はする。「結婚は男と女でするもんや。」
さらには、会社内でLGBTの講習が行われていることについても彼は語った。
「そのLGBTの講師の人は、心が女性の人には女子トイレを使わせるのが正しいんやって言うんやけど、うちの上司も困っとったわ。他の女の子も職場にはおるのに、どうやって彼女らを納得させるんやって言って――ほんまおかしいな。」
八人目に尋ねたのは、三十代半ばの両性愛者である。
「いいんじゃない。」
今までの賛成派と同じように彼もそう答えた。
「だって、知人や友人が結婚しようと、俺にとって知ったことじゃないし。それと同じで、男と男が結婚しようったって、別にどうってことないじゃん。俺と君がこうして会ってるのだって、世間からしたら気味の悪いことだけど、他人の知ったことじゃないんじゃない?」
それにしても、賛成派たちは異口同音に「いいんじゃない」と答える。どちらかと言えば他人事のような賛成だ。しかし、これが平均的な男性当事者の意識かもしれない。
もし読者にゲイの知人がいたとして、同性婚のことについて訊ねたとしよう。彼が賛成派ならば、やはり「いいんじゃない」と答えるのではないだろうか。
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