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第1章 イリス大陸編
第15話 魔王軍四天王
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首都を東に向かって数キロメートル歩けばサイク山に到着する。騎士団一行は既にサイク山の中腹に差し掛かっていた。
騎士団は、邪魔になるという理由でマスクを着けていなかったが「臭い」などという文句を言う者は誰一人いなかった。不動颯太も二回目の登山だったので、流石にサイク草の臭いにも慣れていた。
「……その剣、かっこいいね」
「う、うん。勇者だからって、国宝のものを貸してもらってる……」
「へ、へえ」
不動颯太と功刀聖子は隣り合って歩いているが、お互いに緊張していて会話はぎこちない。
「右前方から2匹、スライムが来るぞ。あと30メートル!」
不動颯太のすぐ前を歩いているファルコが皆に伝える。ファルコは目を瞑りながら歩いていた。
「クヌギ卿、頼みます」
「はい」
騎士団長の指示で功刀聖子が前へ出て抜剣する。剣というよりは刀に近い形状の刀身は薄紫色に弱く発光していた。
前方のしげみが擦れる音とほぼ同時に二匹のスライムが飛び出してきた。功刀聖子はその二匹のスライムを横向きに斬る。二匹のスライムは核ごと一刀両断された。剣先が音速を超えていたため、風が吹きあがった。
「ふう……」
功刀聖子は一息吐いて刀を鞘に収める。
「す、すごい……」
不動颯太は驚愕した。太刀筋が速過ぎて見えなかったからだ。
「召喚から一か月でもうA級冒険者並みかよ。てか何でできてんだあの剣」
不動颯太のすぐ後ろを歩くリーブスも驚きを隠せないでいた。功刀聖子の剣術はもちろん、スライムを一刀両断する切れ味と強度に一目置いた。
「核刀コアエレ。特殊な金属で構成された刀身は黄金をも凌駕する密度と腐食耐性を持ちます。私が持つこの剣よりも遥かに上級の国宝ですよ」
騎士団長が自慢げに解説する。
「次、左後方20メートルにスライム1匹。こちらの様子を伺っているようだ」
ファルコの索敵を頼りにスライムだらけの山を進んでいく。
功刀聖子を中心に、次から次へと現れるスライムを倒していく。王国騎士団の精鋭が相手では、単独のスライムなど相手にもならない。
「しかし、一体何の変異でスライムがこんなにも大量発生したのでしょうか。一刻も早く原因を突き止め、被害を抑えなければ」
騎士団長がスライムの死骸を眺めながら呟く。
スライムを倒した数は既に数十匹に達していたが、発生原因は未だ突き止められていない状態であった。
「さっきから凄い索敵能力ですよね。ファルコさんのスキルってどういうものなんですか?」
疑問に思った不動颯太がファルコに質問する。
数日前、不動颯太はギルドでファルコが鳥を使役する場面を目撃したことがあったため、ファルコのスキルは使役系のものだと予想していた。実際にこうして戦闘で活躍する姿を身て、より詳しく知りたいと思ったのだ。
「……俺のスキルは鳥類専門の【ビーストテイマー】。普通のビーストテイマーなら動物全般を使役できる代わりに同時使役はせいぜい1~2匹程度が限界だ。だが、俺は使役できる動物が鳥類に限定される代わりに同時に六匹まで使役できる。テイマーは使役している動物と感覚を共有できるんだ。今は上空から六匹の猛禽類がこの周囲を見張っている状態だ」
「ファルコさんってこんな喋り方だっけ……」
いつもは酒に酔っていて舌足らずでふざけた様子のファルコだが、今は饒舌で真剣な趣きだ。
「あいつ酔いが覚めると性格が変わるんだよ。今のあいつに話しかけると止まらなくなるから気をつけな」
「は、はい……」
リーブスが後ろから不動颯太に耳打ちした。
「ぐあっ?!」
「!? どうした!」
突然、ファルコが叫び声をあげた。足を止め頭を痛そうに抱えているファルコにリーブスが駆け寄る。
「い、今……俺の鳥が二匹死んだ、しかも一瞬で……」
「なに!? 誰にやられた?!」
「分からない。何も見えなかった……」
ファルコの急変に騎士たちも足を止め、警戒を強める。
「騎士団長、これは……」
「ええ、急に空気が変わりましたね」
功刀聖子や騎士団長らは何らかの異変に気付く。不動颯太は何が何やら分かっていない様子であった。
「全く……次から次へと、私の可愛いスライムたちをよくも殺してくれましたねえ」
「「!?」」
背後からの突然の知らない声に、一同は驚き、剣を構えた。
「赤黒い肌……血人か!?」
声の持ち主は、先日ストレー王国のA級冒険者パーティを皆殺しにした、魔王軍四天王のビスケスであった。
「ご機嫌用、真人の皆さん。まさかA級冒険者に続き、騎士団の方々がお越しに来るとは、とんだサプライズですよ」
ビスケスは礼儀正しく振舞うが、その醜い容姿に一同は嫌悪感を覚えた。
「これが血人……本で見た通り、なんて醜い姿だ……」
「なぜ魔人がこんなところに。そして、何だ、この威圧感……」
ビスケスの漂う強者の風格に、騎士団長も含め一同は気圧された。
「ストレーのA級パーティを殺ったのはお前か!? まさかスライムを大量に放ったのも――」
「ええ、その通りです」
ファルコをかばっていたリーブスの問いに、ビスケスが答える。すると、見せつけるかのように、ビスケスの周りに身を隠していた大量のスライムが現れ、あっという間に騎士団一行を取り囲んだ。
「や、やばい……スライムがこんなに沢山……」
一匹のスライムを相手に死にかけた経験がある不動颯太は震えあがった。例え今、【アスポート】でスライムを攻撃し、何匹か倒せたとしても、残りのスライムから一斉攻撃を浴びるのは目に見えている。
騎士団一行でも、この数のスライムを同時に相手にするのは骨が折れるだろう。
「スライムを使役しているのか? しかも、こんなに沢山のスライムを同時に……」
頭痛が収まったファルコは、立ち上がりって目の前の光景に恐れおののいた。この場にいるスライムは数十匹。こんなにも多くの生物を同時使役できるテイマーなど聞いたことが無かった。
「鳥を使役していたのはあなたでしたか。そうです、私もあなたと同じく【ビーストテイマー】のスキルを持つ者。ただし、私が使役できる生物はスライム族に限りますが。とは言っても、あなたのスキルとは各が違う。なぜなら、私は千匹近いスライムを同時使役できるのですから」
「馬鹿な、千匹だと? ありえない……いくら何でも誇張が過ぎる……」
「ふふ、まあ信じなくても結構」
ファルコはビスケスの発言を信じることができなかった。ファルコが同時使役できる鳥類の数は六匹が限界。それでも、ビーストテイマーの中ではかなり多い方なのである。
突拍子のない規模を信じられず呆れて薄笑いを浮かべるファルコを、ビスケスは嘲笑した。
騎士団は、邪魔になるという理由でマスクを着けていなかったが「臭い」などという文句を言う者は誰一人いなかった。不動颯太も二回目の登山だったので、流石にサイク草の臭いにも慣れていた。
「……その剣、かっこいいね」
「う、うん。勇者だからって、国宝のものを貸してもらってる……」
「へ、へえ」
不動颯太と功刀聖子は隣り合って歩いているが、お互いに緊張していて会話はぎこちない。
「右前方から2匹、スライムが来るぞ。あと30メートル!」
不動颯太のすぐ前を歩いているファルコが皆に伝える。ファルコは目を瞑りながら歩いていた。
「クヌギ卿、頼みます」
「はい」
騎士団長の指示で功刀聖子が前へ出て抜剣する。剣というよりは刀に近い形状の刀身は薄紫色に弱く発光していた。
前方のしげみが擦れる音とほぼ同時に二匹のスライムが飛び出してきた。功刀聖子はその二匹のスライムを横向きに斬る。二匹のスライムは核ごと一刀両断された。剣先が音速を超えていたため、風が吹きあがった。
「ふう……」
功刀聖子は一息吐いて刀を鞘に収める。
「す、すごい……」
不動颯太は驚愕した。太刀筋が速過ぎて見えなかったからだ。
「召喚から一か月でもうA級冒険者並みかよ。てか何でできてんだあの剣」
不動颯太のすぐ後ろを歩くリーブスも驚きを隠せないでいた。功刀聖子の剣術はもちろん、スライムを一刀両断する切れ味と強度に一目置いた。
「核刀コアエレ。特殊な金属で構成された刀身は黄金をも凌駕する密度と腐食耐性を持ちます。私が持つこの剣よりも遥かに上級の国宝ですよ」
騎士団長が自慢げに解説する。
「次、左後方20メートルにスライム1匹。こちらの様子を伺っているようだ」
ファルコの索敵を頼りにスライムだらけの山を進んでいく。
功刀聖子を中心に、次から次へと現れるスライムを倒していく。王国騎士団の精鋭が相手では、単独のスライムなど相手にもならない。
「しかし、一体何の変異でスライムがこんなにも大量発生したのでしょうか。一刻も早く原因を突き止め、被害を抑えなければ」
騎士団長がスライムの死骸を眺めながら呟く。
スライムを倒した数は既に数十匹に達していたが、発生原因は未だ突き止められていない状態であった。
「さっきから凄い索敵能力ですよね。ファルコさんのスキルってどういうものなんですか?」
疑問に思った不動颯太がファルコに質問する。
数日前、不動颯太はギルドでファルコが鳥を使役する場面を目撃したことがあったため、ファルコのスキルは使役系のものだと予想していた。実際にこうして戦闘で活躍する姿を身て、より詳しく知りたいと思ったのだ。
「……俺のスキルは鳥類専門の【ビーストテイマー】。普通のビーストテイマーなら動物全般を使役できる代わりに同時使役はせいぜい1~2匹程度が限界だ。だが、俺は使役できる動物が鳥類に限定される代わりに同時に六匹まで使役できる。テイマーは使役している動物と感覚を共有できるんだ。今は上空から六匹の猛禽類がこの周囲を見張っている状態だ」
「ファルコさんってこんな喋り方だっけ……」
いつもは酒に酔っていて舌足らずでふざけた様子のファルコだが、今は饒舌で真剣な趣きだ。
「あいつ酔いが覚めると性格が変わるんだよ。今のあいつに話しかけると止まらなくなるから気をつけな」
「は、はい……」
リーブスが後ろから不動颯太に耳打ちした。
「ぐあっ?!」
「!? どうした!」
突然、ファルコが叫び声をあげた。足を止め頭を痛そうに抱えているファルコにリーブスが駆け寄る。
「い、今……俺の鳥が二匹死んだ、しかも一瞬で……」
「なに!? 誰にやられた?!」
「分からない。何も見えなかった……」
ファルコの急変に騎士たちも足を止め、警戒を強める。
「騎士団長、これは……」
「ええ、急に空気が変わりましたね」
功刀聖子や騎士団長らは何らかの異変に気付く。不動颯太は何が何やら分かっていない様子であった。
「全く……次から次へと、私の可愛いスライムたちをよくも殺してくれましたねえ」
「「!?」」
背後からの突然の知らない声に、一同は驚き、剣を構えた。
「赤黒い肌……血人か!?」
声の持ち主は、先日ストレー王国のA級冒険者パーティを皆殺しにした、魔王軍四天王のビスケスであった。
「ご機嫌用、真人の皆さん。まさかA級冒険者に続き、騎士団の方々がお越しに来るとは、とんだサプライズですよ」
ビスケスは礼儀正しく振舞うが、その醜い容姿に一同は嫌悪感を覚えた。
「これが血人……本で見た通り、なんて醜い姿だ……」
「なぜ魔人がこんなところに。そして、何だ、この威圧感……」
ビスケスの漂う強者の風格に、騎士団長も含め一同は気圧された。
「ストレーのA級パーティを殺ったのはお前か!? まさかスライムを大量に放ったのも――」
「ええ、その通りです」
ファルコをかばっていたリーブスの問いに、ビスケスが答える。すると、見せつけるかのように、ビスケスの周りに身を隠していた大量のスライムが現れ、あっという間に騎士団一行を取り囲んだ。
「や、やばい……スライムがこんなに沢山……」
一匹のスライムを相手に死にかけた経験がある不動颯太は震えあがった。例え今、【アスポート】でスライムを攻撃し、何匹か倒せたとしても、残りのスライムから一斉攻撃を浴びるのは目に見えている。
騎士団一行でも、この数のスライムを同時に相手にするのは骨が折れるだろう。
「スライムを使役しているのか? しかも、こんなに沢山のスライムを同時に……」
頭痛が収まったファルコは、立ち上がりって目の前の光景に恐れおののいた。この場にいるスライムは数十匹。こんなにも多くの生物を同時使役できるテイマーなど聞いたことが無かった。
「鳥を使役していたのはあなたでしたか。そうです、私もあなたと同じく【ビーストテイマー】のスキルを持つ者。ただし、私が使役できる生物はスライム族に限りますが。とは言っても、あなたのスキルとは各が違う。なぜなら、私は千匹近いスライムを同時使役できるのですから」
「馬鹿な、千匹だと? ありえない……いくら何でも誇張が過ぎる……」
「ふふ、まあ信じなくても結構」
ファルコはビスケスの発言を信じることができなかった。ファルコが同時使役できる鳥類の数は六匹が限界。それでも、ビーストテイマーの中ではかなり多い方なのである。
突拍子のない規模を信じられず呆れて薄笑いを浮かべるファルコを、ビスケスは嘲笑した。
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