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院長は15歳
良い夢を
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サリーとドリーが食料庫いっぱいの食糧を見て、そして、僕を見た。
「神様の思し召しだよ」
僕は、2人にもそう言った。先に述べた通り、これは2度と起こらない奇蹟だから、僕が伝えるべき言葉は他にない。
サリーはともかく、ドリーは、それでも首を傾げていたけど、ムリにも納得してもらうしかない。
まぁ、なんとなく、この2人なら大丈夫だと、根拠のない確信を得る。
「な! スゲーだろ!」
トマスのテンションはまだ落ちない。
「準備だろ」
静かなゴンズが、その体格に見合う見事な力でトマスを引っ張っていった。あの2人は、静と動、大と小で正反対だけど、案外良いコンビなのかもしれない。
それから僕は、料理は料理係の彼女たちに任せて、他の子たちと食堂の掃除を始めたのだった。
しばらくすると、みんなの頑張りでキレイになった。埃やゴミが取り除かれるだけで空気が清浄になった気がする。しかし、それだけに修繕が必要な箇所はどうしても目立ってしまう。
その頃には、厨房からも良い匂いが漂ってきた。
すっかり整った食事を前に、僕らは両手を胸の前で組み、目を瞑り、
「糧に感謝を」
神に感謝を捧げ、いよいよご馳走にありついたのだった。
肉や野菜がたっぷりのミルクでトロトロにまで煮込まれたシチュー。小麦が香るモッチリとしてナッツの香ばしい無発酵パン。ふっくらとした身が熱々で香草がさっぱりと飽きさせない、キノコと魚のパイ包み焼き。メインは何といっても、厚切りにされ、両面にしっかりと焼き色が付いたベーコンステーキ。
当たり前のように大きな子が小さな子の面倒を見ていて、思わずがっつく子を見て、誰かが笑って、それはもうお祭りのような熱気で、楽しい食事風景だった。
みんなが笑顔でお腹を満たした。
その笑顔が見られたのが、何よりのご馳走だった。
食後にはなんと、ベリーのタルトが出てきて驚いてしまった。これは僕の危惧が現実になってしまうかもしれない。そんな内心は余所に、ベリーの甘酸っぱさが渋めのお茶と良く合って、あれだけ食べたのにしっかりと完食したのだった。
後片付けもみんなで行い、暗くなる前に寝床を整えて、火の始末を念入りにして僕らは、就寝するのだった。
みんなが寝息を立てるころ、こっそりと食料庫を覗いたけど、食糧は僕が思ったよりも減っていなかった。どんな魔法を使ったのかはわからないけど、ここの子たちは弁えているのだろう。なかなか出来ることじゃあない。明日以降の不安がちょっと減って、割りと楽しみになりながら、僕も長い一日を終えホッとしながら、男の子たちの部屋で眠りに就いた。
それではみなさま、良い夢を。
おやすみなさい。
「神様の思し召しだよ」
僕は、2人にもそう言った。先に述べた通り、これは2度と起こらない奇蹟だから、僕が伝えるべき言葉は他にない。
サリーはともかく、ドリーは、それでも首を傾げていたけど、ムリにも納得してもらうしかない。
まぁ、なんとなく、この2人なら大丈夫だと、根拠のない確信を得る。
「な! スゲーだろ!」
トマスのテンションはまだ落ちない。
「準備だろ」
静かなゴンズが、その体格に見合う見事な力でトマスを引っ張っていった。あの2人は、静と動、大と小で正反対だけど、案外良いコンビなのかもしれない。
それから僕は、料理は料理係の彼女たちに任せて、他の子たちと食堂の掃除を始めたのだった。
しばらくすると、みんなの頑張りでキレイになった。埃やゴミが取り除かれるだけで空気が清浄になった気がする。しかし、それだけに修繕が必要な箇所はどうしても目立ってしまう。
その頃には、厨房からも良い匂いが漂ってきた。
すっかり整った食事を前に、僕らは両手を胸の前で組み、目を瞑り、
「糧に感謝を」
神に感謝を捧げ、いよいよご馳走にありついたのだった。
肉や野菜がたっぷりのミルクでトロトロにまで煮込まれたシチュー。小麦が香るモッチリとしてナッツの香ばしい無発酵パン。ふっくらとした身が熱々で香草がさっぱりと飽きさせない、キノコと魚のパイ包み焼き。メインは何といっても、厚切りにされ、両面にしっかりと焼き色が付いたベーコンステーキ。
当たり前のように大きな子が小さな子の面倒を見ていて、思わずがっつく子を見て、誰かが笑って、それはもうお祭りのような熱気で、楽しい食事風景だった。
みんなが笑顔でお腹を満たした。
その笑顔が見られたのが、何よりのご馳走だった。
食後にはなんと、ベリーのタルトが出てきて驚いてしまった。これは僕の危惧が現実になってしまうかもしれない。そんな内心は余所に、ベリーの甘酸っぱさが渋めのお茶と良く合って、あれだけ食べたのにしっかりと完食したのだった。
後片付けもみんなで行い、暗くなる前に寝床を整えて、火の始末を念入りにして僕らは、就寝するのだった。
みんなが寝息を立てるころ、こっそりと食料庫を覗いたけど、食糧は僕が思ったよりも減っていなかった。どんな魔法を使ったのかはわからないけど、ここの子たちは弁えているのだろう。なかなか出来ることじゃあない。明日以降の不安がちょっと減って、割りと楽しみになりながら、僕も長い一日を終えホッとしながら、男の子たちの部屋で眠りに就いた。
それではみなさま、良い夢を。
おやすみなさい。
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