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院長は15歳

思し召し

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「さあ、はじめよう!」

「はーい」

 イスから元気良く飛び下りた、小さな子を皮切りに、みんなで行動を開始する。

 とりあえず、全員が立ち上がったのでホッとした。

 料理係に立候補してくれた少女たちが、小さな子を数人連れて厨房へと消えていく。

 やはりというか、どんな時も、例え幼くても女性の方が切り替えが早い。

「ねえ、年長の男の子たち、重いものを運んで上げてよ。水汲みとか、薪の準備とか」

 所在無さげに佇んでいた男の子たちにお願いした。

 ちょうどそこへ、さっき厨房にいった小さな子たちが飛び込んできた。

「ねぇ! ねぇ! ねぇ!」
「ナニあれ!? アレなに!?」 

 物凄い勢いだ。

「どうした?」「何だ?」

 その勢いに他の子たちも集まってくる。

「あ! トマス! ゴンズ! きて! みて!」

 小柄だけど赤毛の勝ち気そうな男の子、トマス。
 大柄で糸目の穏やかそうな男の子、ゴンズ。

 その2人の腕を、それぞれ2、3人の子たちが引っ張って連れていこうと必死だけど、2人の力が強いのだろう、その場から1歩も動く気配がない。

「何だよ! キッカ」

 トマスは訳がわからないといった様子で大声を上げた。しかし、子どもたちは、
「いいから!」「きて!」「はやく!」
口々に2人を囃し立てる。

「わかった。行くから、ちょっと落ち着け」

 ゴンズの穏やかな声に、「うん!」しかし、全く落ち着いた気配のない子たちに引っ張られる形で2人は動き始めるのだった。

 こうなると、好奇心が刺激された他の子たちも、「何だ、何だ」と着いていく。

 厨房を抜け、ある扉の前にみんなを誘導した子たちが、満面の笑みで「さあ!」と、促した。

「何だよ、食料庫じゃんか」
トマスが呟く。

 果たして、そこはこの家の食料庫だった。

「うお!」

 トマスのテンションが一気に上がったのが、気配でわかった。
 そして、トマスがバッと僕を振り返った。

「スゲー! 何だコレ!」
「きっと、今まで頑張った君たちへの神様の思し召しさ」

 僕は端的にそう答えた。

 そこには、食料庫いっぱいに詰められた食糧たち。

 この食料庫がここまでいっぱいになったのは、過去に例をみないだろう。仮にあったとしても、彼らの記憶にはないだろう。

 瑞々しい新鮮な旬の野菜や果物、塩漬けや薫製にされ、保存に重きを置かれた肉や魚。他にも、ミルクやチーズ、茶葉や塩、コショウといった調味料等の細々としたもの。

「こんなに、たくさん」

 誰かが呟いたそれが、ほぼ全員の気持ちだった。

 僕がここに赴任すると決まった時から、僕は動き出していた。

 彼に見出だされ、僕が修行し研鑽した技術をもって稼いだ全財産を、食糧に変えていったのだ。
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