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院長は15歳

いきなりの失敗

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「それじゃあ今から食事にしよう!」

 僕は殊更、明るく聞こえるように振る舞った。それが例え空元気でも、元気は元気だ。僕だけは折れてはいけない。

「と言っても、自慢じゃないけど、僕はあまり料理が得意じゃない」

「本当に自慢にならないじゃない!」

その通りザッツ ライト!」

 僕とサリーの軽快なやり取りに、ぎこちなさの幾分和らいだ笑顔が増えた。

「だから、みんなには助けて欲しい。僕が美味しい食事を取れるように、料理をしたことがある子は手を上げて」

 僕の問い掛けに、年長の女の子の数人が手を上げた。
 しかし、サリーは手を上げなかった。

「あれ? サリーは手伝ってくれないの?」

 僕はすっとぼけて聞いてみた。

「…さいわね」

「ん?」

「あたしも料理は苦手なの! そんくらい気付いてよバカ!」

 サリーの怒号が小さな食堂に響く。

 それと同時に小さな笑いの渦が巻き起こった。

 良い傾向だ。そう思った。だけど、

 ガタッ

 サリーが、けたたましい音を上げながら椅子を床に転がせながら立ち上がった。

 シーンと静まり返る食堂。
 プルプル震えながら真っ赤な顔で目尻に涙を浮かべるサリー。

 あ、ヤバい。やり過ぎた。

「サリー」

 ごめんなさい。

 続く言葉が出る前に、サリーは部屋を飛び出して行った。

 僕は咄嗟に彼女を追い掛けようとしたけれど、それよりも早く1人の少女がサリーを追い掛けて行った。

「大丈夫。任せて」

 その少女は、僕の脇をすり抜け際にそんな言葉を残して行った。

 今はヘタに刺激しない方が良いかな。

 彼女のおかげで冷静さを取り戻した僕は、サリーを追い掛けるのを諦めた。

「サリねぇたん、だいじょぶ?」
「だいじょーぶだよー」

 そんな会話等で騒然とする食堂だったが、

 パンパン

 僕は手を鳴らせて注目を引き付ける。

「みんな、ごめん! あれは明らかに僕がからかいすぎだった」

 僕はテーブルに付くぐらい思いっきり頭を下げた。

「謝る相手が違わねぇ?」

 年嵩の少年が僕を詰る。

「まったくもってその通り! 彼女には後でキッチリと謝らせてもらう!」

 しばらくそうして頭を下げ続けた。

 どれくらいそうしていただろう。

「ご飯、食べよ」

 さっき手を上げた少女の1人が僕の手をそっと握ってそう言った。

 僕が顔を上げると、その少女は微笑んでくれていた。

 僕はいきなりサリーを怒らせるという失敗をしてしまった。これは深く反省しなければならない。

 僕は聖人君子でも何でもない。これからも色んな失敗をするのだろう。

 だけど、下を向く必要はない。

 下を向いていても事態が好転する事はないと彼が教えてくれたから。

 僕は、ムリにも前を向いて歩み続ける。だってもう踏み出したんだ。

 僕もまた、彼らと一緒に成長しよう。
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