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プロローグ

プロローグ

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 その戦争がどうして起こったのか、僕にはわからない。

 しかし、それは起こった。

 大陸を二分する大国間の争いだった。

 多くの国がそのどちらかに与し、戦乱は瞬く間に拡がった。

 多くの兵が戦い、争い、殺し合った。

 その結果、多くの孤児が産まれた。僕にとっては、それが全てだ。

 戦後の混乱が一先ず落ち着いた。

 人々は肩を寄せ合い、復興に向けて動き出した。

 人とは斯くも逞しい。

 しかし、脆いのも人である。

 僕がその孤児院の院長に立候補したのは、ただの偽善であったかもしれない。

「まだ若い君に何が出来る?」

 年長の司祭には鼻で笑われた。

 しかし、見捨てられた孤児院の噂は日を増す毎に痛いほどに聞こえてきた。

 僕に何が出来る? 彼等を救うなど烏滸がましい。無力な僕に何が出来る?

 現実はいつだって目を背けたくなる程残酷で、美しい。

 それでも僕は彼等を見捨てられない。今このときにも、小さな命の灯火が消えていくというのなら、誰かが両手を広げ、風避けにならねばならない。

 待った所で変わらない。

 ならば、いっそ踏み出そう。

 僕を救ってくれた彼のように。

 そうして僕は院長ファザーになった。
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