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アリア

抱きしめて、離さないでくださいね 4

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「あっ……いっ……!」
 指とは比べものにならない圧倒的な質量に、アリアは歯を食いしばって耐える。まるで身体を真っ二つに引き裂かれるような痛みを感じるのに、その痛みを与えるルーグレイは心底楽しそうだ。瞳の奥で揺れる熱のようなものが恐ろしく、押し返して逃げ出したいのに。頼る者はこの場に彼しかいない。

「……か。ルーのばかぁ!」
 アリアは限界だった。子供のように泣きじゃくり、八つ当たりでルーグレイを罵倒するくらいには。
 そうしながら、程よく筋肉がつきすっかり青年らしくなったルーグレイの背に手を回して抱きしめる。

「そうやって抱きしめてて。離さないで。一生」
 さっきまでのやり取りとは違う、あまりに真剣な声音に、ずくんとアリアの胎内がうずいた。

「あ、ああっ、ん!」
 二人の腰がぴたりと合わさり、最奥に鈍痛が響く。けれど痛みよりも勝る充足感に、アリアの身体から力が徐々に抜けてゆく。その機会を見逃さず、ルーグレイはゆっくりと抽挿を開始した。

「だめ、なにか変なの。あ、あ、まって、ルー……ひゃあ!?」

「この先将来のどこかでは待ってあげられるかもだけど、今は無理。ごめんね」

 謝罪を口にしつつ、ルーグレイの律動は止まらない。それは徐々に勢いを増す。お腹側の壁を先端が掠めるたびに、アリアは声をあげることになった。しかもそこが彼女の好いところだと、すっかり前戯の時点で暴かれている。口を閉じる余裕なんてどこにもない。わざとこそげるように切っ先を当てて抽挿されるのだから、たまらない。
 同時に指で蜜口のすぐ上で震える小さな粒をくちゅりと弄られて、残っていた痛みはあっという間に快感に押し流されてしまった。

「あっ、んっ、や。ああっ、だめなの、こんな、きちゃうっ……!」
 先程の前戯のときよりも、さらに大きな波がひたひたとアリアに近づいていた。比べ物にならない大きな快楽の波。愛液は深く打ち付けられる度に結合部から溢れ泡立ち、律動の度にぐちゅぐちゅとはしたない音を立てて耳までも音で犯す。
 何より、汗に濡れた肌同士、鼓動が聞こえるくらい近くに感じる熱が、アリアに本能的な欲求を思い出させる。
 この人を手に入れたい。全てを捧げ手に入れて、ずっと繋ぎとめてしまいたい。早く子種を注いで欲しい、と。

「イってアリア、証を刻ませて」
「んんぅっ、あ、あ、ひゃあああ」

 アリアは楔を強く締め付けながら、達した。それでもルーグレイの腰は止まらない。最奥を穿ちながら腰を回し、内に引き込もうとする肉襞に抵抗する。
 達したばかりで絶頂から降りられないところに、更に子宮口を圧し潰すようにぐるりと腰を回され、アリアは初夜だというのにイきっぱなしになってしまった。

「イってる、いってるの、ルー。あ、あ、ダメ……また……!」
「何度でも達して。僕もそろそろだ」

 ルーグレイの硬く張り詰めた肉茎が一層膨らみ、律動は激しさを増す。アリアの両脚を肩に担ぐように腰を上向かせ、真上から突き下ろすように抽挿を続ける。ぐっぐっと押し込むたびに、跳ねる剛直で最奥を躾けられ、アリアの肉襞が手で絞るように絡みついて射精を強請った。

「……っつ、中に出すよ。これで姉様はもう、僕の伴侶だ……!」
「ルー! あっ、……あああああぁぁ!」

 アリアの嬌声と共に、ルーグレイの熱が爆ぜて、白濁が注がれた。長く続く射精に、アリアの胎が嬉しそうにうねり、それを飲み込んでいく。

 アリアの見せた痴態にルーグレイは収まりがつかず、そのまま抜かずに二度目を始めてしまった。涙目のアリアは大いに彼を詰ったが、結局その晩は空が白けるまで解放されず、司祭がいつの間に証を確認して帰ったのかすら、分からなかった。

 翌朝。
 ぐったりと上半身だけを起こしルーグレイに肩を抱かれながら、王太子妃の侍女から届けられたという薬湯を口に運ぶ。
 添えられたカードには、『喉の擦れに良く効き、滋養強壮の効果もある薬湯です。随分助けられています。どうかひと月、蜜月を乗り越えてください。落ち着いた頃に、改めてお祝いをさせてくださいね』と流麗な文字が綴られていた。

「ひと月……」
「どうしたの、僕のアリア」

 思わず呟きが漏れていたらしい。遠い目をしたアリアを、隣のルーグレイが覗き込む。

(ひと月で落ち着くかしら……ううん、落ち着いてもらわないと私が抱き殺される)

 目の合ったルーグレイに乾いた笑いで誤魔化し、地に足のついた乗り越え方を王太子妃に相談しようと決心した。実践的なノウハウをください。

「ええと、シャーロットが駆け落ちしてひと月も経つでしょう。そんなに長く、いったい何処に隠れているのかしらって」
「うーん。今は南西諸島辺りの港に寄港してるんじゃないかなぁ」

 ルーグレイが微妙に濁しながら、視線を反らして口にする。
 アリアはその様子に目をすがめた。十年の付き合いである。その仕草が叱られる前のものであると、知っている。

「ルーグレイ、何をしたのです」
 居住まいを正し、正面から向き合う。
 覚悟を決めたのか、長引かせて機嫌を損ねたくないと思ったのか、ルーグレイもアリアの正面で正座をした。ベッドの上なので傍から見ると緊張感にかけるのだが、アリアは真剣なお説教体制に入った。

 駆け落ちをしたと思われていたシャーロットは、実は父王へ嘆願に向かうため護衛騎士一人を供に付けて密かに出港したのだった。それは二人の結婚の白紙撤回と、叔母のアリアを帰国させて欲しいという嘆願だ。アリアに相談しなかったのは、結婚の白紙を願えば、進んで身代わりを言い出すだろうと予想がついたから。それでは元も子もない。
 そうして勿論、アリアとの結婚を十年前から望んでいたルーグレイが見逃すはずもなく。
 監視を逃れるならば忙しい一ヵ月前が手薄でいいと誘導し、リースデンまでの船を手配したと言って、逆周りの客船に乗せた。

「リースデンの国内もようやく落ち着いたし、アリア叔母様をこいつの魔の手から逃せると思ったのに!」

 結婚式から一週間後。
 客船が一周して戻ってきたシャーロットは、上陸の足で第二王子夫妻の部屋に突撃し、べったりとくっつくルーグレイを見て、地団駄を踏んで声をあげた。

「ははは。それなら僕の手配を受けちゃダメでしょ」
「お互い結婚したくないってところは共通してたでしょう! それにあなたは私のことなんて、石ころくらいにしか興味がないし」
「そんなことないよ。大事な友人だと思ってるさ」
「悪友枠ってやつよね、知ってます」
「相変わらず、評価が酷いなぁ」
「それに地の利はそちらにあるんだもの。うちの大使はあなたに言われるがまま叔母様の見合い話を握りつぶす役立たずの風見鶏だし。何とかお父様のところに辿り着いて、直訴するしか手を思いつけなかったのよ。だって、叔母様連れて逃げたら、地の果てまでも追ってくるでしょうし」
「もちろん。逃がすはずないだろ」

 若干気になる部分はあるものの、二人の相変わらずの喧嘩のような丁々発止に、アリアは思わず声をあげて笑った。

「シャーロット、貴女が無事で良かった。積もる話はあるけれど、まずは抱きしめさせて」

 両手を広げると、シャーロットがぶつかるように飛び込んでくる。彼女をしっかり受け止めて、その髪を撫でていると、後ろから伸びた腕に腰を力強く支えられて、つむじにキスをされる。
 視線をあげると、少しだけ面白くなさそうな顔のルーグレイと目が合った。くすりと笑ってもう片方の手で彼の頬を撫でる。

「シャーロットを不安にさせないくらい、幸せになりましょうね」

 蕩けるほどの笑みで嬉しそうに頷かれて、アリアも顔をほころばせた。



 おしまい









 お付き合いありがとうございます。
 次話からはシャーロットのお話になります。
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