世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク

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「……うぅ、変身を邪魔するなんて外道だよ! それに、こうやって縛り上げるなんて。お兄さんには人の心は無いの!?」
「オークに人の心云々言われたくはないな。無駄口叩いてないで、さっさと案内しろ」

 前を歩く小さな頭を軽く小突く。
 オークらを退けてからしばらくたった後。俺はリーダー格のオークを縄で縛り上げたうえで、奴に住処への案内を任せていた。

 場所はルスランの西に広がる森の中。覆い茂る木の葉が月明かりを遮り、ただでさえ酷い視界の悪さのせいで足元も見えにくい。

 だが、そんな暗闇をものともせずに奴は歩を進めていく。

「おい。随分躊躇なく進んでいるが、本当に道はこっちで合ってるんだろうな?」

「オークの目は人に比べれば良いの! だから男女のお姉さんは黙ってて!」

「お、男女!?」

「お姉さん、男の格好だけど女の人だよね? 匂いで分かるよ」

 自慢げに言うオークに対してゾイトはたじろぐ。
 まぁ、分からないでもないけどな。確かに、彼女の容姿は中性的だが格好が男のそれだ。一見すれば男に見えなくもない。

 だが、いくら格好を男らしくしようとも、変えられない部分だって存在する。それが、オークにとっては『女の子の匂い』だったと言うわけだ。

「とにかく、ついてきてよ! そのために、ボクを生かしたんでしょ?」

「――お、おい! こいつに案内を任せて大丈夫なんだろうな?! 罠とか何か、姑息な手を先に準備していること
だってあるかもしれないぞ?!」

「……多分、大丈夫だと思います」

 答えたのはフィーリネだ。暗闇に目も多少慣れ始めたようで、声の聞こえたほうを見れば鎧を脱いだ彼女が苦笑している姿が目に映る。

 その視線は、前を歩くオークに注がれていた。何かあるのだろうかと注視してみれば

「……た、確かに、先に罠を果てればよかったかも……! お姉さんって少しドジッ子なのかな? 敵にそんなこと教えちゃって……ふふふ」

 顎に手を添えて、隠しきれていない音量で言葉を話す二足歩行型ウリ坊。

 ドジッ子という意味は奴にこそ似合うのではないかと思いながら俺はその首根っこを引っ掴むと、耳元に口を近づけて

「一応言っておくけど、何か企んでたら容赦なく消すからな?」

「べ、べべ、別に何も考えてなんかいないよ!? この先で仲間に罠を用意してもらおうなんて考えてないから!」

「丁寧に全部教えてくれてありがとうな」

 変に探りを入れないでも全てを答えてくれる。

 隠し事が下手な子供のようなオークに、俺は嘆息。それから、念を押すように奴の鼻に指先を立てると

「変な気を起こそうとするなよ?」

「あ、あいっ!」

 あえてキツイ言動で言ってみれば、震えたうえに涙声で返答。やはり、見た目相応に精神面は成長していないらしい。本当に子供のようだ。
 こんなのが数千年前の人類に大打撃を与えた存在とはな。

 などと考えてから奴を地面に降ろすと、改めて案内を再開させる。

 さっきの軽い脅しが功を奏したのか、罠が設置されているわけでも、待ち伏せを受けることもなく順調に森の中を進んだ。

 そうして辿り着いたのは、開けた広場のような場所だ。

「……何だよ、ここ」

 例えるなら、山火事後の森の中と言うべきか。
 辺りに生えていたはずの木々は黒くコゲた幹だけを残して消失。地面の所々には炎で焼かれたような痕が見られ、中央には隕石でも落ちたのかと言うようなクレーターがある。

 そんな酷い有様が、空に浮かぶ月の明かりに照らされて鮮明に確認できた。

「ここに、ぼく達の王は眠ってるんだ」

「眠ってる? どういう意味だよ?」

 そう質問してみれば、オークは答えることなくほくそ笑む。それから目を瞑ると、その姿が瞬く間に透過していく。

 まるで、最初からそこにいなかったかのように。奴の腰に下がっていた縄だけを残し、オークは消え去った。

「な、何が……!?」

『本当はもう少しエネルギーが欲しかったんだけど、予定変更らしいです』

 当然のオークの消失にうろたえていた俺の耳に、再び入る奴の声。
 どうやらテレパシーのようなものなんだろう。頭に直接語りかけるようなその言葉は、ついさっきまでのあどけなさを感じるものではない。

 少し成長した少年のような落ち着いた声音だ。

「ど、どういう意味だ!? 貴様、何処へ消えたんだ!?」

『足らないエネルギーはぼくらの存在で。役目を終えたぼくにできるのは、それくらいみたい……簡単に説明すると、ぼくらは王の養分になる……』

 静かな声音でゾイトに返答。それと同時に、月の明かりに照らされて空から魂魄のようなものが中央のクレーターに降り注ぐ。

 まるで、空から星が降ってきているかのような光景。幻想的とも言える状況ではあるけれど、それを素直に『綺麗』と定義できない不気味さもあった。

『お兄さんたちは強い……。だけど、ぼくらの王には敵わないよ……だって――』

 言葉が切れると同時にクレーター中央で破裂音が起きる。
 見れば、クレーター中央から腕のようなものが伸びているのが確認できる。

 墓場に埋葬された朽ちた屍がゾンビのように這い出てきたといえばいいのだろうか。所々に腐肉をつけた骨で形成された腕。

 心なしか、腐臭のするそれは骨が軋むような音を発生させながらクレーターから這い出てくる。そうして出てきた全貌はオークをそのままゾンビにしたような姿だった。

『ぼくらの王は、強いから……』

 先ほどまで俺たちの傍にいたはずのオークの声が、頭の中で木霊した。
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