世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク

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 場所は平原から戻ってきて冒険者ギルド。
 時間的には夕方の少し前といったところだが、それでも溢れんばかりの冒険者たちの数で埋め尽くされたその場所で、俺は受付のお姉さんと交渉という名の話し合いをしていた。

「あの、そこを何とかしてくれませんか?」

「申し訳ありません。規則ですので……その、ちゃんと既定のものを持ってきていただかないといけないんです」

 頭を下げた俺に対して、無慈悲な受付のお姉さんの声が落とされる。
 柔らかな口調と優し気な雰囲気。フィーリネと同等くらいには人のよさそうな彼女だが、どうやら規則を重んじる人のようで簡単には折れてくれない。

 俺は最後の手段とばかりにカウンターにうつ伏せ、捨てられた子犬のごとく上目遣いで彼女を見据える。
 それから片方の手に持ったを指さすと

「どうしてもキングドゥルドゥーの羽じゃ受からせてもらえませんか?」

「本当に申し訳ありません。暁人さんの功績は凄まじいものなのですが……規則ですので」

 そう言って、再び彼女は頭を下げる。
 
 結局のところ、俺はドゥルドゥーの羽を採集することが出来なかった。
 三匹の魔物を討伐した後も場所を変えて何度か挑戦したんだが結果は同じ。羽どころか、ドゥルドゥー自体触ることすらできなかったのだ。

 だから、なんて大層な肩書を持つキングドゥルドゥーの羽を代用してみたわけだが、ドゥルドゥーでもキングだから別物だということらしい。
 結局、俺の頼みは受け入れられなかったのだ。

「そんなに気にすることないだろう。また、ドゥルドゥーから羽を取りに行けばいい事じゃないか」

「お前、俺があいつら捕まえられないこと知ってるだろ。あと、自分が受かったからってギルドカードを見せつけてくるな」

 受付前から移動してテーブルに突っ伏していた俺に珍しく詰め寄り得意げな笑みを浮かべるゾイト。
 そう。コイツは無事に試験に合格し、晴れて冒険者となっていた。

 それもそのはず。コイツは俺が苦戦しているドゥルドゥーの捕獲を難なく成功させているんだ。
 条件は達しているのだから、試験を通れないわけがない。

「なあゾイト。俺の代わりにドゥルドゥーの羽をもぎ取ってきてくれないか? 俺がやったらあいつら死んでしまうしさぁ……」

「断る。自分の試験だろう。自分でどうにかしろ」

「そんなこと言うなよ! 命助けてやったじゃないか!」

 少しでも恩威を感じてるのなら行動で示してほしい。
 そう思っての言葉なのだが、彼女は俺に対してかほども感謝の感情を覚えていないらしく、腕を組んでそっぽを向きやがった。
 なんとも可愛くないやつだ。

 なんて思っていたら、彼女は横目にこちらをちらりと見やり、その細い指先を俺に向けてきた。
 極めつけは「恩は返しただろ」という短い言葉である。

「ボクが服を貸さなければ、貴様はただの変人になっていたところだ。そっちこそ、ボクに感謝してほしいものだ」

「……ぐっ!」

 ゾイトの指摘に言葉が出ない。
 あの戦いで服を燃やされた俺は、着るものがないからとゾイトに服の上着を借りていた。

 黒い煤だらけのズボンに、ゾイトの身に着けていた上着を素肌の上に羽織っただけのスタイルは、傍から見ればおかしな奴だ。だが、半裸の変態として語り継がれるよりはまだいい。

 文句を口にしたいところだが、グッと我慢して俺は無理に笑みを作ると

「あ、ありがとうな……!」

「どういたしまして」

 引き攣った笑みで語尾を強くして言い放ってみれば、清々しいほど爽やかな笑みを浮かべ、ゾイトはその場から去っていく。
 だが入り口まであと半分くらいのところで立ち止まると、ゆっくりと振り返って俺の方を真っ直ぐに見つめてきた。

「おい」

 先程までの俺を馬鹿にするような目じゃない。
 真剣なまなざしを浮かべたゾイトは、少し間をおいてから口を開くと

「フィーリネのことは……不愉快だが認めてやる。だが勘違いするなよ? まだ、貴様の全てを認めたわけじゃない。少しでも変な真似をすれば、どんな手を使っても貴様をフィーリネから引き離すからな!」
 
 そう見事なまでの捨て台詞を吐いて、彼女は今度こそギルドを後にしていった。

 残された俺はというと、しばらくの間彼女の消えていった入り口を見据えていたが、すぐに我に返って苦笑する。
 どうやらアイツは随分と素直になるのが下手くそな性格らしい。

「お礼ぐらい、素直に口にすりゃあ良いのに」

「でも、そこがゾイトの可愛いところ、ですよ?」

 自分の独り言に対して返事が返ってきた。
 そのことに肩を震わせた俺が声の聞こえた方を見てみれば、笑みを浮かべて立っていたのはゾイトの幼馴染であるフィーリネの姿。

 いつから後ろにいたのか。
 彼女は軽い足取りで俺に近づいてくると、

「ふふっ。私がいない間に随分と仲良くなったんですね?」

「仲良くなったと言えるのか分からないけどな」

 心の友、とまでは言えないものの知人くらいの仲には発展したんじゃないだろうか。
 そうでなければ、彼女だって俺に服を貸してくれるはずもない。

 でも、本音を言うならもう少し素直になってほしいところだ。
 いつもツンケンされてたら、もう少し付き合いやすいだろうし。

「ゾイトは苦手な子ですか?」

 俺の曖昧な答え方に、フィーリネはそう聞いてくる。

「いや? まぁ、最初は生意気な奴だなとは思ったけど、そこまで悪い奴でもないしな。苦手でもなければ、嫌いでもないよ」

「そうですか。良かった……」

 胸を撫で降りろしながら安堵するフィーリネ。
 幼馴染が嫌われていないかわざわざ確認してくるなんて、やっぱり彼女は優しい子だと俺は思った。

 誰もが自分の評価を気にして生きてるこのご時世、友達のことを想ってやれるなんて子はそういない。
 そういう意味ではゾイトもフィーリネのことを心配していたからこそ俺に突っかかってきたのだから、二人の関係はちょうどいいバランスが保たれているんじゃないかな。

「心配しなくてもアイツのことはよっぽどのことがなければ嫌わないさ。何せ、フィーリネちゃんの幼馴染だしな」

「……その言い方だと、私の幼馴染でなければ嫌っちゃう感じに聞こえるんですけど?」

「ふっ、冗談だよ」 

 微笑みを浮かべてみれば、彼女も同じように笑みを返してくれる。
 咲いた一凛の花のように綺麗な笑顔。守りたいと素直に思えるそんな微笑みを見て、ゾイトがフィーリネを守ろうとしている気持ちが少しわかった気がした。 
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