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たどり着いたカルサイトの街は、印象としては中世ヨーロッパ風の雰囲気を感じる活気のある場所だった。
道の脇にはレンガ造りの家々が立ち並び、行き交う人たちの中には人間とは違う姿をした人種――おそらくは亜人と呼ばれてそうな人々も出歩いていた。
だが、それらはまだ序の口。俺の目を一番引いた存在は、
「スゲェな。みんな魔法を当たり前のように使ってるよ」
手のひらから出た水の魔法を花壇の水やりに使ってたり。洗濯物に風を送って乾燥させていたり。大きなものでは、レンガのようなものを手から出して家を建設してたりする。
まるで、大道芸人で埋め尽くされた街のようだ。
目に映るもの全てが新鮮味溢れる光景。興味本位でいろんな場所に視線を巡らせていると、隣から可愛らしい笑い声が聞こえてきた。
「ふふっ。そんなにはしゃいで、まるで初めて魔法を見たみたいですね」
「――ん? そうだな、正直魔法ってものは初めて目にするよ」
「えっ!?」
素直に答えてみれば、驚愕の面持ちに変わるフィーリネ。
冗談のつもりで言ったみたいだが、残念なことにその通りなんだよな。
「俺の故郷では魔法そのものが存在しなくてさ。夢のまた夢のようなものだったんだ。だから、この目で見ることがでいて凄い嬉しいんだよな」
「魔法が存在しない場所って、そんな所が本当にあるんですか?」
「あぁ。少なくとも、ここよりずっと遠い場所にはあると思うよ」
日本がこの世界と繋がっているという可能性は限りなく低いが、探せば未だに魔法文化の波に乗れていないド田舎が存在するだろうしな。あながち間違いでもないだろう。
一応旅人という話で通っているからな。
その設定は守り通した方が後々面倒ごとに巻き込まれても逃げられそうだ。
「とにかく、今はコイツの処理が先だな」
「あっ、そうですね」
視線を背後に向ければ、黒い体毛を全身に生やした巨体が白目をむいて倒れてる。
何を隠そう、先程森を抜けるときに遭遇した大きなイノシシだ。
一応討伐した証が必要だからということで加減をした拳骨は功を奏し、奴の身体を吹き飛ばすことなく絶命に持っていけたんだが、まぁ額は潰れちゃってるよ。
かなり手加減したはずなのにな。
「よっこらせっと――それで、ギルドは何処にあるんだ?」
「こっちです! ついてきてください!」
満面の笑みを浮かべてヒョコヒョコと軽い足取りで歩いていくフィーリネ。
そんな彼女の跡についていけば、見えてきたのはこれまでの建物よりも一回り大きな建築物。
レンガ造りなのは他と同じだが、煙突が数本生えていたり、紋章らしきものが描かれた旗が飾られていたりと随分目立つ見た目をしている。
「ここが冒険者ギルドです!」
「へぇ。なんというか、デカい酒場みたいな雰囲気だな」
「あはは……初めてギルドに来る人は大抵そう思っちゃうんですよね」
開きっぱなしの大きな両開きの入り口から漏れてきている騒音。男も女も関係なく飲めや歌えのドンちゃん騒ぎを繰り広げている様子が、外からでも確認できた。
一応まだ昼間だというのに、よくもまぁ飲めるよな。
「でも、ギルドの評判はいいですから。ちゃんと仕事すれば、それ相応の賞金はもらえますよ?」
「じゃあ、今回もそれに期待させてもらいますかね」
苦笑し、イノシシを担いだままギルドの中に足を踏み入れる。
すると、入ってきた俺の存在に気付いたのだろう。それまでの騒音が一気に静まり返り、俺はギルド内にいる全ての人間から視線を向けられることとなった。
「な、なぁ、フィーリネちゃん。俺って何かおかしなところあるか?」
「えっと、巨大な魔物を担ぎ上げて変な歩き方をしているので……やっぱり目立ってると思いますよ? 街の人も、結構暁人さんを凝視してましたし……」
マジで!?
街の様子を観察することに夢中で周りのことを気にしてなかったけど、俺ってすでにかなり目立っていたのか!?
「何でそれを言ってくれないのさ!?」
「ご、ごめんなさい! 暁人さんって、てっきり目立ちたがり屋なのかなって思っちゃって……。その、邪魔しちゃ悪いかなって……えへへ」
「いや、俺も人並みには羞恥心持ち合わせているからね!?」
可愛らしく微笑むフィーリネの姿に怒るに怒れなくなった俺は小さく嘆息すると、視線を受け付けらしき場所に向けて歩き出した。
ちなみに、先程嘆息したおかげで生まれた風で、酒を運んでいた女性のスカートが浮き上がって男性陣の視線がそちらに逸れたのは内緒だ。
「――黒、か……」
「な、なにが黒なんですか!?」
「いや、かなり大胆なパンツを履いているんだなと思って」
「少しくらいはぐらかしてください!」
別に自分のパンツが見られたわけでもないのに怒った様子のフィーリネを引きつれ、俺は受付へと移動する。すると、迎えてくれたのは引き攣った営業スマイルが印象的な受付の女性。
露出度の高い衣服を身にまとった姿はかなりエロい。
思わず視線が胸のたわわに注がれてしまうのだが、隣のフィーリネにちゃんに小突かれて我に返る。
「別に小突かなくても良いだろ?」
「エ、エッチな目をしてお姉さんを見ている暁人さんが悪いんです。――とにかく、早く要件を済ませてしまいましょう!」
「お、おう……?」
何故か不機嫌そうな彼女に言われ、俺はイノシシを床に落として改めて受付の女性を見据える。
「すいません。コイツの換金をお願いしたいんですけど……俺ってギルドメンバーではないんですが、可能ですか?」
「も、申し訳ありません。魔物の換金は原則としてギルドメンバーのみとさせていただいているので……」
「そうですか。――なら、フィーリネちゃんが倒したということなら通ります?」
「そういうことでしたら問題ありませんよ。しばらくお待ちください。計測の後に、換金した金額をお持ちいたします」
綺麗なお辞儀を見せて彼女は立ち上がると、ひょいっとイノシシを担ぎ上げて奥の方へと消えていった。
一応、彼女の数倍は大きいはずなんだが――あの人は何者なんだろう……。
道の脇にはレンガ造りの家々が立ち並び、行き交う人たちの中には人間とは違う姿をした人種――おそらくは亜人と呼ばれてそうな人々も出歩いていた。
だが、それらはまだ序の口。俺の目を一番引いた存在は、
「スゲェな。みんな魔法を当たり前のように使ってるよ」
手のひらから出た水の魔法を花壇の水やりに使ってたり。洗濯物に風を送って乾燥させていたり。大きなものでは、レンガのようなものを手から出して家を建設してたりする。
まるで、大道芸人で埋め尽くされた街のようだ。
目に映るもの全てが新鮮味溢れる光景。興味本位でいろんな場所に視線を巡らせていると、隣から可愛らしい笑い声が聞こえてきた。
「ふふっ。そんなにはしゃいで、まるで初めて魔法を見たみたいですね」
「――ん? そうだな、正直魔法ってものは初めて目にするよ」
「えっ!?」
素直に答えてみれば、驚愕の面持ちに変わるフィーリネ。
冗談のつもりで言ったみたいだが、残念なことにその通りなんだよな。
「俺の故郷では魔法そのものが存在しなくてさ。夢のまた夢のようなものだったんだ。だから、この目で見ることがでいて凄い嬉しいんだよな」
「魔法が存在しない場所って、そんな所が本当にあるんですか?」
「あぁ。少なくとも、ここよりずっと遠い場所にはあると思うよ」
日本がこの世界と繋がっているという可能性は限りなく低いが、探せば未だに魔法文化の波に乗れていないド田舎が存在するだろうしな。あながち間違いでもないだろう。
一応旅人という話で通っているからな。
その設定は守り通した方が後々面倒ごとに巻き込まれても逃げられそうだ。
「とにかく、今はコイツの処理が先だな」
「あっ、そうですね」
視線を背後に向ければ、黒い体毛を全身に生やした巨体が白目をむいて倒れてる。
何を隠そう、先程森を抜けるときに遭遇した大きなイノシシだ。
一応討伐した証が必要だからということで加減をした拳骨は功を奏し、奴の身体を吹き飛ばすことなく絶命に持っていけたんだが、まぁ額は潰れちゃってるよ。
かなり手加減したはずなのにな。
「よっこらせっと――それで、ギルドは何処にあるんだ?」
「こっちです! ついてきてください!」
満面の笑みを浮かべてヒョコヒョコと軽い足取りで歩いていくフィーリネ。
そんな彼女の跡についていけば、見えてきたのはこれまでの建物よりも一回り大きな建築物。
レンガ造りなのは他と同じだが、煙突が数本生えていたり、紋章らしきものが描かれた旗が飾られていたりと随分目立つ見た目をしている。
「ここが冒険者ギルドです!」
「へぇ。なんというか、デカい酒場みたいな雰囲気だな」
「あはは……初めてギルドに来る人は大抵そう思っちゃうんですよね」
開きっぱなしの大きな両開きの入り口から漏れてきている騒音。男も女も関係なく飲めや歌えのドンちゃん騒ぎを繰り広げている様子が、外からでも確認できた。
一応まだ昼間だというのに、よくもまぁ飲めるよな。
「でも、ギルドの評判はいいですから。ちゃんと仕事すれば、それ相応の賞金はもらえますよ?」
「じゃあ、今回もそれに期待させてもらいますかね」
苦笑し、イノシシを担いだままギルドの中に足を踏み入れる。
すると、入ってきた俺の存在に気付いたのだろう。それまでの騒音が一気に静まり返り、俺はギルド内にいる全ての人間から視線を向けられることとなった。
「な、なぁ、フィーリネちゃん。俺って何かおかしなところあるか?」
「えっと、巨大な魔物を担ぎ上げて変な歩き方をしているので……やっぱり目立ってると思いますよ? 街の人も、結構暁人さんを凝視してましたし……」
マジで!?
街の様子を観察することに夢中で周りのことを気にしてなかったけど、俺ってすでにかなり目立っていたのか!?
「何でそれを言ってくれないのさ!?」
「ご、ごめんなさい! 暁人さんって、てっきり目立ちたがり屋なのかなって思っちゃって……。その、邪魔しちゃ悪いかなって……えへへ」
「いや、俺も人並みには羞恥心持ち合わせているからね!?」
可愛らしく微笑むフィーリネの姿に怒るに怒れなくなった俺は小さく嘆息すると、視線を受け付けらしき場所に向けて歩き出した。
ちなみに、先程嘆息したおかげで生まれた風で、酒を運んでいた女性のスカートが浮き上がって男性陣の視線がそちらに逸れたのは内緒だ。
「――黒、か……」
「な、なにが黒なんですか!?」
「いや、かなり大胆なパンツを履いているんだなと思って」
「少しくらいはぐらかしてください!」
別に自分のパンツが見られたわけでもないのに怒った様子のフィーリネを引きつれ、俺は受付へと移動する。すると、迎えてくれたのは引き攣った営業スマイルが印象的な受付の女性。
露出度の高い衣服を身にまとった姿はかなりエロい。
思わず視線が胸のたわわに注がれてしまうのだが、隣のフィーリネにちゃんに小突かれて我に返る。
「別に小突かなくても良いだろ?」
「エ、エッチな目をしてお姉さんを見ている暁人さんが悪いんです。――とにかく、早く要件を済ませてしまいましょう!」
「お、おう……?」
何故か不機嫌そうな彼女に言われ、俺はイノシシを床に落として改めて受付の女性を見据える。
「すいません。コイツの換金をお願いしたいんですけど……俺ってギルドメンバーではないんですが、可能ですか?」
「も、申し訳ありません。魔物の換金は原則としてギルドメンバーのみとさせていただいているので……」
「そうですか。――なら、フィーリネちゃんが倒したということなら通ります?」
「そういうことでしたら問題ありませんよ。しばらくお待ちください。計測の後に、換金した金額をお持ちいたします」
綺麗なお辞儀を見せて彼女は立ち上がると、ひょいっとイノシシを担ぎ上げて奥の方へと消えていった。
一応、彼女の数倍は大きいはずなんだが――あの人は何者なんだろう……。
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