世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク

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 気が付くと、俺は緑に囲まれた森のような場所に立っていた。

 見回してみると、視界に映るのは巨大な木々。見上げれば首が痛くなる。そう思えるほどに巨大な木々が密集する森の中に俺は転生させられたらしい。

「……また、居場所が分からないパターンかよ」

 真っ白な空間から移動したかと思えば、今度は緑いっぱいの森の中。

 あの神々しさすら感じる女の子は、事あるごとに俺を困らさせたいらしい。普通こんな人気のない場所に俺のような奴を召喚するだろうか。いや、しないはずだ。

「まぁいいや。とにかく転生は終了したんだ。あとはどうにでもなるよな」

 ここに出された以上はどうしようもない。

 思うところはあるけれど無事に転生できただけでも良しとしようと自分を納得させる。そうすると、自然と俺の思考は今後の方針へと向けられた。

 世界を自由に冒険したり、魔法を用いて魔物と戦ったり。

 もしかしたら、この世界では……その、出会いなんかもあるのかもしれない。

「二度目の人生を謳歌する、か……。もちろん、そうさせてもらうさ!」

 すでに森の中に召喚された不満はない。

 これから先に待ち受けているであろう希望に満ちた未来を思い描きながら、俺は二度目の生を受けたその足で異世界生活のへの第一歩を踏み出した――が、

「……ッ!?」

 力強く出した右足。それが地面を踏みしめた瞬間、俺を中心に半径数メートル範囲の地面が突然陥没した。

「な、なんだ!?」

 まるで、隕石でも落ちたかのように陥没した地面。所々には大きな亀裂もできていて、随分根深いところまで地割れが起きているみたいだった。

 まさか罠でも仕掛けられているんだろうか。

 そんな考えが頭を過ぎり、自然と俺はその場から後ずさる。そうやって、後ろに出した右足が亀裂の入った地面を踏めば、大きな轟音と共に陥没具合が増した。

 それはつまり、原因は罠ではないということ。

「ま、まさか……原因は俺か……?」

 結論が出れば話は早い。今度はゆっくりとした動作で足を前に出してみる。すると、ヒビは多少は大きくなったけれど、さっきほどではない程度に収まってくれた。

 このような結果が導き出す答えはただ一つ――

「――俺、強くされすぎたのか……?」

 どうやら、あの女の子に頼んだ『最強にしてくれ』という願い。

 それが度を超して身体に影響を及ぼしたらしい。普通に歩いただけで地面が陥没するってなると、超人どころか災害レベルまで引き上げられたんだろう。

「こりゃ、街中になんか召喚できないわけだ……」

 こんな状態で街の中を歩いてもみろ。即国外追放ものだろうな。

 それを見越してこのような人気のない森の中に俺を召喚したんだろう。

「だけど、それならもう少し力を抑えてくれれば良いじゃないか」

 何事も適度が一番だ。

 この世界に来てから早々に出鼻をくじかれたけど、原因が分かれば対処のしようはある。要は、慎重に歩いていけば問題ないということだ。

「忍び足で歩けば、問題ないか?」

 そう結論付けてみれば、どうやら俺の考えは当たっていたらしい。

 製作者俺のクレーターから抜け出してゆっくりと足を踏み出す。気配を殺した盗人のように細心の注意を払って歩いてみれば、地面は多少割れるものの先程まではいかない。

 けど、俺の精神は凄まじいスピードで削られていくよ。

「歩くだけで、何でこんなに苦労しないといけないんだ?」

 思わず愚痴をこぼすと同時にため息を吐いてみれば、周囲の木々が風に吹かれたかのように大きく揺れた。うん、深く考えなくても風の原因は俺だろう。

 最強にしてくれとは頼んだけど、強化された身体がここまで使い勝手が悪いとはな。

 だが、いい意味で予想外だったこともある。

「――ある程度は、加減が利くようになってきたかな?」

 この身体の学習能力も秀でているみたいで、数分と歩き続けていれば多少は加減が利くようになってきていた。それでも完全に制御出来ているわけじゃなく、未だに地面が多少は陥没してるけどな。

 だが、そこらへんはこれから先も練習していけばどうにかなることだろう。

 とにかく、これでやっと本格的に冒険ができる。

「うし、行きますか……って、なんだ?」

 何はともあれ再出発だと意気込んでいた俺だけど、視界に一匹の獣が映り込んだことで思考のすべてがそちらに持ってかれた。

「熊、か?」

 見た感じは熊。黒い体毛と丸太のように太い四本の脚に生えた鋭い爪。威嚇するように唸っている口からは鋭利な牙が垂れ流しの涎の影響もあって怪しく輝いてる。

 そこまでは俺の知る熊だ。けど、決定的に違うものがある。それは……

「デカい……な」

 周りの木々に匹敵するほどの巨体。

 口もそれなりに大きく、俺なんかなら一口でかみ砕けるんじゃないだろうかな。

「考えてみたら恐ろしい光景だけど、不思議と怖く無いな……」

 自然と口元が緩む。多少歩くだけで地面に亀裂が入り陥没するような身体だ。それがあんな図体がデカいだけの熊みたいな生物に後れを取るとはどうしても思えない。

 そんな結論が自分の中で出ていたからこそ、俺は化け物を目の当たりにしていても平静を保っていられた。

「グォォォォオオオ~~ッ!」

 自分を前に少しも態度を崩さない俺が癪に障ったんだろう。

 熊のような化け物は、その巨体からは想像もできないような速さで突進してくる。地面を蹴るたびにけたたましい音を鳴り響かせ迫るそれは、天然のトラックみたいだ。

「普通に考えたらトラウマものだよな」

 冷静にそう口にして、俺は腰を落として左腕を前に突き出し狙いを定め、右腕を引いて力をためる。

 いい機会だ。全力で殴ってみようじゃないか。相手は自分を殺すつもりで来ているのだから、返り討ちに遭う覚悟だって出来ているはずだしな。

 勝手に考えながら俺は迫る熊を見据える。

 そして、奴が腕を振り上げて俺をその大きく鋭利な爪で切り裂こうとした瞬間、軽く地面を蹴って奴の懐に侵入。この時、背後から轟音が聞こえたが無視だ。

「おりゃ!」

 引いた腕をがら空きの腹に目掛けて突き出してみれば、凄まじい爆発音とともに一瞬で熊の姿が消え去る。いや、熊だけじゃない。

 奴の背後に生えていた木々。地面に至るまでが一瞬で何かに抉られたかのように消え去っていた。

「……これは、流石に予想外だわ」

 これは使いどころを間違ったら、冒険どころじゃないな。

 瞬間的にそう悟った俺は、冷や汗を流しながら苦笑するのだった。
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