ずっと好きだった幼馴染が放課後に部活顧問の肉棒を咥えていて、僕はスマホで撮影した。

透衣絵ゐ

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第八章 勉強会

勉強会(4)

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 起きたら正午だった。這うようにベッドから抜け出す。
 カーテンを開けると、真っ昼間の日の光が明る過ぎて思わず目を細めた。
 まるで夜行性のヴァンパイアが日差しにやられる時みたいな気分だ。
 ――ヴァンパイアの気分とか、知らんけど。

 机の上のマウスを動かす。パソコンがスリープモードから復帰して画面が点灯。
 デスクトップには動画変換処理が終了したことを示すウィンドウが表示される。

 昨日の晩、動画をひたすら編集していた後、知らない間に寝てしまったらしい。
 完成動画を作るために変換処理を実行して、終了を待っている間に――。

 コンテストの応募作品ではなくて、撮り溜めた素材を使って作ってみた。
 試しというか、遊びというか、練習というか、まぁ、そんなやつ。

 僕はエンコーディングの終わった動画ファイルを一度再生してみる。
 三分ほどの動画だけど、なかなか良い雰囲気だった。――自己満足。
 気分が少し良くなって、伸びをした。

 ものはついでと、クラウドのファイルストレージに保存しておく。
 スマホからも、また見れるように。

 今日は日曜日。
 土曜日だった昨日は、引きこもって映像の編集作業をしていた。
 偽装恋人である明莉とデートに出かけることもせずに。
 創作系の趣味を持つ者にはこういう風に返上する休日が、必ず必要なのだ。

 先週末も遊園地に行って、編集作業が全然出来なかった。
 この一週間、明莉のことでいろいろありすぎて制作も滞っていた。
 応募するショートフィルムのコンテスト締め切りも近づいているから、いつまでも停滞しているわけにはいかない。――この映画を完成させることは、僕にとって――大切なことなのだ。

 机の上に置いていたスマホを手に取ると、LINEのメッセージがいくつか届いていた。
 明莉から「今週はいろいろお疲れ様でした」みたいな慰労のメッセージ。

 ――偽装恋人って労働か何かだと思われているのだろうか?

 とりあえず熊が鮭に齧り付いているスタンプを送っておいた。

 ――特に意味は無いが。

 まぁ、明莉なら適当に解釈してくれるだろう。
 幼馴染は長い付き合いなのだ。

 森さんからはなんだか面白ツイートのリンクが送られて来ていた。
 開いてみたら「あ~、森さん、こういうの好きだろうな」って感じのおもしろ動画。

 とりあえず満面の笑みを浮かべるフェイスマークのスタンプを送っておいた。

 最後に開いたのは香奈恵さんからのメッセージだった。

「……マジかよ」

 それは僕の下僕である淑女からの――どこか業務的なメッセージだった。

 お互いにEL-SPYで首輪を掛け合い、鋼鉄の鎖で結ばれた二人。
 僕らは、真白先生の尻尾を掴むためにある意味での共闘戦線を作っていた。
 名目上――彼女を脅迫するという形で。

 香奈恵さんにも僕にも有利な形で真白先生の浮気なり不法行為なりの証拠を得て、彼と明莉の交際を内部から断ち切っていく。
 それが穏当で合理的なアプローチだと――僕は考えていた。
 その先に大きな破綻なく僕と明莉が真実の恋人同士になるための滑らかな補助線。

 しかし土曜日夜に届いていたメッセージも、期待外れな内容だった。

 香奈恵さんはこの二日間も明莉と真白先生がLINEのやり取りをした形跡は無いと言う。

 ――そんなはずはない。何か見落としか、読み違えがあるのだろうか?

 この状況は続くようならば、何か別の手を打たなければならないかもしれない。
 そんなことを考えながらスマホの画面を消した。

 寝間着から部屋着へと着替えると、僕は階段を降りてダイニングへと向かった。
 案の定、一階には誰もいなかった。

 日曜日の朝、母親は一人でどこかに出掛けてしまったらしい。
 机の上には、冷え切っていた目玉焼きとベーコンがあった。その横にサラダ。

 ベーコンと目玉焼きを電子レンジで温めてトーストを二枚焼く。
 ブランチには少し足りないから、冷蔵庫を開けてみた。
 昨日の残りのポテトサラダがあったから頂くことにした。

 時計はもう十二時半を回っている。
 リビングのオーディオを点けて繋いだiPadで適当なカフェミュージックを再生する。
 休日の昼、まったりとした時間である。

 一人でブランチを食べ終えて、カーテンを開けたリビングのソファで横になる。
 月曜日に香奈恵さんと初めてセックスをしたソファ。
 思い出してちょっと勃起した。――早いものであれからもう一週間が経つ。

 少し気になってEL-SPY VIEWERを起動した。香奈恵さんは自宅にいるみたいだ。
 覗くとまたいくつか香奈恵さんの際どい自撮り写真があったので閲覧させてもらった。
 約束通り香奈恵さんは僕の下僕であり続けてくれるみたいだ。

 昨日は明け方まで作業をしていたからか、正午を過ぎているのに眠気と気怠さが酷い。
 ソファに寝転がっていると、また、うつらうつらと眠りに落ちそうになっていた。

 そのとき、スマホが音声通話の着信を知らせた。
 
 飛び起きて画面を確認すると――発信元は森美樹だった。

「……もしもし、……どうしたの?」
「悠木くん、……今、大丈夫? 今日、大丈夫?」

 電話口の森さんの声は焦燥に満ちていた。
 ――何かあったのだろうか?

「どうしたの? ……何かあったの」
「ねえ、悠木くん、あーしら友達だよね? 親友だよね?」

 縋るような言葉。
 森さんの芯が揺らいでいるみたいな、――そんな声だった。

「親友――かは、わかんないけど、友達ではあるよ」

 それは間違いない。

「うううう。親友がよかったけど……、それは置いておいて。――緊急事態なの。今すぐ中央駅の方に出てこれないかな?」
「――どういうこと?」

 要領を得ない。

「通話切ったら、理由がわかる写真と、現在位置をメッセージで送るから……。悠木くん、お願い――来てねっ! きっとだよ!」

 どこか泣きそうな声で、森さんはそう言って通話を切った。
 スピーカーからは不通を知らせる音が鳴る。

 しばらく待つとスマホが振動して、新しくメッセージが届いた。
 それはLINEメッセージで画像が送られてきたのだ。
 ――僕は特に躊躇することもなくその画像をタップして拡大した。

 スマホの画面一杯に広がる写真。
 それはガラス張りのカフェで、談笑する若い男女を写した写真だった。

 日曜日の昼下がり、街中のオシャレなカフェでデートに興じる二人。

 ――それは親友の水上洋平と、幼馴染で偽装彼女の篠宮明莉だった。
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