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結論から言うと、必要分の【侵瘴の蔓紐】と【骨人形】を守らせるのに十分な数の歩兵人形が揃ったのはほぼ同時だった。【灰銅鉱】を探し始めてから丸二日間、古都の中を探し回り、それと並行して【骨人形・庭師】による探索を続けさせていたのだが、やはり【骨人形】たちは全く目的の【灰銅鉱】を拾ってこなかった。
必要数の素材が集まり次第、歩兵人形を生成して瘴壁の探索に散策させたのだが、やはりそちらでも目的の物品を持ってくることはない。結局【灰銅鉱】は自分で、【侵瘴の蔓紐】は【骨人形・庭師】がすべて集めてしまったのだ。
だが、なにはともあれこれで当初の目的を達成することができる。
――――――――――
【瘴弾の石飾具】を生成します
以下の物品を消費する必要があります
濃瘴石 100%/100%
侵瘴の蔓紐 100%/100%
生成を行いますか?【はい/いいえ】
――――――――――
文章に従って生成を行うと、全書の上の空間がゆがみ、小さな巾着袋のようなものが現れた。5cm四方のその袋は蔓を編んだような見た目をしているため、袋の素材として【侵瘴の蔓紐】が使われているのだろう。首紐(こちらも【侵瘴の蔓紐】でできているようだ)もついているそれを手に持つと、袋の中に何か入っているのに気付いた。手で触ってみると固い石のようなので、これはおそらく【濃瘴石】なのだろう。
とりあえず【瘴弾の石飾具】を生成してみたものの、見た目はただの小汚い袋にしか見えず使い方もよく分からない。そのため、一度全書に収納し、説明を見てみることにする。
――――――――――
【瘴弾の石飾具】
分類:魔具・装飾品
等級:D
権能:【瘴弾】
詳細:濃瘴石を核としたアミュレット。濃瘴石に刻まれたルーンが周囲の瘴気を遠ざける。
――――――――――
……説明を読んでもいまいち使い方がわからない。物は試しと 【瘴弾の石飾具】を手に持って瘴壁に近づいてみると、まるで【瘴弾の石飾具】を避けるように瘴壁の一部が大きくへこんだ。その範囲は半径にしておよそ三メートルほどだろうか。これならば首に下げて瘴壁の中に入っても、【瘴気】に触れないで済みそうだ。
今日はまだ日が昇り始めてそれほど時間が経っているわけでもないので、このまま瘴壁の外に向かってみることにする。
作ったばかりの【瘴弾の石飾具】を首にぶら下げ、護衛として【エスカ式自動剣歩兵人形】と先日新たに生成した【エスカ式自動槍歩兵人形】を全書から出して瘴壁の中に踏み込む。先ほどの実験と同じように 【瘴弾の石飾具】を中心として【瘴気】が遠ざかり、瘴壁の中に踏み入ることができた。だが、二歩ほど進んだところであることに気づく。
そう、何も見えないのである。
【瘴気】が体から遠ざかるのはいいのだが、遠ざかった先には変わらず暗紫色の【瘴気】が漂っているため、一度壁の中に入ってしまえば前後左右すべての景色が【瘴気】に支配されるてしまうのだ。【瘴気】には光の透過性など全くないようで、壁の中を三歩も進めば、背後も【瘴気】に包まれてしまう。
瘴壁がどれほど続いているのかもわからないので、このまま進んでも同じところに帰ってこれる自信は全くない。
いったん瘴壁の外に戻って対策を考えることにしたが、その解決策は全書のページを捲っているとすぐに思いついた。使えると思ったのは、スケルトンたちがやたら持ってくるものの、使い道が全くなかった【ハクセングサ】だ。
――――――――――
【ハクセングサ】
分類:植物・稲草
詳細:強い繁殖力を持つ稲様の植物。群生から約三か月で枯死するが、枯れた草は上質な肥料として重宝される。
――――――――――
説明を見る限り現状では用途がなかったので全書に収集したままの【ハクセングサ】だったのだが、実はこの草、一本で長さが二メートル弱ほどある。そのため、これまで集めたすべての【ハクセングサ】を結び合わせれば即席の命綱とすることができた。
これを腰に括り付ければ、ある程度の距離を移動しても辿ってここに戻ってこられるだろう。
というわけで、今度こそ剣歩兵と槍歩兵を引き連れて瘴壁の中へ突入する。二、三歩足を進めればやはり視界は【瘴気】に覆われるが、剣歩兵と槍歩兵はちゃんとついてきているようだ。
そういえばこの人形たちはどうやってこちらの指示や魔物を知覚しているのだろうか。目や耳がないことは明らかだが、いったいどのような原理で外部の刺激を受け取っているのだろう。
そんなことを考えていると、唐突に視界が開けた。突然の光に驚きながら手をかざして、目を明るさに慣らす。
ゆっくりと瞼を上げた俺の目に飛び込んできたのは、緑がまぶしい生命力にあふれる木々が立ち並ぶ光景だった。
古都とはあまりに異なる景色に少しの間立ちすくんでいると、緑葉の爽やかな香りが鼻腔をくすぐる。不思議とどこか懐かしいような気持ちになるが、そんな懐古の念もやはり燃え上がるような物欲を抑えることはできない。
まずは手始めに目の前に聳え立っている木に全書を押し付けてみる。
――――――――――
【ハリカエデ】
分類:植物・樹木
詳細:魔木の一種であり、魔力が豊富な土地に育つ。魔術師用の杖の素材として広く使われるほか、幹から採取された樹液は魔力回復薬の主な材料として重宝される。
――――――――――
どうやら樹木などは伐採されていなくてもそのままの状態で収集できるようだ。【ハリカエデ】が生えていた地面にはぽっかりと穴が開いているため、根っこまで残らず手に入れられることが分かる。
これならば、特に難しいことをしなくても収集品を増やしていくことができるだろう。とは言え、今は命綱があるのでそれほど遠くには行けないし、枯れる枝人のような敵対的だと思われる”魔物”の存在も心配だ。はやる気持ちを抑えつつ、手の届く範囲から集めていくことにした。
――――――――――
【イムズミ】
分類:植物・樹木
詳細:桃に似た果実を実らせる果樹。果実は”ムズミ”と呼ばれ、常食には向かないが回復薬の素材として使用される。
――――――――――
――――――――――
【アイノキ】
分類:植物・樹木
詳細:爽やかな香りから建材として利用される樹木。幹や枝の他、葉はすり潰すと防虫薬剤として使用することができる。
――――――――――
――――――――――
【カミグレ】
分類:植物・草花
詳細:薬草の一種。花は解熱作用、根は滋養強壮作用を持つ。
――――――――――
増えていくコレクションに心が躍り、自然と森の奥へ行こうと歩を進める。しかし、その歩みを遮ったのは、先ほどまで背後で立ち尽くしていた剣歩兵だった。
どうしたのかと剣歩兵に目を向けるが、代わりに槍歩兵が前方にあった小さな茂みに向かっていく。そして、手に持っていた槍をその茂みに突きこんだ。
するとその茂みが大きく震えたかと思うと、突如茂み自体が槍歩兵に飛びついたではないか。その光景に驚くこちらを尻目に、槍歩兵は特に怯むこともなく自分の身体から茂みを引きはがす。その際に茂みの枝と鎧が擦れあう耳障りな音が響くが、槍歩兵は特に痛みなどを感じていない様子だ。
槍歩兵は完全に自分の身体から茂みを引き離すと、少し前の地面に茂みを放り投げ、再び手にした槍を茂みに突き刺した。攻撃から逃れようとしているのか茂みが蠢くが、意に介さず槍歩兵は茂みを滅多刺しにする。およそ刺突の回数が十を超えたころ、ようやく正体不明の茂みはその動きを止めた。
それと同時に、槍歩兵が背後へと戻ってくる。枝で引っ掻かれたのだろう、鎧に小さな傷こそついてるものの、ほぼ無傷といってよい状態のようだ。
恐る恐る、動かなくなった茂みに近づいてみる。転がっていた枝で茂みの残骸をつついてみるが、動く様子はないので大丈夫そうだ。そうと分かれば収集である。
――――――――――
【揺れる木立の小枝】
分類:魔物素材・木材
詳細:揺れる木立が身にまとう枝。元はただの枝だったが、【揺れる木立の粘液】が浸透し、柔軟性がありながら硬質な材質へと変化している。
――――――――――
――――――――――
【揺れる木立の若葉】
分類:魔物素材・木材
詳細:揺れる木立が身にまとう若い葉。【揺れる木立の粘液】により、含有成分が変化している。
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【揺れる木立の粘液】
分類:魔物素材・液体
詳細:揺れる木立の核を覆う粘液。”粘体種”の一種である揺れる木立の粘液には、植物の成分を緩やかに変化させる効果を持つ。
――――――――――
――――――――――
【揺れる木立の核欠片】
分類:魔物素材・魂核
詳細:揺れる木立の砕けた核の欠片。このままでは素材としての価値はない。
――――――――――
今槍歩兵が倒したのは、揺れる木立という魔物だったらしい。それほど強い敵ではなく、また手に入る素材もそれほど有用ではなさそうだが、コレクションに違いはない。それに、今手に入れたもののおかげで、また新しい生成候補も現れた。
――――――――――
【グブの薬水】を生成します
以下の物品を消費する必要があります
揺れる木立の若葉 50%/100%
揺れる木立の粘液 10%/100%
未熟なムズミ 0%/100%
ガミルの清水 0%/100%
物品が不足しているため、生成を行えません
――――――――――
”薬水”というからには、傷や病に効果があるのだろうか。今のところ自分で戦闘を行うつもりはないが、万が一の時のために持っていてもよさそうだ。ただ、それ抜きにしても単純にコレクションとして手に入れておきたいので、揺れる木立は見つけ次第狩らせることにしよう。
それに、ここで槍歩兵の戦闘力を確認できたのは僥倖だった。前に剣歩兵が枯れる枝人を狩って残骸を持ってきたことがあったが、彼らにとってはこの程度の魔物は脅威にはならないらしい。まだ安心はできないが、もう少し探索を続けても大丈夫そうだ。
そういう訳なので、剣歩兵と槍歩兵を引き連れて森の奥に進んでみることにする。命綱は腰から解いて、近くにあった木の幹に括り付けておいた。何かあってこの森から逃げることになっても、そこまで戻ることができれば命綱を辿って拠点に帰れるはずだ。
先の戦闘のこともあるので、周囲の警戒は怠らないようにしながら探索を行う。
――――――――――
【ドテイモ】
分類:植物・芋類
詳細:広い範囲に分布する芋類。痩せた土地でも育つが、栄養価は高くない。
――――――――――
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【ハゼタケ】
分類:植物・菌糸
詳細:ガミルの森でしか見られない固有種。僅かな衝撃で蓄えた胞子をまき散らし、繁殖を行う。大きければ大きいほど胞子をまき散らす際の衝撃が強く、気づかずに踏みつけた旅人が負傷することもある。
――――――――――
この【ハゼタケ】というのは厄介な特性を持っている割には目立たない外観をしており、茂みの中に生えているものを槍歩兵が踏みつけたときにようやく見つけることができたものだ。
そっと全書で触れて収集することはできたが、これではおちおち一人で歩くこともままならない。
幸い槍歩兵が損傷を負った様子はないが、槍歩兵がよろけたその威力は推して知るべしというものだ。
警戒しながら進んでいたおかげか、森の奥からこちらに近づいてくるいくつかの影に気づく。こちらの背丈とあまり変わらない大きさの人影に見えるそれは、よたよたとおぼつかない足取りで近づいてきているようだ。
距離が近くなったことで、その人影の全貌が見える。近づいてきたのは、まるで子供がそのあたりに転がっていた枝で適当に作った人形を人間のサイズにしたかのような、不格好な人型の何かだった。
近づいてくるそれらの数は全部で三体。おそらくこの魔物は、前に剣歩兵が残骸だけを持ってきた”枯れる枝人”だろう。それならば三体と言えども剣歩兵と槍歩兵で十分対応ができそうだ。
自動人形たちもそう判断したらしく、槍歩兵だけが前に進み出て三体の枯れる枝人に相対した。手に持つ槍の分リーチが長い槍歩兵が、必然的に先制の攻撃を繰り出す。
その一撃は最も前にいた枯れる枝人の胴体を正確にとらえると、その体をほぼ真っ二つにへし折りながら貫いた。その隙に後からついてきていた枯れる枝人が槍歩兵に近づくが、槍歩兵は穂先に貫かれた獲物ごと槍を横に振るい、近づいてきた個体を激しく打ち据える。
その一撃により二番目の枯れる枝人の左腕は肘のあたりで折れ千切れた。これならば、続く三体目も容易に打倒できそうだ。
そんな苦戦すらしない人形たちの戦いぶりを見て、油断していたのだろう。こちらが何かに気づく前に、後ろから強い衝撃を受けた。その衝撃により身体がわずかに宙を舞い吹きとばされる。
我が身を吹きとばしたのは、戦闘が始まった時から背後で待機していた剣歩兵だった。突然の攻撃を受けて地に倒れながら剣歩兵を見るが、次の瞬間には上から落ちてきた巨大な何かに剣歩兵が押しつぶされる。
落ちてきたのは、冗談のようなサイズの蜘蛛だった。足を入れれば三メートルを超えそうなその蜘蛛は、着地と同時にこちらに狙いを定めたのか、巨躯をこちらに向け踏み込んでくる。
そのあまりの迫力に、尻もちをついたまま情けなく後ずさるが、その巨大さ故、蜘蛛は数秒後にはこちらを攻撃範囲内にとらえ、その牙をわが身に突き立てることだろう。だが、その歩みは八本あるうちの足の一本を切り飛ばされることで止まる。
蜘蛛が振り向いた先にいるのは、先ほど蜘蛛に押しつぶされた剣歩兵だ。鎧が土で汚れているものの、遠目からはあまり損傷がないように見える剣歩兵は、続けてもう一本の足を切りつける。だが、蜘蛛が足を動かしたせいで両断はできなかったようだ。蜘蛛は狙いをこちらから剣歩兵に変えると、体を激しく揺らして剣歩兵に突撃する。
先ほど突き飛ばされた時に受けたのとは比べ物にならない衝撃を受けた剣歩兵は、冗談のような勢いで後ろに飛ばされた。それで剣歩兵を倒したと思ったのだろう。蜘蛛はもう一度こちらを向き、ガサガサとこちらに駆け寄ってくる。
こちらには蜘蛛に立ち向かうための力も道具もない。剣歩兵が時間を稼いでくれた隙になんとか立ち上がり蜘蛛に相対するが、できることといえばすぐに身をかわせるように身構えることだけだ。
だが、まるでこちらを守るように背後から蜘蛛に突撃するものがいた。先ほどまで枯れる枝人たちと戦っていた槍歩兵である。槍歩兵が手に持つ槍を蜘蛛の顔面に向けて突き出すと、槍は狙い過たず蜘蛛の口内に飛び込み、その穂先が顔の内側から蜘蛛の複眼の一つを貫いた。
その痛撃に蜘蛛は頭を激しく揺らした。さらに太い牙により口に入った槍を半ばで噛み千切る。槍歩兵は本来の半分ほどの長さの棒となった槍を振り上げて攻撃しようとするが、激しく動く蜘蛛の頭に弾き飛ばされた。
だが、蜘蛛が痛みに悶える隙に、再び剣歩兵が蜘蛛の背後から足とその胴体を切り払った。それにより、もう一本の足と蜘蛛の腹部に深々と剣が食い込む。
その一撃が決定打だったようだ。戦線に復帰した槍歩兵と剣歩兵は、弱った蜘蛛を手に持つ武器で滅多打ちにする。二体で数分ほど攻撃を加え続けた人形たちは、蜘蛛がピクリとも動かなくなったころ、ようやくその動きを止めた。
……正直油断が過ぎた。人形たちの戦闘力にかまけて、ここが全く未知の場所であることを忘れてしまっていたのだ。
その油断の代償は高くついたと言えるだろう。槍歩兵の槍が全壊したのは言うまでもなく、剣歩兵も二度の巨大蜘蛛による攻撃を受けて、胴鎧の前部分が捲れるようにして破損してしまっている。
だが、少なくとも戦果は得ることができた。
――――――――――
【備える森蜘蛛の甲殻】
分類:魔物素材・甲殻
詳細:備える森蜘蛛の体を覆う甲殻の一部。模様は天然の迷彩になっている。
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【備える森蜘蛛の牙】
分類:魔物素材・歯牙
詳細:備える森蜘蛛の口に生える牙。獲物の体液を効果的に啜る構造になっている。
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【備える森蜘蛛の複眼】
分類:魔物素材・眼球
詳細:備える森蜘蛛が持つ複眼の一つ。装飾品の素材として使われることがある。
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【枯れる枝人の新芽】
分類:魔物素材・植物
詳細:枯れる枝人の頭部に稀に存在する芽のような器官。新芽を持つ個体が成熟すると、芽からより優れた個体が発生するといわれている。
――――――――――
損害に釣り合う戦果かと問われれば微妙なところだが、そもそも今日の目的は瘴壁の向こう側の探索と収集である。今日のところは、この辺りが潮時だろう。
未だ戦闘の緊張により震える身体に鞭を打ち、半壊した人形たちを引き連れて拠点に戻るのだった。
必要数の素材が集まり次第、歩兵人形を生成して瘴壁の探索に散策させたのだが、やはりそちらでも目的の物品を持ってくることはない。結局【灰銅鉱】は自分で、【侵瘴の蔓紐】は【骨人形・庭師】がすべて集めてしまったのだ。
だが、なにはともあれこれで当初の目的を達成することができる。
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【瘴弾の石飾具】を生成します
以下の物品を消費する必要があります
濃瘴石 100%/100%
侵瘴の蔓紐 100%/100%
生成を行いますか?【はい/いいえ】
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文章に従って生成を行うと、全書の上の空間がゆがみ、小さな巾着袋のようなものが現れた。5cm四方のその袋は蔓を編んだような見た目をしているため、袋の素材として【侵瘴の蔓紐】が使われているのだろう。首紐(こちらも【侵瘴の蔓紐】でできているようだ)もついているそれを手に持つと、袋の中に何か入っているのに気付いた。手で触ってみると固い石のようなので、これはおそらく【濃瘴石】なのだろう。
とりあえず【瘴弾の石飾具】を生成してみたものの、見た目はただの小汚い袋にしか見えず使い方もよく分からない。そのため、一度全書に収納し、説明を見てみることにする。
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【瘴弾の石飾具】
分類:魔具・装飾品
等級:D
権能:【瘴弾】
詳細:濃瘴石を核としたアミュレット。濃瘴石に刻まれたルーンが周囲の瘴気を遠ざける。
――――――――――
……説明を読んでもいまいち使い方がわからない。物は試しと 【瘴弾の石飾具】を手に持って瘴壁に近づいてみると、まるで【瘴弾の石飾具】を避けるように瘴壁の一部が大きくへこんだ。その範囲は半径にしておよそ三メートルほどだろうか。これならば首に下げて瘴壁の中に入っても、【瘴気】に触れないで済みそうだ。
今日はまだ日が昇り始めてそれほど時間が経っているわけでもないので、このまま瘴壁の外に向かってみることにする。
作ったばかりの【瘴弾の石飾具】を首にぶら下げ、護衛として【エスカ式自動剣歩兵人形】と先日新たに生成した【エスカ式自動槍歩兵人形】を全書から出して瘴壁の中に踏み込む。先ほどの実験と同じように 【瘴弾の石飾具】を中心として【瘴気】が遠ざかり、瘴壁の中に踏み入ることができた。だが、二歩ほど進んだところであることに気づく。
そう、何も見えないのである。
【瘴気】が体から遠ざかるのはいいのだが、遠ざかった先には変わらず暗紫色の【瘴気】が漂っているため、一度壁の中に入ってしまえば前後左右すべての景色が【瘴気】に支配されるてしまうのだ。【瘴気】には光の透過性など全くないようで、壁の中を三歩も進めば、背後も【瘴気】に包まれてしまう。
瘴壁がどれほど続いているのかもわからないので、このまま進んでも同じところに帰ってこれる自信は全くない。
いったん瘴壁の外に戻って対策を考えることにしたが、その解決策は全書のページを捲っているとすぐに思いついた。使えると思ったのは、スケルトンたちがやたら持ってくるものの、使い道が全くなかった【ハクセングサ】だ。
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【ハクセングサ】
分類:植物・稲草
詳細:強い繁殖力を持つ稲様の植物。群生から約三か月で枯死するが、枯れた草は上質な肥料として重宝される。
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説明を見る限り現状では用途がなかったので全書に収集したままの【ハクセングサ】だったのだが、実はこの草、一本で長さが二メートル弱ほどある。そのため、これまで集めたすべての【ハクセングサ】を結び合わせれば即席の命綱とすることができた。
これを腰に括り付ければ、ある程度の距離を移動しても辿ってここに戻ってこられるだろう。
というわけで、今度こそ剣歩兵と槍歩兵を引き連れて瘴壁の中へ突入する。二、三歩足を進めればやはり視界は【瘴気】に覆われるが、剣歩兵と槍歩兵はちゃんとついてきているようだ。
そういえばこの人形たちはどうやってこちらの指示や魔物を知覚しているのだろうか。目や耳がないことは明らかだが、いったいどのような原理で外部の刺激を受け取っているのだろう。
そんなことを考えていると、唐突に視界が開けた。突然の光に驚きながら手をかざして、目を明るさに慣らす。
ゆっくりと瞼を上げた俺の目に飛び込んできたのは、緑がまぶしい生命力にあふれる木々が立ち並ぶ光景だった。
古都とはあまりに異なる景色に少しの間立ちすくんでいると、緑葉の爽やかな香りが鼻腔をくすぐる。不思議とどこか懐かしいような気持ちになるが、そんな懐古の念もやはり燃え上がるような物欲を抑えることはできない。
まずは手始めに目の前に聳え立っている木に全書を押し付けてみる。
――――――――――
【ハリカエデ】
分類:植物・樹木
詳細:魔木の一種であり、魔力が豊富な土地に育つ。魔術師用の杖の素材として広く使われるほか、幹から採取された樹液は魔力回復薬の主な材料として重宝される。
――――――――――
どうやら樹木などは伐採されていなくてもそのままの状態で収集できるようだ。【ハリカエデ】が生えていた地面にはぽっかりと穴が開いているため、根っこまで残らず手に入れられることが分かる。
これならば、特に難しいことをしなくても収集品を増やしていくことができるだろう。とは言え、今は命綱があるのでそれほど遠くには行けないし、枯れる枝人のような敵対的だと思われる”魔物”の存在も心配だ。はやる気持ちを抑えつつ、手の届く範囲から集めていくことにした。
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【イムズミ】
分類:植物・樹木
詳細:桃に似た果実を実らせる果樹。果実は”ムズミ”と呼ばれ、常食には向かないが回復薬の素材として使用される。
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【アイノキ】
分類:植物・樹木
詳細:爽やかな香りから建材として利用される樹木。幹や枝の他、葉はすり潰すと防虫薬剤として使用することができる。
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【カミグレ】
分類:植物・草花
詳細:薬草の一種。花は解熱作用、根は滋養強壮作用を持つ。
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増えていくコレクションに心が躍り、自然と森の奥へ行こうと歩を進める。しかし、その歩みを遮ったのは、先ほどまで背後で立ち尽くしていた剣歩兵だった。
どうしたのかと剣歩兵に目を向けるが、代わりに槍歩兵が前方にあった小さな茂みに向かっていく。そして、手に持っていた槍をその茂みに突きこんだ。
するとその茂みが大きく震えたかと思うと、突如茂み自体が槍歩兵に飛びついたではないか。その光景に驚くこちらを尻目に、槍歩兵は特に怯むこともなく自分の身体から茂みを引きはがす。その際に茂みの枝と鎧が擦れあう耳障りな音が響くが、槍歩兵は特に痛みなどを感じていない様子だ。
槍歩兵は完全に自分の身体から茂みを引き離すと、少し前の地面に茂みを放り投げ、再び手にした槍を茂みに突き刺した。攻撃から逃れようとしているのか茂みが蠢くが、意に介さず槍歩兵は茂みを滅多刺しにする。およそ刺突の回数が十を超えたころ、ようやく正体不明の茂みはその動きを止めた。
それと同時に、槍歩兵が背後へと戻ってくる。枝で引っ掻かれたのだろう、鎧に小さな傷こそついてるものの、ほぼ無傷といってよい状態のようだ。
恐る恐る、動かなくなった茂みに近づいてみる。転がっていた枝で茂みの残骸をつついてみるが、動く様子はないので大丈夫そうだ。そうと分かれば収集である。
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【揺れる木立の小枝】
分類:魔物素材・木材
詳細:揺れる木立が身にまとう枝。元はただの枝だったが、【揺れる木立の粘液】が浸透し、柔軟性がありながら硬質な材質へと変化している。
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【揺れる木立の若葉】
分類:魔物素材・木材
詳細:揺れる木立が身にまとう若い葉。【揺れる木立の粘液】により、含有成分が変化している。
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【揺れる木立の粘液】
分類:魔物素材・液体
詳細:揺れる木立の核を覆う粘液。”粘体種”の一種である揺れる木立の粘液には、植物の成分を緩やかに変化させる効果を持つ。
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【揺れる木立の核欠片】
分類:魔物素材・魂核
詳細:揺れる木立の砕けた核の欠片。このままでは素材としての価値はない。
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今槍歩兵が倒したのは、揺れる木立という魔物だったらしい。それほど強い敵ではなく、また手に入る素材もそれほど有用ではなさそうだが、コレクションに違いはない。それに、今手に入れたもののおかげで、また新しい生成候補も現れた。
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【グブの薬水】を生成します
以下の物品を消費する必要があります
揺れる木立の若葉 50%/100%
揺れる木立の粘液 10%/100%
未熟なムズミ 0%/100%
ガミルの清水 0%/100%
物品が不足しているため、生成を行えません
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”薬水”というからには、傷や病に効果があるのだろうか。今のところ自分で戦闘を行うつもりはないが、万が一の時のために持っていてもよさそうだ。ただ、それ抜きにしても単純にコレクションとして手に入れておきたいので、揺れる木立は見つけ次第狩らせることにしよう。
それに、ここで槍歩兵の戦闘力を確認できたのは僥倖だった。前に剣歩兵が枯れる枝人を狩って残骸を持ってきたことがあったが、彼らにとってはこの程度の魔物は脅威にはならないらしい。まだ安心はできないが、もう少し探索を続けても大丈夫そうだ。
そういう訳なので、剣歩兵と槍歩兵を引き連れて森の奥に進んでみることにする。命綱は腰から解いて、近くにあった木の幹に括り付けておいた。何かあってこの森から逃げることになっても、そこまで戻ることができれば命綱を辿って拠点に帰れるはずだ。
先の戦闘のこともあるので、周囲の警戒は怠らないようにしながら探索を行う。
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【ドテイモ】
分類:植物・芋類
詳細:広い範囲に分布する芋類。痩せた土地でも育つが、栄養価は高くない。
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【ハゼタケ】
分類:植物・菌糸
詳細:ガミルの森でしか見られない固有種。僅かな衝撃で蓄えた胞子をまき散らし、繁殖を行う。大きければ大きいほど胞子をまき散らす際の衝撃が強く、気づかずに踏みつけた旅人が負傷することもある。
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この【ハゼタケ】というのは厄介な特性を持っている割には目立たない外観をしており、茂みの中に生えているものを槍歩兵が踏みつけたときにようやく見つけることができたものだ。
そっと全書で触れて収集することはできたが、これではおちおち一人で歩くこともままならない。
幸い槍歩兵が損傷を負った様子はないが、槍歩兵がよろけたその威力は推して知るべしというものだ。
警戒しながら進んでいたおかげか、森の奥からこちらに近づいてくるいくつかの影に気づく。こちらの背丈とあまり変わらない大きさの人影に見えるそれは、よたよたとおぼつかない足取りで近づいてきているようだ。
距離が近くなったことで、その人影の全貌が見える。近づいてきたのは、まるで子供がそのあたりに転がっていた枝で適当に作った人形を人間のサイズにしたかのような、不格好な人型の何かだった。
近づいてくるそれらの数は全部で三体。おそらくこの魔物は、前に剣歩兵が残骸だけを持ってきた”枯れる枝人”だろう。それならば三体と言えども剣歩兵と槍歩兵で十分対応ができそうだ。
自動人形たちもそう判断したらしく、槍歩兵だけが前に進み出て三体の枯れる枝人に相対した。手に持つ槍の分リーチが長い槍歩兵が、必然的に先制の攻撃を繰り出す。
その一撃は最も前にいた枯れる枝人の胴体を正確にとらえると、その体をほぼ真っ二つにへし折りながら貫いた。その隙に後からついてきていた枯れる枝人が槍歩兵に近づくが、槍歩兵は穂先に貫かれた獲物ごと槍を横に振るい、近づいてきた個体を激しく打ち据える。
その一撃により二番目の枯れる枝人の左腕は肘のあたりで折れ千切れた。これならば、続く三体目も容易に打倒できそうだ。
そんな苦戦すらしない人形たちの戦いぶりを見て、油断していたのだろう。こちらが何かに気づく前に、後ろから強い衝撃を受けた。その衝撃により身体がわずかに宙を舞い吹きとばされる。
我が身を吹きとばしたのは、戦闘が始まった時から背後で待機していた剣歩兵だった。突然の攻撃を受けて地に倒れながら剣歩兵を見るが、次の瞬間には上から落ちてきた巨大な何かに剣歩兵が押しつぶされる。
落ちてきたのは、冗談のようなサイズの蜘蛛だった。足を入れれば三メートルを超えそうなその蜘蛛は、着地と同時にこちらに狙いを定めたのか、巨躯をこちらに向け踏み込んでくる。
そのあまりの迫力に、尻もちをついたまま情けなく後ずさるが、その巨大さ故、蜘蛛は数秒後にはこちらを攻撃範囲内にとらえ、その牙をわが身に突き立てることだろう。だが、その歩みは八本あるうちの足の一本を切り飛ばされることで止まる。
蜘蛛が振り向いた先にいるのは、先ほど蜘蛛に押しつぶされた剣歩兵だ。鎧が土で汚れているものの、遠目からはあまり損傷がないように見える剣歩兵は、続けてもう一本の足を切りつける。だが、蜘蛛が足を動かしたせいで両断はできなかったようだ。蜘蛛は狙いをこちらから剣歩兵に変えると、体を激しく揺らして剣歩兵に突撃する。
先ほど突き飛ばされた時に受けたのとは比べ物にならない衝撃を受けた剣歩兵は、冗談のような勢いで後ろに飛ばされた。それで剣歩兵を倒したと思ったのだろう。蜘蛛はもう一度こちらを向き、ガサガサとこちらに駆け寄ってくる。
こちらには蜘蛛に立ち向かうための力も道具もない。剣歩兵が時間を稼いでくれた隙になんとか立ち上がり蜘蛛に相対するが、できることといえばすぐに身をかわせるように身構えることだけだ。
だが、まるでこちらを守るように背後から蜘蛛に突撃するものがいた。先ほどまで枯れる枝人たちと戦っていた槍歩兵である。槍歩兵が手に持つ槍を蜘蛛の顔面に向けて突き出すと、槍は狙い過たず蜘蛛の口内に飛び込み、その穂先が顔の内側から蜘蛛の複眼の一つを貫いた。
その痛撃に蜘蛛は頭を激しく揺らした。さらに太い牙により口に入った槍を半ばで噛み千切る。槍歩兵は本来の半分ほどの長さの棒となった槍を振り上げて攻撃しようとするが、激しく動く蜘蛛の頭に弾き飛ばされた。
だが、蜘蛛が痛みに悶える隙に、再び剣歩兵が蜘蛛の背後から足とその胴体を切り払った。それにより、もう一本の足と蜘蛛の腹部に深々と剣が食い込む。
その一撃が決定打だったようだ。戦線に復帰した槍歩兵と剣歩兵は、弱った蜘蛛を手に持つ武器で滅多打ちにする。二体で数分ほど攻撃を加え続けた人形たちは、蜘蛛がピクリとも動かなくなったころ、ようやくその動きを止めた。
……正直油断が過ぎた。人形たちの戦闘力にかまけて、ここが全く未知の場所であることを忘れてしまっていたのだ。
その油断の代償は高くついたと言えるだろう。槍歩兵の槍が全壊したのは言うまでもなく、剣歩兵も二度の巨大蜘蛛による攻撃を受けて、胴鎧の前部分が捲れるようにして破損してしまっている。
だが、少なくとも戦果は得ることができた。
――――――――――
【備える森蜘蛛の甲殻】
分類:魔物素材・甲殻
詳細:備える森蜘蛛の体を覆う甲殻の一部。模様は天然の迷彩になっている。
――――――――――
――――――――――
【備える森蜘蛛の牙】
分類:魔物素材・歯牙
詳細:備える森蜘蛛の口に生える牙。獲物の体液を効果的に啜る構造になっている。
――――――――――
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【備える森蜘蛛の複眼】
分類:魔物素材・眼球
詳細:備える森蜘蛛が持つ複眼の一つ。装飾品の素材として使われることがある。
――――――――――
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【枯れる枝人の新芽】
分類:魔物素材・植物
詳細:枯れる枝人の頭部に稀に存在する芽のような器官。新芽を持つ個体が成熟すると、芽からより優れた個体が発生するといわれている。
――――――――――
損害に釣り合う戦果かと問われれば微妙なところだが、そもそも今日の目的は瘴壁の向こう側の探索と収集である。今日のところは、この辺りが潮時だろう。
未だ戦闘の緊張により震える身体に鞭を打ち、半壊した人形たちを引き連れて拠点に戻るのだった。
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