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第8章

第二懸案

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 一番揉めたのは集団行動する昆虫類を含む種族の扱いである。
 養蜂業の様に家族経営や一族経営が望ましいという意見に賛成する意見が多かったが、それでは秘匿出来ないし、何かあれば絶えてしまうからと、専門の組合を作りそこに所属するものに任せるのが良いという者達がいたのだ。
「だがそれこそ秘匿とは程遠いではないか。それは独占するのと同意ではないのか?」
「そもそも秘匿するというのにどんな組合とするのか?」
「組合は事務方など裏の業務の下っ端にネズミが入りやすいから論外だよ」
「しかしそれでは関われる者達が少なく…」
「多いほど漏れやすいから少なくても構わないのでは?」

 という様な権力者と直接通じていない者を極力排除しても、それらに連なる考え方の者の意見が散見した。
 毒を濃縮する種族は一族のが良いだろうという意見が多かったが、巣を作る昆虫系や縄張りを作る種族は良いが、季節毎に移動したり、定住地を決めず放浪する種族は遊牧民の様に家族単位か、一族でも少数民族などが良いのではという意見が出た。
 とりあえず細かい内容を決める前に今いるメンバーで条件に合う、思い付く対象団体をリストアップし、それを踏まえて議論することにした。それによって具体的な問題がいくつか浮かび上がった。
 家族や一族をどこまでとする議論も、実在する団体で当てはめてみると問題が分かりやすく浮かび上がる。
 そこで家族は当主と生計を共にするひと家族とし、当主とは直接濃縮した製品を管理する者か幻獣士とし、その子供と両親が基本形とする。配偶者の両親や子が成人している場合の孫は含まない。但し子供はその才能や体質などにより家業を手伝えない可能性があるため、秘密保持が出来ると判断するまでは関わらせないことも認めることとした。遊牧民や少数民族など外部との接触が少ないとか、代々技術を継承している職人や一部の職業を除き、幼い頃から家業を手伝わせた子らに不満がある者や重要性の理解が足りない者が問題を起こす事例があるからだ。
 少数民族と遊牧民、元々なんらかの秘伝などを継承している場合以外は、現状では一族ではなく家族とすることになった。まずは家族での運用状況をみてから一族管理にした方が良い場合のルールを後日定めることでようやく合意を得た。
 ただ現在秘伝を受け継いでいる一族は、伝統を守り続けている事に誇りを持っているため、この計画に参加してくれない可能性が高いとみている。
 こちらも保管や納品用に二重構造の登録者機能付きを支給することに決定したが、バックタイプではなくボックスタイプになったのは数人で管理する場合や関わる者達が重要性を視認しやすい、長く使用する可能性があるなどから、多機能化出来るボックスタイプとなった。
 ここに参加を認められた(謎の前日に体調不良になった者を除く)者達で候補のリストを正式に作成し、今日問題が見つかった対象者を除く全てをそれぞれの組織で先ず精査検分する事が決定した。
 時間の余裕があれば他の計画参加組織と個別会合して互いに精査する事も許可したが、決定から開始2時間前までにレナードか、ヘンルーダ冒険ギルドコナー副ギルド長など中精霊が付いていると公表されているメンバー連絡する事が条件で。
 本当はエルフや竜人族の様に精霊や幻獣を敬っているため必要はないが、人間は関係ある者が増えると良からぬ考えを持つ者達が接触して来るため、幻獣チェックの体制を整えるためだ。
 ちなみにコナーは密猟者掃討作戦の際にトラヴァー薬草の森の精霊達に懐かれ、渡されたペンダントでほぼ一方通行ではあるが連絡が取れるようになったらしい。精霊が応えてくれる時は召喚獣に憑依して会話するのだと聞いた。
 今回の会合は問題ある重要事項は全て決定させない事を重視していた。次の会合までにどういう行動をするのかである程度の本質を見極めるためである。
 会合の最後は変異種育成計画の名称や愛称を考えて来る事を告げて終わった。
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