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第8章
薬師ギルド
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祭りの3日後のお昼頃に薬師ギルド代表幹部の1人の邸宅に非公式の来客があった。人間以外の薬師の中でも長老と呼ばれるほどの実力・経験共にあるが、立場故に権力闘争から外れている者達が3名。竜人族の王族の末端だったり、ドワーフ族の長老の親族、エルフの養い子などで、世間では研究者として知られている者達だ。その代表もエルフの王族とハーフエルフが両親と特殊な血筋のため無所属の代表幹部としての立場の者だった。
「お主達がわしを訪ねるとは珍しいな」
「それぞれの後ろ盾からの相談で、重要な件での打診があったからだ」
そうして始まった久方ぶりの交流という名のお茶会は、公に出来ない内容であり、この様な形の訪問になったことを理解した代表幹部は内心頭を抱えた。
「変異種育成計画に賛同しているギルドのみに開示された情報で、無所属と言われるお主達だからこそ、交渉前に知ることが出来たということだな」
「代表、違います。交渉ではありません、相談だそうです」
「ん?どういうことじゃ」
そこで人間達の遥か昔から光と闇の能力者達への酷い扱いで信用されない事や、独占や利権争いが起これば秘匿どころか、関係者全てが以前行われた支配階級などの時の様に粛正される等と切々と言い含められたことを代表に伝えた。
「以前商業ギルド代表のケイシー様が話してていたことは、そういうことだったのか」
しばらく下を向き沈黙する。
「精霊王様方との話し合いの前に他の代表に知られずに済みそうなのは良いが、他のギルド代表が先に知っていたとという事がバレたらどうなる事か」
「かと言って後に計画に参加したとしても、何故もっと早く自分達にも知らせないのかと突き上げられるでしょうな」
「先でも後でも、独占や優先権は何処にも与えられないでしょうに」
「薬師ギルドの過激派や至上主義のギルド所属の者達をどうするか」
「商業ギルド代表にも精霊王達との話し合いが終わるまでは緘口令を引くそうですが」
「理想は代表幹部と各国の大都市のギルド本部が秘匿し、毒の被害や薬の消費が多い地域の相談役にのみ情報を渡す辺りだろうが。人間の支配層や大商人の支援者が居る者が存在を知られると不味い」
「そもそも薬師ギルドが変異種育成計画に賛同したとしても、扱えるのは幻獣士だけというのは必須条件です。その条件の合う薬師は辺境伯など国境や迷いの森などの魔獣が多い地域の者など僻地か、冒険者クランや閉鎖的な種族など限られた者達です」
「そう言えば幻獣士と薬師の兼業か専属契約のみ許可だと言ってなかったか?」
「そんなことを言ってたな。そうそう、出来れば専属でも一族や家族など秘密保持しやすい環境が望ましいと言ってたな」
「その条件だとかなり絞られるし、説得しやすいかもしれん」
先ずは精霊王達との話し合いの最中に中立派の相談役や秘匿してくれそうな代表幹部にだけ話してみようということになった。
その日の内に中立派の相談役の2人に接触して薬師ギルドに有用な情報となる種族の話と、その種族の取り扱いに関することなどを説明の上で相談した。
「我ギルドにとって、濃縮や解毒の手段が増えることは有り難い。その情報が他のギルドの共同の計画故に独占は不可能だとしても、優先権くらいは欲しいのぉ」
「左様ですな。ギルド内の情報は秘匿で幹部クラスと、緊急度の高い都市の重鎮のみ公開という意見は良い。だが一部の者達が秘密裏に動く恐れがあるのが不安じゃ」
「教会関係者や人間の支配者階級の支援者との強いパイプがある派閥を我々は想定しましたが、他にもありそうですか?」
「うむ、次期代表選に出馬を狙っている者達が、怪しい動きをしておる。どこかから金銭か、利便を受けているらしいという報告があった」
「儲け主義が行き過ぎると、今回の件の情報を漏洩しようとしますね」
「精霊王様や幻獣王様方が関わってさえおらなんだら、様子見をしても良いのじゃが。下手すると様子見してた事で我々だけでなく、我がギルドそのものの解体になりかねん」
「だが、早くその育成計画とやらに賛同せねば、人族側の交渉の場で出遅れてしまう。3日後にワシら2人の連名で緊急招集をかけよう」
「お主達がわしを訪ねるとは珍しいな」
「それぞれの後ろ盾からの相談で、重要な件での打診があったからだ」
そうして始まった久方ぶりの交流という名のお茶会は、公に出来ない内容であり、この様な形の訪問になったことを理解した代表幹部は内心頭を抱えた。
「変異種育成計画に賛同しているギルドのみに開示された情報で、無所属と言われるお主達だからこそ、交渉前に知ることが出来たということだな」
「代表、違います。交渉ではありません、相談だそうです」
「ん?どういうことじゃ」
そこで人間達の遥か昔から光と闇の能力者達への酷い扱いで信用されない事や、独占や利権争いが起これば秘匿どころか、関係者全てが以前行われた支配階級などの時の様に粛正される等と切々と言い含められたことを代表に伝えた。
「以前商業ギルド代表のケイシー様が話してていたことは、そういうことだったのか」
しばらく下を向き沈黙する。
「精霊王様方との話し合いの前に他の代表に知られずに済みそうなのは良いが、他のギルド代表が先に知っていたとという事がバレたらどうなる事か」
「かと言って後に計画に参加したとしても、何故もっと早く自分達にも知らせないのかと突き上げられるでしょうな」
「先でも後でも、独占や優先権は何処にも与えられないでしょうに」
「薬師ギルドの過激派や至上主義のギルド所属の者達をどうするか」
「商業ギルド代表にも精霊王達との話し合いが終わるまでは緘口令を引くそうですが」
「理想は代表幹部と各国の大都市のギルド本部が秘匿し、毒の被害や薬の消費が多い地域の相談役にのみ情報を渡す辺りだろうが。人間の支配層や大商人の支援者が居る者が存在を知られると不味い」
「そもそも薬師ギルドが変異種育成計画に賛同したとしても、扱えるのは幻獣士だけというのは必須条件です。その条件の合う薬師は辺境伯など国境や迷いの森などの魔獣が多い地域の者など僻地か、冒険者クランや閉鎖的な種族など限られた者達です」
「そう言えば幻獣士と薬師の兼業か専属契約のみ許可だと言ってなかったか?」
「そんなことを言ってたな。そうそう、出来れば専属でも一族や家族など秘密保持しやすい環境が望ましいと言ってたな」
「その条件だとかなり絞られるし、説得しやすいかもしれん」
先ずは精霊王達との話し合いの最中に中立派の相談役や秘匿してくれそうな代表幹部にだけ話してみようということになった。
その日の内に中立派の相談役の2人に接触して薬師ギルドに有用な情報となる種族の話と、その種族の取り扱いに関することなどを説明の上で相談した。
「我ギルドにとって、濃縮や解毒の手段が増えることは有り難い。その情報が他のギルドの共同の計画故に独占は不可能だとしても、優先権くらいは欲しいのぉ」
「左様ですな。ギルド内の情報は秘匿で幹部クラスと、緊急度の高い都市の重鎮のみ公開という意見は良い。だが一部の者達が秘密裏に動く恐れがあるのが不安じゃ」
「教会関係者や人間の支配者階級の支援者との強いパイプがある派閥を我々は想定しましたが、他にもありそうですか?」
「うむ、次期代表選に出馬を狙っている者達が、怪しい動きをしておる。どこかから金銭か、利便を受けているらしいという報告があった」
「儲け主義が行き過ぎると、今回の件の情報を漏洩しようとしますね」
「精霊王様や幻獣王様方が関わってさえおらなんだら、様子見をしても良いのじゃが。下手すると様子見してた事で我々だけでなく、我がギルドそのものの解体になりかねん」
「だが、早くその育成計画とやらに賛同せねば、人族側の交渉の場で出遅れてしまう。3日後にワシら2人の連名で緊急招集をかけよう」
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