幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第8章

愚痴

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「話しが少し変わるんですが、今回の件で私自身が困った事態になったんですよ」
「はぁぁ?これ以上に問題があるだと?」
「えぇ、光と闇の生まれたばかりの精霊に愛称を付けろと言われて付けたら、名付けの仮登録に近い状況だと後で知ったたんです。頼み事をしに行った際に4属性の生まれたての精霊を押し付けられた際に。そしてそっちも名付けさせられました」
 深い溜め息を吐き出して下を向くレナード。
「はぁ?6精霊付だと!」
「そうなんですよ。全く望んでいないのに。色々大変なんですよ。はぁぁ」
せっかくなのでレナードは自身の精霊達を呼び出す。
まだ形が取れないため6色の薄い小さな光が現れて顔の周りをふよふよと飛び交う。
「見てるだけだと可愛らしいですけどね」
 とエドウィン。
「また何処か新しいところに行くと増えるんじゃないか?」
 にやにやしながら言うオーガスティン。
「揶揄わないで下さいよ。可愛いですけど」
 人間や他種族の民は知らないが、エルフ達の長老や王族は生まれて間もない精霊の同胞以外の種族による名付けは、『真名による契約』で精霊師より上の存在でだと知らされている。本来は自我が生まれ始めて名付けされる。それは精霊の能力の一部を使うことが出来る様になるからだが、その前の名付けではどの様に育つのか未知数なのだ。しかしそこまで知っている者は少なく、更にレナードの周りには沢山の精霊以外の幻獣が居るため晩年になるまでその事を知らずにいる事となる。

金剛石アダマースの森で助手希望の妖精も増えたのはいつもの事だし、満足するか、興味が無くなれば帰るから良い。でもアルバを捜索中に人命救助して特殊個体のスライムは強引に譲渡され、希少種のジャコウ鸚鵡は保護して仮契約しないといけない状況になるし。一体どうしたらいいのか」
ついでだからと妖精以外の新たな幻獣を2人に紹介した。
「へぇ、このスライムは分裂の代わりに進化出来るのか~」
「分裂前の特殊個体はそうらしいですが、この子はどうでしょうね」
「ジャコウ鸚鵡は噂通り綺麗ですねぇ。抜けた羽根で良いので持って来て下さい。状態が良ければ買取ます」
「余裕がある時で良ければ集めておきます」
「それで構わない」
「精霊も人の元で育つと行動が変わるんでしょうか?」
「どうでしょう?」
「変わるんじゃないか?」
しばらく新参者やシャンス達の戯れている姿を3人共黙って鑑賞した。
「精霊と妖精以外の幻獣はまだマシなんです。常に実体があるし、会話が出来なくても言うことはきちんと聞いてくれるし。どうしても世話が出来ない時は他人に頼めば済むんですから」
「まぁな。大抵の幻獣は生態も知られているし、動物と似たような感じで出来るからな」
「そうなんです。生態もあまり知られてないのは置いておいて、気に入った者以外には姿を見せないのも仕方ない。なのに好奇心で姿を見てみたり、気になったら黙って着いて行って、迷って呼び出されるは、遅いと拗ねたり、大騒ぎするんですよ!」
「主人無しの精霊や妖精は自由だからなぁ」
「でも決まった世話とかはないですよね?」
「そうだな。基本的に食事も排泄もないし、棲家も必要ない。但し個体差が激しく、食事は嗜好品扱いだな」
「我が家は幻獣達の食事の際に聞きますが、大抵魔性果実か果汁を欲しがりますね。最初にトラヴァーから付いて来た達に、家ではないですが籠でベット作ってしまって、以降は籠は使い回しですが、寝具の布は変えることがあります」
「マメですねぇ」
「それは自業自得ではないのか?」
「そんなことでいいますが、妖精は気まぐれでわがままで、なのに欲深い人達から守らないといけないから、機嫌取りしなきゃいけないんです!」
色々察したという顔で苦笑する2人。
「まさかあんなに頻繁に入れ替わるなんて思ってなかったし、最近なんて我が家に良く出入りする冒険者や幻獣士を覚えた個体がいるみたいで、知らない間に入れ替わってるんですよ!」
そんな感じで1時間くらい愚痴が続いたのだった。
ちなみに愚痴っている間、モデストとピュードルは存在を消してジッとしていたのだった。
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