幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第7章

羨望

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 土と火の精霊が薬師としてのレナードを手伝っていること。
 妖精の中でもそのうち仮契約を結び常時手伝う者が出て来そうなほど入り浸っている者がいること。
 火蜥蜴は仕事と寝る時以外は良くレナードの体のどこかにいること。
 妖精や精霊が薬作りを進んで手伝うのは、幻獣や動物達などのための薬を開発しているからだということ。
 幻獣術が怪我した幻獣をきちんと治したい一心で会話するためだったなどの話しを聞いて、光の小精霊や先程アルバを治してくれた蜘蛛や薬の素材探しが得意の者と治療が得意な者などが、話しが本当なら自分達も行ってみたいと騒ぎ出した。
 でもここにいる者は力が弱過ぎるか、人間と戦う術も守る術もないために集められており、安全な範囲内でしか自由に動けない。中精霊が居なければダンジョンの他の場所さえ出ることが出来ず、更に遠く離れた場所であるレナードの元へは大精霊が居ないと難しい。
 誰かが中精霊が居ないとここから出られない事を指摘した途端、騒いでいた者達ががっくりと項垂れて崩れ落ちる様に地面に倒れた。
 光の大精霊はアルバを離れた場所から精神を調べたが、強い恐怖心で歪んだ部分はあるものの、強要されて歪んだ部分は見受けられなかった。なので付き添っている中精霊に、仲の良い闇の大精霊を呼びに行かせた。
《皆んなどうしたの?》
《我ラハ、自分達ノ王様ニ安全ノタメニ此処ニ集メラレタノ。結界ノ中ハ自由ニ過ゴセルケド、中精霊様ガ居ナイト出レナイノ》
 《じゃあ、僕も此処から出られないの?》
《キット》
《ソウ》
《中精霊様ニオ願イスルシカナイ》
《デモコナイ》
《ソウ、トキドキ》
 しばらくその場は消沈した空気に包まれていた。
《中精霊様が居れば此処から出られるの?》
《コノ場所ハ精霊王様ガ弱イ僕ラノタメニ用意シテクレタノ》
《ダカラ安全》
《デモ此処ニ居ナイ仲間ニ自由ニ会エナイ》
《声モ届カナイ》
《リオと離れ過ぎているみたいで届かないけど、本契約しているからかなり遠くでも届くんだ。そしてリオには水の中級精霊のヒュードル様が付き添ってくれているから、近くに来てさえくれたら此処から出してくれるはず!》
《君ノ主人ハ中精霊様モ従エテルノ?》
《違うよ。精霊王様から最初は計画の間の監視役兼連絡係として付くように言われたけど、その後も進んで連絡係として付いているんだ》
《ケイヤクシタ?》
《してないよ。中精霊様の主人は精霊王様だもん。でも名前で呼んでいるよ》
《中精霊様ヲ名前呼ビダト!?》
《シンジナレナイ!》
《真名じゃないし、命令はしてないよ。お願いはするけど》
《ソレデモ!》
《畏イ多イ!》
《そうなの?戻ったらリオに伝えなきゃいけないね!》
《ソウナノ!》
《謝ルノガ良イノ》
《教えてくれてありがとう》
 もうそこには先程の絶望感はなく、和気藹々とした空気が生まれ始めていた。
 光の大精霊はアルバの熱弁が本当の事なのか確かめなければと考えていた。それも人間を憎んでいる者達に客観的に事実のみを集めさせるにはどうしたらいいのか考えた。

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