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第6章

仮宿舎

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翌朝にしばらくの滞在先である寮の部屋に案内された。
引退した薬師の元教授の部屋で、従者用の続き部屋を調剤室として改造して利用していたという場所。
材料などは処分されていたが、家具や棚はそのままなので要望に近い部屋だった。
外出用の道具以外を全て取り出し一部を並べた。
視察のための準備をしていると、ノック音がした。本日の案内役は第一陣の幻獣士の1人。
目的はパラディの状態視察だが、まだ発見された事になっておらず、迷いの森の誕生の秘密を知るレナードしか出来ない仕事だ。
幻獣士ギルド内では副ギルド長の2人以外は知らない。
幻獣王や精霊王達には『人間とは面倒臭い事をする』と呆れられたが、パラディを発表するのに大国に横槍を入れないための根回しだと無理矢理納得させた。
今日と明日はパラディの内部の調査で、明日は第二陣の幻獣士が付く。
明後日は予備日で、明々後日からは午前1人、午後2人の幻獣士の教職員と行動を共にし、最終日に学園長と面談するというスケジュールになっている。
もちろんカモフラージュで、ヒュードルとウェントゥスに頼んでレナードが来てからの学園内の人の動きなどを調査してもらい、パラディの発表の時期を決めるため。
2日でパラディの状況を目視で確認、3日目は周辺の確認し、4日目から最終日の6日目までは運営会議室で秘密裏の会議が行われて、レナードの精霊と誓約者の精霊や妖精達の情報を基に誰がいつ発見するかを話し合う。
決まっているのはレナードがアダマースへ出立した後にことのみ。
それ以外は調査次第で決定する。
幻獣士の教職員は誓約していないため、古城の前で別れ周辺を警戒してもらっている。
古城に入り森の入り口を探して歩く。
流石は引退した長命種達の技術者、幻獣でなければ見つけられない様な仕掛けを施してくれ、人族では鑑定やサーチ系のスキルや魔導具でも発見出来ない様になっているとヒュードルが教えてくれた。
アルバに開けてもらい地下道へ降りる。
階段の足元だけが光苔で照らされている。
仄暗い中ウェントゥスの発する光が心強く感じる。
あえてライト魔法を使わずに行く。
明るくなった先に石作りの扉が見えた。
扉の前に立つと石版が足元から迫り上がって来て、古代文字で次のように書かれていた。


“これより先は幻獣の楽園パラディである。
悪心ある者、欲深き者は生きてここに戻れず。
覚悟して入られよ。
この碑の上に手を乗せて魔力を流せば扉は開く”


これを読んだレナードはここまで拘って作ったのかと少し引いたが、気持ちを切り替えて魔力を流す。
《さぁ皆んな、パラディに出発するよ》
それぞれ勇ましく声を上げて飛び込んで行った。
「相変わらずソルとルナは元気だなぁ」
言われず共自分の仕事だと右肩から狼犬達を追うクレド。
スティードもアルバも狼犬を追って駆けて行った。
レナードは探索しながらゆっくり進む。
悪心ある者や欲深い者達だけが飛ばされる罠は発動することはないので安心して進むが、早速狼犬達が罠に飛ばされた様だ。
《びっくりした!》
《綺麗な場所だよ》
人族の私ならともかく、何故元は変異種だが幻獣に昇格したというのに罠にかかるのかと呆れながら聞いた。
事前の説明では一定時間を過ぎると元の通路に戻るか、移転の魔法陣が出て別の通路に飛ばされるらしい。
《しばらくしたら通路に戻るみたいだからそこで好きに過ごしておいで》
《分かった》
《探検する!》
どうやら2匹だけで済んだらしい、しばらく歩くと途方に暮れて佇む2匹と1羽の姿があった。
2匹は後から来るから先へ進もうと促した。
「通路と仕掛けだけの筈だったのに、本当に地下街の様相だよ。少なくともメイン通りと裏通りはあるみたいだ」
実際にはダンジョン仕様のため、一定周期でランダムに景色も変わる仕様らしい。
注意深く進み罠を全て回避して辿り着いた出口は緩やかな登り階段になっていた。
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