幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第6章

理由

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その頃もう一つの机ではレナードは質問攻めにあっていた。
「先程、幻獣が持ち込まれたと言ってましたが、幻獣使いの方ですか?」
「祖父から牛型の魔物と交配したらしい雌や魔獣と混血の牛達の処遇を相談され、引き取って村の外れに出たら家畜の魔物や魔獣の治療や幻獣使いが来る様になりました。
最初は強い個体が多かったので既存のを体格に合わせて薄めてました。
ある時行商人の親子が森で保護した小型の幻獣を連れて来て、いつもの様に治療したら悪化し慌てて魔法の水で洗い流しましたが、鑑定持ちの親御さんが鑑定してくれて毒の症状が出ていた理由が判明しました。
家畜の治療のため従魔術は取得していましたが、それをきっかけに幻獣術を習いました」
「そんな経緯があったんですね」
「はい、その時は森の動物達に傷に使う薬草を聞きそれらで薬を作って治療しました。その後に人の薬やポーションの材料で似た効果の物と入れ替えて、重症の魔物や魔獣に協力してもらい実験を繰り返して出来た物です。
まだ正式な鑑定依頼をして品質保証をしてなかったので、知り合いだけにしか使用してませんでした」
「重症の魔物や魔獣に協力と言った様に聞こえたが、手負いの時は動物でさえ危険なのにどうやって?」
「まず森で必要以上の狩りや採取をしないことで信用を得て、人の罠や敵から辛くも逃げた者や助けを求めたものだけを保護しました。
その上で自然治癒を妨げない最低限の治療を施し、そのままある程度まで治ったら建物の扉を開けて最終的に野生に返し、それでは治らないものに交渉しました。
群れのものは群れのリーダーに交渉しました」
「そこまでやったのか」
「はい、森の幻獣になれる魔物や魔獣達に、万が一の時に幻獣も治療出来る傷薬とポーションを作りたい、人族用の薬やポーションの中には幻獣に害になるものがある様だと。
森の生き物達から『人間に不当に傷付けられたもの』と『生存競争での争いで逃げ切ったもの』の治療の許可と、初めて使用実験する時は『年老いたもの』か『重症で治療しなければ助かる見込みがないもの』で試す事を条件で」
「なるほど、死の覚悟があるものが命をかけて、種族や森のためになるために協力したということだな」
「そうです。実際効き目が強過ぎて治療中の激痛で暴れたり、痕は消えたけど麻痺が残ったりなど何回となく問題がありました」
「あら、麻痺した個体はどうしたのかしら?」
「野生に戻れないものは亡くなるまで預かりました。その関係で村外れから、森の入り口に拠点を移す事にもなりましたが」
「1人では大変ではなくて?」
「改良に必死で、でも少しでも効果があると治療している生き物が感謝の気持ちを伝えてくれるので、案外楽しかったです」
「ヴォロンウェ、エルフの薬師で幻獣を治療したいと希望する者がおるか募ってみてはどうだろう?」
「それは良い。レナード殿、まだ改良をしておるのだろう?もし希望者が居れば助手として使ってやってくれ」
「アグラレス様、ヴォロンウェ様、確かにまだ傷薬とポーションが1種類ずつなので、開発は続けていますが、エルフの薬師の方を助手など畏れ多いです」
「研究畑の奴なら誰が上かなど気にせんと思うがのぅ、アグラレス」
「成果を出した奴には敬意を払うだろうな」
「エルフの薬師の方の知識があれば他にも幻獣にも効くものが作れそうです。
ただ幻獣用のレピシは限定公開にしたいと思っています。
幻獣を道具の様に使用する手段になりかねないからです。
あと幻獣は人族と違い、訴えることが出来ない種族もいますし、耐性の違いや進化や変異などに柔軟に対応出来ないと助けられない可能性があります。
エルフの方は精霊様と話せるので良いですが、幻獣術を持った者以外が作れないようにしたいと」
「我が国も誰かを行かせようかと思っていたが、流石精霊王様や幻獣王様方に認められただけのことはあるな。
ヘンリク、我が国の薬師ギルド幹部と幻獣に関する部署の長と副官を呼び出す様に」
「かしこまりました」
アグラレスとヴォロンウェも自身の精霊を呼んで指示していた。
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