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第5章
浅知恵
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会議室で考え込んでいた幹部達は、会議室を掃除しようと入室した事務局の職員の姿を見て慌てて立ち上がり、待機した補佐官を連れて出て行った。
それぞれが目配せをして方々へ立ち去る。
素材を横流ししていた者達。
購入額を水増ししていた者達。
素材を別のことに流用していた者達。
それぞれ不当に利益を得て今の地位を確立していた者達だ。
いずれも仕入れ先が変われば不正が発覚する恐れがあり、関係者を集めて対策を考える必要があるため、それぞれが臨時の会合の準備に奔走した。
最初に集まったのは流用していた者達。
主に成果が上がらない研究の材料確保に流用していた。
「どうする?」
「監視が人族ならば、時期を見て少しずつでも確保出来るだろうが、妖精はともかく精霊になると感知スキルがなければいるかさえ判らない」
「そう言えば以前の依頼を参照にすると言ってなかったか?」
「それは人族のだろう?」
「だが、今までので疑われそうな量を避ければもしかして…」
「そうだな、とりあえず過去の資料の洗い出しだ」
彼らは知らない、最初は必ず監視が付く事を。
そして流用した研究の多くが無駄である事を幻獣によって知らされる未来が来ることを。
次に集まったのは水増し請求をしていた者達。
取引先の大商会や冒険者を呼び出すのに3日かかったから。
「仕入れ状況はどうなっている?」
「現状の幻獣士は兼業の者が多い上に、行商人など素材を売る職種以外は、自分の本業や種族優先のため、幻獣使いや冒険者からしか入手出来ません」
「俺達は試しに幻獣士と臨時パーティを組んで森に入ってみたが、日当より少し多いくらい以上に持ち出すと襲われる。
それさえ守れば安全に入手出来るが、幻獣士が連日で入ることが基本的に出来ないため、毎回違う奴を探さないといけない」
「納期が読めないということか」
「現状は素材採取専業の幻獣士が居ないため、幻獣士ギルドに依頼した方が早くなるでしょう。
たぶんですが、我々が幻獣士ギルドに依頼して、貴方様に納品した場合でも、我商会の必要経費以外は今まで通りの金額で納品すると、我々も貴方達方も処罰される可能性があります」
「その可能性は高いゼ。
俺達と一緒に臨時パーティを組んだ奴らが、今まで通りに危険手当て込みの金額で素材を売ったら、帰り道で魔獣に襲われた。
仕入れた方は知らなかったから妖精の悪戯で済んだらしい」
「知らなくても被害に遭うと?」
「あぁ、そいつは幻獣士ギルドを通さず、仕上げをしないで正規料金で売ろうとしたからな。
手抜きさえしなけりゃ被害はなかったかもな」
僅かな水増し請求で誤魔化そうとしたが、直接依頼のが遥かに安く、事務局長から仕入れ先を変更しないと支払いしないと通達された。
利益が低い迷いの森の素材以外で水増しをするしかなくなり、急速に影響力が下がることになった。
素材の横流し先が貴族の経営する商会だったため、5日かかった横流しの者達。
貴族の秘密裏の別邸で会談した。
「素材を回せなくなるとはどういう事だ!」
顔を見るなり怒鳴られた研究都市幹部一行。
「仕入れ先が幻獣士ギルドの依頼に変更になりまして、使用目的や種類、量などを記入して申請することになったからです。
不当な量を記入して、横流しが発覚すると我々だけでなく、大粛正の様に関係した者の全てが処罰されます。
そのため急ぎ連絡しました」
「ならば発覚しない様に上手くやれば良いだけではないか」
何でもない事の様に平然と言う。
「監査は人族ではなく、精霊や妖精らしいので誤魔化せないと思われます」
「何だと!それは事実か?」
「今日までに入手出来た情報では可能性が高いでしょう。
幻獣士と臨時パーティを組んだ者が、危険手当て込みで素材を売っただけで帰り道に魔獣に襲われたと」
「分かった。
こちらでも情報を集めてみる。
しばらくは互いに連絡は控えるとしよう」
後日幹部達の部屋から少しずつ物が消えたという。
それぞれが目配せをして方々へ立ち去る。
素材を横流ししていた者達。
購入額を水増ししていた者達。
素材を別のことに流用していた者達。
それぞれ不当に利益を得て今の地位を確立していた者達だ。
いずれも仕入れ先が変われば不正が発覚する恐れがあり、関係者を集めて対策を考える必要があるため、それぞれが臨時の会合の準備に奔走した。
最初に集まったのは流用していた者達。
主に成果が上がらない研究の材料確保に流用していた。
「どうする?」
「監視が人族ならば、時期を見て少しずつでも確保出来るだろうが、妖精はともかく精霊になると感知スキルがなければいるかさえ判らない」
「そう言えば以前の依頼を参照にすると言ってなかったか?」
「それは人族のだろう?」
「だが、今までので疑われそうな量を避ければもしかして…」
「そうだな、とりあえず過去の資料の洗い出しだ」
彼らは知らない、最初は必ず監視が付く事を。
そして流用した研究の多くが無駄である事を幻獣によって知らされる未来が来ることを。
次に集まったのは水増し請求をしていた者達。
取引先の大商会や冒険者を呼び出すのに3日かかったから。
「仕入れ状況はどうなっている?」
「現状の幻獣士は兼業の者が多い上に、行商人など素材を売る職種以外は、自分の本業や種族優先のため、幻獣使いや冒険者からしか入手出来ません」
「俺達は試しに幻獣士と臨時パーティを組んで森に入ってみたが、日当より少し多いくらい以上に持ち出すと襲われる。
それさえ守れば安全に入手出来るが、幻獣士が連日で入ることが基本的に出来ないため、毎回違う奴を探さないといけない」
「納期が読めないということか」
「現状は素材採取専業の幻獣士が居ないため、幻獣士ギルドに依頼した方が早くなるでしょう。
たぶんですが、我々が幻獣士ギルドに依頼して、貴方様に納品した場合でも、我商会の必要経費以外は今まで通りの金額で納品すると、我々も貴方達方も処罰される可能性があります」
「その可能性は高いゼ。
俺達と一緒に臨時パーティを組んだ奴らが、今まで通りに危険手当て込みの金額で素材を売ったら、帰り道で魔獣に襲われた。
仕入れた方は知らなかったから妖精の悪戯で済んだらしい」
「知らなくても被害に遭うと?」
「あぁ、そいつは幻獣士ギルドを通さず、仕上げをしないで正規料金で売ろうとしたからな。
手抜きさえしなけりゃ被害はなかったかもな」
僅かな水増し請求で誤魔化そうとしたが、直接依頼のが遥かに安く、事務局長から仕入れ先を変更しないと支払いしないと通達された。
利益が低い迷いの森の素材以外で水増しをするしかなくなり、急速に影響力が下がることになった。
素材の横流し先が貴族の経営する商会だったため、5日かかった横流しの者達。
貴族の秘密裏の別邸で会談した。
「素材を回せなくなるとはどういう事だ!」
顔を見るなり怒鳴られた研究都市幹部一行。
「仕入れ先が幻獣士ギルドの依頼に変更になりまして、使用目的や種類、量などを記入して申請することになったからです。
不当な量を記入して、横流しが発覚すると我々だけでなく、大粛正の様に関係した者の全てが処罰されます。
そのため急ぎ連絡しました」
「ならば発覚しない様に上手くやれば良いだけではないか」
何でもない事の様に平然と言う。
「監査は人族ではなく、精霊や妖精らしいので誤魔化せないと思われます」
「何だと!それは事実か?」
「今日までに入手出来た情報では可能性が高いでしょう。
幻獣士と臨時パーティを組んだ者が、危険手当て込みで素材を売っただけで帰り道に魔獣に襲われたと」
「分かった。
こちらでも情報を集めてみる。
しばらくは互いに連絡は控えるとしよう」
後日幹部達の部屋から少しずつ物が消えたという。
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